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第319話:嫌いな奴と嫌いな奴の戦い。
しおりを挟む「貴様……余に喧嘩を売った事を後悔させてやる」
「待って下さい。そんな無益な……」
止めに入ろうとしているリザインを掌で制し、俺がゲイリーの助け舟を出してやる。
「いや待て、確かにゲイリーも相当な使い手だからな。奴に勝てないようじゃ意味がないだろ?」
「お、ミナト分かってるじゃねぇか」
「ミナト、こいつはそんなに強いのか? 余よりも?」
……どうだろう。正直エクスとゲイリーは相性的にかなり厳しい気はする。
「多分こいつの能力みたらビックリすると思うぞ」
「ほう……? お前がそこまで言うとなると楽しめそうではないか。しかしどこで戦う? 余は街を破壊しに来たわけではないからな」
「それなら任せとけって」
一瞬にして俺達全員が謎空間に放り込まれる。
「……ほう? これはなかなか面白い力だ」
初めて入ったリザインやルークは驚き、うちの女性陣は芯が太いのか興味深そうにあちこちきょろきょろしている。
「ここなら思い切り戦えるぜ?」
「しかしギャラリーが巻き込まれてしまうのは本望ではないな……」
エクスがこちらの心配をし始めている。本気を出すつもりなのかもしれない。
「ラムちゃん、障壁頼めるか?」
「無論なのじゃっ! 前英傑王の力儂も興味があるのう♪」
俺はリザインとルークに近くへ寄るように言い、纏めてラムに障壁をかけてもらった。
ラムの障壁が破られるって事はないだろう。
「こっちの防御は万全だ。思いっきりやってやれ。万が一の事があったらネコにすぐ治させるから怪我の心配もいらねーぞ」
「それを聞いて安心した。さぁゲイリーとやら、かかってくるがいい」
「言われなくても……! 元英傑王の力ってのを俺に見せてみろや!」
ゲイリーは懐からダガーを複数エクスに投げつける。
エクスはそれをかわすが、すぐに軌道が変化し再びダガーが襲い掛かる。
しかしエクスは簡単にそれらを避けてしまう。
……あれ?
ゲイリーの奴俺にやったみたいにダガーの見える位置の操作とかしてねぇのかな?
俺はむしろエクスの脳天にいきなりダガーがぶっ刺さって即死、ってパターンがあるかもと恐れていたんだが、一向に当たらない。
「くそっ、なんなんだテメェは……!」
「ふん、こんな物に当たるのは視覚情報にだけ頼った愚か者だけだ」
「大きなお世話だ畜生め!」
つい叫んでしまった。
みんなの冷ややかな視線が突き刺さる。
やめろ俺をそんな目で見るな……!
『余計な事言うから……アホねぇ』
どうやらエクスは見えているダガーに騙される事なくダガーの位置を気配で察知してかわしているらしい。
なんでそんなに才能に溢れてるの? 腹立つ……!
「まさかとは思うがこんなものがお前の能力なのか? この程度でいきがるとは嘆かわしいな……」
そう言ってエクスは何も無い場所へ素早く手を動かし、何かを掴みとる。
多分ダガーを素手で掴んだんだろう。ほんとムカつくなあいつ……。
『嫉妬が酷い……』
やかましい!
「へへっ、馬鹿め! その慢心が命取りだぜ!」
おっ、ゲイリーの超弱体化が炸裂か?
「むっ?」
エクスが手に違和感を感じたように視線を向けた瞬間大爆発。
弱体化させその指にわずかな傷を付け、その瞬間に爆発。
こいつの面倒な攻撃の一つだ。
「へへ……腕一本いただき……!」
「ほう? 貴様の言う腕とはこれの事かな?」
エクスは全く無事な自らの腕を掲げて見せた。
「な、何故だ? 確実にお前を弱体化させたはずだ……!」
「なるほどな。この空間内にいると貴様の任意のタイミングで弱体化させられる訳だ。なかなか面白い能力だが……それだけの事」
「わかんねぇ……血液に反応した瞬間しっかり爆発したはずだ。お前はなんで無事なんだ……!?」
「簡単な事よ。傷をつけられ、爆発の予兆を感じた瞬間に余の身体だけを自らのストレージ内へ収納し、再び現れただけの事」
……自分の身体を自分のストレージ内に収納……?
内側から自分で出て来れるの?
理屈がよく分からないがこいつならそれくらいの事やってのけそうって思えてしまうのがつらい。
「ちっ……でたらめな技を……!」
「貴様には格の違いを教えてやらねばならんな。先ほどの手は使わん。さぁ好きなように攻撃してくるといい」
「舐めやがって……弱体化した状態で好き勝手出来ると思うなよ!?」
ゲイリーは見えないダガーをとにかく投げまくり、方向を操作しながらタイミングを計る。
そして、俺にやったように一気にダガーの雨を降らせた。
見えないダガーが一斉にエクスを襲う。
弱体化された状態では障壁もいつかは破られてしまうだろう。
どうするつもりだ……?
「弱体化されたところでヴェッセルによる効果は変わりがない。どちらにせよお前は詰んでいる」
エクスに触れる直前に、何か小さな光がぴかっと輝く。
小さな光がエクスの周りでぴかぴかと。
「な、何をしやがった……!」
「なぁに、扱いが難しく余でなければ操作しきれないヴェッセルがあってな。滅多に使う機会がないが今回は最適だった」
「だから何をしたって聞いてんだよ!」
「……人の話は最後まで聞け。余はお前のダガーを全て粉末に変えた。分解、そして再構成がこのヴェッセルの力だ……」
いや、どのヴェッセルだし。お前そんなもんもってたのかよ……。
『あれ相当扱いが難しいやつよ? タイミング失敗したら自分の身体が分解されちゃうかもしれないやつだもの』
それを見えないダガー相手に全部寸分のズレなくやってのけたってのか?
「ちっ、化け物め……!」
ちっ、化け物め……!
『ミナト君って精神的にはとことん小物よね……』
やかましい俺とエクスの相性が悪いだけだ!
『なるほど、エクスとは精神的な相性が悪くてゲイリーとは肉体的な相性が悪い、と』
変な言い方しないでマジで。
「さぁ、お前に借りた物を返そう」
エクスの腕に巨大な、とんでもなく巨大な……そして薄く、キラキラ輝く長い剣が握られた。
「……みな、伏せるのじゃっ!」
ラムの声に反応出来たのは俺とティアくらいだった。
仕方ないので慌てて俺とティアが全員を無理矢理地面に伏せさせる。
次の瞬間、ラムの結界はすっぱりと切り裂かれ砕け散った。
そして……顔をあげた時には、ゲイリーは胴体から真っ二つになって転がっていた。
「ネコ! 早くあいつを治療しろ! 急げ!!」
「みゃあっ!? りょ、了解ですぅ!!」
目の前を駆け抜けていくネコを眺めながらエクスはつまらなそうに、その手に握られたペラペラで巨大な剣を手放した。
一瞬にして剣はサラサラと粉に戻って空気中に霧散する。
「全く……身の程を知れ下郎が」
もうお前が英傑王でいいよ……。
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