異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ

文字の大きさ
29 / 182

第29話 試作品を作ってもらおう

 美幸が帰ったあと、今回の獲物を換金し終えた紗夜が、おれにお金を差し出してきた。

「いいのかい、紗夜ちゃん。もっと貯金ができてからでもいいんだよ?」

「いえ! いつまでも待ってもらってても悪いですから!」

 初めて会ったときの、魔物モンスター素材製の武器が有効だと教えてあげたときの情報料だ。後払い分は5万円だけだったはずだが……。

「だとしても多すぎるよ。これはなんのお金?」

「勉強代です! 今日もたくさん教えてもらえましたから!」

「う~ん、でもなぁ」

「受け取ってください。あたし、ちゃんと自立したいので、こういうのはしっかりしておきたいんです」

 どうしようかと肩をすくめてフィリアを見やる。彼女は柔らかく頷いた。

「受け取るべきです。葛城様は愛らしいので、庇護したくなるお気持ちは痛いほどよくわかります。けれどそれは行き過ぎると、相手を下に見て、支配することにもなります。それはお互いに望むところではないはずです」

「……それもそうか。わかった。受け取るよ」

「はいっ、ありがとうございます! それと、これなんですけど……」

「おれがあげたナイフじゃないか」

「ちゃんと装備を買えるようになったら、お返しするつもりだったんですけど……。結構、気に入っちゃってて……返す代わりに、買わせてもらってもいいですか?」

「この流れじゃ断れないよ。えぇと、じゃあ、中古だから半額で」

 紗夜は提示した金額を素直に払ってくれた。

「えへへっ、じゃあ、これからもよろしくお願いしますっ」

 そうして紗夜は笑顔で帰っていった。

「……あのナイフ、葛城様に渡されたときはまだ新品でしたでしょうに」

「紗夜ちゃんには黙っててね?」

 するとフィリアは、いつものように唇に指を立てて微笑む。

「はい、もちろん秘密です。それくらいの優しさは、あっていいと思います」

「ありがと。じゃあ、おれたちも行こうか」

「はい。例の探索者を増やすアイディアですね。どちらに?」

「武器屋『メイクリエ』がいいかな。試作品を作ってもらおう」


   ◇


「いらっしゃーい、ってフィリアじゃん。今日も店番やってくれんの~?」

 カウンターに頬杖をついていた武器屋『メイクリエ』の女店主は微笑んだ。

 ぼさぼさの茶髪をひっつめにして無理に整えたような髪型。眠たそうな目をしていて、表情にはしまりがない。着込んだ厚手の作業ツナギは胸元がだらしなく開かれ、中のシャツがあらわになっている。全体的にゆるそうな雰囲気が漂う女性だ。

「ごきげんよう、ミリアム様。今日はお仕事の依頼に参りました」

「えー、やだー。働きたくなーい」

「わたくしも不労所得は夢ですが、今は働くべきときです。どうせこれから忙しくなるのですから、今のうちに慣れていてください」

「えー、忙しいのはやだなぁー。でもフィリアに言われるんじゃー、しょうがないかー」

 ミリアムは頬杖をやめ、こちらを真っ直ぐに見上げた。

「それで~? どんな仕事?」

「それはこちらの一条様から」

 自己紹介もほどほどに、おれはミリアムに説明した。

 ミリアムは、ふーむ、と息をついた。

「なるほど~、魔物モンスター除けかぁ~」

 美幸が採掘しているときの一番の障害は、大量に寄ってくる魔物モンスターだった。

 迷宮ダンジョン内を進むだけなら、歩き方を少し変えるだけでずいぶんと安全に進むことができる。

 しかし採掘時はそうはいかない。鉱脈を砕くには、どうしても音が出る。

 音に敏感なエッジラビットが大量にやってくるし、それにつられてステルスキャットも現れる。一箇所に長居すれば、ミュータスリザードにも捕捉されてしまう。

 迷宮ダンジョン内を普通に探索したときに出会う数より遥かに多い。

 そんな大量の魔物モンスターから、採掘中ずっと守りきれる冒険者なんておれたちの他にはいない。仮にいても、探索者全員を護衛するにはまったく足りない。

 だったら、魔物モンスターが近寄ってこないようにすればいい。

 では、どうすれば魔物モンスターは近寄ってこないのか?

 その部分こそ、おれの専門分野だ。

 ミリアムにはしっかりと構想を伝えておいた。

「いいよ。ちょっと複雑そうだけど作ってみる。結構かかるけど、待てる?」

「大丈夫、急ぎじゃない」

「いいえダメです、一条様。ミリアム様は期日を決めないと、のんびりだらだらしてしまうタイプの方なのです。ミリアム様、明日までにお願いいたします」

「うえー、明日は厳しいってー。せめて明後日まで待ってよ~」

「はい。では、明後日でお願いいたします」

「へーい……しょーがないな~。報酬は弾んでよ~?」

「素材で払ってもいいかな?」

「物によるかなぁ。エッジラビットの爪とかなら間に合ってるよ?」

「グリフィンのくちばしに、爪、羽根のセットでどうだろ」

 持ってきた素材を見せると、ミリアムは上機嫌に頬をだらしなく緩ませた。

「いいねぇ~。そういうの大歓迎。ちょっともらい過ぎになるから、品物ができたら、お釣りも一緒に渡すね~」

「よろしく頼むよ、ミリアムさん」

 依頼が済んで、おれたちは店を出た。

「さてと、明後日までどうしようか? 適当に迷宮ダンジョンに潜って稼ごうか?」

「……いえ、お休みにしませんか?」

「おや、いいの?」

「はい。今日は、夜更かしすることになるかと思いますので」

「なるほど。さては動画を公開する気だね?」
感想 16

あなたにおすすめの小説

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。