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第1部 第3章 心優しき魔法使い -海水淡水化装置-
第31話 番外編④ 無知なる者の空回り
「くっそぉ! どうなってんだ、全然売れねえじゃねえかよ!」
ジェイクは苛立ちをそのまま口にした。
工房に住み込み始めて一週間、ジェイクにしては真面目に働いた。
出来が良くはないとはいえ、まともに使える剣を数十本も仕上げたのだ。作業工程を飛ばせる【クラフト】は、普通より何倍も早く作ることができる。そこだけはシオンが使っていたときと同じだった。
だが買い手がつかない。
地方の町や村では、鍛冶屋が工房と店舗を構えていることが多いが、このリングルベンほどの大都市になれば、製造と販売は別の店が担うことが多い。
すなわち、鍛冶屋が工房で生産した武具を武器屋に卸して、武器屋が客に販売する流れだ。
ジェイクが作った剣は、どこの武器屋にも買い取ってもらえなかった。
シオンから受け継いだ【クラフト】で作ったと言えば、みんな目の色を変えて商品を見に来てくれたが、実物を見るなり鼻で笑って帰っていくばかりだった。
「しょうがないじゃない。出来が悪いってことなんでしょ」
「それでもよぉ、使えねえわけじゃねえんだ。初心者向けにゃあ、むしろ手頃のはずだぜ」
そもそも客層が違うのだと、ジェイクは気がついていない。
ジェイクが工房を構えたのは、優秀な鍛冶屋がひしめく区画である。それらと取引する武器屋は高級志向であり、粗悪品を安く売るような店はもっと別の区画にある。取引先の選定が間違っているのだ。
だが、シオンの【クラフト】頼りで活動してきたジェイクたちには、武器屋に客層の違いがあることなどわからない。
「職人ギルドに登録し忘れてるってことはないよな?」
「当たり前だ。ここを買ったときに一緒にやってある」
エルウッドの問いにすぐ答えて、ハッと気づく。
「そうか、わかったぞ。職人ギルドは閉鎖的らしいからな。新参者の俺らに嫌がらせしてやがるんだ!」
「そんなことして、なんか得があんのか?」
「やつらビビってんだよ。俺の【クラフト】が成長したら、自分たちの武具が売れなくなると思って、今から潰しにかかってきてやがるんだ」
「それは考え過ぎじゃない?」
ラウラはそう言うが、ジェイクはもうそれ以外に考えられなくなっていた。
「このままじゃやつらに潰されちまう。なんとか手を打たねえと……」
エルウッドは「ふう」とため息をついて、立ち上がった。
「それよりまず冒険者ギルドだ。今のうちに、なんか依頼を受けとかないと最初の支払いに間に合いそうにないだろ」
工房を買うためにした借金は、毎月一回の百二十回払いとなっている。ジェイクは、稼いだら回数を無視して一括で返済しようと考えていたが、その最初の一回すら危うい。
「くそっ、今はそうするしかねえか……」
ジェイクは一旦工房を閉め、冒険者の仕事をすることにした。
――そしてA級やB級の依頼を複数こなし、数カ月分の返済金と、当面の生活費を稼いできたのだが……。
「ジェイク! あなた、本当になにを考えてるの!?」
「見りゃわかるだろ、改築だよ改築!」
ジェイクはラウラやエルウッドに相談することもなく、稼いだ資金のほとんどと、さらなる借金を投入して、工房の改築を始めてしまったのだ。
「職人ギルドが邪魔して売れねえならよ、俺たちが直接売るしかねえだろ! そのためには販売所が必要なんだよ。こいつは必要な投資ってやつだぜ」
自信満々に語るジェイクに、ラウラもエルウッドもなにも言えなくなった。
ジェイクは苛立ちをそのまま口にした。
工房に住み込み始めて一週間、ジェイクにしては真面目に働いた。
出来が良くはないとはいえ、まともに使える剣を数十本も仕上げたのだ。作業工程を飛ばせる【クラフト】は、普通より何倍も早く作ることができる。そこだけはシオンが使っていたときと同じだった。
だが買い手がつかない。
地方の町や村では、鍛冶屋が工房と店舗を構えていることが多いが、このリングルベンほどの大都市になれば、製造と販売は別の店が担うことが多い。
すなわち、鍛冶屋が工房で生産した武具を武器屋に卸して、武器屋が客に販売する流れだ。
ジェイクが作った剣は、どこの武器屋にも買い取ってもらえなかった。
シオンから受け継いだ【クラフト】で作ったと言えば、みんな目の色を変えて商品を見に来てくれたが、実物を見るなり鼻で笑って帰っていくばかりだった。
「しょうがないじゃない。出来が悪いってことなんでしょ」
「それでもよぉ、使えねえわけじゃねえんだ。初心者向けにゃあ、むしろ手頃のはずだぜ」
そもそも客層が違うのだと、ジェイクは気がついていない。
ジェイクが工房を構えたのは、優秀な鍛冶屋がひしめく区画である。それらと取引する武器屋は高級志向であり、粗悪品を安く売るような店はもっと別の区画にある。取引先の選定が間違っているのだ。
だが、シオンの【クラフト】頼りで活動してきたジェイクたちには、武器屋に客層の違いがあることなどわからない。
「職人ギルドに登録し忘れてるってことはないよな?」
「当たり前だ。ここを買ったときに一緒にやってある」
エルウッドの問いにすぐ答えて、ハッと気づく。
「そうか、わかったぞ。職人ギルドは閉鎖的らしいからな。新参者の俺らに嫌がらせしてやがるんだ!」
「そんなことして、なんか得があんのか?」
「やつらビビってんだよ。俺の【クラフト】が成長したら、自分たちの武具が売れなくなると思って、今から潰しにかかってきてやがるんだ」
「それは考え過ぎじゃない?」
ラウラはそう言うが、ジェイクはもうそれ以外に考えられなくなっていた。
「このままじゃやつらに潰されちまう。なんとか手を打たねえと……」
エルウッドは「ふう」とため息をついて、立ち上がった。
「それよりまず冒険者ギルドだ。今のうちに、なんか依頼を受けとかないと最初の支払いに間に合いそうにないだろ」
工房を買うためにした借金は、毎月一回の百二十回払いとなっている。ジェイクは、稼いだら回数を無視して一括で返済しようと考えていたが、その最初の一回すら危うい。
「くそっ、今はそうするしかねえか……」
ジェイクは一旦工房を閉め、冒険者の仕事をすることにした。
――そしてA級やB級の依頼を複数こなし、数カ月分の返済金と、当面の生活費を稼いできたのだが……。
「ジェイク! あなた、本当になにを考えてるの!?」
「見りゃわかるだろ、改築だよ改築!」
ジェイクはラウラやエルウッドに相談することもなく、稼いだ資金のほとんどと、さらなる借金を投入して、工房の改築を始めてしまったのだ。
「職人ギルドが邪魔して売れねえならよ、俺たちが直接売るしかねえだろ! そのためには販売所が必要なんだよ。こいつは必要な投資ってやつだぜ」
自信満々に語るジェイクに、ラウラもエルウッドもなにも言えなくなった。
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