しゃあ!器用貧乏だけど禁断の二段打ちで生き残る

どるき

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決戦前

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 全勝同士の激突を明日に控えて帰宅した静子は自信をなくしていた。
 かたや毎回痛い思いをしての勝利だった自分に対してホコリすら寄せ付けない圧勝を続けるお嬢様。
 元々友人として相手のことにある程度詳しいからこそ、全てが劣っていると感じてしまうのも無理はなかった。

「どうした。宮本は負けたのか?」

 夕食の場で様子に気がついたアオも心配で声を掛けるが返事はなし。
 どうやら彼女の中で悩みだしている様子だ。

「勝ったのは良いけれど、明日の相手にビビっちゃってるんだよ」
「あらあら……贅沢な悩みね」
「そうっスね。うちらの中で2回戦に進んだのが、そもそも宮本センパイと伊佐センパイだけですし」
「そうだぜ。春先に『このままじゃ戦技の成績が悪すぎて落第する』って落ち込んでたときと比べたら大躍進じゃねえか。もうその心配もないだろうし」
「まあそう言うなよ。コイツは案外負けず嫌いだから。この様子じゃその子に勝ち目がないと感じたんだろう」

 これまでの快勝に浮かれていた本心を射抜くアオの指摘には顔を赤くしてうずくまることしか出来ない。
 そのまま黙々と夕食を食べているだけにしてはいつも以上に大飯喰らいだった静子が部屋に戻ると追いかけたのはメイ。
 ここで身勝手にでしゃばらなければ深い仲になれないと誰かが喜一を鼻で笑うシチュエーションであろう。
 軽くノックをしてから部屋の鍵が空いていることを確認。
 そのままソロリとメイは扉を開く。

「起きてる?」

 食後で風呂にも入る前なので、十中八九起きていると踏んでいたメイが見たのは机に向かう静子の姿。
 この時期は戦技大会に学校全体が注力しているため宿題も出ていないというのに何をしているとメイが思うのは勉強はあまり好きではないからか。
 もとより勉学においては優等生タイプな静子にとっては予習復習など自然なことではあるのだが、その様子はメイには奇特なモノに映っていた。

「静子?」

 集中しているにしても呼びかけを完全に無視しているからだ。
 いつもならこんな態度を取るような娘ではないのは1年間同じ屋根の下で共同生活をしてきたからこそメイは知っていた。
 そこで──

「えい!」

 悪ふざけ半分に静子の豊満な乳房を横からつついた。
 むにゅりと指先が食い込む柔らかさには同じ女性であっても驚くほど。
 これだけ大きいとこうなるのかと感心すらしてしまう。
 しかもまだまだ指先は埋もれそうだ。
 静子が言葉を返すまで突き刺してみようと思ったメイの指先は下着の隙間に潜り込む。

「「ひゃっ⁉」」

 変な所に入った驚きと異物への驚きが静子の部屋でハーモニーを起こした。

「な、なにをしているの!」

 静子の反応はもっともであろう。
 指先を払った彼女の胸はぷるんと揺れて、動揺した彼女の心中も同様である。

「そう言う静子のほうこそシカトしてなにさ」
「ご、ごめん。集中していて気づかなかった」
「集中ねえ……その割に勉強するカッコだけで何もしてなかったじゃん。もしかして変なことでも考えていた?」
「変って……」
「こーいうこととかさ!」

 意地悪のつもりで鷲掴みにした胸肉の持ち重りを前にして、触られた静子以上に驚いたのはメイのほう。
 自分で自分のモノを触ったところで得られない感触には脱帽である。
 真顔に戻ったメイは手を離してから彼女に寄り添う。

「いや……流石にふざけすぎた。ゴメン」
「んもー」
「だけど静子だって今日は帰ってきてからずっとおかしいよ。そんなに瑠音に負けるのが不満?」
「⁉」

 アオも軽口で指摘した瑠音には勝てないという劣等感。
 あれは静子にとって完全に図星だった。
 メイに改めて指摘された静子は自分の卑しい部分に触れて恥ずかしい気持ちになってしまう。
 元々戦技大会で成績を残そうとしていた目的が落第を回避することであった以上、勝てやしないと自覚した相手にどのように勝てばいいかと悩んだ末、やっぱり勝てないのだと悩むのは傲慢ではないかと。
 もちろん負けるのは面白くない。
 それは誰しも持っている感情だし、実際メイだって同じ気持ちであったうえで惜しくも敗退していただろう。
 だけど自分が抱いたモヤモヤは単なる劣等感を煮詰めた汚水ではないか。
 それが彼女自身とても嫌なものに思えてならない。

「──うん」

 だが汚いからと蓋をしたら意味がない。
 メイの指摘でそれに気づいた静子は頷くわけだが「そっか」と軽く返したメイに彼女は呆気にとられてしまう。
 彼女は自分の気持ちを傲慢で汚いものだと笑わないのかと。

「へ、変じゃないかな。わたしだって本当は無傷でここまで来られたのが幸運なだけで、順当に行けば瑠音には勝てないのはわかっているよ。だけど勝ち目が無いからって一方的に嫉妬しちゃっているんだよ。馬鹿みたいじゃない」
「そんなことないわよ。あたしだって負けたくなかったし、なんなら明後日の静子との試合だって負ける気はない。静子の理屈じゃあたしの意見だって一方的な嫉妬で馬鹿にされても仕方がない話になっちゃうよ。だけどそれはおかしくない? そんな考えをしている方が馬鹿だって」
「そりゃあ……メイはわたしより成績が良いし」
「そんなの関係ないって」
「そうかな?」
「だから明日はやれるだけのことをやればいいだけだって。もし勝てたら儲けものってね」
「!」

 ここで押し倒したら相手はキュンとしそうだなと、少女漫画的な打算を思い浮かべながらのメイの励まし。
 これが静子を吹っ切れさせる小さな一押しとなり、ありがとうを残してメイを部屋から追い出した彼女は打倒瑠音の作戦を夜更かしをしてノートに書き写した。
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