湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
62 / 159

(61)

しおりを挟む
「イーシャ、うるさくて眠れないなの」

「確認しに行くなの。チェーさんも大丈夫なの?」

 この周辺だけを監視しているチェーは、睡眠の経験がなく二人とは違って音によって眠れないと言う事実は理解できていなかったので、素直に同行する。

 夜の森の中でも、元々持っていた猫獣人の特性なのか流れるような動きで音の発生源に向かっている二人は、その震源地が視認できるギリギリの位置で止まる。

 震源地では共に金髪金目の女性二人が激しい戦闘を繰り広げており、その力、その容姿から、既にハライチやミズイチから教えて貰っている召喚冒険者であり、レベル40を超えている者だと判断する二人。

 いくら人族の中で相当強い分類になっているレベル18と言え、今の二人があの戦闘に巻き込まれたら塵すら残らないだろうと判断し、もう少し距離を置く事にした。

 何故戦闘をしているのか、何故この場所にいるのか、知りたい事はあるのだが、聞けるような状況ではなく、二人の冒険者は魔法を行使しながらも共に剣術を最も得意とするようで、手に持っている剣による攻撃を繰り返している。

 レベル40超えの冒険者である為に互いに相当な修羅場を潜り抜けてきたようで、レベル18の二人では到底追い切れるものではない。

「アンタは姉妹揃って穴に籠って出てこないかと思ったわ。せっかくここで出会えたから、糧にしてあげる」

「冗談じゃない。突然襲い掛かってきてふざけてるの?」

 高速戦闘中でも会話だけは何とか拾えるので、情報収集の一環だと思い必死で聞いているのだが、継続して行われている攻撃の中から聞こえて来るに、一方の女性には姉がおり、どうやらダンジョンマスターとして活動しているようだと言う事を突き止めた。

 仲の良い姉妹だけに、対極にある存在が共存できた稀有な例らしい。

「ギャー……くっ!アハハハ、なんちゃって!!」

「あ……ぐぁ……」

 両者の実力は拮抗していたらしく、一方の女性は右腕を肘下から切断されて最も火力のある剣術を効率的に使えなくなったと判断したもう一方の女性はそこで油断したのか、炎魔法を真面に食らってもがきながら倒れる。

「アハハ、騙された?この手、少し前にヘマしてね、自分の手じゃないんだよ?」

 肘下が無くなっている部分を指さして、ヘラヘラ笑いながら燃え盛る炎に呑まれている女に話しかけている人物は、興味を失ったかのようにこの場を立ち去る。

 彼女は以前吉川達を鍛えて最後に裏切られ、右肘下を切断された召喚冒険者の信子三原だ。

 残されたのは、未だもがきながら何とか炎を消そうとしている女性だけ……

「お姉ちゃん!!絶対に一人にはさせない!!早く消えて!!消えてよ!!」

 普通の炎ではなく、魔法による炎であるが故にそう簡単には消える事の無い炎。

 手っ取り早いのは術者を消す事だが……この状態ではそんな事は出来ない女性は、必死で地面を転がりながら消火しようと努めている。

 仮にこの女性が水魔法を持っていれば魔法を行使する人物のレベルと熟練度に依存するが、消火する事は出来るのだが、残念ながらそれも出来ないようでもがき苦しんでいる。

 その様子を見て、どうすれば良いのかわからないイーシャとプリマ。

 もちろん二人もこの炎魔法を消す程の力はなく、レベルに物を言わせて強化したのは身体強化であり、使える魔法は精々生活魔法レベルの水が出せるのみ。

「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

 ダンジョンマスターである姉の事を呼びながら動きが鈍くなる冒険者を見て、イーシャとプリマは目の前のこの女性を助けたいと思い、思わず飛び出して必死で生活魔法の水を出し続ける。

 しかし、レベル40超えの炎魔法の前には何の効果もなく瞬時に蒸発してしまう。

「しっかりするなの!!」

「頑張るなの!!」

 それでも必死に得意ではない魔法を行使する二人に触発されたのか、二人の左手首に巻き付いていたチェーが、炎に包まれている人物に巻き付いて即座に炎魔法を捕らえて消去して見せたのだ。

 だが、分裂体でレベルの高い者が行使した魔法を除去したために、既にぐったりとしているチェーに、異常状態火傷を除去する程の力は残っていない。

「う……」

 漸く炎は消えたが、その姿は真っ黒で辛うじて息をしている状態の女性。

 ここまで来て死なせるわけにはいかないと思い、イーシャとプリマは迷わず鞄からビー特性の薄めていない原液状態の回復薬を使う。

 一本目は外から見える範囲を修復、特に口周りを回復して二本目の回復薬を飲めるようにする為に、横たわって動けない女性に優しく垂らす。

 本来この回復薬を飲めば内部と外部の損傷も回復する事が可能だが、飲めないのであればこうする他ないのだ。

 これで何とか口に回復薬を無理なく含ませる事が出来る様になったので、二本目の回復薬を徐々に口に入れる。

 入れた傍から回復するので、一気に体力も含めて回復した女性は黒こげの服のまま猫獣人の二人に土下座の勢いで涙ながらにお礼を伝える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

処理中です...