夜間学校

SIN

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夜間学校

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みんなは『夜間学校』って知ってる?
私は『春風さやか』中学3年生、って言っても17歳、
普通なら高校に通っているはずなんだけどちょっと事情があって、
『夜間学校』ってところに通っている、
知らない人のために説明しておくと、
一般的にいう昼の学校に通えなかったり、
通えなかった人たちが通う、夜に授業をする中学校なんだ、
だからクラスメイトにもいろんな人たちがいる。
『よねさん』自称60歳、どう見ても80歳は超えている、
微妙なサバを読まれても
どう突っ込んだらいいのかわからないけど、
よねさんはとても明るく若々しくいようとしている、
サバ読みも頑張ってボケている、
あっ、本当にボケてるわけじゃないからね、
話を聞くと戦後の混乱で学校に通えなかったみたい、
色々と大変だったんだって、
で、この歳まで中学を卒業できなかったことをずっと気にしてて
思い切って通うようになったんだ。
『ケンジさん』こちらは自称『ケンジさん』見た目は30半ばに見える
名前が自称っていうのも不思議なんだけど半袖の奥から見える入れ墨っぽい、
(ぽいでいいよね)うんん、言い間違えた、
きれいな芸術がチラチラ見える
素敵なお兄さん、ということで、詳しく事情は聞いてない、むしろ聞けない、
うん、聞かないほうがいいかも。
『七海桜子さん』あだ名は何故か『サッチー』、
あれ?名前だけ聞くとなんだか普通だと思った?
でも顔立ちを見ると日本人離れしたちょっとはっきりしたかっこいいお姉さん、
ブラジルからやってきた日系三世なんだって、
だからちょっと何を話しているのかわかんない時がある、
英語でもないしポルトガル語だって教えてもらった、
頑張って日本語覚えているとこって感じ。
ほかにも何人かいるけどよくお話しするのはこの3人かな?
えっ?よねさんやサッチーと話すのは何となくわかるけど
ケンジさんとも仲がいいのかって?
だって話すと気のいいお兄さんだもん(芸術以外は)。

あれ?私の事は話さないのかって?
うーん、色々あってね、やっぱり話したくないこともあるし、
中学のとき家出しちゃって、それで学校に通えなくなっちゃって、
このあたりで許してね、ごめん、あんまり話したくないんだ、
でも学校だけは卒業したくって通ってる。

『夜間学校』は名前通り夜に授業をするのだけど、
やっぱり外は暗い、
暗くて夏だからという理由だけで怖い話をしようと言い出したのは私、
サッチーは始め何のことだかわからなかったみたいだけど、
みんなで説明したら無茶苦茶乗り気になった。
「イイデスネー」
サッチーの今の流行の言葉だ、
始めは外国人と見られるのが嫌だったみたいだったんだけど、
最近は自分の持ちネタにしている。
よねさん曰はく
「怖い話は死ぬほど話せる」とのこと
本当に死なれたら困る。
私はあまりこういう話を知らないけど聞くのは嫌いじゃない、
「そういえば」
口を切ったのは意外にもケンジさんだった。
「ここは学校だろ、七不思議じゃないけど出るんだって」
みんなでケンジさんのほうを見る、
「走る二宮金次郎とか?」よねさんが尋ねる、
二宮金次郎ってなんだか昭和チックな名前、
で、二宮金次郎ってだれ?
「ハヤイノデスカ?」サッチーは見当違いの質問をしている。
「いやいや、シンプルに幽霊だよ」ケンジさんが笑いながら言う
それが一番怖いんだけど、
自分から話を持ち掛けてなんだけど、だんだんと怖くなってきた。
「幽霊?」
「そう、幽霊」
「どんな幽霊なの?」私が訪ねると、
「それが一人や二人じゃないんだ」
「たくさん?」
「そう、たくさん」
背筋がぞっとする。
「お迎え?」
よねさんちょっと黙ってて!
「ミニイキマショウ!」
サッチーよ、腕を引っ張るな!
言い出した私が行かないわけにはいかず、
みんなで校舎を回ることになる、
よねさんは膝が痛いという理由でお留守番、
1階の教室から階段を上がり
まずは定番の音楽室へ向かうことに、
この時間にベートーベンの顔は見たくない。
階段を上がり終え、音楽室に差しかかったころ、
「ギャーーー!!」この世の終わりのような叫び声が下から聞こえる、
3人は互いに顔を見ると階段へ向かって走り出した、
私は腰を抜かしそうになったけど、
こんなところに1人にされたらたまったもんじゃない、
「おばあちゃんが!おばあちゃんが!」
さらに下から叫び声が聞こえる、
階段を降りて教室に戻ったのは私が一番早かった、
「ハヤイデスネ、キンジロウデスカ?」
サッチーはちょっと静かにしててくれる?
「私倒れたの!?私倒れちゃったの!?」よねさんが元気に聞いてくる、
よねさんも1回だまろっか。

しばらくしてみんなが落ち着きを取り戻したあと
さっきの1階の様子を聞くとよねさんも叫び声を聞いたらしい、
クラスメイトはもう帰ったのか私たちだけしかいない。
「ワクワクワク」サッチー、それは口に出さなくていい、
「わっ!」その時、明かりが消えた、
暗闇と静寂があたりを包む、もう言葉が出ない、
「大丈夫」ケンジさんがオイルライターに火をつけてくれた、
「これからどうする?」ケンジさんか聞いてくる、
「イイデスネー」サッチーよ、まだ何も決まっていない、
「なんまんだぶ、なんまんだぶ」よねさんナイスお約束、
「このままここにいるわけにもいかないだろ」ケンジさんが正論を言う、
話し合いの結果、
やっぱりここにずっといるわけにもいかないのでライターの火を頼りに教室を出ることに、
「イイデスネー」何もよくない、
静まり返った廊下は不気味そのものだ、
私たちの校舎は旧校舎と呼ばれる場所で結構古い建物で歩くたびにギシギシという、
真っ暗な中、一歩一歩進むしかない。
するとどうだろう、向こうからもギシギシと音が近づいてくる、
あぁ、これで私の人生が終わったなと思ったとき、
明かりがついた、向こうの人が持っていた懐中電灯をつけたのだろう、
人がいる!助かった!心からそう思ったんだ、
「イイデスネー」サッチーOK!正しい使い方だよ、
曲がり角に明かりが見える、
私たちは明かりのほうへ自然と早足になる
明かりを持つケンジさんが先頭を行く、
そして曲がり角に差し掛かったとき。

「ギャーーー!!」さっき聞いたことのある叫び声だ、
「人魂!人魂!人魂!人魂!人魂!」
10回言ったら何かあるのだろうか、
どうしたらライターを人魂と間違えるのか?
目の前で中学生くらいの女の子が3人腰を抜かしている。
「ダイジョウブデスカ?」サッチーが彼女たちに近づく
「ガイジンサーン!」お前らはサッチーの仲間か!
「なんまんだぶ、なんまんだぶ」よねさん、ややこしくなるからやめてね、
「ギャー!さっきのばあちゃん!さっきのばあちゃん!」
ほら、混乱しているじゃない、
ん?さっきのおばあちゃんって?
「今度は若い女もいるっ!」
3人とも私を指さして震えている。
失礼な奴らだ、ここは人生の先輩としてきちんと指導しないと、
私は彼女たちに近づく、
「幽霊が幽霊がぁっ」ついに彼女たちは気を失った、
本当に失礼な彼女たちだ、でも後輩をこのままにしておくこともできない。
仕方がない、
抱きかかえ起こそうとする、が、
私の手は彼女たちの体をすり抜ける、
私はいまだかつてない恐怖を感じた
「彼女たちが幽霊?」
私は恐ろしいものを体の芯から感じている、
身体が透けていく感じ、
こんな感覚は苦痛だ、
この世界が解けていく感覚。
「そうなんだ・・・」
今この世界が解けていく。
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