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第二十話もう一つの秘密
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「ところで…シャーリー様の婚約者って、どなたなのかしら?」
女学園では、結婚準備を始めたシャーリーが、日に日に美しくなっていくことから、皆の興味はお相手に集中しだした。
伯爵家の一人娘で婿入りを希望するとなると、大体目ぼしい人間の名前は上がってくる。噂では、マンガン公爵家の次男ではないかとか、いやいや、手広く商いを行うエンジェル伯爵家なのだから、他国の高位貴族のご子息でないかとか、勝手な噂が出回っていた。
まさか、家格が下の貧乏男爵家の三男だとは誰も思わない。魔法通ならマックスの名も知っているだろうが、女学園の令嬢には縁の薄い人間だ。
しかし、ある日、この秘密が真っ昼間の市中で知れ渡る事件が起きた。
「皆、危ないから走らないのよ」
「「あーい」」
シャーリーは、サラとマリアを連れてグレイ商会へ向かっていた。久しぶりに市井を歩きたくて平民服を着ている。勿論、護衛は付いているが、彼ら
は少し離れたところから付いてきていた。ただ、剣を携えた人間が側にいると、警戒心を持たれてしまう。
売れる商品を見極めるには、人を見なければならない。父ジョンの教えだ。いくら頭で考えたからといって、人が求める商品を思いつくことはできない。自分の目と手と足を使わずして、新商品は誕生しないのだ。
「シャーリーしゃま」
サラが手招きする方へ行くと、猿を連れた大道芸人が居た。彼の奏でる笛に合わせて踊る猿は、コミカルで子供達の気持ちを惹きつける。
「しゅごいねぇ、マリャ(すごいね、マリア)」
「しゅごいねぇ、サリャ(すごいね、サラ)」
手を繋ぎ、目をキラキラさせる姿に、シャーリーだけてなく周りの人間達も癒される。
「おチビちゃん達には、コレをあげよう」
猿使いの男性が、マリア達に棒付きのキャンディーをくれた。
「「あぃがとぉごじゃいましゅ(ありがとうございます)」」
ちゃんとお礼も言えて、益々皆が笑顔になった。そこで、シャーリーは、クッキーにアイシングで動物を描いたらどうかなと考えた。子供達に動物の名前や生態を教えるミニカードも付ければ、お勉強にもなるので、親の財布の紐はゆるくなるはずだ。楽しい想像にシャーリーが微笑んでいると、
「皆、逃げてくれーー!」
突然叫び声が響いた。
ドドドッドドドッドドドッ
耳を澄ますと、蹄が地面を蹴る音がどんどん近づいてくるのが分かる。振り返ってみると、大通りを興奮状態の馬が闇雲に走ってくるのが見えた。
「シャーリー様、お逃げください!」
「でも、マリア達が!」
恐怖に固まってしまったチビ達は、地面に座り込んで震えていた。シャーリーは、咄嗟に二人の元へ駆け出すと、両腕に一人ずつ抱え逃げようとした。
しかし、三歳とはいえ、一度に二人運ぶのには無理があった。
「シャーリー様!」
護衛の絶叫と
ヒヒーン
馬の嘶きが重なり、市民達は最悪の状況を想像して目を塞いだ。
ドーーーーーーーン
馬が何かにぶつかったらしく、あたりに地響きが広がった。それ以上は何も聞こえず、皆、恐る恐る目を開けた。
視界に、想像すらしていなかった光景が広がる。子供を抱えて倒れる少女の側に、眩いばかりに鮮やかな金髪の青年が立っている。どれだけの腕力があるのか知らないが、彼は、右手を前に突き出して馬の顔を掴んでいた。
「どうどう…落ち着け。すぐに治してやるから」
青年は、左手で馬の首筋を撫でた。どうやら怪我をしていたようだが、撫でられた箇所から傷が消え始めている。
「すげー、俺、治癒魔法なんて生まれて初めて見たぞ」
周りを取りが組む野次馬達は、一生に一度見ることがあるかどうかの希少な魔法に目を奪われた。だが、当の本人は、馬が落ちつきを見せると、周りに目を配ることもなく、クルリと背を向け膝をつく。
「おチビちゃん達、シャーリー様は?」
「「ヒックヒック」」
倒れるシャーリーの横で、マリア達は泣くことしか出来ないようだ。仕方なく青年はシャーリーを抱き上げると、見慣れたメイドへと視線を向ける。
「カサンドラ、馬車は?」
「こちらです」
カサンドラは、右手でサラ、左手でマリアの手を取ると、二人を引き連れて馬車の方へと歩いていく。
もし、シャーリーがここで目を覚ましていれば、婚約者によって公衆の面前でお姫様抱っこされている状況に、再び意識を飛ばしたことだろう。
「驚きました、まさか、お仕事時間にお嬢様の平民姿が見てみたくて仕事をサボる殿方がいるとは」
「だから、言い方をもう少し包み隠してもらいたい」
馬車の中でカサンドラから冷たい視線を向けられたのは、早退をしてきたマックスだった。何故なら、魔道士団の詰所にわざわざ来たジャックが、
「いやー、うちの嫁(クイーン)が着せて差し上げたシャーリー様の平民姿が可愛いのなんの。まぁ、一番可愛いのは、うちの嫁(クイーン)だけどな、ガハハハハ」
と自慢しに来たからだ。嫁自慢は別に気にならないが、シャーリーの平民姿となると話が違う。
『なんでジャックが見れて、婚約者の俺が見られないんだ!』
その思い一つで仕事をやっつけ、シャーリーの耳飾りに付けた位置情報が分かる魔法を頼りに追跡してきたのだ。
「もう、それ、犯罪者ですよね」
「面目ない」
護衛達の後ろに控えていたカサンドラは、シャーリーが馬に蹴り殺されそうになった瞬間、そばを離れたことを後悔していた。近くにいれば、自分が、盾になれたのにと、涙で視界が歪んだ。
それなのに、何処からともなく現れたマックスが、片手で暴れ馬を止めるという人間離れした技を発揮したのだ。無論、魔法を使ったのだろうが、後追い自殺すら考えた覚悟を返してほしい。
「お嬢様には、耳飾りの秘密は黙っておきます」
いくら婚約者と言えども、盗聴に加え位置情報まで把握されていては、ゆっくり眠ることも出来ないだろう。
「感謝します」
貧乏といえども貴族である男爵家三男が、平民メイドに頭を下げた。多分、一生ネタにされるのだろうなと、マックスは覚悟を決めるしかなかった。
女学園では、結婚準備を始めたシャーリーが、日に日に美しくなっていくことから、皆の興味はお相手に集中しだした。
伯爵家の一人娘で婿入りを希望するとなると、大体目ぼしい人間の名前は上がってくる。噂では、マンガン公爵家の次男ではないかとか、いやいや、手広く商いを行うエンジェル伯爵家なのだから、他国の高位貴族のご子息でないかとか、勝手な噂が出回っていた。
まさか、家格が下の貧乏男爵家の三男だとは誰も思わない。魔法通ならマックスの名も知っているだろうが、女学園の令嬢には縁の薄い人間だ。
しかし、ある日、この秘密が真っ昼間の市中で知れ渡る事件が起きた。
「皆、危ないから走らないのよ」
「「あーい」」
シャーリーは、サラとマリアを連れてグレイ商会へ向かっていた。久しぶりに市井を歩きたくて平民服を着ている。勿論、護衛は付いているが、彼ら
は少し離れたところから付いてきていた。ただ、剣を携えた人間が側にいると、警戒心を持たれてしまう。
売れる商品を見極めるには、人を見なければならない。父ジョンの教えだ。いくら頭で考えたからといって、人が求める商品を思いつくことはできない。自分の目と手と足を使わずして、新商品は誕生しないのだ。
「シャーリーしゃま」
サラが手招きする方へ行くと、猿を連れた大道芸人が居た。彼の奏でる笛に合わせて踊る猿は、コミカルで子供達の気持ちを惹きつける。
「しゅごいねぇ、マリャ(すごいね、マリア)」
「しゅごいねぇ、サリャ(すごいね、サラ)」
手を繋ぎ、目をキラキラさせる姿に、シャーリーだけてなく周りの人間達も癒される。
「おチビちゃん達には、コレをあげよう」
猿使いの男性が、マリア達に棒付きのキャンディーをくれた。
「「あぃがとぉごじゃいましゅ(ありがとうございます)」」
ちゃんとお礼も言えて、益々皆が笑顔になった。そこで、シャーリーは、クッキーにアイシングで動物を描いたらどうかなと考えた。子供達に動物の名前や生態を教えるミニカードも付ければ、お勉強にもなるので、親の財布の紐はゆるくなるはずだ。楽しい想像にシャーリーが微笑んでいると、
「皆、逃げてくれーー!」
突然叫び声が響いた。
ドドドッドドドッドドドッ
耳を澄ますと、蹄が地面を蹴る音がどんどん近づいてくるのが分かる。振り返ってみると、大通りを興奮状態の馬が闇雲に走ってくるのが見えた。
「シャーリー様、お逃げください!」
「でも、マリア達が!」
恐怖に固まってしまったチビ達は、地面に座り込んで震えていた。シャーリーは、咄嗟に二人の元へ駆け出すと、両腕に一人ずつ抱え逃げようとした。
しかし、三歳とはいえ、一度に二人運ぶのには無理があった。
「シャーリー様!」
護衛の絶叫と
ヒヒーン
馬の嘶きが重なり、市民達は最悪の状況を想像して目を塞いだ。
ドーーーーーーーン
馬が何かにぶつかったらしく、あたりに地響きが広がった。それ以上は何も聞こえず、皆、恐る恐る目を開けた。
視界に、想像すらしていなかった光景が広がる。子供を抱えて倒れる少女の側に、眩いばかりに鮮やかな金髪の青年が立っている。どれだけの腕力があるのか知らないが、彼は、右手を前に突き出して馬の顔を掴んでいた。
「どうどう…落ち着け。すぐに治してやるから」
青年は、左手で馬の首筋を撫でた。どうやら怪我をしていたようだが、撫でられた箇所から傷が消え始めている。
「すげー、俺、治癒魔法なんて生まれて初めて見たぞ」
周りを取りが組む野次馬達は、一生に一度見ることがあるかどうかの希少な魔法に目を奪われた。だが、当の本人は、馬が落ちつきを見せると、周りに目を配ることもなく、クルリと背を向け膝をつく。
「おチビちゃん達、シャーリー様は?」
「「ヒックヒック」」
倒れるシャーリーの横で、マリア達は泣くことしか出来ないようだ。仕方なく青年はシャーリーを抱き上げると、見慣れたメイドへと視線を向ける。
「カサンドラ、馬車は?」
「こちらです」
カサンドラは、右手でサラ、左手でマリアの手を取ると、二人を引き連れて馬車の方へと歩いていく。
もし、シャーリーがここで目を覚ましていれば、婚約者によって公衆の面前でお姫様抱っこされている状況に、再び意識を飛ばしたことだろう。
「驚きました、まさか、お仕事時間にお嬢様の平民姿が見てみたくて仕事をサボる殿方がいるとは」
「だから、言い方をもう少し包み隠してもらいたい」
馬車の中でカサンドラから冷たい視線を向けられたのは、早退をしてきたマックスだった。何故なら、魔道士団の詰所にわざわざ来たジャックが、
「いやー、うちの嫁(クイーン)が着せて差し上げたシャーリー様の平民姿が可愛いのなんの。まぁ、一番可愛いのは、うちの嫁(クイーン)だけどな、ガハハハハ」
と自慢しに来たからだ。嫁自慢は別に気にならないが、シャーリーの平民姿となると話が違う。
『なんでジャックが見れて、婚約者の俺が見られないんだ!』
その思い一つで仕事をやっつけ、シャーリーの耳飾りに付けた位置情報が分かる魔法を頼りに追跡してきたのだ。
「もう、それ、犯罪者ですよね」
「面目ない」
護衛達の後ろに控えていたカサンドラは、シャーリーが馬に蹴り殺されそうになった瞬間、そばを離れたことを後悔していた。近くにいれば、自分が、盾になれたのにと、涙で視界が歪んだ。
それなのに、何処からともなく現れたマックスが、片手で暴れ馬を止めるという人間離れした技を発揮したのだ。無論、魔法を使ったのだろうが、後追い自殺すら考えた覚悟を返してほしい。
「お嬢様には、耳飾りの秘密は黙っておきます」
いくら婚約者と言えども、盗聴に加え位置情報まで把握されていては、ゆっくり眠ることも出来ないだろう。
「感謝します」
貧乏といえども貴族である男爵家三男が、平民メイドに頭を下げた。多分、一生ネタにされるのだろうなと、マックスは覚悟を決めるしかなかった。
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