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 同盟自体も互いが視認できる状態でなければ実行できず、何時かは相手方のダンジョンに向かう必要があるので、多少安全が担保できる今のうちに行動を起こしていた。

 今回互いが出してきたのは、共に一番レベルを上昇させている<隠魔族>。

 仮に失っても同族がもう一体いる事、このレベルであれば弦間の眷属に対しても遅れはとらないだろうと言う思いがあった。

 既に調査を開始してから数週間が経過しており、小さな魔物の一部が規則的にとある方向に飛び去る事を確認できていた。

 恐らく得られた情報を持ち帰る為だと判断した二人は、<淫魔族>に対して調査継続の指示を出していたのだが、その調査結果の内容までは分からない淀嶋と水元。

 実は魔物が集めていた情報は、二人が恐らく出して来るだろう眷属の行動も調査内容に含まれており、弦間は、淀嶋と水元の<淫魔族>二体が自らのダンジョンの方に近づいてきていると報告を受けていた。

 その結果、二体の<淫魔族>を始末するべくアリとウマを差し向けたのだ。

 両眷属ともレベル60であり、<蟻族>は気配察知、気配遮断、地中移動、麻痺毒、自らの体で少々の欠損であれば自然回復、強靭な顎によっての破壊等々、相当な強さを持っている。

 <馬族>も気配察知を持ち、屈強な力、味方の強化、更には土魔法を行使できる状態にまで至っており、正直レベルが格下の<淫魔族>の敵う相手ではない。

 両種族とも性別を指定せずに呼び出せる眷属であり、<淫魔族>の最も強い攻撃は異性を夢の世界へ誘うのだが、性別不詳のこの二体には一切効果を示す事はなく、レベル5相当の炎魔法とレベル相当の身体能力で戦闘する他ない。

 戦闘を開始する前から勝敗は決しており、既に<淫魔族>の二体を察知した弦間の眷属は、ウマがアリの能力を底上げして待機し、アリは気配を消したまま地中を伝って<淫魔族>に近接する。

 足元に微妙な違和感を覚えた時にはもう遅く、既に足の裏をアリによって噛まれて麻痺毒を注入された後だ。

 一体が突然倒れたので周囲を警戒する<淫魔族>だが、地中に潜っているアリを発見する事は出来ず、一体目と同じ末路を辿り、麻痺している状態の<淫魔族>二体をウマが軽く蹴り飛ばして瀕死にして、弦間のダンジョンに戻る。

 その後に瀕死になっている<淫魔族>二体を湯原と水野の眷属が発見し、ダンジョンに持ち帰って吸収したのが、レベル40近辺まで急上昇した真相だ。

 既にミズイチ達から指摘が合った通りに、この時に湯原と水野の眷属が先にアリやウマと遭遇していた場合、全てが消滅させられていただろう。

 紙一重ではあるものの、最終的には事態を大きく好転させる事が出来たのだ。

 その時の淀嶋と水元は、眷属との繋がりが切れた事により<淫魔族>の死亡を感じ取り、やはり弦間が自分達を狙っているのだと確信した。

 眷属は二度と呼び出したり復活させたりする事は出来ないため、この事態を受けて内包魔力を使用して戦力補強に取り組む事にしたのだ。

 選択の一つとして、最近召喚されたダンジョンマスターを強制的に配下にする事。

 碌に調査もせずに眷属に与えられる<保有レベル>と内包魔力を定期的に搾取する事にした契約として、膨大な内包魔力を使用したのだが……今の所、四宮と辰巳のダンジョンには大きな動きはなく、<保有レベル>もゼロのままであり、内包魔力も増加していない。

 四宮は金、辰巳は茶に髪の毛を染めており、実は淀嶋と水元は、その外見からレベル40以上なのかと期待していた節があるのだが、現実はそう甘くはなかった。

 投資と効果のバランスが全く取れておらず、かと言って格下の二人を始末しても何のうまみもないので耐える日々が続いていたのだが……最大レベルの眷属を始末されて暫く経っても変化がない状況に業を煮やし、コバエの動きも活発化してきた事から、二人のダンジョンマスターに鞭を入れる事にした。

 早速自らの魔物のコバエに特殊な音声伝達の魔道具を装備した貴重な一体を飛ばそうとしたのだが、転移魔法陣Cを設置していたことを思い出して、淀嶋と水元二人が揃って先ずは四宮のダンジョンのコアルームに飛ぶ事にした。

 その先には……コアルームでだらけ切っている四宮がおり、その姿を見て呆れた水元が即辰巳のダンジョンに向うと、こちらも同様の光景であった為に強制的に四宮のダンジョンコアルームに集合させた。

 突然現れた主とも言えるダンジョンマスターの淀嶋と水元のその表情は怒りに満ち溢れ、四宮と辰巳は何か悪い事をしたのか真剣に考えているのだが、何も思い浮かばなかった。

「おぬしら、良い身分だのう?何も活動せずにダラダラと……おぬしらを助けるために、こちらがどれ程内包魔力を使ったか分からんバカでもあるまい?」

「本当だよね。魔物まで準備してあげているのにさ?得られた内包魔力は、あの時の冒険者を始末した時だけ。ふざけているんだよね?淀嶋ジィ、もうどうでもよくなったから、始末しちゃおうか?」

「「ひぃ~~~~~」」

 ここでようやく契約に思い至り、内包魔力と<保有レベル>の五割程度を差し出す事になっていた事を思い出す。

 しかし二人の頭の中ではない物はないので、このままで問題ないと言う軽い気持ちで生活していたのだ。

 完全に怯え切っている二人を見て、本当に失敗したと後悔するのだがもう遅い。

「四日猶予をやるわい。配置している魔物も好きに使って良い。内包魔力を5万以上、<保有レベル>を10以上収めなければ……わかるじゃろう?」

「あっ、僕の方も同じでね?わかるよね?」

 今までさぼっていたツケが来ただけなのだが、四宮と辰巳にとっては完全な死刑宣告に聞こえてしまった。
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