4 / 64
ダンジョン攻略再開(1)
しおりを挟む
ダンジョンを攻略した者……つまりは魔族になっている者達は、自分の安全のために攻略者である事を秘匿して、この世界で人族として生活しているに違いない。
そんな俺の胸中を知らずに、ロイエスは場所を変えると勇者パーティー時代の話をしてくれるし、もちろん他のメンバーも同席して、酒を飲みつつの歓迎会?をしてくれているのだ。
「そんでよ~、俺も師匠一行の強さには全くついて行けなくてよ。これなら初の完全攻略が見えて来るかと思ったんだがな~。突然引き返したんだよ。訳が分からねーよ」
どうやら魔王が管理しているとされるダンジョン攻略を順調に行っているにも拘らず、勇者パーティーは撤退したようだ。
ロイエスの知らないところで勇者パーティーの他のメンバーが疲弊していた可能性も捨てきれないが……真の理由は当人達にしかわからないだろうな。
「で、地上に出て暫くしてから再度攻略かと思うだろ?でもな、数日経って師匠が言うにはよ~、いつの間にか魔王は始末したっていうんだぜ?酷いと思わねーか?」
どうやら撤退も作戦の内であったようで、事の詳細を知らされなかった事に不満があるようだ。
そんな姿を見て、ロイエスパーティーの一人であるバウサーがこうアドバイスしてくれた。
「イジス、ロイエスの愚痴はいつもの事です。軽く聞き流しておけるようにしないと、酔っぱらうと毎回同じ話ですからね」
右も左も分からないパーティーについて、少しずつ教えてくれたのだ。
「よし、そんじゃ~行くか。ゆっくり休めたしな」
過去の思い出はここまでにして、ロイエスのその声を聞いて少しでも魔力の消費を抑えるために結界の魔道具をすぐに止めてバッグにしまう。
実は俺、このパーティーにいれば、その内どこかのダンジョンを攻略できるんじゃないかと思っている。
そうすれば、俺のこの知識が正しいかどうかの検証も出来るはずだと期待している。
残念なことに、俺の知る限り他のパーティーでは攻略は夢のまた夢、当然俺一人では浅い層でも死亡する可能性が高い……いや、確実にあの世行だろうな。
そんな思いで再びロイエス達の後ろを警戒しつつ、ついて行く。……しかし熱い。
そしてその日の昼過ぎ……正確な時間は分からないが、俺位の荷物持ちになるとダンジョンの中でもある程度の時間は分かるのだが、目的の五階層分攻略の内、三階層目を目前にしたところで精根尽き果てた一行が倒れている。
実際に攻略を開始してからわずか数時間。
歴代最少攻略時間更新と言う程、短い時間しか攻略できなかったのだ。
それ程攻略難易度は劇的に上昇し、その疲労によって結界の魔道具の範囲内で既に意識を飛ばしている。
そして残された元気な俺。
結界の外にはかなり強そうな雰囲気の魔物が数体おり、結界に攻撃を仕掛けている。
かなりの強度を持つ結界だが、補修が必要なほどのダメージを受けると再び多量の魔力を消費する。
すでに充填されている魔力は残り半分に近づいている上に、目も前の魔物による攻撃で、今尚目に見えて減少しているのだが、今この場でロイエス達を起こしたとしても体力や魔力が一切回復していない状態であるために、何かをする事は出来ない。
そうなると、取れる手段は一つ。
ロイエス達が回復した上で目覚めるのを待つしかないのだ。
戦闘力がない俺が、一人で目の前の魔物の恐怖におびえながらパーティーメンバーの目覚めを待つ。
これは力がない俺には中々に辛い作業ではあるのだが、数時間経過後に漸くロイエス達の目が覚めた。
「目覚めたか、ロイエス。起きて早々悪いが、早めにこいつらを何とかしてもらえないか?」
明らかに魔道具の魔力の残りが少なくなっているので、原因となっている目の前の魔物の始末を依頼する。
「まて、まだ少々魔力が戻っていない……おい!」
少々ボーッとしていたロイエスだが、俺の意図を正確にくみ取ってくれたようだ。
彼の目は、俺達を中心に少々狭い範囲を囲うように置かれている魔道具に向けられている。
この魔道具を使用しているのは俺だが、所有者であるロイエスも状態は即把握出来た様なので、これならば説明の必要はないだろうな。
……と思っていたのだが、ロイエスの口からは思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前!前回の休憩時には半分以上の魔力があったはずだ。それを……今はもう二割切っているじゃねーか!ボーっと何してやがった!」
その言葉を聞いて、バミア、ロペス、バウサーの三人の厳しい視線が俺に向く。
「いや、待ってくれ。俺はなるべく魔力の消費が無いように徐々に範囲を狭めていった。これ以外に俺にできる事なんてないだろう?」
「あ~、ふざけんな!俺達をすぐに起こせばいいだろうが!」
これにはさすがに俺も頭に来た。
「そんな事できる訳無いだろうが!お前らは魔力も体力もなく、倒れたんだよ。そんな状態のお前らを起こして何が出来るんだ!少しでも早く回復させるために、この恐怖を俺一人で耐えたんだ!」
そんな俺の胸中を知らずに、ロイエスは場所を変えると勇者パーティー時代の話をしてくれるし、もちろん他のメンバーも同席して、酒を飲みつつの歓迎会?をしてくれているのだ。
「そんでよ~、俺も師匠一行の強さには全くついて行けなくてよ。これなら初の完全攻略が見えて来るかと思ったんだがな~。突然引き返したんだよ。訳が分からねーよ」
どうやら魔王が管理しているとされるダンジョン攻略を順調に行っているにも拘らず、勇者パーティーは撤退したようだ。
ロイエスの知らないところで勇者パーティーの他のメンバーが疲弊していた可能性も捨てきれないが……真の理由は当人達にしかわからないだろうな。
「で、地上に出て暫くしてから再度攻略かと思うだろ?でもな、数日経って師匠が言うにはよ~、いつの間にか魔王は始末したっていうんだぜ?酷いと思わねーか?」
どうやら撤退も作戦の内であったようで、事の詳細を知らされなかった事に不満があるようだ。
そんな姿を見て、ロイエスパーティーの一人であるバウサーがこうアドバイスしてくれた。
「イジス、ロイエスの愚痴はいつもの事です。軽く聞き流しておけるようにしないと、酔っぱらうと毎回同じ話ですからね」
右も左も分からないパーティーについて、少しずつ教えてくれたのだ。
「よし、そんじゃ~行くか。ゆっくり休めたしな」
過去の思い出はここまでにして、ロイエスのその声を聞いて少しでも魔力の消費を抑えるために結界の魔道具をすぐに止めてバッグにしまう。
実は俺、このパーティーにいれば、その内どこかのダンジョンを攻略できるんじゃないかと思っている。
そうすれば、俺のこの知識が正しいかどうかの検証も出来るはずだと期待している。
残念なことに、俺の知る限り他のパーティーでは攻略は夢のまた夢、当然俺一人では浅い層でも死亡する可能性が高い……いや、確実にあの世行だろうな。
そんな思いで再びロイエス達の後ろを警戒しつつ、ついて行く。……しかし熱い。
そしてその日の昼過ぎ……正確な時間は分からないが、俺位の荷物持ちになるとダンジョンの中でもある程度の時間は分かるのだが、目的の五階層分攻略の内、三階層目を目前にしたところで精根尽き果てた一行が倒れている。
実際に攻略を開始してからわずか数時間。
歴代最少攻略時間更新と言う程、短い時間しか攻略できなかったのだ。
それ程攻略難易度は劇的に上昇し、その疲労によって結界の魔道具の範囲内で既に意識を飛ばしている。
そして残された元気な俺。
結界の外にはかなり強そうな雰囲気の魔物が数体おり、結界に攻撃を仕掛けている。
かなりの強度を持つ結界だが、補修が必要なほどのダメージを受けると再び多量の魔力を消費する。
すでに充填されている魔力は残り半分に近づいている上に、目も前の魔物による攻撃で、今尚目に見えて減少しているのだが、今この場でロイエス達を起こしたとしても体力や魔力が一切回復していない状態であるために、何かをする事は出来ない。
そうなると、取れる手段は一つ。
ロイエス達が回復した上で目覚めるのを待つしかないのだ。
戦闘力がない俺が、一人で目の前の魔物の恐怖におびえながらパーティーメンバーの目覚めを待つ。
これは力がない俺には中々に辛い作業ではあるのだが、数時間経過後に漸くロイエス達の目が覚めた。
「目覚めたか、ロイエス。起きて早々悪いが、早めにこいつらを何とかしてもらえないか?」
明らかに魔道具の魔力の残りが少なくなっているので、原因となっている目の前の魔物の始末を依頼する。
「まて、まだ少々魔力が戻っていない……おい!」
少々ボーッとしていたロイエスだが、俺の意図を正確にくみ取ってくれたようだ。
彼の目は、俺達を中心に少々狭い範囲を囲うように置かれている魔道具に向けられている。
この魔道具を使用しているのは俺だが、所有者であるロイエスも状態は即把握出来た様なので、これならば説明の必要はないだろうな。
……と思っていたのだが、ロイエスの口からは思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前!前回の休憩時には半分以上の魔力があったはずだ。それを……今はもう二割切っているじゃねーか!ボーっと何してやがった!」
その言葉を聞いて、バミア、ロペス、バウサーの三人の厳しい視線が俺に向く。
「いや、待ってくれ。俺はなるべく魔力の消費が無いように徐々に範囲を狭めていった。これ以外に俺にできる事なんてないだろう?」
「あ~、ふざけんな!俺達をすぐに起こせばいいだろうが!」
これにはさすがに俺も頭に来た。
「そんな事できる訳無いだろうが!お前らは魔力も体力もなく、倒れたんだよ。そんな状態のお前らを起こして何が出来るんだ!少しでも早く回復させるために、この恐怖を俺一人で耐えたんだ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる