17 / 87
承『記憶喪失の《討伐者》』
第3話 白蛇
しおりを挟む
----------
「ちょっと待ってください。その前に……作戦はあるんですか?」
1番重要なことだ。作戦がなければ、連携も上手く取れない。まして、出会って3日くらいしか経っていない。阿吽の呼吸など以ての外だ。
「作戦は……まぁ、戦ってみれば弱点は分かるだろう。俺も白蛇自体は初めて見るしな」
彼が村人から信頼を得ている理由は……このように度胸もあるからだ。無謀と言い換えた方がいいのかもしれないが。あるいは、豪快ってところだな。
この会話の間も、白蛇は待ってくれない。
白蛇がその長い長い身体を上手く扱い、俺たちが立っているこの地面に思いっきり頭をぶつけてきた。
何とか避けることができたが……当然、当たらずともダメージは大きい。地面は抉られ、土煙が上がる。ちょうど俺たちの視界を遮るくらいに。
「スカイ、お前は大丈夫か?」
「はい……何とか」
もちろん、このちょっとした会話ですら、白蛇は見逃してくれやしない。
土煙で視界が不安定な状態でも、白蛇はしっかりと狙いを定めて頭突きをかましてきた。
俺は素早く前に転がり、直撃は防げた。
危ない……間一髪だった。もう少し遅かったら死んでいただろう。いつ命を落とすか分からないこの状況に、俺はやっと恐怖をおぼえた。
「ガイアさん……大丈夫ですか?」
返事がない。
「ガイアさん?」
土煙も相まって、お互いに位置が分からない。彼が今どこにいるかも分からないが、彼からしても分からないだろう。
これは……動き回るのは危険か?
しかし、何もしないままでは……いつかあの蛇の頭突きが当たってしまう。当たらなくとも、消耗戦となれば……結果が丸見えだ。
そもそも俺は戦ったことなどない。ガイアさんならともかく、俺がモンスターと一騎打ち……となれば、確実に俺の負けとなるだろう。
下手に動き回るのは危険、俺の野生の勘がそう言っている。しかし、この場に留まるのも危険だと言っている。
ヤツはというと……俺がさっきまで立っていた地面に向かって頭突きを繰り返している。
俺は白蛇にバレないように、しゃがんだまま歩く。こうすれば、ある程度はバレないだろう。見つかったら……その時はその時だが。
「あっ……」
思わず声を出してしまった。彼……ガイアさんが横たわっているのを発見してしまった。意識はないが……呼吸はある。
大声で呼びかけるも、反応がない。先の攻撃をモロにくらってしまったのだろうか。彼の周りの地面はほとんど抉られている。
どうもしようがない。彼を横向きに寝た姿勢にし、空気の通り道を確保させた。
ここからが問題だ。この一帯には……俺と白蛇しかいない。他の村人は、そのアオイ村にいると聞いた。この丘からアオイ村まで、歩いて数分の距離だろうか……。
しかし、敵は白蛇。移動速度が尋常ではない。村とこの丘の間を数十秒で移動してきたヤツには到底叶わない。
ここで今、俺がやるしかないのか。
俺は覚悟を決め、彼が持っていた剣を拝借した。モンスターに関する知識など、これっぽちもない。どこに生息しているのかも、どこに弱点があるのかも、何も知らない。
こうなるなら、シアンさんの話をちゃんと聞いておけばよかったな。
「白蛇、止まれっ!」
一旦、距離を取りつつ叫んでおく。言葉が通じるモンスターもいるかもしれない、という微かな可能性にかけてみた。
シャアアアア……!!
白蛇も何かを伝えようとしているのか、咆哮を上げた。動きも止まっている。もしや……言葉が通じたのか?
いや、通じていない。白蛇は俺を見つめると、すぐに猛スピードで追いかけてきた。
言葉は通じないなら……次はどうしたらいいのだろうか。
彼はまだ眠ったままだ。このままここで戦闘を行えば、彼が巻き込まれる可能性の方が高い。かと言って、村の方へ行けば大勢の村人が襲われる。
なら、誰もいない方へ行けばいい。そして、アイツが動きづらそうな森に行けばいい。幸い、数分走れば着く距離に森があるが……。
数分走っていられるわけがない。開けた場所は……アイツにとっては動き回りやすい場所ということだ。耐えられるわけがない。
「白蛇、こっちだ!」
他に作戦などない。森に向かって走り続けるしかないと、俺の野生の勘が言っている。理性の勘も働くことを願う。
シャァァアッ……!!!
俺の事を2度見……いや3度見した後、向かってきた。
速い、これではすぐに追いつかれる。追いつかれた場合のことをあまり考えていなかった。ここからどうしたらいいのか。野生の勘は特に何も言ってくれないな。
待てよ……。俺は、2本のナイフの存在を思い出した。そうだ、これがあった。本当に、ヤツの皮が薄いことを願うばかりだ。
「いけえぇぇ!!」
グサッ……
俺は背後にいた白蛇の腹に、躊躇もなく小さなナイフを突き刺した。
グサッ……
続いて、2本目も突き刺した。
これで倒せたとは思わない。が、少しでも傷がつけばそれでいい……。
シャァァ……
僅かにヤツの動きが遅くなった。血も流れ出ている。間違いなく効いてはいる。
俺は力いっぱいその2本のナイフを抜き、また別のところに突き刺した。何度も……何度も……何度も突き刺しては抜いて、突き刺しては……。
ジャァァァア……!!
ついに白蛇が咆哮を上げながら暴れだした。当然だ。何回も刺して抜いて……ヤツの命を奪おうとしたからだ。
白蛇は先までの遅さが嘘のように、急に空高く飛び跳ねた。
まずい。俺の真上に……ヤツがいる。このまま落ちてきたら……。
危な……。
ドシャァァアア……!!!
----------
「ちょっと待ってください。その前に……作戦はあるんですか?」
1番重要なことだ。作戦がなければ、連携も上手く取れない。まして、出会って3日くらいしか経っていない。阿吽の呼吸など以ての外だ。
「作戦は……まぁ、戦ってみれば弱点は分かるだろう。俺も白蛇自体は初めて見るしな」
彼が村人から信頼を得ている理由は……このように度胸もあるからだ。無謀と言い換えた方がいいのかもしれないが。あるいは、豪快ってところだな。
この会話の間も、白蛇は待ってくれない。
白蛇がその長い長い身体を上手く扱い、俺たちが立っているこの地面に思いっきり頭をぶつけてきた。
何とか避けることができたが……当然、当たらずともダメージは大きい。地面は抉られ、土煙が上がる。ちょうど俺たちの視界を遮るくらいに。
「スカイ、お前は大丈夫か?」
「はい……何とか」
もちろん、このちょっとした会話ですら、白蛇は見逃してくれやしない。
土煙で視界が不安定な状態でも、白蛇はしっかりと狙いを定めて頭突きをかましてきた。
俺は素早く前に転がり、直撃は防げた。
危ない……間一髪だった。もう少し遅かったら死んでいただろう。いつ命を落とすか分からないこの状況に、俺はやっと恐怖をおぼえた。
「ガイアさん……大丈夫ですか?」
返事がない。
「ガイアさん?」
土煙も相まって、お互いに位置が分からない。彼が今どこにいるかも分からないが、彼からしても分からないだろう。
これは……動き回るのは危険か?
しかし、何もしないままでは……いつかあの蛇の頭突きが当たってしまう。当たらなくとも、消耗戦となれば……結果が丸見えだ。
そもそも俺は戦ったことなどない。ガイアさんならともかく、俺がモンスターと一騎打ち……となれば、確実に俺の負けとなるだろう。
下手に動き回るのは危険、俺の野生の勘がそう言っている。しかし、この場に留まるのも危険だと言っている。
ヤツはというと……俺がさっきまで立っていた地面に向かって頭突きを繰り返している。
俺は白蛇にバレないように、しゃがんだまま歩く。こうすれば、ある程度はバレないだろう。見つかったら……その時はその時だが。
「あっ……」
思わず声を出してしまった。彼……ガイアさんが横たわっているのを発見してしまった。意識はないが……呼吸はある。
大声で呼びかけるも、反応がない。先の攻撃をモロにくらってしまったのだろうか。彼の周りの地面はほとんど抉られている。
どうもしようがない。彼を横向きに寝た姿勢にし、空気の通り道を確保させた。
ここからが問題だ。この一帯には……俺と白蛇しかいない。他の村人は、そのアオイ村にいると聞いた。この丘からアオイ村まで、歩いて数分の距離だろうか……。
しかし、敵は白蛇。移動速度が尋常ではない。村とこの丘の間を数十秒で移動してきたヤツには到底叶わない。
ここで今、俺がやるしかないのか。
俺は覚悟を決め、彼が持っていた剣を拝借した。モンスターに関する知識など、これっぽちもない。どこに生息しているのかも、どこに弱点があるのかも、何も知らない。
こうなるなら、シアンさんの話をちゃんと聞いておけばよかったな。
「白蛇、止まれっ!」
一旦、距離を取りつつ叫んでおく。言葉が通じるモンスターもいるかもしれない、という微かな可能性にかけてみた。
シャアアアア……!!
白蛇も何かを伝えようとしているのか、咆哮を上げた。動きも止まっている。もしや……言葉が通じたのか?
いや、通じていない。白蛇は俺を見つめると、すぐに猛スピードで追いかけてきた。
言葉は通じないなら……次はどうしたらいいのだろうか。
彼はまだ眠ったままだ。このままここで戦闘を行えば、彼が巻き込まれる可能性の方が高い。かと言って、村の方へ行けば大勢の村人が襲われる。
なら、誰もいない方へ行けばいい。そして、アイツが動きづらそうな森に行けばいい。幸い、数分走れば着く距離に森があるが……。
数分走っていられるわけがない。開けた場所は……アイツにとっては動き回りやすい場所ということだ。耐えられるわけがない。
「白蛇、こっちだ!」
他に作戦などない。森に向かって走り続けるしかないと、俺の野生の勘が言っている。理性の勘も働くことを願う。
シャァァアッ……!!!
俺の事を2度見……いや3度見した後、向かってきた。
速い、これではすぐに追いつかれる。追いつかれた場合のことをあまり考えていなかった。ここからどうしたらいいのか。野生の勘は特に何も言ってくれないな。
待てよ……。俺は、2本のナイフの存在を思い出した。そうだ、これがあった。本当に、ヤツの皮が薄いことを願うばかりだ。
「いけえぇぇ!!」
グサッ……
俺は背後にいた白蛇の腹に、躊躇もなく小さなナイフを突き刺した。
グサッ……
続いて、2本目も突き刺した。
これで倒せたとは思わない。が、少しでも傷がつけばそれでいい……。
シャァァ……
僅かにヤツの動きが遅くなった。血も流れ出ている。間違いなく効いてはいる。
俺は力いっぱいその2本のナイフを抜き、また別のところに突き刺した。何度も……何度も……何度も突き刺しては抜いて、突き刺しては……。
ジャァァァア……!!
ついに白蛇が咆哮を上げながら暴れだした。当然だ。何回も刺して抜いて……ヤツの命を奪おうとしたからだ。
白蛇は先までの遅さが嘘のように、急に空高く飛び跳ねた。
まずい。俺の真上に……ヤツがいる。このまま落ちてきたら……。
危な……。
ドシャァァアア……!!!
----------
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる