湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
2 / 159

(1)

しおりを挟む
「そう言う訳で、お前には早々に転校してもらう必要があるんだ。当然事情はわかるね?湯原君」

 職員室で、気弱そうな担任が見かけだけは申し訳なさそうに俺にこう言ってくる。

 事の発端は、この担任の指導力不足だと思うけど、もう今更どうしようもない。
 こうなったのは少し前のアレが原因だろうから……

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「おい、湯原!テメーのその目が気に入らねーんだよ。いつもいつも睨みつけやがってよ!偉そうにしてんじゃねーぞ?」

「湯原君。申し訳ないけど私もそう思うな。もう少し優しい表情できないかな?私、いつも睨まれて悲しいよ」

 高校一年で180cmとゴツイ体格もあってか、自分じゃどうしようもない吊り目についてあげつらってくる二人。

 毎日毎日本当に下らない事を良く飽きもせず出来るもんだ……と、ある意味感心出来る領域に達している。

 一人は直接的に文句を言って来る四宮しのみや 出流いずる
 俺に言わせれば、お前の無駄に染めた金髪の方が気に入らないが……

 そこに、あたかもアドバイスのように言ってきているのは、四宮の彼女である星出ほしいで 春香はるか

 こいつは靨や八重歯、奇麗な黒髪を一纏めにして一見清楚で見た目可愛らしく……実際、星出の性格を知らなければ惚れてしまってもおかしくない雰囲気を出している。

 まっ、本当のクソみたいな性格を知っている俺から見れば、吐き気を催す程邪悪な顔にしか見えないけど。

「これは元からの目だって、何度も言っているだろ?これ以上は変えようがない。そもそも、睨むも何も、二人を見たのも今日は今が初めてだ。余計な言掛かりは止めて貰いたいな」

 当然の事を言うが、ここで引き下がる程の頭は持っていないこの二人と、こいつらとつるんでいる同レベルの残りの二人。

「おいおい、湯原。せっかく星出がアドバイスしてくれているんだから、素直に聞いとけよ」

「本当、そうだよね。これ以上クラスの雰囲気を悪くしないでほしいな」

 四宮の腰巾着で、大して強くないのに喧嘩っ早い辰巳たつみ 英人ひでとと、辰巳の彼女の岡島おかじま 有希ゆきだ。

 辰巳の方も髪の毛は地毛ではなく茶色だが、その彼女である岡島も星出と同じく見た目は普通・・に見える。

 むしろ黒目黒髪のポニーテールで150cm程度の身長、更には少々垂れ目な事も有って、庇護欲がそそられると思う。

 もちろん、“と思う”と言うのは岡島の本当の性格をよく知っているから、第三者がぱっと見て感じると思う感想だ。

 こんな一方的に難癖をつけられるやり取りが毎日あるのだが、周囲は俺達に向かって冷めた視線を向けるだけ。

 特に一部……と言っても、こっちも常に四人でつるんでいる、ある意味真面目集団は、俺を含めて絡んできている四人に対しても明らかに不快そうな表情を浮かべている。

 俺としては巻き込まれているのだから、俺を含めて睨むのはお門違いだ。

「えっと、湯原君は優しいですよ?目も生まれつきだから、仕方がないと思いますけど」

 このクラスで唯一の味方は、160cmで俺と比べると非常に小柄で可愛らしい垂れ目の女の子、水野みずの 香織かおり

 席が離れているのに、毎日事が起こると必ず助け舟を出しに来てくれる。
 正直に言おう。この子は性格も良く、見た目も可愛い。

 つまり、俺がかなり気になる人であったりする。

「水野~、お前さぁ!何かコイツに弱みでも握られているのかよ?」

「そんな事は無いですよ」

 金髪四宮に言い寄られて、少し怯える水野の前に俺が入り込むのもいつもの通り。

 さらに言うなら、下らない言いがかりを咎めもしないで、本当に不快そうな視線を向けて来るあの四人もいつもの通りだ。

 俺の中では委員長と言ってもよさそうな風貌で眼鏡君の吉川よしかわ 幸次こうじ
 何故か七分刈りなのだが、最近知った所によると剣道部に所属している為らしい。

 もう一人の男は弓道部に所属している五分刈りの男、笹岡ささおか みつる

 そこに二人の女、別に付き合っていなさそう……と言うか、俺には一切関係ないから良く知らないが、噂によれば単純に友達らしいけど、

 藤代ふじしろ あやと、椎名しいな 理沙りさの合計四人の視線が突き刺さる。

 何故か四宮達も吉川達には絡まないし、吉川達も四宮達に何かを言う事も無ければ、関与しようともしない。

 無実の罪と言っても良い俺と、仲裁に入ってくれている水野が悪いと言わんばかりのこのクラスの雰囲気に嫌気がさしていた所で、何を思ったのか、四宮がいつもと違う行動に出た。

「お前もさ、何いつも庇いに来ているんだよ?鬱陶しいぞ!」

 そう言いつつ、俺の背後にいる水野に手を出そうとしたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...