2 / 30
第2話 旅立ち
しおりを挟む
馬車は街の大通りを過ぎて、貴族の邸宅が並ぶ地区へと入っていく。その中でも一際大きい聖公家の屋敷に着くと、着替える間もなく書斎に呼び出され、私はため息交じりに向かう。両親は怒りに満ちた表情で私を迎えた。
「王子とポレットから話は聞いているな」
「はい」
怜悧な父の怒気を含む声で問われ、私は素直に返事をした。この期に及んで誤魔化してもしょうがない。しかし今し方言われたばかりのことを何故父が知っているの?
「ポレットから聞いている」
私の疑問が顔に出ていたのか、父が応えた。
「聞いている、とはどういうことですか?」
「貴女がいつまでも婚約解消に応じないから、妹が仕方なく卒業パーティーで言う羽目になったんですよ!」
母が顔を真っ赤にして叫んだ。
「えっ……」
いつまでも応じない……ってどういうこと?
「お母様、私は何も聞いていません。二人のことだって今日初めて……」
「言い訳をするな! 恥さらしめ」
「そうよ。ポレットが毎週のように、貴女が婚約破棄に納得してくれないと手紙を送ってきたわ。王妃の地位を諦めきれないんじゃないかって」
「そんなっ……! ポレットはどうしてそんな嘘を……」
「ポレットが嘘などつくものですか! ポレットは自分が姉を説得するから私達には口出ししないで、と手紙で言っていたのよ。それなのに貴女は!」
「……それをお信じになったのですか? 私の言い分は何も聞かずに?」
私の言葉に両親は一瞬気まずそうな表情になったが、また直ぐに眉根を釣り上げる。
私も折に触れて両親に手紙を書いてきた。学園は全寮制だから長期の休み以外は基本家には帰らない。手紙の内容はさしたる話も無かったから、時候の挨拶とつつがなく過ごしている、と。
そう言えば、ある時から返信が来なくなったような。特に話すこともないから手紙が来ないのかと思っていたけれど……。まさか、妹が手紙を出さないように言い包めていたなんて。
どうして妹がそこまでしたのか。そして、それを信じ切っている両親のことも。私には到底理解出来ない。
「ええい。もう決まったことだ! 王家の方もそれで良いと言っている」
……つまり、同じ血、同じ家、同じ能力なら別にどの娘だろうと構わない、ということなのね。確かに、この結婚は権力を担う家同士の結束を強める為のもの。それなら、姉だろうが妹だろうが聖公家の人間ならどれでも良い、と王家は判断したのね。より相性が合う方が長い生涯を共にするのに良い、と思ったのかもしれない。
でも、それなら私の今までの人生は何だったの? 両親にとって私は愛しい娘ではなかったのね……。
「お父様、お母様、もう一度お尋ねします。どうして妹の言うことばかりを鵜呑みにして、私の言葉を信じて下さらないのですか?」
急速に私の中の何かが冷めていくのが分かった。何を言っても、私の言葉はもう両親には言い訳にしか聞こえない、と分かったから。
王家だって同じ家、同じ血脈、同じ能力なら別に姉だろうが妹だろうがどちらでも良いのだ。だから王子がポレットに乗り換えても大した問題にしていない。国と家への幻滅が私の中でどんどん大きくなる。
「何度も言っているでしょう…!」
母が顔を真っ赤にしヒステリックに私を罵ろうとした瞬間、書斎の扉を叩く音が聞こえた。
「なんだっ!」
父が苛立ちを隠さず、扉の向こうに居る誰かに怒鳴る。
「お話しのところ、申し訳ございません……マルバシアスのシルフィスから再三の支援と神官の派遣要請が届いておりますが……」白いローブを着た若い神官が恐る恐る切り出した。聖公家の屋敷には使用人の他に神官も出入りしている。
「そんなものは放っておけ!」
「お父様……マルバシアスは今困っているのでしょう? こちらから精鋭の神官を派遣されていないのですか?」
隣国マルバシアスは10日ほど前にドラゴンの襲撃を受け、甚大な被害が出たと聞いている。ファウロス様が卒業パーティーに出られなかったのもそれが原因だったはず。
ドラゴンの吐いた炎は大地を黒く染め、穢れと呪いを撒き散らす、と教えられたわ。それなら癒しの術を得意とする高位の神官を遣わして然るべきのはず。
「穢れた大地に触れれば、それだけで呪いが移ると言われている。そんなところに我が教会の術師達を遣わせるわけにはいかん。マルバシアスの連中がどうにかすれば良い」
「なっ……!」
それでもこの大陸でもっとも権威のある聖教のトップのすることなの!? 救いを求める者を助けるのがあるべき姿でしょう!
私はわなわなと震えた。
「この話はどうでも良い。今はお前の話だ。しばらく修道院で身を慎め。折を見て、別の誰かを宛がってやる」
まだ私を政治の道具にしようと言うの? もううんざりだわ。
「いいえ。修道院には行きません。私はここを出て隣国の救援に向かいます」
「なに?」
「救援の要請が来ているのでしょう?」
けれども、穢れた地に自分達が行くのが嫌で何かの理由を付けて断っている。何が聖女の血族よ。
「せめて、聖女の末裔としての義務を果たしたいと思います。それなら我が家の顔も立つでしょう? マルバシアスを救う為に聖公家が娘を向かわせた、となれば。私としても面目が保てます」
「あら、それが良いわよ、貴方」
お母様が嬉しそうに頷いて、お父様の方に触れた。王子との結婚を捨ててでも穢れた地を救いに行く、そう触れ込めば娘の、引いてはこの家の汚点を拭えると考えているのだろう。
「そうだな。せめてそのくらいは役に立つだろう」
お父様も納得したように息を吐く。
決まった。
「それでは、早速準備します」
一刻も早くこの場から、この家から出て行きたかった。そして、二度と戻らない。こんな汚れた世界には。
私はそう誓って、一礼して書斎を出た。急ぎ足で自分の部屋に行き、準備を整える。私は化粧を落とし、宝飾品も全て外して、煌びやかなドレスを脱いだ。そして、衣装箪笥に掛けられた白いローブを手に取った。これは、精霊祭などの祭祀で着る物だ。白のローブには金色の刺繍で刺繍が施されており、ローブの素材も最高級の絹が使われていた。高位の神官にのみ許された服装だ。
「ただ聖公家に生まれただけなのにね……」
それだけで修行を積んだ一般の神官よりも高位なのだ。私は思わず自嘲的に呟いてしまった。
こうなることが分かっていたなら、貴族の子弟が通う学園ではなく、神学校に行けば良かった。一応、聖公家の人間だから癒しの術くらいは習得しているけれど、一般の神官と違って実際に誰かの怪我を治したことはない。聖公家は祭祀や説教をするだけだし、私はそれを座って見ているだけだった。
そんな私が行って何が出来るかは分からないけれど、今はこの家から一刻も早く出て行きたい。豪華なドレスも宝飾品ももう要らない。
鞄に下着などの最低限必要なものだけ詰める。自分が外した机に置かれた宝飾品の中にファウロス様から頂いた葉の形の栞が目に付いた。
そうだ、これだけは持って行こう。二度と帰らぬ旅のお守り代わりに。
「王子とポレットから話は聞いているな」
「はい」
怜悧な父の怒気を含む声で問われ、私は素直に返事をした。この期に及んで誤魔化してもしょうがない。しかし今し方言われたばかりのことを何故父が知っているの?
「ポレットから聞いている」
私の疑問が顔に出ていたのか、父が応えた。
「聞いている、とはどういうことですか?」
「貴女がいつまでも婚約解消に応じないから、妹が仕方なく卒業パーティーで言う羽目になったんですよ!」
母が顔を真っ赤にして叫んだ。
「えっ……」
いつまでも応じない……ってどういうこと?
「お母様、私は何も聞いていません。二人のことだって今日初めて……」
「言い訳をするな! 恥さらしめ」
「そうよ。ポレットが毎週のように、貴女が婚約破棄に納得してくれないと手紙を送ってきたわ。王妃の地位を諦めきれないんじゃないかって」
「そんなっ……! ポレットはどうしてそんな嘘を……」
「ポレットが嘘などつくものですか! ポレットは自分が姉を説得するから私達には口出ししないで、と手紙で言っていたのよ。それなのに貴女は!」
「……それをお信じになったのですか? 私の言い分は何も聞かずに?」
私の言葉に両親は一瞬気まずそうな表情になったが、また直ぐに眉根を釣り上げる。
私も折に触れて両親に手紙を書いてきた。学園は全寮制だから長期の休み以外は基本家には帰らない。手紙の内容はさしたる話も無かったから、時候の挨拶とつつがなく過ごしている、と。
そう言えば、ある時から返信が来なくなったような。特に話すこともないから手紙が来ないのかと思っていたけれど……。まさか、妹が手紙を出さないように言い包めていたなんて。
どうして妹がそこまでしたのか。そして、それを信じ切っている両親のことも。私には到底理解出来ない。
「ええい。もう決まったことだ! 王家の方もそれで良いと言っている」
……つまり、同じ血、同じ家、同じ能力なら別にどの娘だろうと構わない、ということなのね。確かに、この結婚は権力を担う家同士の結束を強める為のもの。それなら、姉だろうが妹だろうが聖公家の人間ならどれでも良い、と王家は判断したのね。より相性が合う方が長い生涯を共にするのに良い、と思ったのかもしれない。
でも、それなら私の今までの人生は何だったの? 両親にとって私は愛しい娘ではなかったのね……。
「お父様、お母様、もう一度お尋ねします。どうして妹の言うことばかりを鵜呑みにして、私の言葉を信じて下さらないのですか?」
急速に私の中の何かが冷めていくのが分かった。何を言っても、私の言葉はもう両親には言い訳にしか聞こえない、と分かったから。
王家だって同じ家、同じ血脈、同じ能力なら別に姉だろうが妹だろうがどちらでも良いのだ。だから王子がポレットに乗り換えても大した問題にしていない。国と家への幻滅が私の中でどんどん大きくなる。
「何度も言っているでしょう…!」
母が顔を真っ赤にしヒステリックに私を罵ろうとした瞬間、書斎の扉を叩く音が聞こえた。
「なんだっ!」
父が苛立ちを隠さず、扉の向こうに居る誰かに怒鳴る。
「お話しのところ、申し訳ございません……マルバシアスのシルフィスから再三の支援と神官の派遣要請が届いておりますが……」白いローブを着た若い神官が恐る恐る切り出した。聖公家の屋敷には使用人の他に神官も出入りしている。
「そんなものは放っておけ!」
「お父様……マルバシアスは今困っているのでしょう? こちらから精鋭の神官を派遣されていないのですか?」
隣国マルバシアスは10日ほど前にドラゴンの襲撃を受け、甚大な被害が出たと聞いている。ファウロス様が卒業パーティーに出られなかったのもそれが原因だったはず。
ドラゴンの吐いた炎は大地を黒く染め、穢れと呪いを撒き散らす、と教えられたわ。それなら癒しの術を得意とする高位の神官を遣わして然るべきのはず。
「穢れた大地に触れれば、それだけで呪いが移ると言われている。そんなところに我が教会の術師達を遣わせるわけにはいかん。マルバシアスの連中がどうにかすれば良い」
「なっ……!」
それでもこの大陸でもっとも権威のある聖教のトップのすることなの!? 救いを求める者を助けるのがあるべき姿でしょう!
私はわなわなと震えた。
「この話はどうでも良い。今はお前の話だ。しばらく修道院で身を慎め。折を見て、別の誰かを宛がってやる」
まだ私を政治の道具にしようと言うの? もううんざりだわ。
「いいえ。修道院には行きません。私はここを出て隣国の救援に向かいます」
「なに?」
「救援の要請が来ているのでしょう?」
けれども、穢れた地に自分達が行くのが嫌で何かの理由を付けて断っている。何が聖女の血族よ。
「せめて、聖女の末裔としての義務を果たしたいと思います。それなら我が家の顔も立つでしょう? マルバシアスを救う為に聖公家が娘を向かわせた、となれば。私としても面目が保てます」
「あら、それが良いわよ、貴方」
お母様が嬉しそうに頷いて、お父様の方に触れた。王子との結婚を捨ててでも穢れた地を救いに行く、そう触れ込めば娘の、引いてはこの家の汚点を拭えると考えているのだろう。
「そうだな。せめてそのくらいは役に立つだろう」
お父様も納得したように息を吐く。
決まった。
「それでは、早速準備します」
一刻も早くこの場から、この家から出て行きたかった。そして、二度と戻らない。こんな汚れた世界には。
私はそう誓って、一礼して書斎を出た。急ぎ足で自分の部屋に行き、準備を整える。私は化粧を落とし、宝飾品も全て外して、煌びやかなドレスを脱いだ。そして、衣装箪笥に掛けられた白いローブを手に取った。これは、精霊祭などの祭祀で着る物だ。白のローブには金色の刺繍で刺繍が施されており、ローブの素材も最高級の絹が使われていた。高位の神官にのみ許された服装だ。
「ただ聖公家に生まれただけなのにね……」
それだけで修行を積んだ一般の神官よりも高位なのだ。私は思わず自嘲的に呟いてしまった。
こうなることが分かっていたなら、貴族の子弟が通う学園ではなく、神学校に行けば良かった。一応、聖公家の人間だから癒しの術くらいは習得しているけれど、一般の神官と違って実際に誰かの怪我を治したことはない。聖公家は祭祀や説教をするだけだし、私はそれを座って見ているだけだった。
そんな私が行って何が出来るかは分からないけれど、今はこの家から一刻も早く出て行きたい。豪華なドレスも宝飾品ももう要らない。
鞄に下着などの最低限必要なものだけ詰める。自分が外した机に置かれた宝飾品の中にファウロス様から頂いた葉の形の栞が目に付いた。
そうだ、これだけは持って行こう。二度と帰らぬ旅のお守り代わりに。
13
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
婚約破棄をお望みでしたので。――本物の公爵令嬢は、奪った全員を生き地獄へ落とす
鷹 綾
恋愛
卒業舞踏会の夜。
公爵令嬢エルシェナ・ヴァルモンは、王太子エドガーから大勢の前で婚約破棄を言い渡された。
隣にいたのは、儚げな涙で男たちの同情を集める義妹セラフィナ。
「お姉様に虐げられてきました」と訴える彼女を庇い、王太子はエルシェナを悪女として断罪する。
けれど彼らは知らなかった。
王家の華やかな暮らしも、王太子の立場も、社交界での信用も、その多くがヴァルモン公爵家――そしてエルシェナの存在によって支えられていたことを。
静かに婚約破棄を受け入れたその日から、エルシェナはすべてを止める。
王宮に流れていた便宜も、信用も、優先も。
さらに継母イザベルの不正、義妹セラフィナの虚飾、王太子の浅はかさを、一つずつ白日のもとへ晒していく。
奪ったつもりでいた義妹も、捨てたつもりでいた王太子も、家を食い潰していた継母も――
やがて名誉も立場も未来も失い、二度と這い上がれない生き地獄へ落ちていく。
これは、すべてを奪われかけた本物の公爵令嬢が、
自分を踏みにじった者たちへ救済なき断罪を下す物語。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる