バグ発見~モブキャラの私にレベルキャップが存在しなかった~

リコピン

文字の大きさ
41 / 64
後編 タワー編

1-3.

しおりを挟む
1-3.

「なるほどなるほど、それで金銭的にお困りであると。いやはやしかし、それを私が『元凶』とまで仰るのは少々言い過ぎではございませんか?」

「…」

ニコニコと笑うレイヒャーに、まあ、確かに八つ当たり、言い過ぎだったかもとは思う。だけど、「原因の一部を作った」くらいは言ってもいいだろう。

「…なるべく高く買い取って。無茶は言わないけど、あまりタワーにのぼる前から時間をかけたくない」

「ええ、ええ!それはもう、私どもとお二人の間でございますから!出来る限りのご支援はお約束いたしましょう!」

だから、タワーでのドロップ品はレイヒャー商会に持ち込め、ということなんだろうけど、仕方ない。レイヒャーの笑顔に頷いて、気になったことを口にする。

「さっきの、受付の人は大丈夫?」

「はてさて、大丈夫と仰るのはこれまたどういった意味でございますかな?」

「さすがに、あの数は多すぎたかなって思って。『苔ウサギ』も『まる鳥』も見た目可愛いから。あれだけの数が虐殺されたって考えたら、」

まだ年若い彼女が気分を悪くしたとしても、不思議ではないと思ったのだ。

「なるほどなるほど!しかし、そういったご心配でしたら、無用にございますよ?彼女も窓口についてそこそこの経験を積んでおりますから」

「じゃあ…?」

一笑に付したレイヒャーに、視線で問う。

「ええ、ええ。彼女が焦ってしまったのも、やはりお二人のお持ちになったお品の質の良さが原因でございます」

「…」

「当店では、お持ちいただいたお品の質と数で、ある程度買取り金額を上乗せさせて頂いておりますが、それにしても、お二人のお持ちいただいたお品は質が良すぎた!」

興奮気味に語るレイヒャーの目は輝いていて、

「おまけに数も相当なもの!あの子もすっかり、混乱してしまったようで。まだまだ勉強中なものですから、お時間をとらせて申し訳ない」

「…査定がきちんとされるなら、時間は気にしない」

量が量だ。元から、時間がかかることは想定していた。

「そう言って頂けますと、有り難いですな。それはそうと、ミア殿」

「?」

「ミア殿に、是非お目通り願いたいと言う者がおりましてな、いかがでしょう?良ければ、お会いになって頂けますか?」

「それは、構わない」

だけど、一体、誰が―?

この地に知り合いなんて居ないはず。

その疑問に対する答えは、しごくあっさりと、部屋の扉の向こうから現れた。

現れたのは壮年の男。がっしりとした肩幅の割りに、私とそう変わらない身長。額の傷も、だいぶ薄くはなっているが、あの頃のまま、変わらない。

「…ヨーゼフ」

「お久しぶりでございます、ミア様」

ニコニコと私の名を呼ぶ彼に、私への嫌悪はうかがえない。それでも、胸は軋んだ。

「…元気だった?」

「はい、ミア様もお変わりなく」

立ち上がり、手を伸ばせば、大きくて温かな手が包み返してくれる。

―そうだ、私は彼のこの手が大好きだった

八年前、ビンデバルドの家に奴隷として売られてきたヨーゼフ、彼と手を繋ぐことが―

「…ヨーゼフ、あなたと話がしたい」

「?」

ヨーゼフの視線が私とレイヒャーを見比べる。

「レイヒャー、お願い。ヨーゼフと二人で話したいことがある」

「ええ、それはもちろん構いません。では、どこかに部屋を、」

立ち上がろうとしたレイヒャーを遮る声、

「待て、ミア。『二人で』とはどういうことだ?」

「ごめん、ブレン。だけど、お願い」

「…ダメだ」

ブレンの視線がヨーゼフを貫く。

「ブレン、大丈夫だから。警戒しなくても、ヨーゼフは平気なの」

「…」

ブレンの眉間に刻まれた皺が深くなる。納得してくれそうにないその様子に思いあぐねていると、

「では、本来お客様をお通しするような場所ではないのですが、隣の部屋をお使いください。それならば、ブレン殿も多少はご安心頂けるでしょうから」

「…」

レイヒャーの言葉に、ブレンが彼を睨むが、

「ヨーゼフ、案内を」

「かしこまりました」

ブレンの視線を受け流したレイヒャー。彼の指示に従ったヨーゼフが部屋を出る。ブレンの様子は気になるけれど、立ち止まり、こちらを待つヨーゼフの後を追った。




しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...