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バミアとの再会(1)
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<水の都>ダンジョン下層で、薄汚れた<聖女>候補のバミアが何とか辛うじて命を繋げていた。
「お久しぶりですね。あなたの心を映し出すかのように汚らしい見た目になっているのは予想通りです」
突然目の前に現れたミスクが強烈な先制攻撃をかましてきたのだが、バミアは文句を言う事も出来はしない。
万が一にもミスクの機嫌を損ねれば、体の中で間違いなく生息しているデヒルによって、生きたまま内蔵が食い荒らされるからだ。
最悪は生きるか死ぬかのギリギリの痛みを延々と与えられる可能性すらあるので、大人しくする他ないバミア。
「今日はあなたに良い知らせです。あなたと同じくとてつもなく薄汚い心を持ったロイエスパーティーが、本物の<聖女>の称号を持つ元勇者パーティーのミハルを連れてこの<水の都>に侵入しました。彼ら一行の目的地は会話から察するに四階層ですから、貴方をそこに送り届けます。その後はあのパーティーに再び所属して、独自の方法で復讐をすると良いでしょう。もちろん私達は常にあなたを監視していますので、悪しからず」
「……ですが、万が一にも再びここを攻略する依頼を受けたらどうすれば良いのでしょうか?」
ここまでくればどのようにしてこうなったかは一切不明なのだが、ミスクが<水の都>に属する人物になっていると言う事は疑いようがない。
そして、以前自分達がミスクと同様に惨たらしく切って捨てた存在であるイジスも同じく<水の都>に属する者……いや、今迄の態度から察するに、ミスクと比較すると遥かに上位の存在である事は理解できているバミア。
その人物に敵意を向ける事ができないバミアは、<水の都>を攻略すると言う行為を行った際の自分の中にいるデヒルがどうなるかが心配で仕方がなかった。
最早人格はすっかり変わっており、オドオドしながらも饒舌に話す事が出来るようになっていた。
「あなた方程度であれば、こちらが最大限手加減をした状態で四階層に侵入するのがせいぜいです。ですから、その程度ではこちらに悪意があるとは判断しませんよ。それ以上の階層に進む場合でも、特に何かをする事はありません。安心してください。ですが、あなたの復讐が一切行われていないと判断した時には、あなたの生存価値は全く無いと判断します」
ここだけを聞けば願ってもない話なので、黙って了解の意を示すバミア。
当然ミスクとイジスの復讐対象には自分自身、バミアが含まれている事位は認識しているのだが、そこについてはこの際深く考える事は止めにしたのだ。
「そうそう。あなたの態度から察するに、私とイジス様がこの<水の都>に関する人物だと思っているのでしょう?それは正しいです。ですが、その情報を漏らした場合でも……わかりますね?」
「は……はい」
当然の制約を追加される。
「では精々頑張ってください。四階層であのパーティーに遭遇した時点で貴方に対する魔物の攻撃禁止は解除されますから、そのつもりで。別に私としてはあなたがその攻撃で死のうがどうでも良いですから」
氷の様な表情で冷徹な言葉を投げられたバミアは、何かを返そうと思う間もなく視界が切り替わった。
本能的に四階層である事を把握したバミアは周囲を確認すると、少々離れた位置に上層階に続く階段が見えている。
三階層にまで移動した方が身の安全は保障されるのだが、ロイエス達が到着前に四階層から移動して良いかは聞く暇がなかったので、この場でロイエスパーティーの到着を待つ事にした。
その間、四階層に生息している魔物が数多くバミアの近くを通るのだが、未だロイエスパーティーが到着していないためにミスクの宣言通りに魔物がバミアを攻撃する事は一切無かった。
今迄深層の魔物の脅威にさらされていたバミアは、勝利できるかは別にして浅層の魔物程度では怯える事は無くなっていた事だけは収穫だ。
その為に、周囲の状況を確認できるほどの余裕が出来ていたのだ。
「す……凄い」
少し前にいた階層では明かりが殆ど無い為に周囲の状況を把握する事が出来ず、ひたすら食料が現れる場所の近くで大人しくしていたバミアだが、送られたこの階層は比較的明るいために周囲が容易に確認できるので、彼女の視界の中には、壁、天井、所々地面にも見た事もないような鉱石が溢れていたので、驚愕する。
想像になるのだが、こぶし大程度の大きさの鉱石であったとしても数年は遊んで暮らせそうな程貴重な物に見えている。
復讐を行うにもお金が必要だと判断したバミアは、その一部をポケットにしまい込む。
ロイエスパーティーと遭遇した後では、この周囲にいる魔物が一斉に自分を含めて攻撃してくる事が予想できるので、余裕のあるうちに拾っておこうと思ったのだ。
そして、階段の近く……魔物がほとんど存在しない場所に移動してロイエス達の到着を待つ。
どれ程この場に留まっていたのだろうか……既に下層でかなりの長時間、時間もわからない状態で留まっていたために、多少待たされてもなんとも思う事が無くなったバミアは、何を考えるでもなくボーッと階層を見つめている。
やがて階段の先から、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
そう、ロイエス達だ。
彼らは、まさかこの先で死亡したと思っているバミアが待ち構えているとは夢にも思っていない。
「お久しぶりですね。あなたの心を映し出すかのように汚らしい見た目になっているのは予想通りです」
突然目の前に現れたミスクが強烈な先制攻撃をかましてきたのだが、バミアは文句を言う事も出来はしない。
万が一にもミスクの機嫌を損ねれば、体の中で間違いなく生息しているデヒルによって、生きたまま内蔵が食い荒らされるからだ。
最悪は生きるか死ぬかのギリギリの痛みを延々と与えられる可能性すらあるので、大人しくする他ないバミア。
「今日はあなたに良い知らせです。あなたと同じくとてつもなく薄汚い心を持ったロイエスパーティーが、本物の<聖女>の称号を持つ元勇者パーティーのミハルを連れてこの<水の都>に侵入しました。彼ら一行の目的地は会話から察するに四階層ですから、貴方をそこに送り届けます。その後はあのパーティーに再び所属して、独自の方法で復讐をすると良いでしょう。もちろん私達は常にあなたを監視していますので、悪しからず」
「……ですが、万が一にも再びここを攻略する依頼を受けたらどうすれば良いのでしょうか?」
ここまでくればどのようにしてこうなったかは一切不明なのだが、ミスクが<水の都>に属する人物になっていると言う事は疑いようがない。
そして、以前自分達がミスクと同様に惨たらしく切って捨てた存在であるイジスも同じく<水の都>に属する者……いや、今迄の態度から察するに、ミスクと比較すると遥かに上位の存在である事は理解できているバミア。
その人物に敵意を向ける事ができないバミアは、<水の都>を攻略すると言う行為を行った際の自分の中にいるデヒルがどうなるかが心配で仕方がなかった。
最早人格はすっかり変わっており、オドオドしながらも饒舌に話す事が出来るようになっていた。
「あなた方程度であれば、こちらが最大限手加減をした状態で四階層に侵入するのがせいぜいです。ですから、その程度ではこちらに悪意があるとは判断しませんよ。それ以上の階層に進む場合でも、特に何かをする事はありません。安心してください。ですが、あなたの復讐が一切行われていないと判断した時には、あなたの生存価値は全く無いと判断します」
ここだけを聞けば願ってもない話なので、黙って了解の意を示すバミア。
当然ミスクとイジスの復讐対象には自分自身、バミアが含まれている事位は認識しているのだが、そこについてはこの際深く考える事は止めにしたのだ。
「そうそう。あなたの態度から察するに、私とイジス様がこの<水の都>に関する人物だと思っているのでしょう?それは正しいです。ですが、その情報を漏らした場合でも……わかりますね?」
「は……はい」
当然の制約を追加される。
「では精々頑張ってください。四階層であのパーティーに遭遇した時点で貴方に対する魔物の攻撃禁止は解除されますから、そのつもりで。別に私としてはあなたがその攻撃で死のうがどうでも良いですから」
氷の様な表情で冷徹な言葉を投げられたバミアは、何かを返そうと思う間もなく視界が切り替わった。
本能的に四階層である事を把握したバミアは周囲を確認すると、少々離れた位置に上層階に続く階段が見えている。
三階層にまで移動した方が身の安全は保障されるのだが、ロイエス達が到着前に四階層から移動して良いかは聞く暇がなかったので、この場でロイエスパーティーの到着を待つ事にした。
その間、四階層に生息している魔物が数多くバミアの近くを通るのだが、未だロイエスパーティーが到着していないためにミスクの宣言通りに魔物がバミアを攻撃する事は一切無かった。
今迄深層の魔物の脅威にさらされていたバミアは、勝利できるかは別にして浅層の魔物程度では怯える事は無くなっていた事だけは収穫だ。
その為に、周囲の状況を確認できるほどの余裕が出来ていたのだ。
「す……凄い」
少し前にいた階層では明かりが殆ど無い為に周囲の状況を把握する事が出来ず、ひたすら食料が現れる場所の近くで大人しくしていたバミアだが、送られたこの階層は比較的明るいために周囲が容易に確認できるので、彼女の視界の中には、壁、天井、所々地面にも見た事もないような鉱石が溢れていたので、驚愕する。
想像になるのだが、こぶし大程度の大きさの鉱石であったとしても数年は遊んで暮らせそうな程貴重な物に見えている。
復讐を行うにもお金が必要だと判断したバミアは、その一部をポケットにしまい込む。
ロイエスパーティーと遭遇した後では、この周囲にいる魔物が一斉に自分を含めて攻撃してくる事が予想できるので、余裕のあるうちに拾っておこうと思ったのだ。
そして、階段の近く……魔物がほとんど存在しない場所に移動してロイエス達の到着を待つ。
どれ程この場に留まっていたのだろうか……既に下層でかなりの長時間、時間もわからない状態で留まっていたために、多少待たされてもなんとも思う事が無くなったバミアは、何を考えるでもなくボーッと階層を見つめている。
やがて階段の先から、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
そう、ロイエス達だ。
彼らは、まさかこの先で死亡したと思っているバミアが待ち構えているとは夢にも思っていない。
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