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(71)ミラージュ脱走(1)
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国王からの命令で王都の王城を中心として貴族が住む場所迄の範囲しか出歩く事を許可されていないミラージュだが、貴族と関連する者達が集う市にもその名を轟かせている商会の事であれば耳にしている。
目の前の女性らしき存在は、その商会の従業員にする事ができると言い切っているので、少しだけ悩んだ後にその申し出……と言うよりも、今の生活を改善したいと言う願いを叶えてもらうように決断したミラージュ。
「そ、それでお願いします。もうこんな所に一人ボッチで必死に生きていくのは苦痛以外の何物でもありません!」
「結構です。王都の商会は巨大ですから、従業員の宿舎も準備されています。今は少ないですが、町にも支店を出しておりますから、異動したい場合も安全を考慮の上叶える事も出来るでしょう」
「ありがとうございます!本当に有難うございます!ですが……その商会の方々にご迷惑がかかるのではないですか?最近は目にしていませんが、兄上がしょっちゅう僕を笑いに離れまで来ますから、命令を破り逃亡した事は直に父上に伝わるでしょう。市の者達にも噂になる程の商会であれば、僕がそこで働いていればその所在も直ぐに王城に届き、結果店ごと潰される事もあるかもしれません」
「そうですね。不安を一つずつ解消致しましょう。問題は二つですね?愚兄と商会の問題と言う事で宜しいですね?」
「愚……はい。そうです」
まさか王族、それも次期国王を愚兄と言い切った目の前の存在に少々驚くが、この場所から逃げ出せる可能性が高くなってきた事の方が重要なので、続きを促す。
「結構です。では一つ目。あのブタはブタと結婚したので無駄に巨大な部屋から出てくることはないでしょう」
「はい?」
正に何を言っているのかさっぱり理解できないのだが、ダイヤクィーンとしては事実を事実として伝えているだけであり、何故理解できないのか少々分からなくなっている。
「その、ブタ……とは、兄上の事でしょうか?」
「はい、そうですね。一体のブタが一体のブタと夫婦になったと言う事です。種族が異なるので当然子孫は残せませんが、あのような者の子孫は害にしかなりませんので、結局は良い方向に向かったのではないでしょうか?」
ミラージュとしてはブタのような外観になってしまった兄を見た事があるので、場合によってはそれ以上に肥えてブタと比喩表現で言われているのだろうと納得できなくもないのだが、更に出てきたもう一体のブタについては種族が違うと言われてどういう事なのか益々わからなくなる。
「その、もう一体のブタの方?は、どの様な方なのでしょうか?まさか父上の強制的な力で兄上に差し出された犠牲者ですか?」
そうであれば、自分だけがのうのうと逃亡するわけにはいかないと決意を新たにするのだが、返って来た答えは想像をはるかに超えるものだった。
「いいえ、本物のブタ……とは少々異なりますね。ブタに見える外観のオークを我ら万屋が準備してあげたのです。あのオークはブタを非常に気に入っているようで、今では一時も離れずに寄り添っていますよ。フフフ、とてもお似合いの仲睦ましい夫婦です」
「……」
一般的に知られているオークは獰猛で欲望に忠実である為に討伐対象になっているのだが、その魔獣が妻になっているとは想像する事などミラージュでなくともできはしない。
「あの欲望に忠実な魔獣のオーク、で合っていますでしょうか?」
「そうですね。ブタも欲望に忠実ですから、お似合いですよ。そうそう、一応オークの方は調教していますので、城内で無駄に暴れる事は絶対にありません。仮に貴方が傷つけられたくないと思っている方がいたとしても、安心ですよ」
相当な知識を持っているはずのミラージュからしても何が何だか分からないが、結果だけをありのまま受け入れる事にした。
「わ、わかりました。では、二つ目についてはどうでしょうか?」
「フフ、理解が速くて何よりです。助かります。では、二つ目ですが、商会の安全等についてですが、こちらは我ら万屋がバックアップいたしますし、あちらの従業員の一部も相当な実力者を揃えておりますので、一切の心配はございません。それに、シンロイ商会は貴族も含めて地域に根付いているので、そこを急襲するような度胸はないのではないでしょうか?」
事実この王都に存在しているシンロイ商会は、冒険者や一般の民だけではなく相当数の貴族が贔屓にしているので、そこに国王が単独で仕掛けると一致団結して反旗を翻される可能性があるので、ダイヤクィーンの言う通りに表立って攻撃する事は出来ないだろう。
「もちろん従業員に何かあれば、即店を閉めると周知すればより安全は確保できます」
「そんな事が出来るのですか?従業員の生活が出来なくなるのではないですか?」
「いいえ。先程申した通りに、全員とは申しませんが一部の従業員は別格の力を持っておりますので、特段生活に困る事は有りません。その他の従業員と共に店舗を王都以外に出せば良いだけです」
「それ程の力が有るのでしょうね。現に今僕は、有り得ない程の力を目の当たりにしていますから」
「では、何時までもここにいても仕方がありません。お話は他でも出来ますので、早速行きましょうか?」
「はい!よろしくお願いします!」
直後にミラージュの意識は朦朧とし、意識が戻った際には見た事もない様な立派な部屋で寝かされていた事に気が付いた。
「あれ?僕は……そうだ!あの離れから万屋に移動してもらったのですね。とすると、ここはシンロイ商会?」
目の前の女性らしき存在は、その商会の従業員にする事ができると言い切っているので、少しだけ悩んだ後にその申し出……と言うよりも、今の生活を改善したいと言う願いを叶えてもらうように決断したミラージュ。
「そ、それでお願いします。もうこんな所に一人ボッチで必死に生きていくのは苦痛以外の何物でもありません!」
「結構です。王都の商会は巨大ですから、従業員の宿舎も準備されています。今は少ないですが、町にも支店を出しておりますから、異動したい場合も安全を考慮の上叶える事も出来るでしょう」
「ありがとうございます!本当に有難うございます!ですが……その商会の方々にご迷惑がかかるのではないですか?最近は目にしていませんが、兄上がしょっちゅう僕を笑いに離れまで来ますから、命令を破り逃亡した事は直に父上に伝わるでしょう。市の者達にも噂になる程の商会であれば、僕がそこで働いていればその所在も直ぐに王城に届き、結果店ごと潰される事もあるかもしれません」
「そうですね。不安を一つずつ解消致しましょう。問題は二つですね?愚兄と商会の問題と言う事で宜しいですね?」
「愚……はい。そうです」
まさか王族、それも次期国王を愚兄と言い切った目の前の存在に少々驚くが、この場所から逃げ出せる可能性が高くなってきた事の方が重要なので、続きを促す。
「結構です。では一つ目。あのブタはブタと結婚したので無駄に巨大な部屋から出てくることはないでしょう」
「はい?」
正に何を言っているのかさっぱり理解できないのだが、ダイヤクィーンとしては事実を事実として伝えているだけであり、何故理解できないのか少々分からなくなっている。
「その、ブタ……とは、兄上の事でしょうか?」
「はい、そうですね。一体のブタが一体のブタと夫婦になったと言う事です。種族が異なるので当然子孫は残せませんが、あのような者の子孫は害にしかなりませんので、結局は良い方向に向かったのではないでしょうか?」
ミラージュとしてはブタのような外観になってしまった兄を見た事があるので、場合によってはそれ以上に肥えてブタと比喩表現で言われているのだろうと納得できなくもないのだが、更に出てきたもう一体のブタについては種族が違うと言われてどういう事なのか益々わからなくなる。
「その、もう一体のブタの方?は、どの様な方なのでしょうか?まさか父上の強制的な力で兄上に差し出された犠牲者ですか?」
そうであれば、自分だけがのうのうと逃亡するわけにはいかないと決意を新たにするのだが、返って来た答えは想像をはるかに超えるものだった。
「いいえ、本物のブタ……とは少々異なりますね。ブタに見える外観のオークを我ら万屋が準備してあげたのです。あのオークはブタを非常に気に入っているようで、今では一時も離れずに寄り添っていますよ。フフフ、とてもお似合いの仲睦ましい夫婦です」
「……」
一般的に知られているオークは獰猛で欲望に忠実である為に討伐対象になっているのだが、その魔獣が妻になっているとは想像する事などミラージュでなくともできはしない。
「あの欲望に忠実な魔獣のオーク、で合っていますでしょうか?」
「そうですね。ブタも欲望に忠実ですから、お似合いですよ。そうそう、一応オークの方は調教していますので、城内で無駄に暴れる事は絶対にありません。仮に貴方が傷つけられたくないと思っている方がいたとしても、安心ですよ」
相当な知識を持っているはずのミラージュからしても何が何だか分からないが、結果だけをありのまま受け入れる事にした。
「わ、わかりました。では、二つ目についてはどうでしょうか?」
「フフ、理解が速くて何よりです。助かります。では、二つ目ですが、商会の安全等についてですが、こちらは我ら万屋がバックアップいたしますし、あちらの従業員の一部も相当な実力者を揃えておりますので、一切の心配はございません。それに、シンロイ商会は貴族も含めて地域に根付いているので、そこを急襲するような度胸はないのではないでしょうか?」
事実この王都に存在しているシンロイ商会は、冒険者や一般の民だけではなく相当数の貴族が贔屓にしているので、そこに国王が単独で仕掛けると一致団結して反旗を翻される可能性があるので、ダイヤクィーンの言う通りに表立って攻撃する事は出来ないだろう。
「もちろん従業員に何かあれば、即店を閉めると周知すればより安全は確保できます」
「そんな事が出来るのですか?従業員の生活が出来なくなるのではないですか?」
「いいえ。先程申した通りに、全員とは申しませんが一部の従業員は別格の力を持っておりますので、特段生活に困る事は有りません。その他の従業員と共に店舗を王都以外に出せば良いだけです」
「それ程の力が有るのでしょうね。現に今僕は、有り得ない程の力を目の当たりにしていますから」
「では、何時までもここにいても仕方がありません。お話は他でも出来ますので、早速行きましょうか?」
「はい!よろしくお願いします!」
直後にミラージュの意識は朦朧とし、意識が戻った際には見た事もない様な立派な部屋で寝かされていた事に気が付いた。
「あれ?僕は……そうだ!あの離れから万屋に移動してもらったのですね。とすると、ここはシンロイ商会?」
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