辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第252話「住宅街での設置作業、そして小さなトラブル」

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 王都アルヴェイン西部、シュレイン地区――。

 朝霧が晴れ始めたころ、住宅街のあちこちに魔力供給用の設置隊が散っていた。
 その中心で、エルヴィンたちも手際よく準備を進めていた。

「よーし、ここからこの通りに沿って配線を延ばしていこう」

 エルヴィンは設計図を確認しながら、魔力供給線を地面の浅い溝へと這わせていく。
 配線には、転写核を介して魔力を送るための特製の導管が使われていた。耐久性と魔力伝導率を両立した新型だ。

「カトリーヌさん、第一中継核の設置位置はここでいいかな?」

「ええ、問題ありませんわ。魔力伝達効率も計算通りです」

 カトリーヌが測定器で魔力の流れを確認し、頷く。

「リヴィア、こっちの供給管、連結できる?」

「はい、もうすぐです」

 リヴィアは膝をつきながら、細やかな手つきで管同士を接続していた。
 彼女の手際の良さに、見守っていた作業員たちも感心している様子だ。

「おーし、俺も行くぜ!」

 レオンは肩に抱えた工具箱を軽く叩き、次の設置予定地へと駆け出していった。

 そんな活気ある雰囲気の中、住宅街の住民たちも興味深そうに作業を見守っていた。

「お兄ちゃんたち、なにしてるの?」

 小さな男の子がエルヴィンに駆け寄り、無邪気に聞く。

「ん? この街に新しい“魔力の道”を作ってるんだよ。これができたら、おうちの灯りとか、暖房とかがもっと楽に使えるようになるんだ」

「へぇー! すごいなぁ!」

 男の子は目を輝かせ、周りにいる友達に自慢げに話しかけていた。

 エルヴィンはふっと笑いながら、再び設置作業へと向かおうとした――そのとき。

「……あれ?」

 供給管の接続部から、微かにきらきらとした光が漏れ出しているのを見つけた。

「おかしい……しっかり接続したはずだけど……?」

 エルヴィンは顔を近づけ、注意深く観察する。
 すると、接続部にわずかな魔力漏れが発生していることに気づいた。

「エルヴィン様、どうかされましたか?」

 カトリーヌが気づいて駆け寄る。

「魔力漏れだ。でも、こんな初歩的なミスはないはずなんだけどな……」

 二人でさらに詳しく確認すると、原因はすぐに判明した。

「これ、もともとの石畳が微妙に傾いてる……!」

 エルヴィンが指差した先、地面の石畳にほんの僅かな歪みがあった。
 住宅街特有の、長年の地盤沈下によるものだ。

「……つまり、地面が少しずつ沈んでたせいで、設置した配管に無理な力がかかっていたのですね」

 リヴィアも測定器を片手に説明を補足する。

「農地みたいな平坦な場所と違って、住宅街にはこういう誤差があるのか……」

 エルヴィンは頭をかきながら、改めて街中での難しさを実感した。

「どうする? これ、全部やり直すか?」

 レオンが腕を組んで言う。

「いや、まだそこまで大きな問題じゃない」

 エルヴィンはすぐに考えをまとめた。

「転写核の設置間隔を少し狭めて、局所ごとに魔力を補強する。あとは、配管に弾力性を持たせる部材を追加すれば、大丈夫なはず」

「ふふっ、さすがエルヴィン様。すぐに対策を思いつくのは素晴らしいですわ」

 カトリーヌがにっこりと微笑む。

「じゃあ、作戦変更だ! 作業チームを分けようぜ!」

 レオンが気合を入れ直し、全体に声をかける。



 小さなトラブルはあったものの、エルヴィンたちは迅速に対応し、配線作業は順調に進んでいった。

 夕暮れ時、通りに並ぶ家々に新たな魔力供給線が張り巡らされ、試験的に稼働を開始した。

 ――ふわり。

 あちらこちらの窓から、柔らかな灯りがともる。

 魔道灯が、魔力供給線を通じて一斉に光を灯したのだ。

「わああ!」

 街の子供たちが歓声を上げ、大人たちも驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべる。

「すごい……本当に、一斉に灯ったわ」

 カトリーヌが、感嘆の声を漏らした。

「これが、俺たちの作った“新しい魔力の道”か……!」

 レオンも感慨深げに空を見上げる。

「地味な作業だったけど、こうして形になると……嬉しいですね」

 リヴィアも静かに微笑んだ。

 エルヴィンは、そんな仲間たちの横顔を見ながら、胸に温かな充実感を抱いた。

「――これが、僕たちの、王都に吹かせる新しい風だ」

 灯りに包まれた住宅街は、まるで祝福されているかのように輝いていた。
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