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3 コチラも一つ質問をしていいですかにゃ?

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 意識が戻る。
体の脱力感が酷く手を動かす……いや、瞼を開くことさえ出来ない。
…………。

「大丈夫ですかにゃ?」

例の猫耳少女が、体を揺さ振り起こそうとしている。さすがに神の部下だけあり異世界に飛ばされた程度では、俺みたいに、ならないらしい。

「はぁ。仕方がないですにゃ。私の体力を少しあげるので起きてくださいにゃ」

何だよ……その言い方は、俺を自殺まで追いやったくせに上から過ぎる。

 猫耳少女の手が俺の胸に置かれる。
とても小さい。そして、胸がほのかに暖かくなる。
体中に暖かさが行き渡り体が動くようになる。
瞼を開き正面を見る。

「はい。出来ましたにゃ」

目の前に広がるのはーー





ーー猫耳少女の顔だった……

「なぁ。田島ちょっと、どいてくんね?」

「にゃ。分かったにゃ……」

ゆっくりと体を起こし周りを見る。
 殺風景とした草原が地平線の彼方まで広がっている。
この場に居るのは、俺と猫耳少女だけ。

「ここって一体どこなんだ?」

まず、異世界転生の基本は場所の確認だ。
相手が俺を自殺まで追いやった田島であれ、聞き出せる情報は聞き出すべきだ……と、俺は思う。
 あぐらをかき、猫耳少女の前に座り込む。

「えーっとですにゃ…………」

「うん」

「分かりませんにゃ☆」

「よし、食うか……」

「え!? ちょっ! やめてくださいにゃ!」

口を開け食べるフリをする。
しかし、これだけでビビっており体がすくんでいる。
 口を閉じると落ち着いた様に安堵のため息をつく。

「…………お前って本当に田島?」

「にゃ? 確かに田島ですにゃ。どうしたのですかにゃ?」

「いや。俺の知っている田島は、ちょっとチクっただけですぐに殴って来るし、死ぬ直前まで殴られていたよ?」

「あぁ……それはですにゃ。神様に監視されてるんですにゃ」

「って言う事は、俺は何をしても文句を言えないって訳?」

どす黒い笑顔を浮かべ聞く。

「ま、まぁ。そうなります……にゃ……」

か細い声になり言葉が途切れ途切れになっている。

「コチラも、一つ質問をしても良いかにゃ?」

「ん? 別に良いが」

「なんで、急に態度が大きくなったんですかにゃ? さすがにイジメていた相手に態度が大きい感じがするにゃ」

「なぜって……俺が、暗部だからだよ?」

「暗部? 暗殺部隊の事ですかにゃ?」

「そうそう。まぁ、俺って結構エリートだったから幹部とか任されてた訳。丁度、暗殺稼業も飽きてきたしイジメられてたし死のうかなぁーって。イジメられてたのは、辛かったけどね」

「え? それじゃあ!なんで、抵抗をしなかったのですかにゃ!」

「だから、言っただろ。つまり俺は、人生に飽きてきたんだよ」

「そんにゃ……」



作 マイマイ
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