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第209話:この国の現実。
しおりを挟む「ヨーキス、仲間の銃撃をやめさせろ」
「しかし……」
「もう一度言うぞ、やめさせろ」
少しだけヨーキスが黙り、すぐに命令を飛ばす。
「撃ち方止めっ!! 退避せよっ!!」
ヨーキスの言葉に、物陰に隠れていた奴等がザザっと一気に退避行動に入る。
これで邪魔者は居ない。
敵の攻撃は一斉に俺に向かって放たれた。
敵の使っているのま魔力の弾丸のようで、やはり通常の弾丸ではなかった。
魔力を込めたカプセルのような物を放ち、それが対象に触れた瞬間閉じ込められている魔力が爆発する、という仕組みのようだ。
「カット」
俺目掛けて放たれた魔弾が消失する。
前方の木々の影からざわめきが聞こえてきた。
第二射。
「カット。ペースト。コピー、ペースト、コピー、ペースト、コピー、ペースト……」
俺の周りに帯びたたしい数の魔弾が浮かぶ。
俺はそれを前方に一気にぶっ放す。
「……少しは見晴らしがよくなったな」
目の前の木々は崩れ落ち、魔弾はその背後に隠れていた敵兵の身体も打ち抜いていた。
「……まだ結構残ってるか」
俺が数歩近寄った所で、大声が響き渡る。
「待たれよっ!!」
「俺は今機嫌が悪い。言いたい事があるなら前に出てから言え。それが出来ねぇなら話を聞く必要は無いしこのまま殺す」
一瞬の沈黙の後、白いローブを身に纏った大男が俺の前へ出た。
「言いたい事があるなら手短にな」
「貴殿の先ほどの攻撃で私達はほぼ壊滅……生き残っている連中もほとんどが怪我をして動けない状態だ」
「だからどうした。ここに攻め込んで来たのはテメェらだろうが。それだけならまだしも俺の娘の頭に一発撃ち込みやがって……」
助けてくれなんて都合のいい言葉を言ってくれるなよ……?
「私と一騎打ちをしてほしい」
「……勝てると思ってんのか?」
大男は苦笑いをしながら肩をすくめた。
「思っている、と言いたい所だが……さっきのを見せられてまだそんな事を言えるほど馬鹿じゃあない」
「だったら何のつもりだよ」
「……頼む。俺の命で、奴等を見逃してやってくれ」
……へぇ。
「何も解放しろと言ってる訳じゃない。ただ、命までは取らないでやってくれ……頼む」
「仲間の為に死ぬってのか?」
「別に、仲間と思った事は無い……それぞれただ集められて俺の指揮下に配属されただけだ。だが……俺こいつらのリーダーなんだ。責任は、とらねぇとな」
そう言って力なく笑う大男。
「あんた名前は?」
「……ラガー」
「ラガーね、覚えておくよ。お前みたいな奴は嫌いじゃない。じゃあさっさとやろうぜ」
ラガーが掌を合わせ、一度深く礼をしてから構えを取る。
「かかって来な。死ぬ気でやれよ」
「感謝する……! いざっ!」
ラガーは自分のポケットからメリケンサックのような器具を拳に取り付け、殴り掛かってきた。
「遅い」
大振りの腕をかわして横に回り込み、脇腹に一撃入れる。
意識を刈り取られながらも、ラガーのもう一本の腕、その拳に付けられたメリケンサックはこちらを向いていた。
ばしゅっ!
メリケンサックに付けられていたトゲトゲが勢いよく発射され、弾丸のように俺の顔目掛けて飛んで来る。
それを歯で齧って受け止め、ガリガリと噛み砕いて吐き出す。
「なかなかやるじゃねぇか」
ぺっぺっ。
口の中にじゃりじゃりが残っちまった……。
ラガーは朦朧としながらも、「……まい、った……」と呟きながら崩れ落ちる。
「……強いのだな」
「ヨーキスか。勝手な事して悪かったな。娘に手を出されてカッとなっちまった」
「いや、助かった。……お前らの勝ち目はもうない、投降しろ!」
ヨーキスが傷付いた敵兵に告げ、奴等はぞろぞろと中央に、ゆっくりだが集まってきた。
敵兵を全て集め、手足を拘束した頃ラガーが意識を取り戻す。
なかなか回復も早い。かなり身体を鍛えてるなこいつは。
「まさか私まで殺さずに……すまない……」
「別にいいさ。俺は無差別殺人をしたいわけじゃ……」
ギャギャギャギャギャギャ!!
突然の爆音と砂煙。
そして断末魔。
「ヨーキス! これはどういう事だ!?」
彼女は、持っていた銃……マシンガンのようなソレで、ラガーを含む教徒全員を撃ち殺した。
「どうもこうもない。協力には感謝する。しかしこいつらは敵だ」
レナは震えて俺の身体にしがみ付き、イリスはさっきまで動いていたのに動かなくなった教徒達の様子を近くまで見に行った。
「まぱまぱ、みんな死んじゃった」
「イリス、こっちに来なさい。ヨーキス……こいつらは敵と言えどラガーはまともな上官だった。せめて他の奴等は捕虜に……」
「そんな余裕がどこにある。こちらの内情も知らない貴様には分からないだろうが、捕虜にしてどうする? 貴重な食料をこいつらに分けてやれというのか? それともそのまま餓死させろと?」
……クソが。
胸糞悪い事この上ないが、ヨーキスの言い分も分かる。
「それにな、こいつらは私の仲間や友人を殺してるんだぞ……?」
確かに、こいつやここにいるレジスタンスの連中からしたら生かしておく意味も価値もないのだろう。
この国はずっとこんな事を繰り返してやがるのか……?
「ふぅ……ヨーキス、とりあえず理解はした。納得はしきれてないがな」
「今はそれで十分だ」
ここは戦場だ。情けが介入する余地など無い。
それがよく分かった。
殺すか、殺されるか。
それが全てなんだ。油断すれば殺される。
「まぱまぱー、こんなの出て来たけどこれなにー?」
イリスが何かぴかぴか光る丸い物を教徒の遺体から拾い上げた。
「あっ、あれは……! 早くそれを投げ捨ててっ! いや、もう間に合わないっ!」
「ほいっ!」
イリスが物凄い剛速球を空へ放つ。
するとすぐさま空中で先ほどの球体が大爆発を起こした。
……爆弾、か。
死なばもろともというやつだろう。
「はぁっ、はぁっ、し、死ぬかと思った……」
「うちの娘が剛腕の持ち主で良かったな」
とはいえ近くで爆発されたら俺とイリスはともかくレナは危なかったかもしれない。
「貴様も、み、見ただろう……? これ、が……この国の、現状だ……っ」
ヨーキスがぜぇぜぇと荒く息を吐きながら呟いた。
「……あぁ、よく分かったよ。少なくともこの国では俺よりもお前が正しいらしい」
ラガーの奴、部下があんな事しようとしてたなんて知らなかったんだろうな。
敵だろうが味方だろうが、お人好しから死んでいくっていうのは本当かもしれない。
ヨーキスはレジスタンスの連中に、すぐここを引き払って別の拠点へ移動するように告げた。
「ミナト、そして連れの二人。君等は私と共に来い。ボスに会わせる」
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