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第2章 新しい人生
第11話 伯爵の怒り
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カールは村人に密猟者と思しき人物が医者のところで治療を受けていることを聞き、医者の家に向かった。
この村というか、周辺の集落唯一の医者であるラシッドは元々はリーフェンシュタール伯爵領の出ではなく、3年程前にここへ来た移住者である。30前後の若い男ながら、都市より田舎の方が性が合うという変わり者だ。
だって、都市はごみごみしていて皆あくせくしてますし、その点ここは空気も美味しいし、料理も旨い。その上、おじいちゃんおばあちゃんの世間話を聞いてるだけで一日過ぎるなんて最高じゃないですか、というのが彼の言である。
人だかりを掻き分け、家の中へ入ると、アデレードと、椅子に座り右足に包帯を巻かれている金髪の男と、この辺りでは珍しい浅黒い肌に白衣を着た件の医者の3人がいた。金髪の男が滑り落ちた後、アデレードは村に行き人を呼んで、とりあえず、彼をここまで運んでもらったのだ。
カールはとりあえず、立って治療を見ているアデレードを険しい顔で見下ろす。
「フロイライン、密猟者と格闘したというのは本当か?」
「えーと、格闘というか……追い回したといいますか……」
アデレードは歯切れ悪く答える。彫りの深い顔に厳しい表情のカールはなかなかに威圧感と迫力があった。
怖いわ……。
彼女は冷や汗を流し、気まずそうに視線を外す。
「フロイライン・アデレード、君は自分がどんなに危ないことをしたのか分かっているのか?」
「……」
「この男が、武器を持っていたり、野蛮で乱暴な男だったらどうなっていたと思うんだ!君の方が大怪我したか死んでいたかもしれないんだぞっ」
「はい……」
見たこともないカールの剣幕にアデレードはしゅんとした。
あぁ、また伯爵を失望させてしまったわ……。
「まぁまぁ、伯爵。彼女も反省していますし、その辺にしておいてあげては」
若い男に包帯を巻きつつラシッド医師が取りなす。
「先生(ドクトル)、しかしだな……」
「そうですよ、リーフェンシュタール伯爵、そんなに怒らなくても。僕はそんな不審者じゃありませんから」
手当を受けている男が朗らかに言うと、カールが鋭い瞳を向ける。
「大体、お前は何者だ? 」
「やだなぁ、リーフェンシュタール伯爵、マックス・ロイドですよ。この夏にお会いしたじゃないですか」
その言葉を聞いて、カールは切り傷だらけのその男の顔をじっくり見る。そこで彼は今年の夏の社交シーズンにどこぞの夜会で、やたらと山のことを聞いてきた貴族の男がいたことを思い出した。
変わった者がいるものだと思ったが……。
「密猟目的だったのか」
「いやいや、僕は密猟なんかしませんって」
マックスと名乗る男は人好きする笑顔を向ける。
「僕は山に登りに来たんですよ」
「は……?」
カールは呆気にとられた。
「何のためにだ?」
「何って……だから山に登るんですよ。ま、強いて言えば頂上を目指すことですかね」
「……意味が分からん」
カールを始めここで暮らす者達にとって山々は暮らしの糧を得るところであって、意味もなく登りに行く動機が理解出来ない。
「しかも、山頂付近は年中雪に覆われている。それに、今は日一日過ぎる毎に雪の積もる範囲が広くなる季節なんだぞ。夜どれだけ冷え込むと思っているんだ。無謀が過ぎる」
「でも、これは挑戦なんです伯爵。山に登って頂きを目指す、それ自体が目的なんです」
「山を侮ってはいけない。慣れた者でも、道に迷ったり滑落したりして簡単に山で命を落とす」
「まぁ、どのみち足を捻挫していては、山に登ることは出来ませんよ」
ラシッドが包帯を巻き終えて、立ち上がり鋏や包帯などを仕舞い始めた。医者の言葉に、カールはため息を吐く。
「怪我が治るまで、この村で養生してここの寒さを身をもって体験すると良いだろう。だが、良く分からない理由で山に入ることは領主として許可出来ない」
「えぇ、そんなぁ……」
マックスはがくっと肩を落とした。
この村というか、周辺の集落唯一の医者であるラシッドは元々はリーフェンシュタール伯爵領の出ではなく、3年程前にここへ来た移住者である。30前後の若い男ながら、都市より田舎の方が性が合うという変わり者だ。
だって、都市はごみごみしていて皆あくせくしてますし、その点ここは空気も美味しいし、料理も旨い。その上、おじいちゃんおばあちゃんの世間話を聞いてるだけで一日過ぎるなんて最高じゃないですか、というのが彼の言である。
人だかりを掻き分け、家の中へ入ると、アデレードと、椅子に座り右足に包帯を巻かれている金髪の男と、この辺りでは珍しい浅黒い肌に白衣を着た件の医者の3人がいた。金髪の男が滑り落ちた後、アデレードは村に行き人を呼んで、とりあえず、彼をここまで運んでもらったのだ。
カールはとりあえず、立って治療を見ているアデレードを険しい顔で見下ろす。
「フロイライン、密猟者と格闘したというのは本当か?」
「えーと、格闘というか……追い回したといいますか……」
アデレードは歯切れ悪く答える。彫りの深い顔に厳しい表情のカールはなかなかに威圧感と迫力があった。
怖いわ……。
彼女は冷や汗を流し、気まずそうに視線を外す。
「フロイライン・アデレード、君は自分がどんなに危ないことをしたのか分かっているのか?」
「……」
「この男が、武器を持っていたり、野蛮で乱暴な男だったらどうなっていたと思うんだ!君の方が大怪我したか死んでいたかもしれないんだぞっ」
「はい……」
見たこともないカールの剣幕にアデレードはしゅんとした。
あぁ、また伯爵を失望させてしまったわ……。
「まぁまぁ、伯爵。彼女も反省していますし、その辺にしておいてあげては」
若い男に包帯を巻きつつラシッド医師が取りなす。
「先生(ドクトル)、しかしだな……」
「そうですよ、リーフェンシュタール伯爵、そんなに怒らなくても。僕はそんな不審者じゃありませんから」
手当を受けている男が朗らかに言うと、カールが鋭い瞳を向ける。
「大体、お前は何者だ? 」
「やだなぁ、リーフェンシュタール伯爵、マックス・ロイドですよ。この夏にお会いしたじゃないですか」
その言葉を聞いて、カールは切り傷だらけのその男の顔をじっくり見る。そこで彼は今年の夏の社交シーズンにどこぞの夜会で、やたらと山のことを聞いてきた貴族の男がいたことを思い出した。
変わった者がいるものだと思ったが……。
「密猟目的だったのか」
「いやいや、僕は密猟なんかしませんって」
マックスと名乗る男は人好きする笑顔を向ける。
「僕は山に登りに来たんですよ」
「は……?」
カールは呆気にとられた。
「何のためにだ?」
「何って……だから山に登るんですよ。ま、強いて言えば頂上を目指すことですかね」
「……意味が分からん」
カールを始めここで暮らす者達にとって山々は暮らしの糧を得るところであって、意味もなく登りに行く動機が理解出来ない。
「しかも、山頂付近は年中雪に覆われている。それに、今は日一日過ぎる毎に雪の積もる範囲が広くなる季節なんだぞ。夜どれだけ冷え込むと思っているんだ。無謀が過ぎる」
「でも、これは挑戦なんです伯爵。山に登って頂きを目指す、それ自体が目的なんです」
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「まぁ、どのみち足を捻挫していては、山に登ることは出来ませんよ」
ラシッドが包帯を巻き終えて、立ち上がり鋏や包帯などを仕舞い始めた。医者の言葉に、カールはため息を吐く。
「怪我が治るまで、この村で養生してここの寒さを身をもって体験すると良いだろう。だが、良く分からない理由で山に入ることは領主として許可出来ない」
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マックスはがくっと肩を落とした。
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