空三海水浴 ゲーム小説

Atokobuta

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第二章

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→「パラソルの下で西瓜を食べる」


「お師匠さま、冷えてますからどうぞ」
 悟空は売店で買ってきた西瓜を差し出した。半分に切っただけの西瓜にさじが添えてある。
「ありがとう、ちょうどのどが渇いたと思っておったところだ」
 西瓜を口に運ぶと、みずみずしさが唇からこぼれるほどにあふれだす。
「……おっと」 
 手の甲で汁を拭おうとした三蔵を、悟空が押しとどめる。
「また砂がつきますよ」
 悟空は清潔な布巾で三蔵の口元を拭いてやった。三蔵はされるがままであり、なんなら拭かれる際には赤子のように口をつき出し目を閉じさえした。悟空は内心ため息をつく。この師は自分がいかに魅力的か気づいてもいないのだ。いや、正確に言えば顔が良いことには自覚はあるのだが、いかんせん恋愛経験がないだけに、その美しい顔と所作がどのように性的衝動を呼び起こすのかについての自覚が足りないのだ。
「ありがとう。手間をかけてすまぬな」
「いえ……」
「悟空、どうした。今日はおとなしいな」
「別に……」
「ここは天界だから、妖怪に襲われる心配もない。ほら、皆も楽しそうに泳いでいるではないか。そなたも泳ぎたければ私を置いて行ってきても良いぞ。」
 私はここで西瓜を食べているし、と三蔵はしゃりしゃりと西瓜を食べすすめながら付け加えた。
「そんなこと……」
 悟空は何かを言いかけたが、途中で気が変わったようで口をつぐんだ。
「……おれは泳ぎは苦手です。お師匠さまとここにいます。……お邪魔じゃなければ」
 三蔵は目を丸くした。いつもは落ち着かずに始終動き回っている悟空が、まるで借りてきた猫のようにじっと座っている。
「大きな日陰なのだから、そなたがいたって邪魔なはずなかろう。」
 三蔵は頷いた。



「さあて、今日の托塔TVは今話題の天界の海からお伝えしています!地上の海を参考にしてつい最近作られた、この天界の海では、皆さん楽しそうに海水浴を楽しまれておりまーす。あ、あそこに素敵な二人組がいますね。ちょっとお話伺ってみましょう」
 かしましい声がしたかと思うと、パラソルの中にずかずかと女が侵入してきた女の後方には大きなカメラやマイクを抱えた数人が続く。
「ちょっとお話、よろしいですかぁー?」
「よくねえよ、勝手に入ってくんじゃねえ。ここはお師匠さまの陣地なんだよ」
 悟空が盾になるように、女と三蔵の間に身体を割りこませる。
「今、番組の取材をしているところなんですよ、インタビューが終わったらさっさと出ていきますからご安心くださいね。っていうか、そんなに二人きりのところを邪魔されたくなかったんですね。いやあ、そっかそっか~。ごめんなさいね、もしかしてはじめてのデートでした?」

    「誤解をとく」
    「誤解させたままにする」
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