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ep.21 決闘
休憩は多少与えてもらったが、気づけば大男たちに即地下の牢獄部屋へと運び出されていた。もはや馴染み深さすら感じられる。
ただ今の私は、鉄格子の外にいた。代わりに中にいたのは、鎖に繋がれたケンタウロスの雄であった。
腰より下が馬であり、上半身は人間という歪な生命体。しかし、人間の部分の体つきは見事と言わざるを得ない。
痩せ始めているとはいえ、引き締まった筋肉には無駄がなく、身体の傷は歴戦の猛者であることを窺わせる。
——大き……すぎる♡
馬の股の下から伸びる、人ではあり得ない大きさのイチモツ。
それが私の中に入ってしまったら一体どうなるのか。
へそを超えて子宮すら潰されるのではないかと。膣が壊れるのではないかという恐怖がある反面、興味を唆られてしまった。
「売女のような弱者には我は興味がない。さっさと失せろメス。臭さで鼻が折れる」
岩のような硬さを感じさせる声で、ケンタウロスの男は言った。
「相変わらず頑固なもので、大変な物ですよ。まあいいでしょう、さっさと薬を打てばどんな高貴な心の持ち主だろうと、獣同然になることでしょう」
肩を組んだ状態で、私の胸を揉むのは薄ら笑いを浮かべるムマク。薬という単語に、ケンタウロスの男は眉間に鬼を宿すほどの皺を寄せた。
「恥を知らない下劣な人族め……。我らの村を破壊するには飽き足らず、命さえ弄ぶか!」
「はいはい、わかりましたよ。ルー、例の注射を」
3歩後ろで待機していたルーが、廊下の机に置いてあったトレーから注射器を手にする。中には薄紫色の液体が入っていた。
「呪いに頼り、恥を捨てた弱者共……戦士としての矜持を捨てたお前たちに死の地の居場所はないと知れ!」
売女と呼ばれることよりも、弱者と呼ばれることが気掛かりであった。もはや戦士の身体はないとはいえ、私には首輪と剣術がある。
まだ僅かに残った戦士としての鼓動が、このままではさせておけないと叫んでいた。注射器を取ろうと私の胸からムマク様の手が離れたところで、口を挟む。
「僭越ながら……ムマク様」
勝手なことをして罰を受けたばかりだ。またこんな真似をして、その先には圧倒的な快楽もあったことは否定しないが、同じ苦しみを味わいたくはなかった。
「今の貴女は家畜であることを忘れているようですが……まあいいでしょう。話しなさい」
「ただ薬を打ち込み、子作りをするだけではいささか趣に欠けるのではないでしょうか?」
「ほぉ、では一体何すべきだと?」
顎に手をかけ、興味を示しているように見えた。これで私の不満を晴らすことができるかも知れないと、情動が湧き上がった。
「どうかあの者と手合わせをさせては頂けませんか? これからムマク様に仕えるためにも、より首輪の使用に慣れておきたいのです」
「シェっ......まあいいでしょう......。しかしアリサ、その恍惚とした表情。何か言っていないことがあるのではないですか?」
言われて思わず自分の顔を触ってしまった。確かに口角は上がり、頬には熱が籠りつつあった。
あのケンタウロスの男を力でねじ伏せてから、犯されてみたいという想像のせいだろう。
戦争に戻りたいとは進んで思わないが、やはり戦いは好きだ。その先に報酬があるなら、猶更。
「あやつをねじ伏せて、私が主導権を握った状態で子作りをしてみたいのです。ムマク様」
「シェ、シェっ。随分といい顔で笑う。いいでしょう、アリサ。貴方の力を見せてみなさい」
ムマクは手を叩きながら言うと、ルーを下がらせ牢の鍵を開けようとした。
「寝言は寝て言えメス。お前では俺に勝てない、死にたくなければ人族の男にでも股をひらいていろ」
腕を組みながら、私を蔑んだ目で見下すケンタウロスの男。だが、可愛らしく嬉しい一面もあった。
「まあまあ、そう言わずに。それに……ねぇ♡ こんなに立派な物を勃たたせていたら、発散させる必要もあるでしょう? 決闘か、性交か。私はただ、戦士として正々堂々と決闘を申し込んでいる」
「だから……」
「それとも、こんなメスに万が一でも負けたら怖い?」
巨大な胸元を支えるように、ケンタウロスの男の目前に腕を組む。確かな重量感が腕にのしかかった。
ケンタウロスの獣臭さと、オスの匂いが混ざり合い、妙な高揚感を感じもした。
「貴様っ! ……くっ、分かった。ねじ伏せてやろう。メスをいたぶる趣味はないが、貴様は別だ」
「決定ですね、では久しぶりに地下闘技場を使うことにしましょうか」
背後でムマクの声が聞こえた。
私はケンタウロスの男の翡翠色の目を凝視した。困惑と怒りが混ざっているように、目を細めていた。
無理もないだろう、こんな裸同然の格好で堂々と喧嘩を売られているわけだ。私自身も同じ考えを持つだろう。
だが、あの淫種輪をつけてから前にもまして子宮の疼きが強くなっていた。正直にいえば今すぐにでも私を子種で満たして欲しい。
——今は我慢だ。
そう自分に言い聞かせ、私たちは競技場へと繋がる道へと向かった。
・
「両者揃いましたね」
観客席から、ムマクが声を上げると鉄格子によって補強されている、円状に添り配置されたランタンの明かりが一気に灯る。
私とケンタウロスは、お互い剣を構える。
ムマクの豪邸にある地下闘技場は、大規模な物に比べて小さくはあるが、それでも外周は200歩以上はあるだろう。
「制限なし、片方が降参する、あるいは戦闘不能と看做された場合に決着とします。両者とも、準備はいいですね?」
頷く。ケンタウロスの男はただ不服そうにしていた。
「ふぅ」
呼吸を整え私はまず、模範的な中段構えを作った。胸や尻の重さも相まって、重心が大分変わっている。
正直なところ、男の時ほど上手く剣に体重を乗せることはできないだろう。
「我ながらかなりの大きさだな」
最低限胸の揺れを抑止するために、胸当ては当ててはいるが、まるで収まりきっていない。恥ずかしさもある反面、私自身を肯定する特徴のような気がして、満ちるような感覚もある。
——今は戦いに集中っ。
これ以上胸に意識を向けると、乳首ピアスの冷たさも相まって発情を免れることはできないと、意識を相手の方へ切り替える。
「……ふんっ」
ケンタウロスの男は機動性及び高さを活用すべく、右側に剣を下す形で構える。そして、ついつい股の間の馬のオスの剣にも目が行ってしまった。
それを見るだけで、子宮の奥底が脈立つのが感じられた。より強いオスの種を求める本能が刺激される。
——今はまだ、我慢だ。戦いに集中しろ。
私たちの間には、20歩ほどの距離がある。だが、ケンタウロスであれば一瞬もかからないだろう。開始と同時に剣撃に備える必要がある。
六日ぶりの剣、毎日剣から離れずに鍛錬を続けていた頃に比べれば勘も鈍っていることは間違いない。しかしながら、負ける気もしないのはきっと呪具のおかげであった。
これがなくなれば、本当にただのメスに落ちぶれてしまうという恐怖はあったが、今は大丈夫だ。
「では……開始っ!」
ムマクの叫び声と共に、私たちは前進し距離を詰める。急速に接近してくる巨体の足音と地響きが、心臓の鼓動を打ち消す。間髪を入れず剣が正面まで来ていた。
馬の下半身を最大限活用し、重さも乗った無駄のない一撃。
私は即座に受けの姿勢に回った。様子見も兼ねて。剣同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
首元から身体中に伝わる熱を腕の一点に集中させ、せめぎ合った剣を打ち返し攻撃に転じようとした。だが、ケンタウロスの男は反撃の隙を与えずに間合いの外へと回った。
「ほうっ受け止めるか。ただのメスというのは撤回しよう」
「それは、何より」
要領は対騎馬に似ていた。高度を取られている以上、相手の懐に入る必要がある。後のことも考えて可能なら、大怪我はさせたくない。
「ふっ、随分と甘くなったな」
力強い馬の尻が見えた。前の私であれば、追いかけても無駄と次の攻撃に備え、守り身の姿勢に回っていただろう。
だが今は、呪具がある。
戦士たるもの、技術や肉体の鍛錬も無論重要ではあるが、戦いにおいては道具の活用の仕方も非常に重要となる。
腕に纏った熱の感覚を、今度は足に集中させる。
首輪が熱を帯び、無意識に息を荒くした。
「ふっ」
重心を前に落としながら、前へと大きく足を出す。すると予想以上の結果が伴った。
離された約15歩の距離が、1秒も立たずに詰まる。
もう数えられないほどに絶頂を重ねてきたが、この力を振るえると考えると悪くないものにすら思えた。
——力が、心地いい!
一瞬で近づいてきたことに、驚きを隠せないケンタウロスの男の表情は中々の傑作であった。
とは言っても、相手も熟練の戦士であることが次の瞬間わかった。剣での防御を捨てて、代わりに馬足を地面に立て、後足で私のことを蹴る姿勢を作っていた。判断が実に早い。
「甘いっ!」
ケンタウロスの男が轟く声をあげる。私は慌て膝と背中を曲げ、馬の下半身の真下へと滑るように回避行動をとった。
「っっひぐッっっ!!」
男の時であれば、完全に避け切っていたはずだった。ただ、今の私は完全な女。しかも、この胸は雌牛と呼ばれてもおかしくはないまでに肥大化している。
案の定、蹴りは乳房に当たった。まだ先端寄りではあったとはいえ、片方の蹄全体が見事に打撃を与える。肌が破裂するような、鈍い音も鳴った。
衝撃が柔らかい脂肪でいなされたのが不幸中の幸いではあった。それでも尚、身体の芯まで届く電撃に刺されたような痛みで、嬌声も無意識に出てしまう。首輪で身体は強化されているとはいえ、痛みは完全に消えるものでなかった。
——まだっ!
なんとか最後の意識を保ちながら痛みを堪え、攻撃の手を止めなかったのはせめてもの戦士としての意地であった。
滑った勢いを片手で止め、腹に向かって刃の代わりに柄を突き立てた。首輪の力と痛みを全て乗せて。
「ぐっッ!!」
腹の底から湧き出た悶えの音と共に一呼吸を間を経て、ケンタウロスの後ろ足が地面をついた。
急所への明確な一撃。手応えもあった。
「っッ……! 何故刃を突き立てなかったのだ!?」
「ぁっ……少しだけ……待ってほしい」
全ての動作が終わり、痛みの波は無視できないものになっていた。
短剣で肩を刺されようとも、矢が足に刺さろうとも痛みを堪えながら戦ってきた。だというのに、今この一度も経験したことのない痛みは我慢できるという領域からかけ離れていた。
完全に意識の外から来ていた痛みだった。
実に鈍く、あろうことか剣から手を離し両腕で胸を抱えてしまった。
「分かった……だがこれは俺の負けだ。ただのメスと見くびっていた、詫びよう。すまなかった」
隣で剣が地面に落ちる音がした。
「あっ、ああ」
ケンタウロスの男の下半身の真下で、私は仰向けになった。そこには、戦利品が見えた気がした。
痛みはまだ残ってはいたが、首輪の熱とはまた違うような熱さが段々と不快感を覆っていくようであった。
左腕で胸を押さえたまま、股間にある馬のソレへと思わず手を伸ばそうとしてしまっている自分がいた。
「呪いを持った道具を持っていたとはいえ、機転の効いた行動は戦士のそれだった」
「……それは、光栄なものです」
だが、残念だった手は私が無意識に欲していたものに届くことはなかった。腕は自然と落ちてしまった。
重い身体を引きずり、私はなんとかケンタウロスの股下から目の前へと移動した。
「では……私の望み通り、子作りをさせてください……」
引き攣り、困惑に満ちた表情。可愛らしさすら感じた。私はそのまま続ける。
「ただ、私も無礼を詫びます。我が主人が貴殿に行ってきた非道の数々、きっと許されることではありませんでした。けれどっ! 戦いの中で本当に、貴方との子が欲しいと思ったのです。だからどうか、貴方の子種を私に授けてくれませんか?」
逞しいケンタウロスの手を私は取った。彼は意外な表情をしたが、すぐに振り払うといったことはしなかった。深呼吸をする。
「確かに私は醜いメスかもしれません、けれど子を成したいという欲求は決して蔑まれるべき感情ではないと、私は信じたいのです。……だから改めて、貴方の名前を教えてはくれませんか?」
詭弁がすらすらと出た。欲しい物のためならなんでも出来てしまうのだと、腐っていく自分に落胆する意識と、破滅していく自分に満足する意識が同席していた。どちらが本物かは言えない。
だが今は、命令を遂行したいと思った。
ケンタウロスの手を取ったまま、私はゆっくりと視線を下げた。
ここからでも、馬の下腹部から伸びるそれはの先が見えた。
人のものとは比べ物にならないほどの大きさと太さで、黒く艶やかな皮膚に血管が浮き立ち、先端がわずかに開いて熱を帯びている。火照った身体が疼き、膣の奥が空虚に収縮するたび、欲求不満の熱が全身を蝕む。
——あぁっ♡ これが私の中に入ったら……♡
息が荒くなり、太ももを擦り合わせるだけで甘い痺れが広がり、理性が溶けていくのが分かった。
ただ今の私は、鉄格子の外にいた。代わりに中にいたのは、鎖に繋がれたケンタウロスの雄であった。
腰より下が馬であり、上半身は人間という歪な生命体。しかし、人間の部分の体つきは見事と言わざるを得ない。
痩せ始めているとはいえ、引き締まった筋肉には無駄がなく、身体の傷は歴戦の猛者であることを窺わせる。
——大き……すぎる♡
馬の股の下から伸びる、人ではあり得ない大きさのイチモツ。
それが私の中に入ってしまったら一体どうなるのか。
へそを超えて子宮すら潰されるのではないかと。膣が壊れるのではないかという恐怖がある反面、興味を唆られてしまった。
「売女のような弱者には我は興味がない。さっさと失せろメス。臭さで鼻が折れる」
岩のような硬さを感じさせる声で、ケンタウロスの男は言った。
「相変わらず頑固なもので、大変な物ですよ。まあいいでしょう、さっさと薬を打てばどんな高貴な心の持ち主だろうと、獣同然になることでしょう」
肩を組んだ状態で、私の胸を揉むのは薄ら笑いを浮かべるムマク。薬という単語に、ケンタウロスの男は眉間に鬼を宿すほどの皺を寄せた。
「恥を知らない下劣な人族め……。我らの村を破壊するには飽き足らず、命さえ弄ぶか!」
「はいはい、わかりましたよ。ルー、例の注射を」
3歩後ろで待機していたルーが、廊下の机に置いてあったトレーから注射器を手にする。中には薄紫色の液体が入っていた。
「呪いに頼り、恥を捨てた弱者共……戦士としての矜持を捨てたお前たちに死の地の居場所はないと知れ!」
売女と呼ばれることよりも、弱者と呼ばれることが気掛かりであった。もはや戦士の身体はないとはいえ、私には首輪と剣術がある。
まだ僅かに残った戦士としての鼓動が、このままではさせておけないと叫んでいた。注射器を取ろうと私の胸からムマク様の手が離れたところで、口を挟む。
「僭越ながら……ムマク様」
勝手なことをして罰を受けたばかりだ。またこんな真似をして、その先には圧倒的な快楽もあったことは否定しないが、同じ苦しみを味わいたくはなかった。
「今の貴女は家畜であることを忘れているようですが……まあいいでしょう。話しなさい」
「ただ薬を打ち込み、子作りをするだけではいささか趣に欠けるのではないでしょうか?」
「ほぉ、では一体何すべきだと?」
顎に手をかけ、興味を示しているように見えた。これで私の不満を晴らすことができるかも知れないと、情動が湧き上がった。
「どうかあの者と手合わせをさせては頂けませんか? これからムマク様に仕えるためにも、より首輪の使用に慣れておきたいのです」
「シェっ......まあいいでしょう......。しかしアリサ、その恍惚とした表情。何か言っていないことがあるのではないですか?」
言われて思わず自分の顔を触ってしまった。確かに口角は上がり、頬には熱が籠りつつあった。
あのケンタウロスの男を力でねじ伏せてから、犯されてみたいという想像のせいだろう。
戦争に戻りたいとは進んで思わないが、やはり戦いは好きだ。その先に報酬があるなら、猶更。
「あやつをねじ伏せて、私が主導権を握った状態で子作りをしてみたいのです。ムマク様」
「シェ、シェっ。随分といい顔で笑う。いいでしょう、アリサ。貴方の力を見せてみなさい」
ムマクは手を叩きながら言うと、ルーを下がらせ牢の鍵を開けようとした。
「寝言は寝て言えメス。お前では俺に勝てない、死にたくなければ人族の男にでも股をひらいていろ」
腕を組みながら、私を蔑んだ目で見下すケンタウロスの男。だが、可愛らしく嬉しい一面もあった。
「まあまあ、そう言わずに。それに……ねぇ♡ こんなに立派な物を勃たたせていたら、発散させる必要もあるでしょう? 決闘か、性交か。私はただ、戦士として正々堂々と決闘を申し込んでいる」
「だから……」
「それとも、こんなメスに万が一でも負けたら怖い?」
巨大な胸元を支えるように、ケンタウロスの男の目前に腕を組む。確かな重量感が腕にのしかかった。
ケンタウロスの獣臭さと、オスの匂いが混ざり合い、妙な高揚感を感じもした。
「貴様っ! ……くっ、分かった。ねじ伏せてやろう。メスをいたぶる趣味はないが、貴様は別だ」
「決定ですね、では久しぶりに地下闘技場を使うことにしましょうか」
背後でムマクの声が聞こえた。
私はケンタウロスの男の翡翠色の目を凝視した。困惑と怒りが混ざっているように、目を細めていた。
無理もないだろう、こんな裸同然の格好で堂々と喧嘩を売られているわけだ。私自身も同じ考えを持つだろう。
だが、あの淫種輪をつけてから前にもまして子宮の疼きが強くなっていた。正直にいえば今すぐにでも私を子種で満たして欲しい。
——今は我慢だ。
そう自分に言い聞かせ、私たちは競技場へと繋がる道へと向かった。
・
「両者揃いましたね」
観客席から、ムマクが声を上げると鉄格子によって補強されている、円状に添り配置されたランタンの明かりが一気に灯る。
私とケンタウロスは、お互い剣を構える。
ムマクの豪邸にある地下闘技場は、大規模な物に比べて小さくはあるが、それでも外周は200歩以上はあるだろう。
「制限なし、片方が降参する、あるいは戦闘不能と看做された場合に決着とします。両者とも、準備はいいですね?」
頷く。ケンタウロスの男はただ不服そうにしていた。
「ふぅ」
呼吸を整え私はまず、模範的な中段構えを作った。胸や尻の重さも相まって、重心が大分変わっている。
正直なところ、男の時ほど上手く剣に体重を乗せることはできないだろう。
「我ながらかなりの大きさだな」
最低限胸の揺れを抑止するために、胸当ては当ててはいるが、まるで収まりきっていない。恥ずかしさもある反面、私自身を肯定する特徴のような気がして、満ちるような感覚もある。
——今は戦いに集中っ。
これ以上胸に意識を向けると、乳首ピアスの冷たさも相まって発情を免れることはできないと、意識を相手の方へ切り替える。
「……ふんっ」
ケンタウロスの男は機動性及び高さを活用すべく、右側に剣を下す形で構える。そして、ついつい股の間の馬のオスの剣にも目が行ってしまった。
それを見るだけで、子宮の奥底が脈立つのが感じられた。より強いオスの種を求める本能が刺激される。
——今はまだ、我慢だ。戦いに集中しろ。
私たちの間には、20歩ほどの距離がある。だが、ケンタウロスであれば一瞬もかからないだろう。開始と同時に剣撃に備える必要がある。
六日ぶりの剣、毎日剣から離れずに鍛錬を続けていた頃に比べれば勘も鈍っていることは間違いない。しかしながら、負ける気もしないのはきっと呪具のおかげであった。
これがなくなれば、本当にただのメスに落ちぶれてしまうという恐怖はあったが、今は大丈夫だ。
「では……開始っ!」
ムマクの叫び声と共に、私たちは前進し距離を詰める。急速に接近してくる巨体の足音と地響きが、心臓の鼓動を打ち消す。間髪を入れず剣が正面まで来ていた。
馬の下半身を最大限活用し、重さも乗った無駄のない一撃。
私は即座に受けの姿勢に回った。様子見も兼ねて。剣同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
首元から身体中に伝わる熱を腕の一点に集中させ、せめぎ合った剣を打ち返し攻撃に転じようとした。だが、ケンタウロスの男は反撃の隙を与えずに間合いの外へと回った。
「ほうっ受け止めるか。ただのメスというのは撤回しよう」
「それは、何より」
要領は対騎馬に似ていた。高度を取られている以上、相手の懐に入る必要がある。後のことも考えて可能なら、大怪我はさせたくない。
「ふっ、随分と甘くなったな」
力強い馬の尻が見えた。前の私であれば、追いかけても無駄と次の攻撃に備え、守り身の姿勢に回っていただろう。
だが今は、呪具がある。
戦士たるもの、技術や肉体の鍛錬も無論重要ではあるが、戦いにおいては道具の活用の仕方も非常に重要となる。
腕に纏った熱の感覚を、今度は足に集中させる。
首輪が熱を帯び、無意識に息を荒くした。
「ふっ」
重心を前に落としながら、前へと大きく足を出す。すると予想以上の結果が伴った。
離された約15歩の距離が、1秒も立たずに詰まる。
もう数えられないほどに絶頂を重ねてきたが、この力を振るえると考えると悪くないものにすら思えた。
——力が、心地いい!
一瞬で近づいてきたことに、驚きを隠せないケンタウロスの男の表情は中々の傑作であった。
とは言っても、相手も熟練の戦士であることが次の瞬間わかった。剣での防御を捨てて、代わりに馬足を地面に立て、後足で私のことを蹴る姿勢を作っていた。判断が実に早い。
「甘いっ!」
ケンタウロスの男が轟く声をあげる。私は慌て膝と背中を曲げ、馬の下半身の真下へと滑るように回避行動をとった。
「っっひぐッっっ!!」
男の時であれば、完全に避け切っていたはずだった。ただ、今の私は完全な女。しかも、この胸は雌牛と呼ばれてもおかしくはないまでに肥大化している。
案の定、蹴りは乳房に当たった。まだ先端寄りではあったとはいえ、片方の蹄全体が見事に打撃を与える。肌が破裂するような、鈍い音も鳴った。
衝撃が柔らかい脂肪でいなされたのが不幸中の幸いではあった。それでも尚、身体の芯まで届く電撃に刺されたような痛みで、嬌声も無意識に出てしまう。首輪で身体は強化されているとはいえ、痛みは完全に消えるものでなかった。
——まだっ!
なんとか最後の意識を保ちながら痛みを堪え、攻撃の手を止めなかったのはせめてもの戦士としての意地であった。
滑った勢いを片手で止め、腹に向かって刃の代わりに柄を突き立てた。首輪の力と痛みを全て乗せて。
「ぐっッ!!」
腹の底から湧き出た悶えの音と共に一呼吸を間を経て、ケンタウロスの後ろ足が地面をついた。
急所への明確な一撃。手応えもあった。
「っッ……! 何故刃を突き立てなかったのだ!?」
「ぁっ……少しだけ……待ってほしい」
全ての動作が終わり、痛みの波は無視できないものになっていた。
短剣で肩を刺されようとも、矢が足に刺さろうとも痛みを堪えながら戦ってきた。だというのに、今この一度も経験したことのない痛みは我慢できるという領域からかけ離れていた。
完全に意識の外から来ていた痛みだった。
実に鈍く、あろうことか剣から手を離し両腕で胸を抱えてしまった。
「分かった……だがこれは俺の負けだ。ただのメスと見くびっていた、詫びよう。すまなかった」
隣で剣が地面に落ちる音がした。
「あっ、ああ」
ケンタウロスの男の下半身の真下で、私は仰向けになった。そこには、戦利品が見えた気がした。
痛みはまだ残ってはいたが、首輪の熱とはまた違うような熱さが段々と不快感を覆っていくようであった。
左腕で胸を押さえたまま、股間にある馬のソレへと思わず手を伸ばそうとしてしまっている自分がいた。
「呪いを持った道具を持っていたとはいえ、機転の効いた行動は戦士のそれだった」
「……それは、光栄なものです」
だが、残念だった手は私が無意識に欲していたものに届くことはなかった。腕は自然と落ちてしまった。
重い身体を引きずり、私はなんとかケンタウロスの股下から目の前へと移動した。
「では……私の望み通り、子作りをさせてください……」
引き攣り、困惑に満ちた表情。可愛らしさすら感じた。私はそのまま続ける。
「ただ、私も無礼を詫びます。我が主人が貴殿に行ってきた非道の数々、きっと許されることではありませんでした。けれどっ! 戦いの中で本当に、貴方との子が欲しいと思ったのです。だからどうか、貴方の子種を私に授けてくれませんか?」
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「確かに私は醜いメスかもしれません、けれど子を成したいという欲求は決して蔑まれるべき感情ではないと、私は信じたいのです。……だから改めて、貴方の名前を教えてはくれませんか?」
詭弁がすらすらと出た。欲しい物のためならなんでも出来てしまうのだと、腐っていく自分に落胆する意識と、破滅していく自分に満足する意識が同席していた。どちらが本物かは言えない。
だが今は、命令を遂行したいと思った。
ケンタウロスの手を取ったまま、私はゆっくりと視線を下げた。
ここからでも、馬の下腹部から伸びるそれはの先が見えた。
人のものとは比べ物にならないほどの大きさと太さで、黒く艶やかな皮膚に血管が浮き立ち、先端がわずかに開いて熱を帯びている。火照った身体が疼き、膣の奥が空虚に収縮するたび、欲求不満の熱が全身を蝕む。
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そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。