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(52)名も無き集落
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この世界の移動は馬車や徒歩であり一応街道が準備されてはいるのだが、人が向かう事が少ない方向の街道は荒れてしまい、獣道の様になってしまっている場所もある。
「こちらに人の気配、集落とでも言うのでしょうか?距離的にもそう時間がかからないので、目的地はそこにしましょうか?」
「良いですね。そうしましょう。我が主には疲労を感じる前にお休みいただきたいので、距離的にも妥当ですね」
ジョーカー二体の移動速度とロイの移動速度には大きな違いがあるのだが、最も距離的に近い人の気配がそこしかないので他の選択肢がなく、二体はかなり荒れている街道をさりげなく整地しつつかなりの速度で移動している。
気配は消して姿も朧気ではある為に、付近には肉食系統の獣や魔獣が逃げる事なくその場に留まっている。
「スペードキングがいるので問題ないとは思いますが、リーン様も対応されては……我が主とリーン様の触れ合いの時間が短くなってしまう可能性もありますね」
「確かに。ですが、今我らがこの周辺の生物を片付けてしまった場合、リーン様が周囲に気配がなさすぎると余計警戒されてしまう可能性があります」
高速で移動し、更には街道を整備しつつも軽く会話をして対策を検討しながら行動できる二体は、召喚魔法によって周辺の魔獣よりも格上の存在を召喚して街道側に危険がないように配慮する事にした。
「これであれば、しっかりと気配も感じる上に相当街道から離れているので危険もないと理解いただけるでしょう。完璧です!」
残念ながらこの二体もカードの仲間基準で考えている節があるので、実際に召喚されている魔獣はジョーカー達にとってみれば雑魚以外の何物でもないが古龍以上の存在であり、更には想像以上に街道から距離を取っているので、今のリーンの力では有象無象の気配は一切掴む事は出来ず、相当遠くにいながらも気配が掴めてしまう別格の存在がいると言う事を認識させるだけになっている。
「着きましたが……これでは我が主にゆっくりとお休み頂くには不十分ではないでしょうか?」
「確かに、その通りですね」
街道の状態からも理解できるはずなのだが、人の出入りがない集落とでもいう場所に少ない人数で自給自足の生活をしているようで、一応食料や水には困っている様子は見受けられないのだが、本来の目的である大きなお風呂などあろうはずも無く、残念ながら集落の人々も少々汚れていたりする。
「我が様子を見てきますよ」
隠していた気配も元に戻してはいるのだが、隠蔽魔法の能力の一つである自らの存在を別の存在……外観を思い通りに認識させる事が出来る魔法を行使し、内包している力で一般住民が怯えないように配慮しつつも、旅人を装って一体が集落に向かう。
「おや?こんな場所に珍しいねぇ。ひょっとして、迷ったのかい?」
「……お恥ずかしながら」
人の良さそうな人物に敢えて近接したジョーカーは、会話を続けるべく投げかけられた疑問に対して想像している通りの回答で返す。
「街道を少し外れた所でこのような物を見つけまして……もう少しあればと欲を出した結果かなりの日数迷ってしまい、何とかここに辿り着いたのです」
荷物の中から取り出したのは水やお湯を自由に出せる魔道具であり、この集落で水に関しては不自由していないのは既に把握しているのだが、今後ロイのお風呂の為に必要である事と、更に水汲み場はこの場所から少々遠い所にある事も理解しているので、さり気なく事前に報酬として渡す為に見せている。
集落の人々が同じような魔道具がないのか探しに行かないように、敢えてこの魔道具を見つけてから相当移動したと告げているのだが、この魔道具のレベルになると王都であっても見つける事は出来ない代物であり、ダイヤ部隊特性の品だ。
「そうなのかい。随分と……そうだねぇ、疲れているように見えるね。ちょっとこっちにおいで」
年配の女性は魔道具の説明をしっかりと聞いたのだがあまり興味を示す事は無く、近くの小屋の様な家にジョーカーを半ば強引に連れ込む。
「そこで休むと良いよ。ちょっと待っていておくれ」
その後再び家を出て何かをしているのだが、何をしているのかはジョーカーであれば家の中にいようが難なく把握する事が出来る。
「ほら、これなら食べられると思うよ?先ずは腹ごしらえをして……悪いけどこの集落には風呂何て立派な物はないから、湯あみをしておくれ。そう言えば、さっきお湯が出る魔道具を見せてくれたねぇ?それを使えば、ゆっくりできるかい?」
「そうですね。ありがとうございます」
本当に善意で行動してくれているので、出された食事を食べつつも、これであればこの場所にロイの為に巨大なお風呂を作っても問題ないと確信するジョーカー。
その間にも情報収集の一環から会話を継続する。
「……と言う訳で、この集落の先祖は王都が嫌になってここに辿り着いたってわけさ。都のギスギスした生活ではなく、自給自足で自然と一体になって過ごす。確かに不便な事もあるけど、心は豊かになっていると思うんだよねぇ」
「そうですか。確かに王都では王都の苦労がありますから。ここでの生活で不便な事……とは、なんでしょうか?」
「そうだねぇ。先ず、町レベルになるとお風呂があるんだろう?男どもは良いかもしれないけれど、正直私も一応女だからねぇ。ゆっくりとお湯に浸かれれば幸せだと思うよ」
これ以上ない程に合致した条件であった事に、やはり自らの主であるロイは全てを見通す事の出来る巨大な力を持っていると勝手に勘違いしてさらに崇拝しているこの場のジョーカーと、この会話すら耳にする事が出来る集落から距離を取り全体を監視しているもう一体のジョーカーだ。
「こちらに人の気配、集落とでも言うのでしょうか?距離的にもそう時間がかからないので、目的地はそこにしましょうか?」
「良いですね。そうしましょう。我が主には疲労を感じる前にお休みいただきたいので、距離的にも妥当ですね」
ジョーカー二体の移動速度とロイの移動速度には大きな違いがあるのだが、最も距離的に近い人の気配がそこしかないので他の選択肢がなく、二体はかなり荒れている街道をさりげなく整地しつつかなりの速度で移動している。
気配は消して姿も朧気ではある為に、付近には肉食系統の獣や魔獣が逃げる事なくその場に留まっている。
「スペードキングがいるので問題ないとは思いますが、リーン様も対応されては……我が主とリーン様の触れ合いの時間が短くなってしまう可能性もありますね」
「確かに。ですが、今我らがこの周辺の生物を片付けてしまった場合、リーン様が周囲に気配がなさすぎると余計警戒されてしまう可能性があります」
高速で移動し、更には街道を整備しつつも軽く会話をして対策を検討しながら行動できる二体は、召喚魔法によって周辺の魔獣よりも格上の存在を召喚して街道側に危険がないように配慮する事にした。
「これであれば、しっかりと気配も感じる上に相当街道から離れているので危険もないと理解いただけるでしょう。完璧です!」
残念ながらこの二体もカードの仲間基準で考えている節があるので、実際に召喚されている魔獣はジョーカー達にとってみれば雑魚以外の何物でもないが古龍以上の存在であり、更には想像以上に街道から距離を取っているので、今のリーンの力では有象無象の気配は一切掴む事は出来ず、相当遠くにいながらも気配が掴めてしまう別格の存在がいると言う事を認識させるだけになっている。
「着きましたが……これでは我が主にゆっくりとお休み頂くには不十分ではないでしょうか?」
「確かに、その通りですね」
街道の状態からも理解できるはずなのだが、人の出入りがない集落とでもいう場所に少ない人数で自給自足の生活をしているようで、一応食料や水には困っている様子は見受けられないのだが、本来の目的である大きなお風呂などあろうはずも無く、残念ながら集落の人々も少々汚れていたりする。
「我が様子を見てきますよ」
隠していた気配も元に戻してはいるのだが、隠蔽魔法の能力の一つである自らの存在を別の存在……外観を思い通りに認識させる事が出来る魔法を行使し、内包している力で一般住民が怯えないように配慮しつつも、旅人を装って一体が集落に向かう。
「おや?こんな場所に珍しいねぇ。ひょっとして、迷ったのかい?」
「……お恥ずかしながら」
人の良さそうな人物に敢えて近接したジョーカーは、会話を続けるべく投げかけられた疑問に対して想像している通りの回答で返す。
「街道を少し外れた所でこのような物を見つけまして……もう少しあればと欲を出した結果かなりの日数迷ってしまい、何とかここに辿り着いたのです」
荷物の中から取り出したのは水やお湯を自由に出せる魔道具であり、この集落で水に関しては不自由していないのは既に把握しているのだが、今後ロイのお風呂の為に必要である事と、更に水汲み場はこの場所から少々遠い所にある事も理解しているので、さり気なく事前に報酬として渡す為に見せている。
集落の人々が同じような魔道具がないのか探しに行かないように、敢えてこの魔道具を見つけてから相当移動したと告げているのだが、この魔道具のレベルになると王都であっても見つける事は出来ない代物であり、ダイヤ部隊特性の品だ。
「そうなのかい。随分と……そうだねぇ、疲れているように見えるね。ちょっとこっちにおいで」
年配の女性は魔道具の説明をしっかりと聞いたのだがあまり興味を示す事は無く、近くの小屋の様な家にジョーカーを半ば強引に連れ込む。
「そこで休むと良いよ。ちょっと待っていておくれ」
その後再び家を出て何かをしているのだが、何をしているのかはジョーカーであれば家の中にいようが難なく把握する事が出来る。
「ほら、これなら食べられると思うよ?先ずは腹ごしらえをして……悪いけどこの集落には風呂何て立派な物はないから、湯あみをしておくれ。そう言えば、さっきお湯が出る魔道具を見せてくれたねぇ?それを使えば、ゆっくりできるかい?」
「そうですね。ありがとうございます」
本当に善意で行動してくれているので、出された食事を食べつつも、これであればこの場所にロイの為に巨大なお風呂を作っても問題ないと確信するジョーカー。
その間にも情報収集の一環から会話を継続する。
「……と言う訳で、この集落の先祖は王都が嫌になってここに辿り着いたってわけさ。都のギスギスした生活ではなく、自給自足で自然と一体になって過ごす。確かに不便な事もあるけど、心は豊かになっていると思うんだよねぇ」
「そうですか。確かに王都では王都の苦労がありますから。ここでの生活で不便な事……とは、なんでしょうか?」
「そうだねぇ。先ず、町レベルになるとお風呂があるんだろう?男どもは良いかもしれないけれど、正直私も一応女だからねぇ。ゆっくりとお湯に浸かれれば幸せだと思うよ」
これ以上ない程に合致した条件であった事に、やはり自らの主であるロイは全てを見通す事の出来る巨大な力を持っていると勝手に勘違いしてさらに崇拝しているこの場のジョーカーと、この会話すら耳にする事が出来る集落から距離を取り全体を監視しているもう一体のジョーカーだ。
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