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3.魔王様は気になっていたようです。
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魔王様視点ですよ。
最近頻繁に通うようになった真白な空間。
中央には大きな水盤があり、
そこに映し出されている女性を時が止まったかのように見つめ続ける。
この生き物は、なんなのだ???
神達は、「母親」と言っていたか…。
私には理解できない存在だ。
この「母親」という者は、自分の「子」という者に何度となく屠られているにもかかわらず、その「子」を恐れる事も憎む事もなく変わらず愛し、己の身を犠牲にする事を少しも厭わない。
ふとした拍子に「子」に腕を引きちぎられた事もあったか…。
また、突如襲って来た魔物から、とっさに「子」を庇い命をおとす所も目撃した。
「子」の方が、魔物よりも遥かに強いと言うのに、この「母親」にとって、「子」の存在は異世界へ来る前と少しも変わっていないのだろう。
無条件に愛し、守るべき唯一無二の存在…か。
ふと、興味が湧いた。
そして思った。
この「母親」ならば私を愛してくれるのではないか?
と…。
基本的に魔族には、産みの母と言うモノが存在しない。
時折、魔力が集約されて生成されるのだ。
それは、一瞬で終わる時もあれば、何年もかけて行われる時もある。
稀に異種・異性同士が交配し、子をなす事もあるが総じてでき難いので、そうして生まれる者は、極めて数が少ないのだ。
数が少ないが故なのかその個体は、皆とてつもなく強い事で知られている。
斯く言う私も先日、生成し魔王になったばかりだ。
前任の魔王は、先日、
大規模な魔術実験に失敗して、
その結果 何かとんでもない事を引き起こしたらしく、
神達にその責任を問われて、力を封印されたうえ期限なしの幽閉となった。
魔族に神はいないので、その統治、管理は魔王が行なう事になっている。
そして前任の後を継いだのが、私と言う訳だ。
私の出自は少々変わっているので、ここでは語るまい…。
話しを戻そう。
何故か解らないが、あの「母親」の事が気がかりでならない。
守られるべきなのは、あの「母親」の方だろう?
あれ程までに儚く、傷つきながらも「子」を守る姿は庇護欲をそそる。
側に居たい。あの髪に口付けたい。肌に触れたい。
柔らかな身体を抱きしめ、これ以上
傷つく事がないように。
何度となく死を体験している彼女の心が疲弊し、壊れてしまう前に側に行き、真綿でくるむように…守りたい。
何故かそんな事ばかりが頭をよぎる。
どうしたと言うのだ、私は…。
精霊達と同様に、彼女の持つ空気のようなものに惹きつけられているのか?
彼女の周りの空気は独特だ。
側にいるだけで温かい何かに包まれているようで不思議と癒される。
私は、彼女の側に居よう。
いや、彼女の側に、居たいのだ。
愛がどういうものかは、わからぬが
私の持てる全てを使い、
全身全霊をかけて、守る。
その為には、『会議』とやらに
参加しなければなるまい。
魔法でマントを羽織り、愛刀を腰に装備すると神達にその旨を伝えるべく部屋を後にした。
あぁ、もうすぐ側に行ける。
私が守るから
私が隣りにいるから
だから……
どうか壊れないで。
最近頻繁に通うようになった真白な空間。
中央には大きな水盤があり、
そこに映し出されている女性を時が止まったかのように見つめ続ける。
この生き物は、なんなのだ???
神達は、「母親」と言っていたか…。
私には理解できない存在だ。
この「母親」という者は、自分の「子」という者に何度となく屠られているにもかかわらず、その「子」を恐れる事も憎む事もなく変わらず愛し、己の身を犠牲にする事を少しも厭わない。
ふとした拍子に「子」に腕を引きちぎられた事もあったか…。
また、突如襲って来た魔物から、とっさに「子」を庇い命をおとす所も目撃した。
「子」の方が、魔物よりも遥かに強いと言うのに、この「母親」にとって、「子」の存在は異世界へ来る前と少しも変わっていないのだろう。
無条件に愛し、守るべき唯一無二の存在…か。
ふと、興味が湧いた。
そして思った。
この「母親」ならば私を愛してくれるのではないか?
と…。
基本的に魔族には、産みの母と言うモノが存在しない。
時折、魔力が集約されて生成されるのだ。
それは、一瞬で終わる時もあれば、何年もかけて行われる時もある。
稀に異種・異性同士が交配し、子をなす事もあるが総じてでき難いので、そうして生まれる者は、極めて数が少ないのだ。
数が少ないが故なのかその個体は、皆とてつもなく強い事で知られている。
斯く言う私も先日、生成し魔王になったばかりだ。
前任の魔王は、先日、
大規模な魔術実験に失敗して、
その結果 何かとんでもない事を引き起こしたらしく、
神達にその責任を問われて、力を封印されたうえ期限なしの幽閉となった。
魔族に神はいないので、その統治、管理は魔王が行なう事になっている。
そして前任の後を継いだのが、私と言う訳だ。
私の出自は少々変わっているので、ここでは語るまい…。
話しを戻そう。
何故か解らないが、あの「母親」の事が気がかりでならない。
守られるべきなのは、あの「母親」の方だろう?
あれ程までに儚く、傷つきながらも「子」を守る姿は庇護欲をそそる。
側に居たい。あの髪に口付けたい。肌に触れたい。
柔らかな身体を抱きしめ、これ以上
傷つく事がないように。
何度となく死を体験している彼女の心が疲弊し、壊れてしまう前に側に行き、真綿でくるむように…守りたい。
何故かそんな事ばかりが頭をよぎる。
どうしたと言うのだ、私は…。
精霊達と同様に、彼女の持つ空気のようなものに惹きつけられているのか?
彼女の周りの空気は独特だ。
側にいるだけで温かい何かに包まれているようで不思議と癒される。
私は、彼女の側に居よう。
いや、彼女の側に、居たいのだ。
愛がどういうものかは、わからぬが
私の持てる全てを使い、
全身全霊をかけて、守る。
その為には、『会議』とやらに
参加しなければなるまい。
魔法でマントを羽織り、愛刀を腰に装備すると神達にその旨を伝えるべく部屋を後にした。
あぁ、もうすぐ側に行ける。
私が守るから
私が隣りにいるから
だから……
どうか壊れないで。
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