上 下
1 / 1

乗ってけサーフィン

しおりを挟む


つーかどーでもいーけど
夏真っ盛りだが…
夏といえば、
いや~んな思い出がある。

街を歩いていたら…
雑貨屋の前で
ふと足が止まった。

長さ3mは
あろうかという板が
立て掛けられている。

サーフボード
しかも…
ロングボードである。

私は…
それは店のオブジェとして
そこに鎮座しているのかと
思ったのだが
どうやら
そうでもないらしい。

しかし…
想像して頂きたい。

本当に
どこの町にでもあるような
こじんまりとした
雑貨屋なのだ。
そう!
デート中のカップルが

「見て~
このグラス可愛い~♪」

などと言ってる
雰囲気の
雑貨屋に
そいつは、
いるのである。
まさか

「きゃあ♪
このロングボード見て~♪
きゃわゆい~ん♪
ね…買って~買って~♪」

「よっしゃよっしゃ!
なんでも買うたるでぇ~♪
あ~チミチミ…
このボードなんぼや?」

小脇にロングボードを抱え
109あたりで
ショッピング
満員の山手線の中で…
ホームの脇で…
そんなとこに
あるはずもないのに…
って…
そんな事が
あるとでも
いうのだろうか?

正直
こんな所に売ってる
『ロングボード』なんか
誰が買うねんっ!
という意味で
私はそこに
立ち止まったのである。

なぜならサーフボード
…特に
ロングボードに至っては
10万円位が
相場であるからだ。
たとえ中古で
あったとしても、
5~7万円するだろう。

売れずに何年も
ここにあるのかしらと
ニヤニヤしながら
眺めていると
初老の店主らしい男が
店の外を掃除していた。

私は
ふと好奇心に駆られ
聞いてみた。

「あの…
このロングボードって…
お幾らなんですか?」










帰りの電車の中
私は…端の方で
四苦八苦していた。
さすがに3m弱ある
ボードは
かさばるからである…



買ったんか~いっ?



だって
1万2千円ですよ♪
サーフィン…
やったこと
ないけど(笑)



やった事…無いんかーい?



ま…スケボー
みたいなもんでしょ!

もちろんスケボーも
スノボも
乗れないが(笑)

それも乗れ無いんかーーーーーい?

ま…そんな
ファジーな感じで
とにかく休みの日
湘南の海に
行こうとしていた。

ところが…
私は
車を持っていない
という事に気付いた。
いやむしろ…
免許すら
ないじゃないかと(笑)

しかし
そんな事で
挫けていたら
世界のサーファー
とはいえない!

若干かさばるが…
電車で行くしかなかろう♪

ところが
ご存知の方も
いるだろうが…
ロングボードでは
乗れない電車がある。
いやむしろ…
乗れない電車の方が多い。

しかし
そんな事で
挫けていたら
世界のサーファー
とはいえない!

私は海まで
あと10kmという距離を
テクテク歩き始めた。

ああ…なんという
『おかサーファー』
いやもとい
『ばかサーファー』
であろうか?

とにかく私は
5時間かけて
海までやってきたのである。

さあここから…
世界のサーファー
誕生の瞬間なのだ!

目の前に広がる
広大な海
オーシャンブルー!

それにしても
今日の海は…

『ベタ凪』

※説明しよう※
(べた凪とは)
そよ風
さざ波すらない
海が最もシーンと
している状態の事。

漁に行くなら最適だが…
サーフィンやってる
奴なんかいねぇ!
いる訳ねぇ!

だって…
ベタ凪だから…

だって…
ベタ凪だから(笑)

だ…だって…
ベタ凪だから~♪

~ タマぺディアより抜粋 ~

しかし
そんな事で
挫けていたら
世界のサーファー
とはいえない!

次の休日
私はフル装備だった。

ウェットスーツ(5万円)
サーフシューズ(1万円)
パドルグローブ(5千円)
水泳帽子(980円)
水中メガネ(105円)
貴重な時間(プライスレス)

そんなこんなで
若干はしょるが…
5時間かけて
海までやってきたのである!

既に何名かの
サーファーが
波の谷間で
見え隠れしていた。

「おおっ!
やってるやってる♪」

と…沖までパドリング
(ボードに腹ばいになり
腕だけで水を掻き進む)
していって…
私は
ちょっとした事を
思い出した。

いや…
別に…
大したことでは
無い…





【あれ?俺…泳げないんじゃなかった?】





もちろん
そんな事で
挫けていたら
世界のサーファー
とはいえない!

のではあるが…

オフショア
(陸から海に向けて吹く)の風に
打たれながら私は…
嫌~な汗をかいていたのは
事実だ。

やがて
私の身体が
ボードごと
ぐらりと傾いだ。

うねりだ。

ぐ、ぐ、ぐ、と…
まるで巨大な生き物が
今まさに
水面に浮上
してくるかのように
私の身体を
持ち上げていく…

「ヤバイよ!ヤバイよ!」

某リアクション芸人
のような声を
発しながら
私はパドルを続ける…


ざ ざ ざ ざ ざ


岸に近づくにつれ
うねりは波へと
その姿を変貌させる!


ど どど どどど 


その次の瞬間…


くりんっ


板がひっくり返り
私の身体は
海にワイプアウト!


げぼびぶがばごぼ


洗濯機の中の
衣類の気持ちが
痛いほど分かった。
波の内部は
渦であるので
なかなか
抜け出せないのである。

私は闇雲に水をかいた。
ようやく波が
穏やかになったようなので
目を開けた…



海底だった(笑笑笑)



「逆かよっ?」

なんと
海面とは
逆の方向に
泳いでいたのだ!

死ぬ死ぬ!

海面に浮上した。
私の足と
ボードをつなぐリードは
びーんと
伸びきっていたが…
まるで…
ご主人様を見つけた時の
飼い犬の如く
私の顔めがけて
3m弱の板が飛んでくる。

びゅ~~~~~ん!

ヴォキッ!

ロングボードが
私の顔面に
クリーンヒット!

「へへっ…
あんた…いいパンチ…
持ってんじゃねえか?ガクッ」

鼻血どばーーーーー!

砂浜に
ロングボード抱えて
鼻血ダラダラで
立ち尽くしながら…
私は思った…

私は今…
誰と闘っているのだ?
ここにいるボードは…
誰なのだ?
誰だ?
ああ…
私は今…
恐ろしい夢を見ている…
サーフボードの幻影と
マボロシと
闘っているのだ!
勝てるはずが無い…
ロングボードなどに…
私が…

萌えたよ…
萌え尽きた…
真っ白によ…





その日から
私の顔は…
多少変形したのかも
知れない(笑)





そぅ、例えるならば…

キム○クからト○エツへと(笑)




しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...