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(50)リーン襲来(1)
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「我が主……お気づきかと思いますが、リーン様の移動速度が異常に増しており、どう見ても確実に我が主を補足したのだと思われます。どのように捕捉したのかはどうしてもわかりませんので、申し訳ありませんが対処の方法がわかりません」
旅を続けるべく街道をテクテク歩いているロイは、護衛であるスペードキングから突如としてこのように告げられて相当に焦る。
「え?なんで?スペードキングでも分からないの?どうして?ちょ、ちょっと、ダイヤキング!」
何時もならば自らダイヤキングを積極的に召喚する事のないロイだが、少しテンパってしまい頭脳派トップを慌てて召喚する。
「我が主、事情はスペードキングとリーン様の護衛についているスペードサードから聞き及んでおります。この面々で何をしているのか把握できないと言う事であれば、リーン様は我が主に対してのみ特別な嗅覚をお持ちであると言う他ありません」
「で、対策は?」
「残念ながら、ございません!」
自信満々に情けない事を言って来たダイヤキングにジト目を向けるロイだが、腐っても頭脳派トップなので他のメンバーを召喚しても同じだろうと諦めてカードに戻す。
ロイも姉であるリーンの不思議な嗅覚には何となく気が付いており、実際には数か月とは言えこれだけ長い期間自分自身に接触せずにいられたのが奇跡だと感じている為に、これ以上対策できる事は無いだろうと思っている。
「無駄に逃げ回るより、大人しく待っていた方が良いよね」
「その方が宜しいかと」
独り言のつもりだったのだがその言葉を拾ったスペードキングから律儀にも返されてしまい、もうリーンを撒くのは無理だと覚悟して収納袋から少しだけ立派な椅子……と言うよりも、持っている中で最も質の悪いのがこれしかないので、椅子を二脚、机を一つ、そして今まで訪問した場所で購入したお菓子と飲み物を準備してリーンの到着を大人しく待っている。
以前、今はジンタ町のシンロイ商会の店員としてしっかりと働いているジルから文句を言われた時とは違って街道から外れた場所に移動しているのだが、この程度でリーンがロイを見逃すわけはなく、隠れているのではなく街道を利用している人々に迷惑をかけないようにしただけだ。
「我が主……」
「うん。流石に力のない俺でも、こうなってしまったら嫌でもわかるよ。ありがとう、スペードキング。じゃあ、もう直ぐここに着くだろうから、今まで通りにバレないように頼むよ?」
スペードキングがリーン近接の連絡をしたのだが、街道のかなり遠くの方から不思議な地響きのような音が断続的に聞こえつつも明らかに近接しているので、嫌でもリーンが近づいている事を把握しているロイ。
その数十秒後……
「ロイ君!!も~、お姉ちゃんとっても心配しちゃったじゃない!」
予想に違わず、一切息を切らしていないリーンは爽やかな表情で街道から外れて見え辛い場所にいるロイの元に迷わず到着し、可愛く膨れて文句を言いながらも、本当に心配していたのだろうと誰が見てもわかる様子で、優しくロイの頭を撫でている。
「ご、ごめんね姉ちゃん。でも、俺としては色々な場所に行ってたくさんの物を見て、経験してみたかったんだ。将来的には知識とか、できる事とか増えた状態でしっかりと家に戻って、何か手伝えれば良いなって考えていたんだ」
何故かリーンには嘘が見抜かれる事が多いので、隠す事無く本心から思っていた事を伝えると、漸くリーンはロイを撫でるのをやめて勧められた椅子に座り、ニコニコしながらロイの話を聞く体制になる。
一応再度伝えるが、ここは街道に近いとは言え森の中であり、本来は椅子に座って仲良く話せる様な場所ではない。
「……って言う訳でさ?俺はもっと違う国、町、村を見てみたいんだ。将来絶対にハイス子爵家の為になるでしょ?本当は兄ちゃんが同じ事をできれば良いけど、立場的に難しいのは嫌でもわかるから、それならば俺が……って思ったんだ」
「凄いじゃない、ロイ君!!賛成!大賛成!!さっすがロイ君だね。お姉ちゃんは良く分かりました!じゃあさ?これから一緒に旅をしようよ?フフフフ、ロイ君と二人っきりの旅、すっごく楽しそうじゃない?」
最近ではダイヤキングを筆頭に、とてつもない破壊力を持っている爆弾を抱えているような気持ちになっている所、暴走機関車のリーンまでが加わってはロイが落ち着いて気楽に旅をする事は出来ないのは確実であり、どうやってこの窮地を脱するのかを必死で考えているのだが、その間にもリーンの主張……あたかも決定事項であるかのような話は止まらない。
「私がいれば絶対に安全だし、私もロイ君の傍にいる事で家族の皆も安心するよ?良いことだらけだよね?それに、私も色々な知識を入れれば同じように力になれると思うんだ。フフ、嬉しいな」
最後の嬉しいと言う言葉は、今も、そして将来的にもロイと共に行動できると確信したから言っている言葉であり、その真意には気が付かないロイは、優しい性格故かこう考える。
『自分で言うのもなんだけど、姉ちゃんも、俺に長い間逢えなくって寂しかったんだよなぁ~。ここまで喜んでいる姉ちゃんをほっとくなんて、ちょっと無理……かな。だとすれば、折角だから一緒に楽しむ方向にすれば良いかな?ひょっとしたら、毒をもって毒……ではなく暴走機関車同士が互いに中和して大人しくなるのかもしれないしね』
ロイが考えていた内容の最後は希望的観測が大半を占めているのだが、前半についてはまさに的を射ており、仕方がないなと思いつつ未だニコニコしてロイだけを見つめている目の前のリーンに了解の意を示す。
「わかったよ、姉ちゃん。でも、家には連絡しておいてね。ここまで勝手な事をしておいてなんだけど、家族の皆にも心配かけて申し訳ないと言う気持ちはあるからさ」
「やった!もちろんだよ、ロイ君!」
旅を続けるべく街道をテクテク歩いているロイは、護衛であるスペードキングから突如としてこのように告げられて相当に焦る。
「え?なんで?スペードキングでも分からないの?どうして?ちょ、ちょっと、ダイヤキング!」
何時もならば自らダイヤキングを積極的に召喚する事のないロイだが、少しテンパってしまい頭脳派トップを慌てて召喚する。
「我が主、事情はスペードキングとリーン様の護衛についているスペードサードから聞き及んでおります。この面々で何をしているのか把握できないと言う事であれば、リーン様は我が主に対してのみ特別な嗅覚をお持ちであると言う他ありません」
「で、対策は?」
「残念ながら、ございません!」
自信満々に情けない事を言って来たダイヤキングにジト目を向けるロイだが、腐っても頭脳派トップなので他のメンバーを召喚しても同じだろうと諦めてカードに戻す。
ロイも姉であるリーンの不思議な嗅覚には何となく気が付いており、実際には数か月とは言えこれだけ長い期間自分自身に接触せずにいられたのが奇跡だと感じている為に、これ以上対策できる事は無いだろうと思っている。
「無駄に逃げ回るより、大人しく待っていた方が良いよね」
「その方が宜しいかと」
独り言のつもりだったのだがその言葉を拾ったスペードキングから律儀にも返されてしまい、もうリーンを撒くのは無理だと覚悟して収納袋から少しだけ立派な椅子……と言うよりも、持っている中で最も質の悪いのがこれしかないので、椅子を二脚、机を一つ、そして今まで訪問した場所で購入したお菓子と飲み物を準備してリーンの到着を大人しく待っている。
以前、今はジンタ町のシンロイ商会の店員としてしっかりと働いているジルから文句を言われた時とは違って街道から外れた場所に移動しているのだが、この程度でリーンがロイを見逃すわけはなく、隠れているのではなく街道を利用している人々に迷惑をかけないようにしただけだ。
「我が主……」
「うん。流石に力のない俺でも、こうなってしまったら嫌でもわかるよ。ありがとう、スペードキング。じゃあ、もう直ぐここに着くだろうから、今まで通りにバレないように頼むよ?」
スペードキングがリーン近接の連絡をしたのだが、街道のかなり遠くの方から不思議な地響きのような音が断続的に聞こえつつも明らかに近接しているので、嫌でもリーンが近づいている事を把握しているロイ。
その数十秒後……
「ロイ君!!も~、お姉ちゃんとっても心配しちゃったじゃない!」
予想に違わず、一切息を切らしていないリーンは爽やかな表情で街道から外れて見え辛い場所にいるロイの元に迷わず到着し、可愛く膨れて文句を言いながらも、本当に心配していたのだろうと誰が見てもわかる様子で、優しくロイの頭を撫でている。
「ご、ごめんね姉ちゃん。でも、俺としては色々な場所に行ってたくさんの物を見て、経験してみたかったんだ。将来的には知識とか、できる事とか増えた状態でしっかりと家に戻って、何か手伝えれば良いなって考えていたんだ」
何故かリーンには嘘が見抜かれる事が多いので、隠す事無く本心から思っていた事を伝えると、漸くリーンはロイを撫でるのをやめて勧められた椅子に座り、ニコニコしながらロイの話を聞く体制になる。
一応再度伝えるが、ここは街道に近いとは言え森の中であり、本来は椅子に座って仲良く話せる様な場所ではない。
「……って言う訳でさ?俺はもっと違う国、町、村を見てみたいんだ。将来絶対にハイス子爵家の為になるでしょ?本当は兄ちゃんが同じ事をできれば良いけど、立場的に難しいのは嫌でもわかるから、それならば俺が……って思ったんだ」
「凄いじゃない、ロイ君!!賛成!大賛成!!さっすがロイ君だね。お姉ちゃんは良く分かりました!じゃあさ?これから一緒に旅をしようよ?フフフフ、ロイ君と二人っきりの旅、すっごく楽しそうじゃない?」
最近ではダイヤキングを筆頭に、とてつもない破壊力を持っている爆弾を抱えているような気持ちになっている所、暴走機関車のリーンまでが加わってはロイが落ち着いて気楽に旅をする事は出来ないのは確実であり、どうやってこの窮地を脱するのかを必死で考えているのだが、その間にもリーンの主張……あたかも決定事項であるかのような話は止まらない。
「私がいれば絶対に安全だし、私もロイ君の傍にいる事で家族の皆も安心するよ?良いことだらけだよね?それに、私も色々な知識を入れれば同じように力になれると思うんだ。フフ、嬉しいな」
最後の嬉しいと言う言葉は、今も、そして将来的にもロイと共に行動できると確信したから言っている言葉であり、その真意には気が付かないロイは、優しい性格故かこう考える。
『自分で言うのもなんだけど、姉ちゃんも、俺に長い間逢えなくって寂しかったんだよなぁ~。ここまで喜んでいる姉ちゃんをほっとくなんて、ちょっと無理……かな。だとすれば、折角だから一緒に楽しむ方向にすれば良いかな?ひょっとしたら、毒をもって毒……ではなく暴走機関車同士が互いに中和して大人しくなるのかもしれないしね』
ロイが考えていた内容の最後は希望的観測が大半を占めているのだが、前半についてはまさに的を射ており、仕方がないなと思いつつ未だニコニコしてロイだけを見つめている目の前のリーンに了解の意を示す。
「わかったよ、姉ちゃん。でも、家には連絡しておいてね。ここまで勝手な事をしておいてなんだけど、家族の皆にも心配かけて申し訳ないと言う気持ちはあるからさ」
「やった!もちろんだよ、ロイ君!」
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