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第313話:断罪。
しおりを挟む「皆殺しって……魔物達をか?」
「そうさ。意外と簡単だったぜ? 俺に実験をしていた言葉の通じる魔物共より本能で向かってくる雑魚の群れの方が厄介だったくらいだ」
そう言ってゲイリーは苦笑い。
「そうか、お前のその精神汚染は魔物にも効いたんだな」
「話が早いね。その通りだ……このスキルに目覚めてから何日かかけていろいろ実験してよ。あいつらにも効くって分ったら即行動だ。奴等は何が起きたのか分からないままに死んでいった」
雑魚の方が厄介だったというのはある程度知能がある相手にしか効果が無いって事かもしれないな。
「とは言っても結局ここまで帰ってこれた時には満身創痍だったけどな。でもその経験で俺は思い知ったよ。俺はとことん自由が好きだってな」
「自由が好きなのはみんな同じだろうよ」
「だからさ。俺はこの力を使って皆に自由を振りまくと決めた。その第一段階としてクロムをやってやった」
前代表のクロムって奴は殺されていたのか。
チラリとリザインの方へ視線を向けると、小さく頷き返す。事実、なのだろう。
「でもよ、俺はここで迷いが生まれちまった……クロムが死んだ事を喜ぶ奴の多い事多い事。それは自由を手に入れたからという側面もあるだろうが、どちらかというと奴に酷い目にあわされた人間達が思ったより多かったからだ」
「……なるほどな、お前は自分の理想と、世直しの間に挟まれちまったわけだ」
ゲイリーは悔しそうに歯ぎしりして俯く。
「……そうだ。俺は俺のやりたいようにやると決めた。俺達を縛る柵やルール、そういう物を全部ぶっ壊してやりたかった。それだけだったんだ。善人になりたかったわけじゃない」
こいつの場合自分の名前が余計重荷を背負わせたのかもしれない。
かつての英雄と同じ名前じゃあなぁ。
「俺は同士を集めた。国に不満を抱えている奴等は多く、人を集めるのは簡単だった。でもそいつらは自由を得たいとは口ばかりでただただ気に入らない奴を始末したいだけの連中だったんだ」
「それと君、何が違うというのかね」
リザインが表情を一切崩さずに冷たい口調で問う。
「……わからねぇ。全然違う、と言いたいが、もしかしたら同じなのかもしれねぇ。でも……どうしても俺には何かが腑に落ちなかった」
「だからお前は自分が何をしたいんだろうって言ってたのか?」
「……まぁな。俺は人助けがしたいのか? いや、違うだろう? 好き勝手に生きてやりたいようにやって気に入らない権力者どもを根絶やしにしてやるんだ。そう……言い聞かせた」
「本心は違ったとでも言うつもりか? どうであれ君のやった事は重罪だぞ」
ルークなんてゲイリーの話を聞いて涙ぐんでいるってのにリザインはとことん冷静で冷淡だった。
上に立つ人ってのはこうじゃなきゃいけないもんなのかね。
「違わねぇさ。俺の本心からの行動に決まってる。だけど不安だった……だから俺は全ての柵を……そう、まず俺を縛る物を全て消し去ろうとした」
「それでシスターを殺させようとしたのか? 馬鹿だろお前……そのまま俺が本当に殺しちまってたら絶対後悔したと思うぞ」
「そうかもしれねぇ。でも、少なくとも……後には引けなくなったはずだ。俺の中で確固たる覚悟がそこで決まる筈だった」
「馬鹿も休み休み言い給え」
悔しがるゲイリーにリザインが更に畳みかける。
「もし本当に後に引けない状況を作りたかったのなら君はミナトに頼まずに自分の手を汚すべきだったのだ。自分を縛るそれらを自分の手で砕くべきだった」
「お、おい。いくらなんでもそれは……」
俺の横槍など完全に無視してリザインは続ける。
「自分にとって一番重大な決断を他人に任せる事こそが一番の弱さであり、君が弱者である証拠だ」
「……なんも言えねぇ」
「その二択を他人に任せてしまったという事はその時点で君は考える事を放棄している。流されてしまっている。権力や柵、ルールに身を任せる民衆と同じだ。君は……」
リザインは一気にまくし立て、そこで一呼吸おいてから急に優しい声で呟いた。
「君はこうなる事を望んで居たんじゃないかね?」
「……どういう意味だよ。俺が、望んでいた?」
「その通りだ。君は、ミナトならきっとあの教会を潰さずに、シスター達の命も奪わずに自分の元にたどり着く。そしてあわよくば……自分を殺してくれる。……そう、思っていたのではないかね?」
「……」
ゲイリーはもうリザインの方を向きもしなかった。
「君は誰かに止めてほしかったんだろう?」
「違う」
「そうでなければおかしい点が幾つもあるだろう」
……そう言えばシャイナだって結局戦いの盾には使わなかったしな。
「俺は……本当にミナトを殺そうとした」
「まぁそりゃそうだろうな。アレが本気じゃなかったって言うなら脱帽だぜ」
「力も人徳もあって自分の力で、強い意志でこの世界を生きていけるミナトに嫉妬した。全力で潰してやりたかった。その能天気な顔をぐちゃぐちゃに歪めてやりたかった……」
おいおいお前言い過ぎだろ……。
『君と同じで性癖が歪んでるのよ』
やかましい。もうちょっと引っ込んどれ。
「それもまた君の本心だったのかもしれないが、この結末を全く望んでいなかったと心から言い切れるかね?」
「……言い切れるさ。出来れば……ちゃんと殺してほしかった」
ついにゲイリーは地面に突っ伏し、嗚咽を漏らした。
「リザイン、こいつの処遇をどうする気だ?」
そんな優しい言葉をかけても罪人は罪人だ。
こいつの立場で最大限甘い判断をするとしたらせいぜい国外追放……とかか?
「ふむ、彼の処遇か」
リザインは一瞬悩むフリをして、さらりと言ってのける。
「勿論、死んでもらう」
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