東京妖刀奇剣伝

どるき

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兎小屋の口封じ

松田姉弟の真実

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 もうすぐ日付が変わる火曜日深夜、都内某所。
 根掘り葉掘りの情報を引き出すべく、トートは捉えた男たちを拷問にかけていた。
 理人はそれに付き添うわけだがジョンのほうは気が滅入ると言って家に帰っている。
 そのためもあってか二人の拷問は苛烈を極めていた。

「ふう……ユウを追い詰めるネタはもう無いようだね。仮に彼が社会復帰したとしても彼女はもう安心さあ」
「だが松田姉弟の事は少し面倒だな。まさか太陽が美人局にあっていたとは」
「ライトくんってのはハタチ前の子供なんだろう? 仕方がないって。この年代で色香に迷わないのはボクのような変人だけだよ」
「それは否定せんが……自演で仕込んでいただけの事もあって、コイツやフォー・カス編集部だけではなく五楽組も噛んでいるのは厄介だな。この腕ではどうにも出来ん。時間をかけて脅しから暴露に路線を変えられたらあの子はタレントとしては死んだも同然になる」

 拷問の結果、フミハルが持っていたアマミヤに関する情報は数えるほど。
 彼にとっては甥と協力して無辜の女子高生を脅して辱めようという、小遣い稼ぎに近い獲物だったようだ。
 だが問題は理人が友人から頼まれていた松田姉弟というアイドルの件。
 根も葉もないと思われていたバッシングの種の一つとして、フミハルが仕込んだ美人局に弟太陽が引っかかっていた。
 情事の様子を隠し撮りにした映像や音声も残っており、しかもそれは下は14歳、上は32歳が相手と、一度や二度ではないそうだ。
 理人も自分が太陽と同じ年頃だったら簡単に引っかかっていたかもと思うと責められない。
 まあアイドルという家業を考えればそれでも明かせない話とはいえ、自由恋愛の範疇として女性と関係を持つのは罪でもない。
 問題があるのはそれを種にして脅迫をする極道者たちである。
 友人の子供を救いたいと思う理人が手立てを考えている最中、彼のもとに知らせが届いた。

「──」

 電話の相手はジョン。
 必要となればフォー・カス編集部で一暴れでもしてやろうかと周囲に潜伏していた彼が目撃したのは警察による立ち入り調査だった。
 甫が捕縛した極道者──五楽組の構成員たちからフォー・カス編集部や下須フミハルが極道者と関係を持っていると知った警察は証拠隠滅を防ぐための電撃作戦を決行。
 運び出されてく段ボールをみるに、どうやら取材の資料も押収されたようだ。

「残念ながらライトくんはお終いですかね」
「──後はお前の好きにして良い」
「おやおや。八つ当たりとはらしくない」

 トートの軽口に目を逸らした理人は斬られて間もない腕の傷共々暗い気持ちで経過を見守ることしか出来なかった。
 この憂いは彼だけの悩み。
 アマミヤに対しての脅迫という重荷が取れて安堵する仲間たち──特に新しい玩具を手に入れたトートとは対象的な理人はしばらくの間、隠れ家に引きこもってしまった。
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