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13.嫁き遅れる
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二人のやり取りを見ていたソロが蹴られた尻を撫でつつ、苦い顔で言った。
「ルイーズ、俺の娘を口説くな。お前は何人の女の婚期を逃させれば気がすむんだ?」
「おや、先生。失礼な。私はただ可愛いものは可愛いと言っているだけです。もちろん、女の子たちの恋路を邪魔したことは一度もありませんよ。むしろ応援しているほうです! 恋をした子なんて五割増しで可愛くなりますし、結婚した日には、幸せそうな笑顔が蕩けるような愛くるしさですから!」
力説するルイーズに、ソロは呆れ返った顔をしていたが、これを聞いて黙っていられなくなったのが、屋敷の老執事である。
長年伯爵家に仕え家政を采配してきた彼は、一家の内情も知っていた。そして、ルイーズがいつまでも男装し、夜会にまで出てしまった事を憂いている一人である。
「失礼ながら、セロ殿。お嬢様が他の女性の婚期を逃させたとはどういう事でしょうか」
「あの……お嬢様は止めてくれないかな……」
この大女に向かってお嬢様はないだろうとルイーズは嘆いたが、老執事は優美な笑みを浮かべて返すのみである。無言の迫力に視線を泳がせたルイーズが逃げるようにローナの機嫌を取り始めた。そんな彼女を横目にセロはにやにやと笑う。
「どうもこうも、田舎でルイーズが男女を問わず、どれだけ泣かせてきたか。数知れずだ」
「それはもしや、お嬢様が故郷では数多の男性を袖にしてこられたという事でしょうか。女性がたは男性を奪われて嫉妬し、悔し涙の一つでも流してくださいましたか」
「それはとんだ悪女だな」
「この際、悪女でもようございます。さ、いかがですか。お嬢様は殿方に恋い焦がれたことはございましょうか」
ソロは老執事が何を期待しているか分かった。ルイーズを見て大変残念なものを見る顔をした後、今にも泣き出しそうな執事の肩を慰めるようにして叩いた。
「ルイーズは、小さいものが、人間だろうが何だろうが好きだ」
「存じ上げております」
「そして、見て分かる通り、この身の丈だ。田舎でルイーズよりも背の高い者など、まずいない」
「王都でも同様でございます」
「だから、ルイーズに関わる女子供は、大抵こいつがべた褒めして可愛がるものだから、理想がどんどん高くなってだな」
「……はい」
「無理強いしてくるような男は、ルイーズが激怒して叩きのめすものだから、ますます懐かれてだな」
「……それは、大変勇ましいですな」
もうすでに老執事の目は頼むから止めてくれと語っていたが、ソロはため息を吐いて教えてやった。
「ルイーズと同じくらい優しくて誠実な男じゃなきゃ結婚しないと、口を揃えた。だから、こいつは親も泣かせているんだ」
「…………」
「王都でも同じ事が起こる。俺が保証してやろう」
「……さようでございますか」
老執事はもう泣きそうである。ソロも自分の娘も被害者の一人だと思っているから、ローナへ弁明しているルイーズを睨みつけた。
「ルイーズ」
「はい、何でしょう。先生」
「これ以上犠牲者を出すんじゃない。貴族の家にとって嫁き遅れると言うのは、不名誉な事なんだぞ」
「分かっております。親御さんから、さんざん苦情を言われましたからっ―――」
女子供に優しく接する事は、ルイーズに他意はなかった。
ただ可愛くて仕方がないのを、態度に出してしまっていただけだ。
自身は恋愛には一切興味関心を抱けないが、女の子たちが嫁いで幸せになってくれることを心底願っていた。だが、『結婚します』と伝えにきた子に『幸せになって』と祝福したら、泣かれた。
言葉が悪かったのだろうかと色々変えてみても、同じだった。
あげくに女の子たちの親から『娘が結婚を止めると言い出した』と嘆かれるようになって、これはまずいと思った。何故かはわからないが、自分が小さくて愛らしいものを褒めると、周囲は大迷惑らしい。
だから、ルイーズは表立って、婚前の女性たちに対して口に出すのを堪えるようになった。ローナだけは彼女の許可を得ているため、思う存分褒められるのは嬉しい。
「――ですから、女の子はなるべく堪えています!」
「良い心がけだと言いたいところだが……男ならいいと思っているんじゃないだろうな」
図星を突かれたルイーズはうっと詰まる。
「でも、苦情を言われたのは、女の子たちの親ばかりです」
「当たり前だ」
ソロは呻いた。男子の親であれば、何の障りもないのだ。
息子に求婚させればいいし、実際それも多かった。だが、ルイーズは庶子とはいえ伯爵家の令嬢である。求婚できる程の身分の者がそもそも限られていたから、話を持っていっても事情を知っていた家人が断った。
そもそも彼女自身が婚姻に対して関心を抱かなかったから、話は全部流れている。男からすれば、全員が振られた態となるのだ。
親も文句は言いにくい。
「ですから、王都で可愛い男の子を褒めるくらい、許される――」
「訳あるか!」
一刀両断されて衝撃を受けるルイーズに、ソロは呆れた顔をした。
「まさか、もうしでかしたんじゃないだろうな?」
「は、はい……?」
「好みの男を早々に見つけて、べた褒めしていないだろうなと言っている」
ルイーズは冷や汗をにじませた。
救いを求め、黙って見守っていたリュンクスを見返せば苦笑しているだけで、ローナからは冷たい視線を浴びせられる。
誰も助けてくれない。
だが、その短い沈黙で、ソロは状況を理解したらしい。
「……やらかした後か」
「まだ一人だけです!」
「一人で十分だ。これ以上、被害者を増やすな!」
「はい!」
特大の雷が落ちて、ルイーズは身を竦める。
「それで、一体どこの誰だ」
「聞いて下さいますか⁉」
「そいつの美辞麗句はいらないから、端的に言え」
ソロはルイーズの扱いに慣れているだけあって、容赦がない。
「えぇと……アルエ王子殿下です」
「……何だって?」
「先生、耳が遠くなりました――痛い!」
頭をめいっぱい叩かれてルイーズはその先が続かない。ソロは、リュンクスを睨みつけた。
「リュン、お前は何をしていた。この暴走癖のある姉を止めるのがお前の役目だぞ⁉」
「まさか。万能な先生にもできない事ですから、私などとても」
優美な笑みに、冷ややかなものがまじる。彼は眼前で師が姉の腹部を強打し、更に頭を叩いた光景をしっかりと見ているからだ。
「俺に嫌味を言う余裕があるなら止めろよ……しかも、よりにもよって弟のほうか」
苦い顔をしたソロに、ルイーズは頭を擦りながら尋ねた。
「アルエ殿下が何か?」
「……。本人と直接話したのか?」
「はい。先日の夜会で初めてお会いしたのですが、私たちを田舎者と侮ることもなく、快く応じてくださいましたよ。見目麗しいお姿もさることながら、利発そうなかたでした。話していて、とても楽しかったですね」
「普通は逆なんだがな……」
「逆とおっしゃいますと」
「レオンハルト王太子はいなかったのか」
すると、ルイーズは見る見るうちに顔を強張らせ、不機嫌の極みに陥った。
「いましたよ。沢山の可愛い令嬢に囲まれて、羨ましかったです。それを私も態度に出してしまっていたのが悪かったのですが、その後も嫌味を言ってきて、しつこいし、背が高すぎるし、本当に可愛くありませんでした!」
「……やっぱり逆だな。世間ではレオンハルト王太子への評価は高いが、アルエ王子は侮られる一方だ」
「それはおかしいですね。王太子殿下の才覚がどうなのかは知りませんが、アルエ殿下は賢明なかたに見えましたよ」
ソロは怪訝そうなルイーズを黙って見返していたが、苦笑を漏らして頷いた。
「お前が自分の目で見て、そう思ったのなら良いだろう」
「では、アルエ殿下を可愛いと思うのは許していただけますか!?」
「立場を弁えればな。お前は今、弟の代理とは言っても、伯爵家を背負って立つ者だ。くれぐれも浅慮な真似はしないように」
釘を刺したソロだが、満面の笑みで頷くルイーズに一抹の不安を覚えたのは、彼だけではない。
リュンクスだけは笑みを深めて頷いていたところが、さらに周囲の人々の心配を煽った。
「ルイーズ、俺の娘を口説くな。お前は何人の女の婚期を逃させれば気がすむんだ?」
「おや、先生。失礼な。私はただ可愛いものは可愛いと言っているだけです。もちろん、女の子たちの恋路を邪魔したことは一度もありませんよ。むしろ応援しているほうです! 恋をした子なんて五割増しで可愛くなりますし、結婚した日には、幸せそうな笑顔が蕩けるような愛くるしさですから!」
力説するルイーズに、ソロは呆れ返った顔をしていたが、これを聞いて黙っていられなくなったのが、屋敷の老執事である。
長年伯爵家に仕え家政を采配してきた彼は、一家の内情も知っていた。そして、ルイーズがいつまでも男装し、夜会にまで出てしまった事を憂いている一人である。
「失礼ながら、セロ殿。お嬢様が他の女性の婚期を逃させたとはどういう事でしょうか」
「あの……お嬢様は止めてくれないかな……」
この大女に向かってお嬢様はないだろうとルイーズは嘆いたが、老執事は優美な笑みを浮かべて返すのみである。無言の迫力に視線を泳がせたルイーズが逃げるようにローナの機嫌を取り始めた。そんな彼女を横目にセロはにやにやと笑う。
「どうもこうも、田舎でルイーズが男女を問わず、どれだけ泣かせてきたか。数知れずだ」
「それはもしや、お嬢様が故郷では数多の男性を袖にしてこられたという事でしょうか。女性がたは男性を奪われて嫉妬し、悔し涙の一つでも流してくださいましたか」
「それはとんだ悪女だな」
「この際、悪女でもようございます。さ、いかがですか。お嬢様は殿方に恋い焦がれたことはございましょうか」
ソロは老執事が何を期待しているか分かった。ルイーズを見て大変残念なものを見る顔をした後、今にも泣き出しそうな執事の肩を慰めるようにして叩いた。
「ルイーズは、小さいものが、人間だろうが何だろうが好きだ」
「存じ上げております」
「そして、見て分かる通り、この身の丈だ。田舎でルイーズよりも背の高い者など、まずいない」
「王都でも同様でございます」
「だから、ルイーズに関わる女子供は、大抵こいつがべた褒めして可愛がるものだから、理想がどんどん高くなってだな」
「……はい」
「無理強いしてくるような男は、ルイーズが激怒して叩きのめすものだから、ますます懐かれてだな」
「……それは、大変勇ましいですな」
もうすでに老執事の目は頼むから止めてくれと語っていたが、ソロはため息を吐いて教えてやった。
「ルイーズと同じくらい優しくて誠実な男じゃなきゃ結婚しないと、口を揃えた。だから、こいつは親も泣かせているんだ」
「…………」
「王都でも同じ事が起こる。俺が保証してやろう」
「……さようでございますか」
老執事はもう泣きそうである。ソロも自分の娘も被害者の一人だと思っているから、ローナへ弁明しているルイーズを睨みつけた。
「ルイーズ」
「はい、何でしょう。先生」
「これ以上犠牲者を出すんじゃない。貴族の家にとって嫁き遅れると言うのは、不名誉な事なんだぞ」
「分かっております。親御さんから、さんざん苦情を言われましたからっ―――」
女子供に優しく接する事は、ルイーズに他意はなかった。
ただ可愛くて仕方がないのを、態度に出してしまっていただけだ。
自身は恋愛には一切興味関心を抱けないが、女の子たちが嫁いで幸せになってくれることを心底願っていた。だが、『結婚します』と伝えにきた子に『幸せになって』と祝福したら、泣かれた。
言葉が悪かったのだろうかと色々変えてみても、同じだった。
あげくに女の子たちの親から『娘が結婚を止めると言い出した』と嘆かれるようになって、これはまずいと思った。何故かはわからないが、自分が小さくて愛らしいものを褒めると、周囲は大迷惑らしい。
だから、ルイーズは表立って、婚前の女性たちに対して口に出すのを堪えるようになった。ローナだけは彼女の許可を得ているため、思う存分褒められるのは嬉しい。
「――ですから、女の子はなるべく堪えています!」
「良い心がけだと言いたいところだが……男ならいいと思っているんじゃないだろうな」
図星を突かれたルイーズはうっと詰まる。
「でも、苦情を言われたのは、女の子たちの親ばかりです」
「当たり前だ」
ソロは呻いた。男子の親であれば、何の障りもないのだ。
息子に求婚させればいいし、実際それも多かった。だが、ルイーズは庶子とはいえ伯爵家の令嬢である。求婚できる程の身分の者がそもそも限られていたから、話を持っていっても事情を知っていた家人が断った。
そもそも彼女自身が婚姻に対して関心を抱かなかったから、話は全部流れている。男からすれば、全員が振られた態となるのだ。
親も文句は言いにくい。
「ですから、王都で可愛い男の子を褒めるくらい、許される――」
「訳あるか!」
一刀両断されて衝撃を受けるルイーズに、ソロは呆れた顔をした。
「まさか、もうしでかしたんじゃないだろうな?」
「は、はい……?」
「好みの男を早々に見つけて、べた褒めしていないだろうなと言っている」
ルイーズは冷や汗をにじませた。
救いを求め、黙って見守っていたリュンクスを見返せば苦笑しているだけで、ローナからは冷たい視線を浴びせられる。
誰も助けてくれない。
だが、その短い沈黙で、ソロは状況を理解したらしい。
「……やらかした後か」
「まだ一人だけです!」
「一人で十分だ。これ以上、被害者を増やすな!」
「はい!」
特大の雷が落ちて、ルイーズは身を竦める。
「それで、一体どこの誰だ」
「聞いて下さいますか⁉」
「そいつの美辞麗句はいらないから、端的に言え」
ソロはルイーズの扱いに慣れているだけあって、容赦がない。
「えぇと……アルエ王子殿下です」
「……何だって?」
「先生、耳が遠くなりました――痛い!」
頭をめいっぱい叩かれてルイーズはその先が続かない。ソロは、リュンクスを睨みつけた。
「リュン、お前は何をしていた。この暴走癖のある姉を止めるのがお前の役目だぞ⁉」
「まさか。万能な先生にもできない事ですから、私などとても」
優美な笑みに、冷ややかなものがまじる。彼は眼前で師が姉の腹部を強打し、更に頭を叩いた光景をしっかりと見ているからだ。
「俺に嫌味を言う余裕があるなら止めろよ……しかも、よりにもよって弟のほうか」
苦い顔をしたソロに、ルイーズは頭を擦りながら尋ねた。
「アルエ殿下が何か?」
「……。本人と直接話したのか?」
「はい。先日の夜会で初めてお会いしたのですが、私たちを田舎者と侮ることもなく、快く応じてくださいましたよ。見目麗しいお姿もさることながら、利発そうなかたでした。話していて、とても楽しかったですね」
「普通は逆なんだがな……」
「逆とおっしゃいますと」
「レオンハルト王太子はいなかったのか」
すると、ルイーズは見る見るうちに顔を強張らせ、不機嫌の極みに陥った。
「いましたよ。沢山の可愛い令嬢に囲まれて、羨ましかったです。それを私も態度に出してしまっていたのが悪かったのですが、その後も嫌味を言ってきて、しつこいし、背が高すぎるし、本当に可愛くありませんでした!」
「……やっぱり逆だな。世間ではレオンハルト王太子への評価は高いが、アルエ王子は侮られる一方だ」
「それはおかしいですね。王太子殿下の才覚がどうなのかは知りませんが、アルエ殿下は賢明なかたに見えましたよ」
ソロは怪訝そうなルイーズを黙って見返していたが、苦笑を漏らして頷いた。
「お前が自分の目で見て、そう思ったのなら良いだろう」
「では、アルエ殿下を可愛いと思うのは許していただけますか!?」
「立場を弁えればな。お前は今、弟の代理とは言っても、伯爵家を背負って立つ者だ。くれぐれも浅慮な真似はしないように」
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