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ep.4 終わりの始まり〜呪具、育乳の乳首ピアス〜
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太陽の光を瞼の裏で感じた瞬間に飛び起きた。即座に立ち上がり、辺りの様子を伺うが脅威となりそうな存在はない。
あるのは、俺が一人いるだけの豪勢な寝室。あまりにも、居心地が悪い。
昨日の出来事が頭を過り、この場所が夢でないことを物語っていた。だがせめてもの希望を持って、襟ぐりを引っ張り自分の身体を見下ろしてみる。
「だよな......」
成長途中のような小さい二つの胸の丸みに、下腹部の妖艶的な紋章に平たい陰部。過去の俺の存在を否定する全てがそこに詰まっていた。
昨日は気づかなかったが、他にも変化はあった。明らかに、乳輪は親指に収まらないほどの幅まで広がり、乳首はひよこ豆ほどの大きさまで肥大化していた。
——本当に、変わっちまったのか......
窓の前に立ち空を見上げながら、胸を押し込んでみる。確かな膨らみの弾力、胸筋ではあり得ない柔らかさ。
胸を握られた時のような痛みはないが、違和感は拭えない。
「ヒャッ!?」
背後からのノック音。思わず声をあげてしまった。
——クソっ。なんなんだ、何故不安な恐怖の感情がこんなにも感じやすくなっている?
こんな小さな物音一つに動じるなど、絶対にあり得なかった。こんなものに動じよう物なら、酒場の席で一生笑い物にされるだろう。
「アリサ様。お目覚めでしょうか? 朝食とお召し物をお持ちしました」
リエではなく、年かさのメイドだったことに肩を落とす。
「今向かう、少しまっ」
言い切る前に、ドアが開いた。
年かさのメイドがカートを黙々と寝室の中に運ぶ。
「よく眠れましたでしょうか?」
寝室のテーブルの上に食事を並べつつ、彼女は言った。
「あ、ああ」
「何よりです。ご主人からは、昨夜と今日だけは最高のもてなしをしろと申し付けられておりますので」
聞き捨てならない言葉と共に、テーブルに食事が並びきる。
白パン、チーズとロースト肉やハムの切れ端、ゆで卵に果物。これほど揃った食事など、いつぶりだったか。
「どういう意味だ?」
彼女に問いつつ、与えられるのなら貰うという精神で席に座ろうとする。すると、腕を掴まれ、止められた。
「お召し物がまだです」
そのまま彼女は俺を、寝室に隣接したドアにある更衣用の小部屋に連れて行った。
腕に掛けてあった衣類を、彼女は鏡の前の机の上に並べていく。
白いレース下着、ガーターベルト、そして昨晩廊下ですれ違ったメイドが着ていたような短いスカート丈と肩が露出したメイド服が並んでいた。加えて、ニードルと円状の乳首ピアス。
目を疑う光景に、俺は思わず後ずさりする。
「何!? こんな服を着ろってのか!?」
声を荒げる。
メイドは無表情のまま、穏やかに口を開いた。
「アリサ様、これらを身につけていただけない場合、再び地下の牢屋へお戻りいただき、食事の質を下げた上で無理やり着替えていただくことになります。いまお着替えいただいた方が、待遇も良くなりますよ」
その言葉に血が凍る思いだったが、彼女はさらに続けた。
「また、進んでご協力いただければ、ご主人は色々とご質問にお答えするとおっしゃっております」
頭の中で葛藤が渦巻いた。屈辱と抵抗心が叫ぶ一方で、牢屋に戻される恐怖と情報欲しさからくる誘惑が押し寄せる。
——なんて趣味が悪い野郎だ......
歯を食いしばりながらも、渋々了承の言葉を絞り出す。
「……分かった。後、俺の名前はアレクだ、アリサじゃない」
もう恥は十分重ねてきた、それに今の俺の姿は少女だ。なんらおかしいことは......なんという風に、自分に言い聞かせるが、すぐに否定する。いや、俺は俺だ。ただ、情報のためだけに仕方なくだ。
そして違う名前を呼ばれ続けるということに、改めて違和感と自身の輪郭が揺らぐなんともいえない恐怖を覚える。
俺が感情の落とし所を見つけようとしている中、彼女は小さく頷き、早速俺の服を脱がせた。
「では、失礼します」
俺の言葉を本当に聞いていたのかと疑問に思う様子で、針を用意すると、彼女はそっと俺の乳首の横にそれを当てた。裸の状態でその冷たい金属に触れられるのに耐える。
「んっ......」
ただ意識するだけで、乳首が立っている。直接触れなくとも、敏感になっていることが分かった。
恥ずかしさのあまり、目をそらす。途端に、鋭い痛みが一瞬走った。剣で切られた時よりも、ナイフで刺された時よりも鋭く、我慢の効かない痛み。
声を我慢しきれなかった。
「っャアッ!」
体が跳ね、涙がにじむのを抑えきれなかった。その痛みが胸の奥からじんわりと広がる。
彼女は慣れた手つきで、乳首に刺さったニードルを円状のピアスに置き換えた。痛みはゆるくなったが、頭が対処しきれない感覚と感情が渦となり、涙が止まらなくなった。
気のせいか、金属の何かが閉まるような音を聞いた気もした。
俺のことなど気にしていない様子で、年かさのメイドは無表情のまま言った。
「お辛かったですね、少しお待ちください」
俺の肩を軽く押さえて動かないようにすると、痛みが引くのを待つ間、彼女は白いレース下着を取り出し、そっと俺の足元に差し出した。
「お足を入れてください」
促されるがまま、指示に従うと薄い生地が肌に密着し、異様な軽さと締め付けを感じた。下にもう、何もついていないことをこれでもかと示してくる。
ストッキングを足に通されると、次にガーターベルトを腰に巻かれ、彼女の手が器用に留め具を留めていく。
肌に触れるたび、女性的な体に馴染む感覚が俺をさらに混乱させた。
続いて、短いスカート丈と肩が露出したメイド服が用意された。
メイドは俺の腕を上げさせ、ドレスのように服を頭から被せた。布が体に滑り落ち、胸元が強調される。
スカートが太ももをギリギリ隠す長さに収まると、鏡に映る自分に目を背けたくなった。彼女は紐を結び、裾を整える。
「お似合いです」
淡々と述べられた言葉に、俺は唇を噛むことでしか反抗できなかった。
最後に、メイクの時間が始まった。
彼女は小さな卓に座らせ、鏡の前に俺を固定する。
「お顔を整えさせていただきます」
そう言うと、まず柔らかいブラシで頬に淡いピンクのチークを乗せた。次に、細い筆でまつ毛に黒いマスカラを塗り、目を大きく見せるように調整。
唇には赤いルージュを軽く塗られ、鏡に映る顔がどんどん知らない女に変わっていく。
「もう十分だろう、これ以上やって何になる」
「少しお静かに」
俺を黙らせながら、彼女は眉を整え、軽くパウダーを顔全体に広げた。
完成した姿は、俺が時折使っていた娼館にいてもおかしくないような女のそれだった。
——全ては、情報と安全のためだ。他に選択肢などなかった。
これしかなかったと、何度も自分に言い聞かせる。このままでは、知り合いなんかに顔向けできない。
だが、いくら現実から目を逸らそうとも、本当に俺自身がメイド達の言っていた〈夜兎〉になるのではないかという疑念が、何よりも恐怖だった。
すでに辱めは受けたが、より大きな俺自身の男を根っこから否定し全てを消し去るような所業。つまりは、男に媚びるだけの存在になってしまうということが、より現実味を帯びてきている。
終始乳首の熱感が消えないことが、更に懸念を強めた。俺はどうなってしまうのかと。
拳を握り、深呼吸をした。今未来の不安を抱えても仕方ない、少しでも情報を集めてそこから判断だ。
・
やっと小部屋から解放された俺は朝食を終えて、別の部屋へと連れて行かれた。
そこでは、ムマクが机を挟んで向かい合うように設置された右手側のソファの上に座り、隣に座るメイドの大きな胸を肩の上から手を通して揉んでいた。
書斎机はソファのさらに奥にあり、豪華な装飾が施された木製のそれが部屋の奥深くに鎮座していた。
メイドは俺よりも更に大胆な〈夜兎〉の格好をしており、豊満な胸とくびれたウエスト、短いスカートから覗く長い脚が強調された姿だった。肌は白く、長い金髪が肩を流れ、長いまつ毛の下の碧眼に、口元を覆い隠すベールが妖艶な雰囲気を漂わせていた。
表情は読めない。
「よく来てくれましたね。アリサ、メイド服もとても似合っています、顔も一輪の花のように魅力的です」
依頼主に剣筋を褒められた時のような、こそばゆい感覚がした。
——馬鹿な、俺が? 外見を褒められて喜んでいる?
否定の意図と、申し立ての意思を持って俺は声を張った。
「俺には母がつけたアレク・マグリットと言う名がある、もう俺をアリサなどと言う名で呼ぶな」
「まあまあ、落ち着いてください。一旦、おかけになって。お茶もよければ、用意させます」
「必要ない」
俺は両腕を組み、ムマクの向いのソファに腰を落とした。
「それで、アリサ。あのピアスはつけて頂けましたか?」
メイドの胸から手を戻して、両手の指を合わせるムマク。
「だから、俺には......」
言い返そうとした時、彼は人差し指で首元を指すジェスチャーをした。
「命令してもいいんですよ? そうすれば貴女はもう一生アレクと名乗ることはできなくなる。しかし、命令無しで貴女が呼び名を変えることを認めれば、ワタクシの見えない範囲なら貴女はアレクとまだ名乗れます。ワタクシとてあまり命令はしたくはありません。やはり、これから共に働いて貰う貴女の意思は可能な限り尊重したい」
足を組み直し、彼は続ける。
「それとですね。俺というのは、やめてもらえませんか? 可憐な貴女には似合わない。これも同じです。命令でもいいんですよ? 最後にですね、足も閉じましょう」
「......私は、アリサです」
足を閉じつつ、俯きながら言った。
満面の笑みで、ムマクは頷く。
こんな目の前に全ての元凶がいると言うのに、何もできない自分に腹が立つ。細かい指摘も全て従わないといけない不自由感も不快極まりない。
「話を戻しましょう。あのピアスはつけてもらえましたか?」
無言で俺は頷いた。
「それは良かった。そちらはですね、新しく呪い師に依頼して作った品でして、二つの呪いがかかっていまして」
鳥肌が立った。
——ただのピアスではなく、呪いの品だと言うのか? 俺は、一体何をつけたと言うんだ?
「一つは、外すことができなくなる呪いです。貴女の可愛らしい乳首に一生金具がぶら下がっていると考えると、中々唆るものがありますねぇ。ですが、本命の効果は違います。貴女には、いささか胸の大きさが足りないと思っていましたので、その解決策となるとっておきの呪いをつけて頂きました」
一体こいつは何を言っているんだ?
「百聞は一見に如かず。ルー、アリサに見せてあげなさい」
そう指示を出すと、隣に立っていたルーは俺がいる方へと移動し、あろうことか俺の胸元の布を下着とともに外し、乳首を露出させた。
「なっ、なっ? 何をするんだ?」
「動くな」
脳に響くムマクの声に、俺の体は硬直する。その隙に、ルーは隣に座り乳首をフェザータッチでいじり始めた。
まだ痛みの熱が残り、敏感になっている乳首は俺の意思と関係なく反応してしまう。
最初は軽い触感だったが、ルーの指が円を描くたび、電流のような感覚が胸の奥から広がり、体の奥が熱を帯びていく。
恥ずかしさと抵抗感が渦巻く中、彼女の指が乳首を軽く摘まむと、思わず体が震えた。
——何だ、この感覚? やめろ、触るな!
心の中で叫びながらも、体の反応は止まらない。ルーはさらに大胆になり、唇を近づけて乳首を優しく舐め始めた。
温かく湿った舌がピアスに触れるたび、鋭い快感が走り、俺は歯を食いしばって声を抑えた。
「うっ...…」
漏れた声に自分でも驚く。彼女はくすぐるように指で乳輪をなぞり、時折ピアスを優しく引っ張る。そのたびに、胸の奥が締め付けられ、変な疼きが下腹部にまで広がった。
——こんなの、耐えられるか! 俺は男だ、こんなことで……
だが、次の瞬間、ルーが乳首を強く吸うと、頭が真っ白になった。全身がビクンと跳ね、予想外の快感が爆発し、乳首だけで絶頂に達してしまった。
「あぁっん!」
恥ずかしい声が漏れ、顔が熱くなる。息を切らしながらも、ルーは休まずに再び舐め始め、もう一度同じ刺激を繰り返す。
ピアスが揺れるたび、快感が倍増し、二度目の絶頂が俺を襲う。
「んんんんっっっ…!」
声を抑えきれず、涙がにじんだ。
——何!? 何が起きてるんだ!?
三度目、四度目とルーが執拗に乳首を刺激し続けると、俺はもはや抵抗する力も失い、ただ体が勝手に反応するだけだった。
絶頂のたびに、胸に奇妙な膨張感が加わるのを感じる。
気になり、自分の体を見下ろすと、確かに胸が少しずつ大きくなっていた。微かとはいえ、膨らみが目立つようになり、元の小さな丸みを超えて成長しているのが分かった。
——これが...…ピアスの呪い?
ムマクの言葉が今になって理解できた。
「おっと失礼、つい見惚れてしまってワタクシも加わろうかと思ってしまうところでした」
股間をズボンの上から弄り始めていたムマクが言った。
「楽しんで頂けましたかな? 力作なんですよ、こちらの育乳乳首ピアス。乳首の刺激で絶頂を迎える度に僅かですが、胸が育つ。やりすぎは禁物ですが、楽しみではありませんかアリサ? 貴女は一体どんな官能的でありながら、強い物女性に変化するのか」
「変態野郎が」
全力で、こいつを俺は軽蔑する。絶対にこいつには屈してなるものかと。
-------
身長:165cm
体重:59kg→60kg
B: 86→88cm
W:57cm
H:90cm
【呪具】
淫魔の紋章: まだ成熟していない淫魔のものであるため、いまはただアレクに女の体を与えたに止まっているが......
強化型隷属首輪:主人の指輪保持者に危害を加えようとすると熱を発する、魔力を消費した命令には強制的に身体が従う。絶頂を身体強化の源として蓄積し、一度の絶頂につき五分ほど使用可能。
new! 育乳の乳首ピアス: 外すことができない上、乳首による絶頂を迎える度に僅かに胸が大きくなる。使い過ぎには注意。
あるのは、俺が一人いるだけの豪勢な寝室。あまりにも、居心地が悪い。
昨日の出来事が頭を過り、この場所が夢でないことを物語っていた。だがせめてもの希望を持って、襟ぐりを引っ張り自分の身体を見下ろしてみる。
「だよな......」
成長途中のような小さい二つの胸の丸みに、下腹部の妖艶的な紋章に平たい陰部。過去の俺の存在を否定する全てがそこに詰まっていた。
昨日は気づかなかったが、他にも変化はあった。明らかに、乳輪は親指に収まらないほどの幅まで広がり、乳首はひよこ豆ほどの大きさまで肥大化していた。
——本当に、変わっちまったのか......
窓の前に立ち空を見上げながら、胸を押し込んでみる。確かな膨らみの弾力、胸筋ではあり得ない柔らかさ。
胸を握られた時のような痛みはないが、違和感は拭えない。
「ヒャッ!?」
背後からのノック音。思わず声をあげてしまった。
——クソっ。なんなんだ、何故不安な恐怖の感情がこんなにも感じやすくなっている?
こんな小さな物音一つに動じるなど、絶対にあり得なかった。こんなものに動じよう物なら、酒場の席で一生笑い物にされるだろう。
「アリサ様。お目覚めでしょうか? 朝食とお召し物をお持ちしました」
リエではなく、年かさのメイドだったことに肩を落とす。
「今向かう、少しまっ」
言い切る前に、ドアが開いた。
年かさのメイドがカートを黙々と寝室の中に運ぶ。
「よく眠れましたでしょうか?」
寝室のテーブルの上に食事を並べつつ、彼女は言った。
「あ、ああ」
「何よりです。ご主人からは、昨夜と今日だけは最高のもてなしをしろと申し付けられておりますので」
聞き捨てならない言葉と共に、テーブルに食事が並びきる。
白パン、チーズとロースト肉やハムの切れ端、ゆで卵に果物。これほど揃った食事など、いつぶりだったか。
「どういう意味だ?」
彼女に問いつつ、与えられるのなら貰うという精神で席に座ろうとする。すると、腕を掴まれ、止められた。
「お召し物がまだです」
そのまま彼女は俺を、寝室に隣接したドアにある更衣用の小部屋に連れて行った。
腕に掛けてあった衣類を、彼女は鏡の前の机の上に並べていく。
白いレース下着、ガーターベルト、そして昨晩廊下ですれ違ったメイドが着ていたような短いスカート丈と肩が露出したメイド服が並んでいた。加えて、ニードルと円状の乳首ピアス。
目を疑う光景に、俺は思わず後ずさりする。
「何!? こんな服を着ろってのか!?」
声を荒げる。
メイドは無表情のまま、穏やかに口を開いた。
「アリサ様、これらを身につけていただけない場合、再び地下の牢屋へお戻りいただき、食事の質を下げた上で無理やり着替えていただくことになります。いまお着替えいただいた方が、待遇も良くなりますよ」
その言葉に血が凍る思いだったが、彼女はさらに続けた。
「また、進んでご協力いただければ、ご主人は色々とご質問にお答えするとおっしゃっております」
頭の中で葛藤が渦巻いた。屈辱と抵抗心が叫ぶ一方で、牢屋に戻される恐怖と情報欲しさからくる誘惑が押し寄せる。
——なんて趣味が悪い野郎だ......
歯を食いしばりながらも、渋々了承の言葉を絞り出す。
「……分かった。後、俺の名前はアレクだ、アリサじゃない」
もう恥は十分重ねてきた、それに今の俺の姿は少女だ。なんらおかしいことは......なんという風に、自分に言い聞かせるが、すぐに否定する。いや、俺は俺だ。ただ、情報のためだけに仕方なくだ。
そして違う名前を呼ばれ続けるということに、改めて違和感と自身の輪郭が揺らぐなんともいえない恐怖を覚える。
俺が感情の落とし所を見つけようとしている中、彼女は小さく頷き、早速俺の服を脱がせた。
「では、失礼します」
俺の言葉を本当に聞いていたのかと疑問に思う様子で、針を用意すると、彼女はそっと俺の乳首の横にそれを当てた。裸の状態でその冷たい金属に触れられるのに耐える。
「んっ......」
ただ意識するだけで、乳首が立っている。直接触れなくとも、敏感になっていることが分かった。
恥ずかしさのあまり、目をそらす。途端に、鋭い痛みが一瞬走った。剣で切られた時よりも、ナイフで刺された時よりも鋭く、我慢の効かない痛み。
声を我慢しきれなかった。
「っャアッ!」
体が跳ね、涙がにじむのを抑えきれなかった。その痛みが胸の奥からじんわりと広がる。
彼女は慣れた手つきで、乳首に刺さったニードルを円状のピアスに置き換えた。痛みはゆるくなったが、頭が対処しきれない感覚と感情が渦となり、涙が止まらなくなった。
気のせいか、金属の何かが閉まるような音を聞いた気もした。
俺のことなど気にしていない様子で、年かさのメイドは無表情のまま言った。
「お辛かったですね、少しお待ちください」
俺の肩を軽く押さえて動かないようにすると、痛みが引くのを待つ間、彼女は白いレース下着を取り出し、そっと俺の足元に差し出した。
「お足を入れてください」
促されるがまま、指示に従うと薄い生地が肌に密着し、異様な軽さと締め付けを感じた。下にもう、何もついていないことをこれでもかと示してくる。
ストッキングを足に通されると、次にガーターベルトを腰に巻かれ、彼女の手が器用に留め具を留めていく。
肌に触れるたび、女性的な体に馴染む感覚が俺をさらに混乱させた。
続いて、短いスカート丈と肩が露出したメイド服が用意された。
メイドは俺の腕を上げさせ、ドレスのように服を頭から被せた。布が体に滑り落ち、胸元が強調される。
スカートが太ももをギリギリ隠す長さに収まると、鏡に映る自分に目を背けたくなった。彼女は紐を結び、裾を整える。
「お似合いです」
淡々と述べられた言葉に、俺は唇を噛むことでしか反抗できなかった。
最後に、メイクの時間が始まった。
彼女は小さな卓に座らせ、鏡の前に俺を固定する。
「お顔を整えさせていただきます」
そう言うと、まず柔らかいブラシで頬に淡いピンクのチークを乗せた。次に、細い筆でまつ毛に黒いマスカラを塗り、目を大きく見せるように調整。
唇には赤いルージュを軽く塗られ、鏡に映る顔がどんどん知らない女に変わっていく。
「もう十分だろう、これ以上やって何になる」
「少しお静かに」
俺を黙らせながら、彼女は眉を整え、軽くパウダーを顔全体に広げた。
完成した姿は、俺が時折使っていた娼館にいてもおかしくないような女のそれだった。
——全ては、情報と安全のためだ。他に選択肢などなかった。
これしかなかったと、何度も自分に言い聞かせる。このままでは、知り合いなんかに顔向けできない。
だが、いくら現実から目を逸らそうとも、本当に俺自身がメイド達の言っていた〈夜兎〉になるのではないかという疑念が、何よりも恐怖だった。
すでに辱めは受けたが、より大きな俺自身の男を根っこから否定し全てを消し去るような所業。つまりは、男に媚びるだけの存在になってしまうということが、より現実味を帯びてきている。
終始乳首の熱感が消えないことが、更に懸念を強めた。俺はどうなってしまうのかと。
拳を握り、深呼吸をした。今未来の不安を抱えても仕方ない、少しでも情報を集めてそこから判断だ。
・
やっと小部屋から解放された俺は朝食を終えて、別の部屋へと連れて行かれた。
そこでは、ムマクが机を挟んで向かい合うように設置された右手側のソファの上に座り、隣に座るメイドの大きな胸を肩の上から手を通して揉んでいた。
書斎机はソファのさらに奥にあり、豪華な装飾が施された木製のそれが部屋の奥深くに鎮座していた。
メイドは俺よりも更に大胆な〈夜兎〉の格好をしており、豊満な胸とくびれたウエスト、短いスカートから覗く長い脚が強調された姿だった。肌は白く、長い金髪が肩を流れ、長いまつ毛の下の碧眼に、口元を覆い隠すベールが妖艶な雰囲気を漂わせていた。
表情は読めない。
「よく来てくれましたね。アリサ、メイド服もとても似合っています、顔も一輪の花のように魅力的です」
依頼主に剣筋を褒められた時のような、こそばゆい感覚がした。
——馬鹿な、俺が? 外見を褒められて喜んでいる?
否定の意図と、申し立ての意思を持って俺は声を張った。
「俺には母がつけたアレク・マグリットと言う名がある、もう俺をアリサなどと言う名で呼ぶな」
「まあまあ、落ち着いてください。一旦、おかけになって。お茶もよければ、用意させます」
「必要ない」
俺は両腕を組み、ムマクの向いのソファに腰を落とした。
「それで、アリサ。あのピアスはつけて頂けましたか?」
メイドの胸から手を戻して、両手の指を合わせるムマク。
「だから、俺には......」
言い返そうとした時、彼は人差し指で首元を指すジェスチャーをした。
「命令してもいいんですよ? そうすれば貴女はもう一生アレクと名乗ることはできなくなる。しかし、命令無しで貴女が呼び名を変えることを認めれば、ワタクシの見えない範囲なら貴女はアレクとまだ名乗れます。ワタクシとてあまり命令はしたくはありません。やはり、これから共に働いて貰う貴女の意思は可能な限り尊重したい」
足を組み直し、彼は続ける。
「それとですね。俺というのは、やめてもらえませんか? 可憐な貴女には似合わない。これも同じです。命令でもいいんですよ? 最後にですね、足も閉じましょう」
「......私は、アリサです」
足を閉じつつ、俯きながら言った。
満面の笑みで、ムマクは頷く。
こんな目の前に全ての元凶がいると言うのに、何もできない自分に腹が立つ。細かい指摘も全て従わないといけない不自由感も不快極まりない。
「話を戻しましょう。あのピアスはつけてもらえましたか?」
無言で俺は頷いた。
「それは良かった。そちらはですね、新しく呪い師に依頼して作った品でして、二つの呪いがかかっていまして」
鳥肌が立った。
——ただのピアスではなく、呪いの品だと言うのか? 俺は、一体何をつけたと言うんだ?
「一つは、外すことができなくなる呪いです。貴女の可愛らしい乳首に一生金具がぶら下がっていると考えると、中々唆るものがありますねぇ。ですが、本命の効果は違います。貴女には、いささか胸の大きさが足りないと思っていましたので、その解決策となるとっておきの呪いをつけて頂きました」
一体こいつは何を言っているんだ?
「百聞は一見に如かず。ルー、アリサに見せてあげなさい」
そう指示を出すと、隣に立っていたルーは俺がいる方へと移動し、あろうことか俺の胸元の布を下着とともに外し、乳首を露出させた。
「なっ、なっ? 何をするんだ?」
「動くな」
脳に響くムマクの声に、俺の体は硬直する。その隙に、ルーは隣に座り乳首をフェザータッチでいじり始めた。
まだ痛みの熱が残り、敏感になっている乳首は俺の意思と関係なく反応してしまう。
最初は軽い触感だったが、ルーの指が円を描くたび、電流のような感覚が胸の奥から広がり、体の奥が熱を帯びていく。
恥ずかしさと抵抗感が渦巻く中、彼女の指が乳首を軽く摘まむと、思わず体が震えた。
——何だ、この感覚? やめろ、触るな!
心の中で叫びながらも、体の反応は止まらない。ルーはさらに大胆になり、唇を近づけて乳首を優しく舐め始めた。
温かく湿った舌がピアスに触れるたび、鋭い快感が走り、俺は歯を食いしばって声を抑えた。
「うっ...…」
漏れた声に自分でも驚く。彼女はくすぐるように指で乳輪をなぞり、時折ピアスを優しく引っ張る。そのたびに、胸の奥が締め付けられ、変な疼きが下腹部にまで広がった。
——こんなの、耐えられるか! 俺は男だ、こんなことで……
だが、次の瞬間、ルーが乳首を強く吸うと、頭が真っ白になった。全身がビクンと跳ね、予想外の快感が爆発し、乳首だけで絶頂に達してしまった。
「あぁっん!」
恥ずかしい声が漏れ、顔が熱くなる。息を切らしながらも、ルーは休まずに再び舐め始め、もう一度同じ刺激を繰り返す。
ピアスが揺れるたび、快感が倍増し、二度目の絶頂が俺を襲う。
「んんんんっっっ…!」
声を抑えきれず、涙がにじんだ。
——何!? 何が起きてるんだ!?
三度目、四度目とルーが執拗に乳首を刺激し続けると、俺はもはや抵抗する力も失い、ただ体が勝手に反応するだけだった。
絶頂のたびに、胸に奇妙な膨張感が加わるのを感じる。
気になり、自分の体を見下ろすと、確かに胸が少しずつ大きくなっていた。微かとはいえ、膨らみが目立つようになり、元の小さな丸みを超えて成長しているのが分かった。
——これが...…ピアスの呪い?
ムマクの言葉が今になって理解できた。
「おっと失礼、つい見惚れてしまってワタクシも加わろうかと思ってしまうところでした」
股間をズボンの上から弄り始めていたムマクが言った。
「楽しんで頂けましたかな? 力作なんですよ、こちらの育乳乳首ピアス。乳首の刺激で絶頂を迎える度に僅かですが、胸が育つ。やりすぎは禁物ですが、楽しみではありませんかアリサ? 貴女は一体どんな官能的でありながら、強い物女性に変化するのか」
「変態野郎が」
全力で、こいつを俺は軽蔑する。絶対にこいつには屈してなるものかと。
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身長:165cm
体重:59kg→60kg
B: 86→88cm
W:57cm
H:90cm
【呪具】
淫魔の紋章: まだ成熟していない淫魔のものであるため、いまはただアレクに女の体を与えたに止まっているが......
強化型隷属首輪:主人の指輪保持者に危害を加えようとすると熱を発する、魔力を消費した命令には強制的に身体が従う。絶頂を身体強化の源として蓄積し、一度の絶頂につき五分ほど使用可能。
new! 育乳の乳首ピアス: 外すことができない上、乳首による絶頂を迎える度に僅かに胸が大きくなる。使い過ぎには注意。
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今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
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順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
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【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
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※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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