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承『記憶喪失の《討伐者》』
第41話 イザヴェラ
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どんなに世界全体が晴れていても、この地だけはいつも曇っている。いつ雷が落ちるか分からない天気、ドラゴンの背中に乗っているだけでも、いつか雷に打たれる気がする。
「着いたぞ」
周りのドラゴンらはまた威嚇するように、鳴き声を上げた。この世の終わりかと思うほどの修羅場、だが俺たちは突き進む。リーダー格の赤いドラゴンのいる、並より高い塔に着陸する。
「また来たか、ゲオーニ」
赤いドラゴンが姿を現した。その顔には怒りがこもっている。俺はロックから受け取った白い包みを地面に置き、無表情のままこう言った。
「これはあの指輪を渡した人からの贈り物です。どうぞ」と。
赤いドラゴンは大きな爪で器用に開けると、そこには小さな瓶が入っていた。中には薄緑色の液体も入っている。何かのドラゴンに効く薬か、草か。効能もよく聞かされていないから説明のしようがない。せめて何の液体かさえ言ってくれればいいのに。
「で、用件はなんだ?」と聞かれた。聞きたいことを単刀直入に聞くだけだ。
「強制労働所……を知っていますか?」
「知らん、帰れ」
随分とあっさりとしているな。もっとも、具体的に聞かなかった俺も悪いのだが、俺自身焦っていてどれをどう聞こうか迷っていた。
「貴様ら人間に伝えることなどない、ゲオーニお前もだ。人間に肩入れしたドラゴンなど、同族として恥ずかしい」
そもそも、ヤツらは何故こんなにも人間を嫌っているのか。その理由を尋ねることにした。
「何故そこまで人間は嫌われているのですか?」と。嫌われているとされている人間本人がそのことを聞く、おかしな話だ。
が、赤いドラゴンはその理由を話してくれるそうだ。
「人間とモンスターが共存していた時代は確かにあった。それに、私たちも人間と共存しようと努力したこともあった! しかし、その頃から私たちは既に人間に嫌われていた。ドラゴンを崇める宗教はあったが、ほとんどの人間が、私たちを嫌っていた。嫌うどころではない、悪として殺しにかかるのだ。仲間も何体も殺された」
確かに、一本の塔に一匹のドラゴンが住み着くのなら、塔とドラゴンの数が合わない。明らかに塔の方が多い。
それに奴らも人間と共存したかったのか。しかし人間に恐れられては、説得という手段にも限界がある。ゲオーニの方の赤いドラゴンは、少しの間グルム先生の村で人間と共存できていたのだから、何かもっといい手段があったはずだ。
「私たちは人間を悪とみなし、この塔に閉じこもった。塔に近づく人間がいたら、命を奪う。やがて他モンスターがこの塔を訪れた。”仲間が人間に殺された”と聞いた、人間はいつまで経っても身勝手だ。次は他のモンスターを手にかけるか」
「それは、人間が洗脳されていただけだ」
「ゲオーニ、お前は黙っていろ。今はこの血に穢れた薄汚い人間と話しているのだ!」
思わぬ流れ弾を食らった。血に穢れた薄汚い人間と称された。いつもならここで剣を出して刺しているのだが、あいにく持っていない。盾も何も持ってきていない。
「このままでは、他のモンスターも被害を受けます。ドラゴンたちも範囲内、悪い心を持った人間に利用されて殺されます。俺たちはそれを止めるために動いていますが、本当にこのままでもいいですか?」
「どうやって止める? お前は悪意に染まった人間を殺せるのか? 同族を自らの手でやれるのか?」
一応、マキシミを自らの手で殺めたはずだ。他にも……手応えだけはある。恐怖心など微塵も感じない。好奇心はある。
「お前は不思議な目をしている。殺意と憎悪と破壊と興味と、はたまた絶望も希望も兼ね備えた目をしている。どんな人生を生き抜いたか分からないが」
ロックもそうだが、皆俺の目を見るや否や、変な例えをする。俺の目はそんなに変わっているか? 自分で見ても普通の目だ。
俺が寝ている間に記憶で見た、強制労働所の特徴をドラゴンに伝える。
「私たちは知っての通り、空を飛ぶことができる。過去には世界各地を飛び回ったが、大量の人間を保管しておく牢獄のような建物は知らない。有り得ないが、空中に浮いているなんてことはない」
「となると……地面の中か?」
「恐らくな、ゲオーニ。これだけしか伝えられない。もう去ってくれ」
「ありがとう、イザヴェラ」
「二度とその名前で呼ぶな、行け」
ゲオーニとイザヴェラ、二体のドラゴンの仲が少しでも修復されたのなら良かったが。
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「----ということがあった」
森の中、ドラゴンの前で皆に説明する。ロックもヘイトリッドも、ガイアさんもキミカもいる。シアンは村に残ってもらっている。
「あるのなら地下室。地下に巨大な労働所が隠されているに違いない。俺の中に眠っている何かが、そこで植え付けられたらしい」
あくまでも寝ていた時に思い出した記憶。夢と思われても仕方がない。が、彼らは信じてくれた。
「地下ってことは、普通には見つけられないよね? どうするの、ドラゴンで飛んでも見つけられないよ」とキミカ。
「それも国や都市に限定されていない、世界中からひとつの建物を見つけなければいけない」とロック。
「探すのに何十年かかるか、探し終えた頃にはもう……」とガイアさん。
どうするか、作戦が思いつかない。
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どんなに世界全体が晴れていても、この地だけはいつも曇っている。いつ雷が落ちるか分からない天気、ドラゴンの背中に乗っているだけでも、いつか雷に打たれる気がする。
「着いたぞ」
周りのドラゴンらはまた威嚇するように、鳴き声を上げた。この世の終わりかと思うほどの修羅場、だが俺たちは突き進む。リーダー格の赤いドラゴンのいる、並より高い塔に着陸する。
「また来たか、ゲオーニ」
赤いドラゴンが姿を現した。その顔には怒りがこもっている。俺はロックから受け取った白い包みを地面に置き、無表情のままこう言った。
「これはあの指輪を渡した人からの贈り物です。どうぞ」と。
赤いドラゴンは大きな爪で器用に開けると、そこには小さな瓶が入っていた。中には薄緑色の液体も入っている。何かのドラゴンに効く薬か、草か。効能もよく聞かされていないから説明のしようがない。せめて何の液体かさえ言ってくれればいいのに。
「で、用件はなんだ?」と聞かれた。聞きたいことを単刀直入に聞くだけだ。
「強制労働所……を知っていますか?」
「知らん、帰れ」
随分とあっさりとしているな。もっとも、具体的に聞かなかった俺も悪いのだが、俺自身焦っていてどれをどう聞こうか迷っていた。
「貴様ら人間に伝えることなどない、ゲオーニお前もだ。人間に肩入れしたドラゴンなど、同族として恥ずかしい」
そもそも、ヤツらは何故こんなにも人間を嫌っているのか。その理由を尋ねることにした。
「何故そこまで人間は嫌われているのですか?」と。嫌われているとされている人間本人がそのことを聞く、おかしな話だ。
が、赤いドラゴンはその理由を話してくれるそうだ。
「人間とモンスターが共存していた時代は確かにあった。それに、私たちも人間と共存しようと努力したこともあった! しかし、その頃から私たちは既に人間に嫌われていた。ドラゴンを崇める宗教はあったが、ほとんどの人間が、私たちを嫌っていた。嫌うどころではない、悪として殺しにかかるのだ。仲間も何体も殺された」
確かに、一本の塔に一匹のドラゴンが住み着くのなら、塔とドラゴンの数が合わない。明らかに塔の方が多い。
それに奴らも人間と共存したかったのか。しかし人間に恐れられては、説得という手段にも限界がある。ゲオーニの方の赤いドラゴンは、少しの間グルム先生の村で人間と共存できていたのだから、何かもっといい手段があったはずだ。
「私たちは人間を悪とみなし、この塔に閉じこもった。塔に近づく人間がいたら、命を奪う。やがて他モンスターがこの塔を訪れた。”仲間が人間に殺された”と聞いた、人間はいつまで経っても身勝手だ。次は他のモンスターを手にかけるか」
「それは、人間が洗脳されていただけだ」
「ゲオーニ、お前は黙っていろ。今はこの血に穢れた薄汚い人間と話しているのだ!」
思わぬ流れ弾を食らった。血に穢れた薄汚い人間と称された。いつもならここで剣を出して刺しているのだが、あいにく持っていない。盾も何も持ってきていない。
「このままでは、他のモンスターも被害を受けます。ドラゴンたちも範囲内、悪い心を持った人間に利用されて殺されます。俺たちはそれを止めるために動いていますが、本当にこのままでもいいですか?」
「どうやって止める? お前は悪意に染まった人間を殺せるのか? 同族を自らの手でやれるのか?」
一応、マキシミを自らの手で殺めたはずだ。他にも……手応えだけはある。恐怖心など微塵も感じない。好奇心はある。
「お前は不思議な目をしている。殺意と憎悪と破壊と興味と、はたまた絶望も希望も兼ね備えた目をしている。どんな人生を生き抜いたか分からないが」
ロックもそうだが、皆俺の目を見るや否や、変な例えをする。俺の目はそんなに変わっているか? 自分で見ても普通の目だ。
俺が寝ている間に記憶で見た、強制労働所の特徴をドラゴンに伝える。
「私たちは知っての通り、空を飛ぶことができる。過去には世界各地を飛び回ったが、大量の人間を保管しておく牢獄のような建物は知らない。有り得ないが、空中に浮いているなんてことはない」
「となると……地面の中か?」
「恐らくな、ゲオーニ。これだけしか伝えられない。もう去ってくれ」
「ありがとう、イザヴェラ」
「二度とその名前で呼ぶな、行け」
ゲオーニとイザヴェラ、二体のドラゴンの仲が少しでも修復されたのなら良かったが。
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「----ということがあった」
森の中、ドラゴンの前で皆に説明する。ロックもヘイトリッドも、ガイアさんもキミカもいる。シアンは村に残ってもらっている。
「あるのなら地下室。地下に巨大な労働所が隠されているに違いない。俺の中に眠っている何かが、そこで植え付けられたらしい」
あくまでも寝ていた時に思い出した記憶。夢と思われても仕方がない。が、彼らは信じてくれた。
「地下ってことは、普通には見つけられないよね? どうするの、ドラゴンで飛んでも見つけられないよ」とキミカ。
「それも国や都市に限定されていない、世界中からひとつの建物を見つけなければいけない」とロック。
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どうするか、作戦が思いつかない。
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