眩しい君の隣へ。

初恋

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第5話 笑うじゃん。

「でも一花もいないんでしょ」

大きく息を吸った若槻が,拗ねたようにベンチに座り直す。

「その聞き方は失礼だと思うんだけど。後,いるからね,私」
「え"一花いんの?!」
「1年くらい前,からかな」

もう,そんななのか。

「いつ会ってんの? 全然聞いたこと」
「まぁ,ちょっと年上だからね」
「年…?!」
「彼,大学生なの。殆ど行ってないみたいだけど」
「あー」

そんなに?
流石に社会人は私だって選ばない。

「いいの? 男と2人きりとか」
「…」

びっくりして,言葉に詰まる。

「そんなこと,考えたことなかった」
「それはそれで,ちょっと刺さるんだけど」
「でも,大丈夫。多分そんなこと気にしないから」
「大人なんだ」

その声があまりに気に入らなそうで,つい表情が緩む。

「…笑うじゃん」
「え?」

唐突に,若槻が静かな声を出した。

「一花が笑うとこ,初めてみた」
「普段笑うようなこと,無いからでしょ。今のは若槻が面白かっただけ」

後,そんな若槻よりもずっと。

「私の彼氏は,若槻よりもずっと子供っぽい」
「へー。何で付き合うことにしたの? 元々知り合いとか?」
「好きって,言ってくれたから」

部屋着でコンビニにいた彼に,傘を貸して。
2回目に会った時,穏和な表情でそう言われたから。
外面とのギャップはすごかったけど,それだけで十分。
 
「え? それだけ?」
「そう」
「好きじゃないの? 相手のこと」
「好きだよ」

多分ね。
好きって言ってくれるし,必要としてくれるから。
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