セラフィム学園高等部

Olivia

文字の大きさ
2 / 3
01:星野宵子

02

しおりを挟む
 まず、驚いたのは、部屋の広さだ。10畳はある。

 オマケに、寮だというのに、個人用の風呂、トイレまでついており、キッチン、冷蔵庫、洗濯機まで完備。

 エアコン、テレビ、電子レンジなど、必要なものは一通り揃っている。

 寮で食事が出るはずなのだが、一体何のためにキッチンがあるのか⋯⋯。

 まずクローゼットに、一式5万円もする春秋用の制服を納め、教科書、体操着、ジャージ、その他諸々が詰め込まれた段ボールを開け、途方に暮れた。

(カラーボックス⋯⋯いや、本棚が必要だな)

 金ならある。

 1年分のお小遣いとして、ポンと渡された通帳には、なんと300万円が振り込まれていた。年収か!

(確か通販は自由なんだっけ。取り敢えずネットで──)

 宵子さんが、現代人の必需品・スマートフォンを手に取った瞬間。

 トントン、と控えめに扉を叩く音がした。

「はい!!」

 弾かれた様に応え、入り口駆け寄った。一応警戒しつつ、ゆっくり扉を開けると、黒髪をハーフアップにした、清楚な女の子が、胸に手を当てて立っていた。

「あの⋯⋯急にごめんなさい! お隣にどんな方が来ているのか知りたくて⋯⋯。私、清水しみず美紗子みさこと申します」

「あー⋯⋯私は、星野宵子です。外部入試で来たので、分からない事ばかりなので、色々教えていただけると嬉しいのですが」

 宵子さんは、精一杯丁寧に喋った。そのせいで、かなりぶっきらぼうになってしまったが。

 美紗子さんは、口元に手を当てて、上品に微笑んだ。

「ええ、勿論です! 同じAクラスの同志として、貢献していきましょうね?」

「貢献? 何か奉仕作業的なものがあるんですか?」

 宵子さんは、すっかり失念していたが、セラフィム学園は、カトリック系の学校で、敷地内に教会もある。

(まさかお祈りとかするわけ? 勘弁してくれい!)

「ええっと⋯⋯。この学校は、縦割りのチームみたいな物に別れていて⋯⋯その⋯⋯上手く伝わるかしら⋯⋯」

 美紗子さんは、始終おどおどと言葉を探す。

「1年生から、3年生まで、AクラスはAチームで、良い行いをすれば、得点が貰えるし、悪い行いをすれば、得点を引かれてしまうんです」

「あー⋯⋯なるほど」

(なんだ、その某魔法学校みたいなシステム)

 宵子さんは心の中で突っ込んだ。実のところ、こういう得点システムは、海外の名門校に良くあるのだが、庶民の彼女は知らない。

「そうだったんですね。私なんかが、お役に立てれば良いのですが」

「成績も評価ポイントなんです。星野さんは、秀才だとか⋯⋯。私なんかは、奉仕作業でしか、皆様のお役に立てませんから、羨ましいですわ」

 どうやら美紗子さんは、かなり控え目な性格らしい。良く漫画に登場する、高飛車なお嬢様とは違う。

 宵子さんは、安堵した。なんとか、新学期前に友達を作れて、ボッチを回避出来そうだ、と。

「いえいえ! 私なんて、皆様の足元にも及びませんよ!! 本当に分からないことだらけで⋯⋯。あの⋯⋯どうして、私室にキッチンがあるんですかね? 確か食堂があると聞いたのですが」

「そ、そのことで相談が!!」

 美紗子さんは、胸の前でパチンと手を合わせて、目を輝かせた。

「実は高等部から、寮では日曜日だけ、自炊なのです! 生活力を身につける為の実践訓練ということで! は⋯⋯恥ずかしながら、私、料理をした事が殆どなくて⋯⋯。お手伝いいただけたら、嬉しいと⋯⋯」

 宵子さんは、ニンマリ笑った。これは、仲良くなる、絶好のチャンス!

「ええっと⋯⋯それじゃあ、色々買いに行かないと行けませんね」

 部屋には、コンロや冷蔵庫などは用意されていたが、ザルや鍋などの小物は無いし、勿論食材も。

「そうだ! それじゃあ、これから、一緒に出掛けませんか? 近くのスーパーとか、ホームセンターとか、教えて貰えると、私も助かります。本棚とか、ピンチハンガーとかも欲しいですし」

 加えて言えば、最新式のゲーム機に、漫画に、ライトノベル。パソコンもあれば便利。

(なんってったって、300万円もあるんだもんね)

 金は使えば無くなるんだぞ。宵子さんは少し調子に乗っているが、止める者はいない。

 対する美紗子さんは、お上品に笑って、ふわりと踵を返した。

「それでは、私、出掛ける準備をして参りますわね! すぐに戻ります!」

 心なしかいい匂いを残して、退場。

「うはー」

 宵子さんは仰向けに倒れ、息を吐いた。これは、想像していたのとは、逆の方向に神経を使う羽目になりそうだ。

(お金持ち学園って、ギスギスした雰囲気かと思ったけど、みんなあんなにお上品で、ホワホワしてるのかなー)

 寮母さんも、清掃をしているシスターも優しそうな人だった。

(私も、ああならないと駄目?! ネコ⋯⋯被るしか無いのか⋯⋯)

 まだ一学期も始まっていないのに、既に挫折気味。⋯⋯先は長いぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...