45 / 56
最終章:女神への願い。
第45話:決着は鉄と涙の味。
しおりを挟む「あばばばばば……!!」
風圧で口がびろんびろんになるの初めて体感した。
「もう少し我慢だ。島の中心ならあの山の山頂だろう。一気に行くぞ!」
クラマがさらに加速し、物凄い勢いで山を駆け上る。
ちょっと出っ張ってる所に飛び乗った所でクラマが一気に頂上までジャンプした。
このまま頂上にいるであろうシャドウに奇襲をかけるつもりのようだった……んだけど。
「な、なんだとっ!?」
山の中心は大きくくり抜かれていて、その真ん中に巨大なシャドウが立っていた。
ほぼ山と同じ高さの闇の塊が、その山の中に隠されていた。
「ちっ……もっご! ユキナを頼んだ!」
クラマはもっごごと僕を放り投げ、自らはそのままシャドウの頭上から切りかかる。
「うわわーっ!」
「お嬢ちゃん、しっかり掴まっとけ!」
もっごがにゅいーんと枝を伸ばしてくれたので空中でそれを掴むと、勢いよく元の長さに戻って僕をキャッチして壁面を駆け降りる。
ジェットコースターの百倍怖いっ!!
くり抜かれた山の内側をぐるぐる回るように駆け降り、最下層にたどり着くちょっと前にクラマがシャドウを真っ二つに切り裂いて地面に降り立った。
「やったか!?」
「クラマそれ言っちゃだめなやつ!!」
そんな事を言ってほんとうにやったの見た事ないからっ!!
案の定、真っ二つになった巨大シャドウは何事も無かったかのように一つに繋がりこちらを見下ろした。
そしてその巨大な足を振り上げ僕らを踏みつぶそうとするけど、図体がでかすぎて膝が壁面に激突してるバーカバーカ!
とか調子に乗ってたら壁がガラガラ崩れて瓦礫がぼとぼと落ちてきた。
「クラマ気を付けて!」
「こっちはいいから自分の心配をしろっ!」
クラマはそのままシャドウの軸足を切りつける。今度は鈍い音がして少しめり込んだけれど弾かれてしまった。。
「お嬢ちゃんはおいらが守るぜ!」
もっごが俊敏に動き回り落石をかわしていく。僕はその動きに対応できなくてぐわんぐわん振り回されてへろへろになってしまった。
僕の胴体に枝を絡ませてホールドしてくれてるおかげで振り落とされずにはすんだけど、これ以上続いたら脳みそシェイクされてアホになっちゃう!
落石が落ち着いた頃、シャドウの動きが止まり急にその姿を小さく変化させた。
クラマの倍くらいの背丈で止まる。
こういうのって大抵ヤバいやつだ。
「気を付けろ、多分力を凝縮させただけだぜ! むしろ小回りきく分厄介だ!」
もっごがクラマにアドバイスを飛ばしてるのを聞いて、それ僕が言いたかったやつ! って思ったけどそれはクラマもちゃんと気付いていたみたい。
彼はシャドウの動きを見極めようと防御態勢をとったまま、次の瞬間には吹き飛んでいた。
「……えっ?」
何も見えなかった。強化の支援魔法を使う間もなく……ただ、気が付いたらクラマが壁にめり込んでいて大量の血を噴き出していた。
「え、クラマ……? クラマってば!」
クラマはピクリとも動かない。
「う、嘘でしょ? ねぇ、クラマ!!」
「お嬢ちゃんあぶねぇ、こっちに来るぞ!!」
えっ?
何がなんだかわからなかった。
ただ、目の前が真っ黒に塗りつぶされたようになって、少し遅れてそれがシャドウの大きな拳だったって気が付いた。
でも、それだけじゃなくて。
シャドウの拳の周りには切り株があって。
何が起きたのかをやっと頭が理解した頃にはシャドウが腕を振ってもっごを放り棄てていた。
「もっご!!」
彼は瞬時にホールドを解いて僕の目の前に飛び出し、身を挺して僕を守った。
そして、その身体には大きな穴があき緑色の体液を撒き散らしていた。
「もっご……僕を、庇って……?」
「ユキナ……大丈夫か?」
クラマが自らの血を拭いながら僕とシャドウの間に割って入る。
無事だったんだね。それはすごく嬉しい。ほんとだよ。
だけど……だけど。
「僕は大丈夫だけど……もっご、もっごが!」
「落ち着け。こいつは俺が引き付けておくからユキナはその間に回復を!」
「でもそれじゃクラマが……」
「大丈夫だ。油断しなければ反応できない程じゃない。それに……今ので更に力が湧いてきた」
僕への危険の大きさがクラマの力になるのなら、今のクラマはそれこそMAX状態だろう。
「分かった……ごめん、少しの間お願い」
「任せろ」
シャドウが動こうとしたのをクラマが牽制する。
「何処へ行く? お前の相手はこの俺だ」
クラマ、気を付けてね……。
僕はもっごに駆け寄り、こんな時の為にきちんと覚えたあの魔法を使う。
意識を集中させ、もっごの傷を癒すように……。
強く普段の彼をイメージする。そして……。
「もっご、元気になって……」
軽くなってしまった彼の身体を持ち上げ、口付けをした。
彼の身体は光り輝き……そして。
何も起きなかった。
「うそ、嘘だ。嘘だって言ってよ……」
もっごはぴくりとも動かなかった。
そんな……もっごが、僕のせいで死んじゃった。
僕が弱いから殺されちゃった。
僕は静かにもっごを壁際に移動させ、シャドウに向き直る。
「ユキナ、こっちに来るな。俺に任せておけ!」
クラマはシャドウの激しい攻撃を必死に受け流す。
さっきまで何も見えなかったのに、どういう訳か今では二人の動きがよく見えた。
「かの者に勝利の祝福を……【グランディズメント】」
クラマに強化魔法をかけると、徐々にだけどクラマがシャドウの動きを上回るようになり、攻撃が当たり始めた。
しかし彼の剣は当たっている筈なのに、その大半はシャドウの身体をすり抜けているようだった。
ここに来た時の初撃もきっとシャドウを切ったように見えただけですり抜けていたんだろう。
「クラマ、そいつ攻撃のタイミングでしか実体化してないよ」
今の僕にはシャドウの力の流れが手に取るように分かる。
実体化している時はエネルギーが膨れ上がり、実体化していない時には存在が希薄になる。
きっとシャドウって元々闇の塊だから存在が希薄なんだと思う。
ただ、対象に干渉する為には実体化するしかないんだろう。
「なるほど……なっ! それが分かれば……!」
クラマがシャドウの攻撃に合わせてその拳を切りつけると、シャドウの手首が切り落とされ空気に溶けた。
「いけるぞ! もう一度だ!」
バキン。
「なっ!?」
クラマが渾身の力を込めた一撃。それは確かにシャドウの身体を捉えたけれど、彼の力に耐え切れなかった刀身部分が粉々に砕け散った。
「……クラマ、そのまま続けて」
「しかし……!」
「大丈夫。僕を信じて」
「分かった」
僕はラスカルが魔法で剣を作り出したのを見ていた。
あの時は凄いとしか思わなかったけれど、今ならあの魔法の仕組みが分かる。
再現する事が出来る。
僕の魔力を注ぎ込んだ光の剣を、クラマの手に。
彼の持つ剣の折れた刀身部分が光り輝く魔法の剣へと変わる。
「終わらせてやるっ!!」
シャドウがその姿を変異させ、クラマを丸ごと飲み込もうと広がった瞬間、クラマはシャドウを……その闇を消し飛ばすほどの一撃を放った。
切り裂かれた闇は低いうめき声のような声を響かせて空気に溶けていく。
「やったか……!?」
霧散した闇が僕の目の前で再び実体を帯びていく。
「クラマ……」
僕はありったけの魔力を掌に込め。実体化しかけたシャドウの顔面を掴み、小さな結界を展開。
「だから、それは言っちゃダメなやつだって……」
シャドウを結界内に閉じ込め何処にも逃げられないようにした上でそのまま地面に叩きつける。
「言ってるでしょーがっ!!」
もう魔力を魔法の形に整える事すら煩わしい。
全身全霊の魔力はただただ、僕が作った結界の内側に向けて炸裂した。
閉じ込めたシャドウはその魔力の本流に飲まれ、耐え切れなくなった結界が破裂し、溢れ出した魔力は叩きつけた地表から一気に上空へと吹き上がる。
「今度こそ……終わったんだな」
「うん……だけど……もっごが、もっごがね、僕を庇って……」
ぼろぼろと涙を流す僕をクラマがそっと抱きしめてくれた。
女の子苦手なくせに無理しちゃってさ……。
「今なら、許してくれる?」
「ああ」
「嫌なの、分かってるけど……許してね」
「ああ」
僕を抱きしめるクラマの腕に更に力がこもる。
「……ばか。痛いよ」
クラマを見上げ、背伸びをして……。
そっとキスをした。
クラマとのキスは……彼のぬくもりはとても優しかったけど、
鉄と涙の味がした。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる