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第2章:冒険の始まりと新たな仲間。
第23話:混浴だいさくせん!
しおりを挟むその後はとても順調に旅が進んだ。
途中で魔物に襲われる事があったけど、シュラが睨みを利かせるだけでみんな逃げていった。
「シュラすっごいね! 魔物と戦う必要なんてないんじゃない? みんな逃げてっちゃうね」
「フッ……私ともなれば眼光一つで追い払う事など容易き事よ」
なんかキャラ変わってるような気がするけど、こういう中二感出してる時って一番気持ちいい時だからそっとしておいてあげよう。
でも実際シュラが一緒に居てくれれば魔物とほとんど闘わなくて大丈夫じゃないかな?
かなり大きな魔物もシュラを怖がるように逃げちゃったし。
「ユキナ、街が見えてきたぞ」
「おー、ほんとだ♪ ……あ、でも街についてもさ、もっごとシュラって入れないんだよね? どうする?」
「しかし俺達は街の現状調査もしなきゃならないから行かない訳には……」
でもなぁ……ちょっとだけ中入ってすぐ出てこようかな?
「私達の事は気にするな。今夜は街の外で野宿で構わない。私はいつもそうだったし、ウッドバック……いや、もっごも問題無いはずだ。そうだな?」
「も、勿論です!」
「そういう訳だからお前らは宿でもとってゆっくり休んでくるといい」
もっごってシュラと話す時は敬語なんだよなぁ。ビーストテイマー相手だとやっぱり委縮しちゃうもんなのかな?
みんな逃げちゃうくらいの威圧感があるみたいだしもっごはそれ考えると頑張ってるよね。
しばらく進み、街まであと数百メートルってくらいの所でシュラが「私達はこのあたりまでにしておこう」と言ってもっごを連れて木陰に座り込んだ。
「ごめんね? じゃあ行ってくるよ♪ もっごー、お留守番宜しくね?」
「おう任せとけ! お嬢ちゃんも気を付けてな!」
シュラともっごに手を振り、街の方へ向かうと、入り口の前に居た警備の人が騒ぎ出した。
「そ、外に人がいるぞ!」
「貴女達はいったい……?」
「どもどもー姫に召喚された勇者と聖女でーっす♪」
そう返事しながら大きく手を振ると、「勇者様!」「聖女様も!」と大喜びしてくれたのはいいんだけど、テンション上がりすぎてこちらに走り寄ってきて障壁に顔面から激突してた。
やっぱりここも囲まれちゃってるんだね。
そして、僕達はなんの問題も無くするりと障壁を抜けて中に入る事が出来た。
「姫に頼まれて他の街の現状を調べに来てるんだ。ここは今どんな感じ? ちゃんと自給自足できてる?」
「はい。わざわざご足労頂き有難いです。この街は見ての通りあまり大きくはないのですが、その分畑が敷地の半分を占めておりまして食料に困る事はありません」
見た感じ街の中に川がいくつも通っていて、それぞれに橋が架かっている。
多分水に関しても大丈夫だろう。魔法で水出せる人も居るかもだし。
「じゃあこの街は特に今困ってないのかな?」
「……というかですね、実の所以前より平和なくらいなんですよ」
警備の人はそう言って苦笑い。
「どういう事?」
「この街、ケーリオは定期的に黒い影の魔物に襲われる事があったんですがね、この障壁のおかげでそれ以降被害もまったく出ておりません。外に一切出られないのは不便ですが、ただのんびり暮らしたいだけの人々はむしろ喜んでるくらいです」
……なるほどなぁ。
もともとちょっと魔物に襲われたりしていた場所だったらそういう考え方になるのは分かる。
誰しも平和でのんびりくらしたいものだろう。
僕だってクラマと二人だったら、一つの街から出ちゃダメだよって言われてもさほど気にしないと思う。
「ただ、その……外から人が来る事がまずないもんで店の類はほとんど閉めちまってるんですよ」
「あぁ、そうなんだ? じゃあ買い物は出来そうにないのかな?」
「いえいえ、勇者様と聖女様がわざわざ来て下さったんですから食料や必要な物などはある程度用意させてもらいます。ただ、その……宿がないもんで」
あっ! そりゃそうだ!
完全に失念してた。だって外から誰も来ないんじゃ宿なんかあったって意味ないもんね。
「宿屋の親父も今は完全に農業ばかりやってる次第でして……」
「クラマ、どうしよっか?」
クラマも宿を取るつもりだったみたいだから困ったように眉間を指で押さえていた。
「……ちなみにこの街でどこか、風呂に入れる場所はないか?」
「あ、それ僕も気になる! 出来ればお風呂は入りたいなぁ」
「それでしたら小さいですが温泉がありますよ。それでも構わなければお二人の為に貸し切り時間を作らせてもらいますが」
「ほんと!? やったー♪」
……と、言う訳で僕らはバレーのコートくらいの面積の温泉に浸からせてもらう事になった。
「……おい、もう少しあっちへ行け」
「なっ、こんな可愛い女子と一緒に温泉入っておいてあっち行けは無いでしょあっち行けは! 怒るよ!?」
「す、すまん……しかしその、俺にとって女性が裸ですぐ近くに居るというのは……いろいろフラッシュバックしてきついんだ」
「慣れろ! いろいろあったのは分かるし辛いのも分かるけどこれくらい慣れてくれないと困る!」
「そもそもなんで混浴なんだよ……」
そう。貸し切りの時間はとって貰えたけれど、あまり長い時間は難しいって言うので、じゃあ一緒でいいやって僕が言ったのが始まり。
クラマは嫌だ嫌だ騒いでたけれど、それでもお風呂には入りたかったらしく最後にはしぶしぶ折れた。
個人的にはこういう機会を増やしていって自然にクラマに慣れてってもらいたい所なんだけどなぁ。
というか多少こう、僕に対してムラっとしたりしないわけ?
これでももう女なわけで、まったく興味ないどころか拒絶されてる感じなのは結構屈辱。
「ねぇ、クラマ~?」
「な、なんだ……うわぁっ! おま、お前タオルはどうした! 早く沈め! 胸を隠せ馬鹿!」
「タオルは湯舟に浸けちゃダメなんですー! そんな常識も知らないの? それよりさ、こっちちゃんと見てよ。少しは慣れる努力してってば」
クラマはぎゅっと目を瞑っていたけど、途中で覚悟を決めたのか少しだけ目を開いて……。
そのままゆっくりとお湯に沈んでいった。
「く、クラマーっ!?」
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