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第206話:初めての大森林。
しおりを挟む「準備は出来てる。いつでもやってくれ」
「ふむ、念のために繰り返すが、大森林には特別な術式が展開されており侵入者はすぐに気付かれてしまう。一時的にその術式に穴をあけ、その中へミナトらを転移させる。くれぐれも目立った行動は避けてまずは情報を集めてくれたまえ」
「分かってる。全ては何を企んでいるのか情報を集めてから、だな」
そして、場合によっては一国を落とす。
つまり、その場にいる人間を皆殺しにする必要が出てくる可能性もある。
そんな場所にイリスを連れていくのは気が引けるが、なに、手を汚すのは俺だけでいい。
「ではいくぞ」
皆に見送られながらシルヴァの転移魔法で俺達はランガム大森林の中へ。
一瞬の酩酊の後、俺達は大森林というか、どちらかというと密林のような場所に居た。
くねくねと曲がった蔦が木に絡みついている。
木々もあまり見た事がないような……少し南国系の物もあるし、杉みたいなのもある。
不思議な場所だった。
「うわ、こんな所初めて……」
レナがちょっと気味悪そうに周りを眺めては俺の腕にしがみ付いてくる。
「気を付けろよ、何が出るかわからないからな」
「もぐもぐ」
「ねぇ、イリスちゃんが何か食べてるけどあれはいいの?」
レナの指さす方を見ると、なんにでも興味津々なイリスがその辺の木になっていた果実をもいでもしゃもしゃ食べていた。
「い、イリス! その辺にある物勝手に食べちゃだめでしょ! 食べれる物かどうか分からないから!」
「……う、うぅ……」
イリスが顔をゆがめて呻く。
「イリス! 大丈夫か!?」
「すっ……ぱぁい……」
ただ酸味が強くて美味しくなかっただけらしい。
『まぁ毒があったとしてもイリスにはきかないと思うけれど』
そういう問題じゃないだろ。その辺に生えてる物なんて虫に食われてるかもしれないじゃないか。
適当に食べて中の虫まで食べちゃったら……。
『忘れてるかもしれないけれどイリスはドラゴンよ? 虫くらい食べるわよ』
食べんでいいそんなもの!
『でも小さい頃は……』
そんな物しか食べさせてないから呪いが発動したんじゃねーの!?
『なんですって!? あの洞窟内で魔物の肉や虫は貴重なたんぱく源で……ってよく考えたらあの時ミナト君だって魔物の肉もってきたじゃない』
魔物と虫は違いますーっ!
『私達からしたら一緒よ!』
分かり合えん……。
とにかく、俺の娘になったからには虫を食べるような生活はさせない!
『ふーんだ。虫だっておいしいのあるのに……っ、ミナト君』
分かってる。
「イリス、レナ。音を立てるな。こっちにこい」
誰か……俺達以外に人が居る。
二人を呼び寄せ、木陰に隠れる。
「おい本当に反応があったのか? 何かの勘違いだろ」
「いや、間違いない。……これを見てみろ」
「足跡……二人……いや、三人か?」
……まずいな。
シルヴァの野郎適当言いやがって……。いきなりバレてんじゃねぇかよ。
もし侵入が現段階でバレるようなら上に報告される前に始末しないといけなくなってしまうが、こいつら以外にも近くに敵がいる可能性を考えると今はあまり騒ぎを起こしたくない。
「またあいつらか……懲りない奴等だな」
……? 誰の話をしている?
外からの侵入者がバレたのではなく、敵対関係にある何者かだと思われている……?
やはり情報を得る必要があるな。
「まだ近いぞ。今度こそ奴等を根絶やしに……こいつらを見つければアジトが分かるかもしれん」
「イリス、レナ、静かに移動するぞ」
小声で二人に告げ、その場を後にする。
静かに、だけど出来る限り早くその場を移動したつもりなのだが。
「そろそろ大丈夫じゃないかな?」
「いや、まだ追ってきてる」
追手は森の中での移動に慣れているのか、思ったほど引き離せていない。
全力で逃げればどうにでもなるだろうがこちらも森の中で急いで走れば痕跡を残してしまうだろうし、結果的に追われ続ける事になる。
ランガム大森林から出られない以上チェックとホールで逃げられる訳でもないし、どうしたものか。
木々を飛び移りながら逃げるのはどうだろう?
いや、どっちみち木を揺らすし、音も出るから同じ事だろう。
「まぱまぱ、何かあるよ」
森の中に、何か遺跡のような建造物が現れた。
「一度ここに身を隠すか……レナ、分身出せるか?」
「うん、大丈夫だよ。どうしたらいい?」
「あれって自分の意思で解除したりできるのか? 確か分身体に何かあっても本体にダメージないよな?」
「うん、大丈夫。あれは媒体として自分の身体の一部……髪の毛とか爪とか、そういうのを使うんだけど、好きな時に解除も出来るし、あとは一定距離が離れたら自動で元に戻るよ」
それなら今回レナを連れてきたのは正解だな。
「よし、俺達はあの遺跡に隠れよう。レナは分身体を三つ出してわざと大きな音を立てて森の中を走り回ってくれ」
「わかった!」
すぐに追手を振り切れると思って油断したけれどもっと早くレナの力を借りればよかった。
レナが分身を作って森に放ったのを確認し、俺達は遺跡の中へ。
石を削って滑らかにしたものを積み上げて出来ている遺跡は、ボロボロだったけれど簡単に崩れたりはしなそうだ。
少し奥まで進むと、光はほとんどなくなり、道もいくつか分岐している。
まるでダンジョンみたいだな……。
「ミナト、うまく誘導出来たよ。出来るだけ引き離すけれど、制限距離に限界があるからそれはごめん」
「いや、大丈夫だ。助かったよ」
「……まぱまぱ、これなぁに?」
ふと暗がりの中、イリスが何かを拾い上げてこちらに見せてきた。
「……果物の皮?」
綺麗に剥いてあるところを見ると、人間が食べたように見えるが……。
この奥に人が居るってのか……?
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