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(43)ロイの秘密(1)
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ここはロイの生家であるハイス子爵家の王都の邸宅。
「もう、こんな手紙だけ残して勝手に出かけて!」
「まぁまぁ、落ち着いて、リーン。ロイももう良い大人……なのか?でも、ギルドでもしっかりと働けている程なんだから、大丈夫だって」
「ルホーク兄!そんな甘い事を言って、道中ロイ君に何かあったらどうするの?どう見ても戦闘力はないし、規制の対象になる収納魔法持ちだし!」
「うっ、それを言われると確かに心配だなぁ」
「確かにリーンの言う通りだな。ロイに何かあってからでは遅いと言う事は、間違いなく家族の一致した意見だと思うが……どうだろうか?」
「ヴァイスさん。あの子は私がお腹を痛めて産んだ子ではありませんが、リーンちゃんやルホーク君と同じくらい愛している大切な息子です。その子に何かあったらと思うと……当初は自立と言う事で我慢していましたが、最近はどうしても心配で眠れない日々が続いています」
「わかるわ、お母さん。私もだもの!と言う事で、もう私は我慢が出来ないからロイ君を探しに行くわよ!止めても行くからね!」
「いや、止めないし、寧ろお願いしたい。路銀や必要な物資は離れに準備済みだから是非ともロイの安全を確認してほしい」
ロイの家族は母親のテレシアの話からは実子ではない事だけは確実だが、誰もが家族以上の存在としてロイの事を想っている事だけは分かる。
子爵家当主のヴァイスも、リーンの我儘とも言えるこの申し出に対して既に事前準備を整えていたほどであり、実はこの場では敢えて何も言わないが、ロイとリーンの兄であるルホークも父であるヴァイス同様リーンの出立に必要な準備を別に整えていた。
本当はルホークを含めて、家族全員が自分も今すぐにロイを探しに行きたい気持ちに駆られているのだが、領地の経営や貴族間の無駄な催しがある事からどうしても領地や王都から大きく離れて長期間活動する事が出来ない立場になっている。
この家族は全員が金目金髪であり、ロイだけがオッドアイ……片目が金、片目が黒なのだが、この辺りも出生の秘密が隠れているのだろうか。
「ありがとう、お父さん。じゃあ時間がもったいないから行くわね!」
「リーンちゃん?ロイ君が向かったおおよその場所は分かるのかしら?」
闇雲に探し回っても人一人を見つける事は至難の業であり、特段目立つような立場ではないロイであれば猶更なので、母であるテレシアが心配そうにリーンを見つめている。
「大丈夫よ、お母さん!ロイ君の匂い、気配、多少遠くても私ならば絶対に感じる事が出来るから!」
言っている内容も不思議だし無駄に自信に満ち溢れているリーンの言葉だが、家族全員が納得顔なのもまた不思議だ。
「そうか……そうだな。リーンであれば間違いないな。ロイの事を頼んだぞ?」
「うん!任せて、お父さん。じゃあ、本当にもう行くね!」
冒険者として活動し、古龍の爪さえ無傷で持って来られるほどの実力者になっているので誰しもがリーンの心配はしておらず、仮に道中盗賊に襲われてしまった場合でも逆に盗賊の方が心配になっているほどだ。
リーンはヴァイスが準備した収納袋複数を収納魔法に纏めて保管しているのだが、一つの収納袋には物資が収まりきらなかったので複数個の収納袋に分かれて準備されており、それをいちいち全て持つのが面倒と言う理由だけで、それらの袋を収納魔法に保管して準備万端のリーン。
ヴァイスを信頼しているので一切中身は確認しないし、仮に自分が欲する物に対して不足があったとしても現地でどうにでもなる自信があるリーンは、そのまま屋敷から出て庭を通り敷地から出るのだが、そこには使用人が並びリーンを見送る形になっていた。
「あれ?お父さん、私が今日何をするのか……皆知っているみたいね?」
普通の依頼に出るのであればこのような過剰な見送りは無いので、どう考えてもロイを探す旅に出る事を知っているのだろうと判断したリーン。
「当然だ。大切なロイを探す旅に向かってくれるリーンの話をしただけだけど……全員が自発的にここまでしてくれるとは嬉しい限りだ」
こう見ると家族だけだはなく使用人達にも本当に愛されている事がわかるロイなのだが、重ねて言うが彼等は血の繋がっている家族ではないし、使用人達ももちろんその事を知っている上で、誰しもが余計な事を言わずに幼少のころからロイを慈しんでいる。
「リーン様、使用人代表としてお願い申し上げます。何卒ロイ様の御無事を確認して頂きたくお願いいたします!」
執事の男がこのように伝えて頭を下げると、一斉に揃って頭を下げる使用人達。
「ありがとう、皆!ロイ君は私が絶対に見つけてくるから、安心してね!」
家族、使用人全員に見送られたまま身軽な恰好で一気に出国するリーンなのだが、やはりギルドの最強戦力である為にその出国はすぐさま国内中に伝わって大騒ぎになり、国王からヴァイスが呼び出される事態に発展している。
国家として収納魔法持ちを管理する必要があり、実際に今迄そのようにしてきたのだが、更に異能とも言える収納魔法と同時に炎魔法や鑑定魔法、光魔法に身体強化まで使える最強戦力であるリーンが出国したとなれば、何時反旗を翻されるか、何時他国に取り込まれるか等の無駄な不安に襲われてしまう。
今の所はしっかりと家族が領内、王都内にほぼ残っている事は掴んでいる国王なのだが、やはり収納魔法持ちをしっかりと管理すると言う大方針は変わっておらず、当初の予定では同じ収納魔法持ちでも全く使えないロイをギルド職員で留めておくことでリーンの手綱も握れるのかと言う思惑があったのだが、ロイがいつの間にか退職して出国した辺りから状況が変わってきた。
ロイは収納魔法持ちでも監視対象にならないので、出国されたのも相当経ってから報告が上がってきた程だったが、リーンが変わらず国内にいたので何も対策は行わなかった。
「もう、こんな手紙だけ残して勝手に出かけて!」
「まぁまぁ、落ち着いて、リーン。ロイももう良い大人……なのか?でも、ギルドでもしっかりと働けている程なんだから、大丈夫だって」
「ルホーク兄!そんな甘い事を言って、道中ロイ君に何かあったらどうするの?どう見ても戦闘力はないし、規制の対象になる収納魔法持ちだし!」
「うっ、それを言われると確かに心配だなぁ」
「確かにリーンの言う通りだな。ロイに何かあってからでは遅いと言う事は、間違いなく家族の一致した意見だと思うが……どうだろうか?」
「ヴァイスさん。あの子は私がお腹を痛めて産んだ子ではありませんが、リーンちゃんやルホーク君と同じくらい愛している大切な息子です。その子に何かあったらと思うと……当初は自立と言う事で我慢していましたが、最近はどうしても心配で眠れない日々が続いています」
「わかるわ、お母さん。私もだもの!と言う事で、もう私は我慢が出来ないからロイ君を探しに行くわよ!止めても行くからね!」
「いや、止めないし、寧ろお願いしたい。路銀や必要な物資は離れに準備済みだから是非ともロイの安全を確認してほしい」
ロイの家族は母親のテレシアの話からは実子ではない事だけは確実だが、誰もが家族以上の存在としてロイの事を想っている事だけは分かる。
子爵家当主のヴァイスも、リーンの我儘とも言えるこの申し出に対して既に事前準備を整えていたほどであり、実はこの場では敢えて何も言わないが、ロイとリーンの兄であるルホークも父であるヴァイス同様リーンの出立に必要な準備を別に整えていた。
本当はルホークを含めて、家族全員が自分も今すぐにロイを探しに行きたい気持ちに駆られているのだが、領地の経営や貴族間の無駄な催しがある事からどうしても領地や王都から大きく離れて長期間活動する事が出来ない立場になっている。
この家族は全員が金目金髪であり、ロイだけがオッドアイ……片目が金、片目が黒なのだが、この辺りも出生の秘密が隠れているのだろうか。
「ありがとう、お父さん。じゃあ時間がもったいないから行くわね!」
「リーンちゃん?ロイ君が向かったおおよその場所は分かるのかしら?」
闇雲に探し回っても人一人を見つける事は至難の業であり、特段目立つような立場ではないロイであれば猶更なので、母であるテレシアが心配そうにリーンを見つめている。
「大丈夫よ、お母さん!ロイ君の匂い、気配、多少遠くても私ならば絶対に感じる事が出来るから!」
言っている内容も不思議だし無駄に自信に満ち溢れているリーンの言葉だが、家族全員が納得顔なのもまた不思議だ。
「そうか……そうだな。リーンであれば間違いないな。ロイの事を頼んだぞ?」
「うん!任せて、お父さん。じゃあ、本当にもう行くね!」
冒険者として活動し、古龍の爪さえ無傷で持って来られるほどの実力者になっているので誰しもがリーンの心配はしておらず、仮に道中盗賊に襲われてしまった場合でも逆に盗賊の方が心配になっているほどだ。
リーンはヴァイスが準備した収納袋複数を収納魔法に纏めて保管しているのだが、一つの収納袋には物資が収まりきらなかったので複数個の収納袋に分かれて準備されており、それをいちいち全て持つのが面倒と言う理由だけで、それらの袋を収納魔法に保管して準備万端のリーン。
ヴァイスを信頼しているので一切中身は確認しないし、仮に自分が欲する物に対して不足があったとしても現地でどうにでもなる自信があるリーンは、そのまま屋敷から出て庭を通り敷地から出るのだが、そこには使用人が並びリーンを見送る形になっていた。
「あれ?お父さん、私が今日何をするのか……皆知っているみたいね?」
普通の依頼に出るのであればこのような過剰な見送りは無いので、どう考えてもロイを探す旅に出る事を知っているのだろうと判断したリーン。
「当然だ。大切なロイを探す旅に向かってくれるリーンの話をしただけだけど……全員が自発的にここまでしてくれるとは嬉しい限りだ」
こう見ると家族だけだはなく使用人達にも本当に愛されている事がわかるロイなのだが、重ねて言うが彼等は血の繋がっている家族ではないし、使用人達ももちろんその事を知っている上で、誰しもが余計な事を言わずに幼少のころからロイを慈しんでいる。
「リーン様、使用人代表としてお願い申し上げます。何卒ロイ様の御無事を確認して頂きたくお願いいたします!」
執事の男がこのように伝えて頭を下げると、一斉に揃って頭を下げる使用人達。
「ありがとう、皆!ロイ君は私が絶対に見つけてくるから、安心してね!」
家族、使用人全員に見送られたまま身軽な恰好で一気に出国するリーンなのだが、やはりギルドの最強戦力である為にその出国はすぐさま国内中に伝わって大騒ぎになり、国王からヴァイスが呼び出される事態に発展している。
国家として収納魔法持ちを管理する必要があり、実際に今迄そのようにしてきたのだが、更に異能とも言える収納魔法と同時に炎魔法や鑑定魔法、光魔法に身体強化まで使える最強戦力であるリーンが出国したとなれば、何時反旗を翻されるか、何時他国に取り込まれるか等の無駄な不安に襲われてしまう。
今の所はしっかりと家族が領内、王都内にほぼ残っている事は掴んでいる国王なのだが、やはり収納魔法持ちをしっかりと管理すると言う大方針は変わっておらず、当初の予定では同じ収納魔法持ちでも全く使えないロイをギルド職員で留めておくことでリーンの手綱も握れるのかと言う思惑があったのだが、ロイがいつの間にか退職して出国した辺りから状況が変わってきた。
ロイは収納魔法持ちでも監視対象にならないので、出国されたのも相当経ってから報告が上がってきた程だったが、リーンが変わらず国内にいたので何も対策は行わなかった。
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