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 突然行動を停止した二人の猫獣人は、湯原と水野にこう告げる。

「カーリ様、セーギ様、あっちから魔物が来るの」

「こっちに退避した方が良いの」

 何とこの二人、レベル1の二人では到底感知できない魔物の気配をいち早く感じ取り、更には安全にやり過ごせる対策まで提示して見せた。

「凄いじゃないか、イーシャ、プリマ。流石だ!」

 想定していなかった力を見せつけられ、指示されている通りに動きながらも、小声で二人を心から褒め称える湯原。

「ご主人様を守るのは、私達の使命なの」

「こんなに優しいご主人様、絶対に失いたくないなの」

 猫獣人の二人も湯原と水野に恩義を感じているらしく、奴隷契約をしていない状態でも主人と呼び、少しでも助けになる様に必死で小さな体を動かしている。

 実際、魔物のレベルが2から3程度しか出現していなかったと聞いていた湯原だが、いくら日本で空手家として相当な強さを持っていたとしても、命のやり取り、更には人以外を相手にするとなると話は別だ。

 相当な覚悟で進んでいたのだが、これでかなり楽をできるのではないかと安堵している。

 その思いは正しく、森の中に入って方向が分からなくなっているのだが猫獣人の二人には関係ないらしく、夜も夜で、積極的に見張りをしてくれたのだ。

「今日はここが良いなの」

「魔物の匂いも気配もないなの」

 日が落ち始めた頃、あぜ道から少々外れた位置に湯原と水野を誘導して野営場所を提案する。

 すっかり二人の能力を信頼している湯原と水野は、もとより自分達ではどこが安全な場所なのかわかりようもないので、素直に提案を受け入れる。

「ありがとう、イーシャ、プリマ。助かるよ」

「二人は凄いですね。私には、気配が分かるなんて・・・・・・うーん、今目の前にいるのに、目を瞑ったら何もわかりません」

 こうして四人は腰を下ろすが、火を起こす事は無い。

 先日の野営時に、イーシャとプリマからこう言われたからだ。

「ご主人様。火は使わない方が良いなの。せっかく魔物の気配がないのに、火におびき寄せられてしまうかもなの」

 少しずつではあるが、背負っている食料を消費して荷物を軽くしつつ過ごしている。

 当然夜の見張りは交代にしており、時折魔物の気配を察知して移動する事は有っても、誰一人として怪我をする事なく順調に歩を進めていた。

 脳内のカウントが“本日中”と言う何とも言えない状態になり、時間によるカウントダウンが始まった時には、四人の前には縁結びの聖地と言われている混沌の時代のダンジョン跡地が見えていた。

 時折街道っぽいあぜ道から外れた時もあったが、これだけ進んでも他の人に一切会う事がなかったので、ダンジョン生成期限に間に合わなかった場合、適当な場所で生成するしかないと少々諦めていたところ、最高のタイミングで到着したのだ。

「漸く到着。とは言え、イーシャとプリマのおかげで相当楽が出来たよ。本当にありがとうな」

「「エヘヘなの」」
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