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大賢者の遺産
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それは果たして何と言ったらいいんだろう?まさに財宝の山だった。
「すごい!こんなにお宝が!こりゃあ大国だって買えちまうぜ!」
誰が買うかそんなもん。なにトチ狂ってるんだオッサン。
「みんなで山分けしてももの凄いわ!あたし速攻服買いに行く!」
あんたよっぽど服に飢えてんのね。あんたんち金持ちの伯爵家じゃなかったの、ラフレシアちゃん。
「あたしはあたし専用に城を建てるわ。それと冒険用に冒険者を千人は雇いたいわね。
おまえはうちの王子と結婚するんだろ!なんだ、まだ冒険して犠牲者出すつもりか、バカ姫。
「うちは店を修繕して、あ、お風呂も直さなくっちゃ。それと広いキッチンに小さな庭」
小市民丸出しですが好感持てますポーリンおばさん。
「あたしたちはそんなもんいらなーい。食べられないし」
「そーよそーよ」
「でもこんだけあれば何でも食べ物買えるんだよ?それこそお肉やお菓子だって」
「べつにどうでもいいわ。あたしたちはデリアといて、デリアと食べたいの。ねえ、マイマスター?」
「ねー」
「パパ好き。悪魔食べていい?」
「おまえら…」
泣かせるやつらだ…。マジ涙出てきた。
「ほらいったでしょ?そういっときゃマジなんでも食わしてくれるわ。チョロいわね。これで一生くいっぱぐれないわよ」
「さすが精霊悪女」
「性悪女王!」
「そうともいう」
おまえら流した涙返せ。
「やめろこのガキ!いでええええええっ!」
悪魔が起きたようだ。やかましいな。
「リヴァちゃん、半分くらい残してあげなさい。全部食べないであげて」
「ふわーい」
「まてまて!おまえには慈悲というものがないのか!悪魔泣かせて楽しいのか!ぎゃあああっ痛えつってんだろっ!」
悪魔に慈悲とか情けとかかけるやついるのか?ふつう…。
「わかったから。充分わかったからやめさせて。お前にこのダンジョンの秘密を教えてやるから!」
「いいよ別に」
「なんだそれ!知りたいって言えよ!ふつう聞きたいもんだろ」
「とくに興味ない」
「そんなこと言うなよ!頼むよ、聞いてくれよ!お願いだよ!これこの通り!な、助けると思って。もう一生恩に着るからよ」
なんかダメな友だちに借金申し込まれている気分になった。
「あーわかったわかった。やめてあげなさい、リヴァちゃん。あとでお菓子買ってあげるから」
「はーい、そっちの方がおいしい」
「俺はお菓子以下か?」
「もう一度食われたい?」
「いえいいです。お菓子以下ですから、俺」
「でー?何をしゃべりたいってえ?」
「そんな嫌そうに聞かんでください」
嫌だし。
「じつはここはある方の宝を守るために作られました」
「あっそう、わかった」
「いやいやいや、まだです!まだ話はあるんです!
「えー」
「いいから我慢して聞いて。ね?」
悪魔が手を合わせている。惨めだ。しょうがない聞いてやろう。
悪魔が言うには、このダンジョンは大賢者グリドールという人が作ったらしい。その大賢者はこの世界の果てにいて、世界が滅亡に向かうのを守っているという。その大賢者の手助けをしてくれる人間を探しているんだそうだ。そこでこのダンジョンをつくり、宝を隠し、腕に自信のある冒険者や軍隊を呼び込み、さまざまな罠や魔物で試させたんだそうだ。悪魔はそのラスボスとして召喚された悪魔界最強のやつだという。ふつうの人間じゃかなわない。だからそれをすべてクリアできる者が大賢者の助けになる、というわけだ。
「なるほどね。つまりここは壮大な試験会場ってわけですか。まったく手がこんでいるなあ」
「そう、まさに試験会場です。さすがでございますね、おぼっちゃまは」
キモイこと言うな。
「じゃあこの財宝はもらっていいの?」
「さあ、別にいいんじゃないですか?」
「え?だってそれが賞品だろ?」
「まさか。そんなもの大賢者の宝でもなんでもありませんよ。それらは冒険者たちが残していったものですから」
なんだって?これ、この金貨とか高そうな剣や鎧ってみんな冒険者のもの?ひどくね?
「まあなかには王族や貴族もいましたからねえ。いつのまにか溜まっちゃって。どうやって処分しようか悩んでたんですよ、実際」
超呆れた。なんかマジでバカバカしくなった。
「本当の大賢者の宝はこちらです」
悪魔はよたよたと歩いて壁に向かった。もう体は再生しているが、馴染むのに時間がかかるみたいだ。どんだけ食ったんだリヴァちゃん。
悪魔が壁に手をやると、そこは光輝き、そして壁が消えた。
「さあ、お受け取りください」
そう言って悪魔は膝をつき、頭を下げた。壁のあったところはショーケースみたいになっていて、そこに剣と鎧が飾られていた。すっごい綺麗だ。
「綺麗だね。ねえ、誰かこれいる?」
「おい待てよ、お前にくれてやるんだよ!勝手に人にやるなよ」
「ぼくがもらえばぼくの勝手だろ?どこかの町で売ってお金にしてお菓子買ったっていいんじゃないか?」
「そういう問題じゃねえよ!いいか、大賢者の遺産なんだぞ!おまえはこれ着て大賢者の跡継ぎになるんだろ!」
「いやです、ごめんなさい」
「待てよ!話が違うだろ!」
もうまったくなんなんだ。どうしてそう話を捻じ曲げるんだ。誰が跡継ぎだ。やるもんか、そんなもん。ぼくは国に帰ってニートするんだ。めんどくさいことはごめんだ。
「まあデリア、そいつも必死なんだ。もらうだけもらってやれよ。大賢者云々はあとで考えりゃいいじゃねえか」
「ほんと、その人の言う通りですよ。お願いします!もらうだけで結構ですから。一生大事にしてくれるだけで助かりますから」
しかたないなあ。まあいいや。帰ったらどこかに埋めちゃえばいいんだし。
「わかったよ、まったくー」
「いや助かりました。まったく驚くほど無欲な方なんですねえ」
無欲じゃないよ。無気力なんですよ!
「ではこれをお受け取りください。なんでも斬れる剣。アーザスの剣です。これで斬れないもにはこの世に存在しません!そして何でも防いでしまう鎧、デガリスの鎧。この世のあらゆるものから身を守れます」
でたー、何でもアイテム。それもう懲りてんのに。
「じゃあその剣でその鎧を斬ったら?」
「もちろん対消滅を起こします。決まってるじゃないですか。バカなんですか」
ムカつくこいつ。
「あ、消えたぞ!」
オッサンの驚く声にぼくも驚いた。剣と鎧が消えた。
「驚かないでください。それはあなたが必要なときだけ現われ、身につくのですから」
「えらい都合がいいな」
「あなたのステルスゴー…」
「わーわーわーっ!」
こいつ、危うくぼくの秘密をばらしやがるとこだった。
「ではわたしはもうお役御免、ということで。あとはあなたの運命に…お任せしましょう…」
そう言って悪魔は消えた。財宝を残して。
「どうしよう。こんなに持ちきれないわね」
全部持って行くつもりだったんだ、ラフレシア…。
「持てるだけ持ったらこの百階層の階段を上がれねえぜ?」
みんながぼくを見た。知らないよ。
「なんかいい方法ない?ミローネ、ネクロ」
「まあないこともないけど」
「どんな?」
「ダンジョンの死霊や魔物に運んでもらえば?」
「ああ、なるほど。って、できるのそんなこと?」
「当たり前でしょ?ネクロは死霊やアンデッドに命令できるし、リヴァちゃんは魔物に、ね」
とんでもないことを考えるやつだ。だけどそれもアリかも。少なくても財宝を横取りしようってやつはいなくなるからね。笑える。
「じゃあそうしよう」
こうしてぼくらは膨大な財宝を難なく運ぶことができた。それははた目にも異様な光景だった。
「すごい!こんなにお宝が!こりゃあ大国だって買えちまうぜ!」
誰が買うかそんなもん。なにトチ狂ってるんだオッサン。
「みんなで山分けしてももの凄いわ!あたし速攻服買いに行く!」
あんたよっぽど服に飢えてんのね。あんたんち金持ちの伯爵家じゃなかったの、ラフレシアちゃん。
「あたしはあたし専用に城を建てるわ。それと冒険用に冒険者を千人は雇いたいわね。
おまえはうちの王子と結婚するんだろ!なんだ、まだ冒険して犠牲者出すつもりか、バカ姫。
「うちは店を修繕して、あ、お風呂も直さなくっちゃ。それと広いキッチンに小さな庭」
小市民丸出しですが好感持てますポーリンおばさん。
「あたしたちはそんなもんいらなーい。食べられないし」
「そーよそーよ」
「でもこんだけあれば何でも食べ物買えるんだよ?それこそお肉やお菓子だって」
「べつにどうでもいいわ。あたしたちはデリアといて、デリアと食べたいの。ねえ、マイマスター?」
「ねー」
「パパ好き。悪魔食べていい?」
「おまえら…」
泣かせるやつらだ…。マジ涙出てきた。
「ほらいったでしょ?そういっときゃマジなんでも食わしてくれるわ。チョロいわね。これで一生くいっぱぐれないわよ」
「さすが精霊悪女」
「性悪女王!」
「そうともいう」
おまえら流した涙返せ。
「やめろこのガキ!いでええええええっ!」
悪魔が起きたようだ。やかましいな。
「リヴァちゃん、半分くらい残してあげなさい。全部食べないであげて」
「ふわーい」
「まてまて!おまえには慈悲というものがないのか!悪魔泣かせて楽しいのか!ぎゃあああっ痛えつってんだろっ!」
悪魔に慈悲とか情けとかかけるやついるのか?ふつう…。
「わかったから。充分わかったからやめさせて。お前にこのダンジョンの秘密を教えてやるから!」
「いいよ別に」
「なんだそれ!知りたいって言えよ!ふつう聞きたいもんだろ」
「とくに興味ない」
「そんなこと言うなよ!頼むよ、聞いてくれよ!お願いだよ!これこの通り!な、助けると思って。もう一生恩に着るからよ」
なんかダメな友だちに借金申し込まれている気分になった。
「あーわかったわかった。やめてあげなさい、リヴァちゃん。あとでお菓子買ってあげるから」
「はーい、そっちの方がおいしい」
「俺はお菓子以下か?」
「もう一度食われたい?」
「いえいいです。お菓子以下ですから、俺」
「でー?何をしゃべりたいってえ?」
「そんな嫌そうに聞かんでください」
嫌だし。
「じつはここはある方の宝を守るために作られました」
「あっそう、わかった」
「いやいやいや、まだです!まだ話はあるんです!
「えー」
「いいから我慢して聞いて。ね?」
悪魔が手を合わせている。惨めだ。しょうがない聞いてやろう。
悪魔が言うには、このダンジョンは大賢者グリドールという人が作ったらしい。その大賢者はこの世界の果てにいて、世界が滅亡に向かうのを守っているという。その大賢者の手助けをしてくれる人間を探しているんだそうだ。そこでこのダンジョンをつくり、宝を隠し、腕に自信のある冒険者や軍隊を呼び込み、さまざまな罠や魔物で試させたんだそうだ。悪魔はそのラスボスとして召喚された悪魔界最強のやつだという。ふつうの人間じゃかなわない。だからそれをすべてクリアできる者が大賢者の助けになる、というわけだ。
「なるほどね。つまりここは壮大な試験会場ってわけですか。まったく手がこんでいるなあ」
「そう、まさに試験会場です。さすがでございますね、おぼっちゃまは」
キモイこと言うな。
「じゃあこの財宝はもらっていいの?」
「さあ、別にいいんじゃないですか?」
「え?だってそれが賞品だろ?」
「まさか。そんなもの大賢者の宝でもなんでもありませんよ。それらは冒険者たちが残していったものですから」
なんだって?これ、この金貨とか高そうな剣や鎧ってみんな冒険者のもの?ひどくね?
「まあなかには王族や貴族もいましたからねえ。いつのまにか溜まっちゃって。どうやって処分しようか悩んでたんですよ、実際」
超呆れた。なんかマジでバカバカしくなった。
「本当の大賢者の宝はこちらです」
悪魔はよたよたと歩いて壁に向かった。もう体は再生しているが、馴染むのに時間がかかるみたいだ。どんだけ食ったんだリヴァちゃん。
悪魔が壁に手をやると、そこは光輝き、そして壁が消えた。
「さあ、お受け取りください」
そう言って悪魔は膝をつき、頭を下げた。壁のあったところはショーケースみたいになっていて、そこに剣と鎧が飾られていた。すっごい綺麗だ。
「綺麗だね。ねえ、誰かこれいる?」
「おい待てよ、お前にくれてやるんだよ!勝手に人にやるなよ」
「ぼくがもらえばぼくの勝手だろ?どこかの町で売ってお金にしてお菓子買ったっていいんじゃないか?」
「そういう問題じゃねえよ!いいか、大賢者の遺産なんだぞ!おまえはこれ着て大賢者の跡継ぎになるんだろ!」
「いやです、ごめんなさい」
「待てよ!話が違うだろ!」
もうまったくなんなんだ。どうしてそう話を捻じ曲げるんだ。誰が跡継ぎだ。やるもんか、そんなもん。ぼくは国に帰ってニートするんだ。めんどくさいことはごめんだ。
「まあデリア、そいつも必死なんだ。もらうだけもらってやれよ。大賢者云々はあとで考えりゃいいじゃねえか」
「ほんと、その人の言う通りですよ。お願いします!もらうだけで結構ですから。一生大事にしてくれるだけで助かりますから」
しかたないなあ。まあいいや。帰ったらどこかに埋めちゃえばいいんだし。
「わかったよ、まったくー」
「いや助かりました。まったく驚くほど無欲な方なんですねえ」
無欲じゃないよ。無気力なんですよ!
「ではこれをお受け取りください。なんでも斬れる剣。アーザスの剣です。これで斬れないもにはこの世に存在しません!そして何でも防いでしまう鎧、デガリスの鎧。この世のあらゆるものから身を守れます」
でたー、何でもアイテム。それもう懲りてんのに。
「じゃあその剣でその鎧を斬ったら?」
「もちろん対消滅を起こします。決まってるじゃないですか。バカなんですか」
ムカつくこいつ。
「あ、消えたぞ!」
オッサンの驚く声にぼくも驚いた。剣と鎧が消えた。
「驚かないでください。それはあなたが必要なときだけ現われ、身につくのですから」
「えらい都合がいいな」
「あなたのステルスゴー…」
「わーわーわーっ!」
こいつ、危うくぼくの秘密をばらしやがるとこだった。
「ではわたしはもうお役御免、ということで。あとはあなたの運命に…お任せしましょう…」
そう言って悪魔は消えた。財宝を残して。
「どうしよう。こんなに持ちきれないわね」
全部持って行くつもりだったんだ、ラフレシア…。
「持てるだけ持ったらこの百階層の階段を上がれねえぜ?」
みんながぼくを見た。知らないよ。
「なんかいい方法ない?ミローネ、ネクロ」
「まあないこともないけど」
「どんな?」
「ダンジョンの死霊や魔物に運んでもらえば?」
「ああ、なるほど。って、できるのそんなこと?」
「当たり前でしょ?ネクロは死霊やアンデッドに命令できるし、リヴァちゃんは魔物に、ね」
とんでもないことを考えるやつだ。だけどそれもアリかも。少なくても財宝を横取りしようってやつはいなくなるからね。笑える。
「じゃあそうしよう」
こうしてぼくらは膨大な財宝を難なく運ぶことができた。それははた目にも異様な光景だった。
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