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Ⅰ 【完結】愛に殉ずる人【57,552字】
Ⅰ 終章 (終)
終章
存外、小さな骸―
私を思い、その内が覗けぬようにと、白布で厳重に覆われた父の骸。前王、ジュール・オランドの亡骸が神殿の横、神子のための墓地へと埋葬されていく。
「…宜しかったのですか?王家の墓ではなく…」
並んだ隣、リュシアンの言葉に頷く。
「これでいいの。ここならいつでも会いに来られるから」
頷き返したリュシアンに問う。
「治世を放棄し、民に背を向けた父が、それでも母の後を追わなかったのは、何故だと思う?」
「…陛下は、アリアーヌ様を愛しておられました」
「そう、そうね。それは否定しないわ。でも…」
狂うほどの父の嘆きを、癒せる愛ではなかった―
「…私が子を成すために、いつかは父が必要だとわかっていたから…そう思うのは考えすぎかしら?」
「…いえ」
狂って、けれど、最後の一欠片、狂い切れずに生き恥をさらした父は、間違いなく、この国の神子であった―
「…リュシアン、私は、お前の子を産むわ」
「…」
「…観念なさい。どうやら私は、お前以外の子を産めそうにはないから」
「…私では、神子様に相応しく在れません。抱えた罪が多すぎる…」
王宮に囚われ、意識の無いリュシアンの姿を突きつけられて、認めた想い。今度は、抗う男に突きつける―
「…愛しているわ」
「っ!」
「観念しろって言ったでしょう?お前は、大人しく私の夫になるしかないのよ。…お前に罪があるとは思えないけれど、それでも、無い罪を購いたいというのなら、私と、私の産む子ども達を愛しなさい」
神子を愛するくせに、十二年下の小娘を愛する覚悟の出来ない男を捕まえる。
「…アリアーヌ様の、御心のままに…」
「ふふ。そうするわ」
その答えを、今は許そう。けれどいつか、追い詰めて、跪かせて、手に入れる。
命捧ぐ、愛を―
(終)
存外、小さな骸―
私を思い、その内が覗けぬようにと、白布で厳重に覆われた父の骸。前王、ジュール・オランドの亡骸が神殿の横、神子のための墓地へと埋葬されていく。
「…宜しかったのですか?王家の墓ではなく…」
並んだ隣、リュシアンの言葉に頷く。
「これでいいの。ここならいつでも会いに来られるから」
頷き返したリュシアンに問う。
「治世を放棄し、民に背を向けた父が、それでも母の後を追わなかったのは、何故だと思う?」
「…陛下は、アリアーヌ様を愛しておられました」
「そう、そうね。それは否定しないわ。でも…」
狂うほどの父の嘆きを、癒せる愛ではなかった―
「…私が子を成すために、いつかは父が必要だとわかっていたから…そう思うのは考えすぎかしら?」
「…いえ」
狂って、けれど、最後の一欠片、狂い切れずに生き恥をさらした父は、間違いなく、この国の神子であった―
「…リュシアン、私は、お前の子を産むわ」
「…」
「…観念なさい。どうやら私は、お前以外の子を産めそうにはないから」
「…私では、神子様に相応しく在れません。抱えた罪が多すぎる…」
王宮に囚われ、意識の無いリュシアンの姿を突きつけられて、認めた想い。今度は、抗う男に突きつける―
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「っ!」
「観念しろって言ったでしょう?お前は、大人しく私の夫になるしかないのよ。…お前に罪があるとは思えないけれど、それでも、無い罪を購いたいというのなら、私と、私の産む子ども達を愛しなさい」
神子を愛するくせに、十二年下の小娘を愛する覚悟の出来ない男を捕まえる。
「…アリアーヌ様の、御心のままに…」
「ふふ。そうするわ」
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命捧ぐ、愛を―
(終)
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