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「イーシャ、私達がご主人様を絶対にお守りするなの!」

「もちろんなの。でも、食事……絶対に、私達がいるせいなの!」

 湯原と水野は否定したが、どう見ても食い扶持が突然増えた為に食事量を抑えている事位は、幼い二人にも理解できていた。

 あの場で何を言っても湯原と水野は認めてくれないだろうと思って、黙っていたのだ。

 湯原と水野は互いのダンジョンの違いを詳しく調べるために動いており、邪魔にならないように、且つコアと二人を守れるようにダンジョン入り口にいるイーシャとプリマは、今朝の食事の時の話についてどうするかを話している。

「あれだけ素敵なご主人様、失う訳には行かないなの」

「どの位、食事が足りないと思うなの?」

 自分達が食べる一月分だと言う事は少し考えればわかりそうなものだが、やはり少女であり、直ぐにはそこまで出てこない。

「……じゃあ、今日は私がご主人様の短刀を使って、食べられそうな獲物を狩って来るなの。その間、プリマは二人のご主人様を守るなの」

「わかったなの。絶対に守るなの」

 自分の場所を守る為、自分の場所を作ってくれている湯原と水野を守る為、幼い二人は決意して早速動く。

 この場で湯原と水野に伝えなかったのは何かをしている二人の邪魔をしたくない事と、止められては困ると思ったからだ。

 獣人族は基本的には身体能力が極めて高い。

 種族によっては、空を飛べる種族もいるほどだ。

 この場所に到着するまでも、その種族特性を生かして危険な魔物から湯原と水野を守りぬいて見せた事から、その能力の高さは証明されている。

 一応この周辺には危険な魔物はおらず、相当離れた場所にレベル2程度の存在がある事を理解しているイーシャは、そこに向かって慎重に進んでいる。

 イーシャの技量では、魔物の種類……空を飛べる形状か、地面にいる魔物か、その辺りはこの距離では把握できないので、獲物に逃げられないように慎重に進む。

 やがてイーシャには、木の上で羽を休めている鳥型の魔物が見えた。

『たしか、バクバード。あれは美味しい!』

 一発目で食べられる魔物を見つけられた事に歓喜するが、未だ仕留めている訳ではないので慎重さを欠く事はなく、内心で喜びつつも歩を進める。

 これ以上は気配を察知される可能性があると考えた場所迄進むと、短剣をバクバードに投げるイーシャ。

……ヒュン……ガサガサ……

 その短剣はブレる事無くバクバードの頭に刺さり、声を出す暇もなく落下する。

「やった。大成功!」

 イーシャとプリマは王都に販売目的で連れていかれる際に道中の護衛、見張り、更には無理な食料調達をさせられており、その際に両腕に重傷を負ったのだ。

 その傷を治す事もせずに化膿した状態で、帰りも同じ様な環境に置かれていた。

 その結果個人のレベルは5までに達しており、レベル2のバクバード程度は難なく始末する事が出来たのだ。

 既に慣れたもので、血抜きをすると獲物を担いでダンジョンに戻る。

「やったななの。これで数日は持つなの!」

「お疲れなの。じゃあ、それを食べ終わったら次は私が行くなの」

 未だダンジョンの検証を行っている二人をよそに、いつの間にか立派な獲物を得ていた。

「生成したてだからか、違いはないね」

「そうですね。でも、きっとこれから個性が出てくる……のでしょうか?」

 漸く比較を終えた二人がダンジョンから出てくる。

 流石は寂れた観光名所だけあって、訪問してくるような存在の気配は一切感じていない為に、周囲を警戒しているイーシャとプリマは、笑顔で二人を迎える。

「イーシャ、プリマ……それ、どうしたんだ?」

「狩って来たなの!」

「自分の分は、自分で狩れるなの。ご主人様達にも、しっかり食べてもらいたいなの」

 立派な鳥が突然あるのだから何事かと思ったのだが、どうやら自分達が食事の量を減らしている本当の理由を知られていたようで、恥ずかしいやら嬉しいやら、何とも言えない気持ちになる湯原と水野。

「凄いじゃないか。でも、絶対に安全だけは確保してくれよ?って、ごめんな。イーシャとプリマばかりに無理をさせて」

「そうですね。二人には、感謝してもしたりません。でも、セーギ湯原君の言う通り、絶対に無理はしないでくださいよ?」

「「はいっ!なの」」

 その後、生活魔法全般を少しだけ使える二人の猫獣人によって焼かれた鳥を、皆で美味しく頂く事が出来た。

 その日の夜、湯原と水野はダンジョンマスターとして変化が有った事に気が付く。
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