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アイデンティティ
揺りかごは走る
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蒼音が立ち上がった。
彼に続いて二人も覚悟を決めた。
汽車はゆっくり停車すると、定位置でドアが開いた。
四人はお互いに目配せをして頷きあうと、固唾を飲んで列車に乗り込んだ。
買っておいた指定席に腰を下ろすと、今度こそ本当に一息つくことができた。
蒼音と茜音が並び、琴音と涼介がその横の座席に座った。
茜音の姿は他の人には視えないし、まだ幼児なので、もちろん運賃無料だ。
お盆が終わったとはいえまだ夏休み、乗車率はそこそこな具合であった。
しばらく停車したのち、発車のベルとともにゆっくりとドアは閉じられた。
そして、ゆっくりと助走をつけて、いよいよ列車は走り出した。
不安と希望がないまぜになった四人を乗せて、列車は月夜の線路をガタゴトと突き進んだ。
アナウンスが告げている。
この快速列車は明日の早朝まで停車することなく、夜通しで運転するそうだ。
「あ、ほらアナウンス聞いたか?
俺の予定どおり、明日朝の終着駅までは、ゆっくり寝てられるな」
「えっとじゃあ、涼介の予定表だと、朝六時に着くのね。
あと七時間もあるのね。ゆっくり寝ておかないとね」
「本当だね、今のうちに夕飯の残り食べちゃって、洗面所で歯を磨いて、早く寝ないと明日起きれないね」
『汽車で寝るなんて、あたち初めて!!』
ここに来てようやく四人は元気を取り戻した。
もう引き返せないとわかると、俄然、肝が座るものだ。
車内改札を済ませてしまったら、急にお腹がすいた彼等は、おむすびを食べ、お菓子を食べて歯を磨いて就寝準備をした。
車内は消灯こそしなかったけど、朝から緊張しどおしだった一行は、ほどなくして眠りに落ちた。
座席はさほどリクライニング出来ないが、それでも、ガタゴトと走る列車のリズムが、 揺りかごに添う子守唄のように眠りを誘い、いつの間にか夢の中に溶けていった。
(・・・これでもう安心だよ・・・
茜音の記憶が戻ったら、聞いてみたいことがたくさんあるんだ。
いつどこで生まれて、誰とどんな風に過ごして・・・
そして、どうして幼くして亡くなってしまったの?
想い出したくないことかもしれない。
それでも………
それがはっきりしたら、もう後は心配ないよ。
小町みたいに、一緒に家族として暮らせばいいんだ。
僕がおじいさんになるまでずっと・・・
そしたら・・・
僕が死ぬときに茜音と一緒に成仏してもいいし・・
うん、これからのことは、また後で相談しよう・・・
だって・・・僕……
もう眠いよ・・・
また明日・・・・
みんなで考えよう・・・・)
そんな夢心地とは裏腹に、その頃三人の両親たちは、それぞれの置き手紙を読み終え、右往左往の真っ只中。
互の家に連絡を取り合い、ことの次第を明らかにしていた。
とにかく今は、子供たちと連絡のとりようがない。
どの列車に乗っているか、どのルートで行き着くのか、彼等が目的地の時バアの家に着くまでは、こちらからはどうしようもなかった。
友達の為に・・・
という置き手紙を信じて、琴音と涼介の両親は、我が子の力を信じることにしたのだ。
一方、蒼音の両親はといえば、母の梢がひどく狼狽していた。
そのわけは、時バアから聞かされた話だ。
手紙を読んだ母は、真っ青になって急いで時バアに電話をした。
実母である時バアから聞かされた、今回の騒動の本当の理由・・・
それは、梢の予想の範疇を超えていた。
彼に続いて二人も覚悟を決めた。
汽車はゆっくり停車すると、定位置でドアが開いた。
四人はお互いに目配せをして頷きあうと、固唾を飲んで列車に乗り込んだ。
買っておいた指定席に腰を下ろすと、今度こそ本当に一息つくことができた。
蒼音と茜音が並び、琴音と涼介がその横の座席に座った。
茜音の姿は他の人には視えないし、まだ幼児なので、もちろん運賃無料だ。
お盆が終わったとはいえまだ夏休み、乗車率はそこそこな具合であった。
しばらく停車したのち、発車のベルとともにゆっくりとドアは閉じられた。
そして、ゆっくりと助走をつけて、いよいよ列車は走り出した。
不安と希望がないまぜになった四人を乗せて、列車は月夜の線路をガタゴトと突き進んだ。
アナウンスが告げている。
この快速列車は明日の早朝まで停車することなく、夜通しで運転するそうだ。
「あ、ほらアナウンス聞いたか?
俺の予定どおり、明日朝の終着駅までは、ゆっくり寝てられるな」
「えっとじゃあ、涼介の予定表だと、朝六時に着くのね。
あと七時間もあるのね。ゆっくり寝ておかないとね」
「本当だね、今のうちに夕飯の残り食べちゃって、洗面所で歯を磨いて、早く寝ないと明日起きれないね」
『汽車で寝るなんて、あたち初めて!!』
ここに来てようやく四人は元気を取り戻した。
もう引き返せないとわかると、俄然、肝が座るものだ。
車内改札を済ませてしまったら、急にお腹がすいた彼等は、おむすびを食べ、お菓子を食べて歯を磨いて就寝準備をした。
車内は消灯こそしなかったけど、朝から緊張しどおしだった一行は、ほどなくして眠りに落ちた。
座席はさほどリクライニング出来ないが、それでも、ガタゴトと走る列車のリズムが、 揺りかごに添う子守唄のように眠りを誘い、いつの間にか夢の中に溶けていった。
(・・・これでもう安心だよ・・・
茜音の記憶が戻ったら、聞いてみたいことがたくさんあるんだ。
いつどこで生まれて、誰とどんな風に過ごして・・・
そして、どうして幼くして亡くなってしまったの?
想い出したくないことかもしれない。
それでも………
それがはっきりしたら、もう後は心配ないよ。
小町みたいに、一緒に家族として暮らせばいいんだ。
僕がおじいさんになるまでずっと・・・
そしたら・・・
僕が死ぬときに茜音と一緒に成仏してもいいし・・
うん、これからのことは、また後で相談しよう・・・
だって・・・僕……
もう眠いよ・・・
また明日・・・・
みんなで考えよう・・・・)
そんな夢心地とは裏腹に、その頃三人の両親たちは、それぞれの置き手紙を読み終え、右往左往の真っ只中。
互の家に連絡を取り合い、ことの次第を明らかにしていた。
とにかく今は、子供たちと連絡のとりようがない。
どの列車に乗っているか、どのルートで行き着くのか、彼等が目的地の時バアの家に着くまでは、こちらからはどうしようもなかった。
友達の為に・・・
という置き手紙を信じて、琴音と涼介の両親は、我が子の力を信じることにしたのだ。
一方、蒼音の両親はといえば、母の梢がひどく狼狽していた。
そのわけは、時バアから聞かされた話だ。
手紙を読んだ母は、真っ青になって急いで時バアに電話をした。
実母である時バアから聞かされた、今回の騒動の本当の理由・・・
それは、梢の予想の範疇を超えていた。
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