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第2章 新しい人生
第16話 思いがけない提案 下
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「いやー、ここにホテルがあれば僕の山仲間もここへ来て登山出来ますよ」
「君の他にもこんな酔狂な趣味を持つ者がいるのか……」
カールは内心頭を抱えた。
「はい! 大学で出会った同好の士達です」
嬉しそうにマックスが頷く。
「大学って一体どういうところですの?」
アデレードも呆れた声を出す。
「でも、私がホテルを開業したところで誰も来ないと思いますわ」
「どうしてです? ここは良いところですし、この家も素敵ですよ」
「それは先ほども申し上げた通り、私があの”アデレード”だからですわ」
マックスが首を傾げる。
「それの何が問題なんですか? 何か犯罪に手を染められていたとか、ですか?」
どうやら彼は本当にアデレードの起こした騒動を知らないらしい。
「社交界のことはどうやら、関心の埒外のようだな」
「はい! 全然興味ありません。あれ、何が楽しいんですか?」
「さてな。だが、君の勝手な都合に彼女を巻き込むのは止めたまえ」
「……そう、ですよね。すみません、フロイライン・アデレード。つい興奮してしまって」
「いえ。でも確かにこの家なら誰かを泊めるには十分な広さがありますわね」
アデレードは自分の家を改めて眺める。彼女の家は、木組みに白い壁の美しい、猫の耳のように切妻屋根が二つ並んだ特徴的な外観をしている。向かって左側のは玄関であり、1階は食堂や広いロビーがあって、2階の部屋の1つはアデレードが寝室として使っている。もう一方の屋根の方は、1階にはテラス、2階にはベランダの付いている客室になっていた。こちらは今まったく使われていない。
「フロイライン、何を……」
「使われていない部屋を使いたいというのならそれもありかと思って」
「そうですよ! フロイライン」
「いや、しかし君は……」
「ほんの少し、考えてみただけですわ、伯爵」
何か言いたげな伯爵を制し、アデレードが少し笑って見せた。
マックスはカールの回答に納得したのか、何度も夏には一緒に山頂まで登ろうと念を押してから再び散歩に戻っていった。
マックスの背中を見送りながらアデレードは口を開く。
「それで、結局一緒に山には登るんですの、伯爵?」
「……」
カールは苦虫を嚙み潰したような顔になったが、気を取り直して軽く咳払いをした
「フロイライン、先ほどのことは……」
「はい」
「別に君のすることを反対しようというものではない。ただ……」
「私に出来るわけがない、ということですか?」
口ごもる彼に代わりアデレードが答えた。カールは苦笑いにも似た表情を浮かべる。
「君が以前にどういう生活をしていたかは分からないが、今の様子を見る限り料理も掃除も苦手そうだし」
アデレードを上から下まで見てカールが言った。
「まぁっ、それは修行中ですわっ」
「それに本格的な冬を一人で乗り切るのはことだ。君を訪ねて来たら凍え死にしていたなんて、洒落にならんからな」
「もう何てことおっしゃるの! 私そこまで間抜けではありませんっ」
カールのおどけたような言い草にアデレードは顔を真っ赤にして反論した。
「いや、何をするにも一人では出来ん、ということだ。人を雇ってみてはどうだろうか」
「え?」
カールの意外な提案にアデレードが目を丸くする。
「そうしてもらえると私としても嬉しいが」
「どういうことですの?」
「この村では現金収入が得られる仕事は僅かしかない。働き口が出来ることは悪いことではないと思う」
「ですが……」
「あんなことがあったからと言って、たった一人、孤独に暮らす必要はないと思うが。君には誰か付いていた方が良い。フロイラインはどうやら暴走してしまう癖があるようだからな」
カールはそう言って笑う。
「まぁ、伯爵ったらっ!」
ぷりぷり怒るアデレードの代わりに、カールは彼女の抱いている愛犬のディマを撫でて帰っていった。
「君の他にもこんな酔狂な趣味を持つ者がいるのか……」
カールは内心頭を抱えた。
「はい! 大学で出会った同好の士達です」
嬉しそうにマックスが頷く。
「大学って一体どういうところですの?」
アデレードも呆れた声を出す。
「でも、私がホテルを開業したところで誰も来ないと思いますわ」
「どうしてです? ここは良いところですし、この家も素敵ですよ」
「それは先ほども申し上げた通り、私があの”アデレード”だからですわ」
マックスが首を傾げる。
「それの何が問題なんですか? 何か犯罪に手を染められていたとか、ですか?」
どうやら彼は本当にアデレードの起こした騒動を知らないらしい。
「社交界のことはどうやら、関心の埒外のようだな」
「はい! 全然興味ありません。あれ、何が楽しいんですか?」
「さてな。だが、君の勝手な都合に彼女を巻き込むのは止めたまえ」
「……そう、ですよね。すみません、フロイライン・アデレード。つい興奮してしまって」
「いえ。でも確かにこの家なら誰かを泊めるには十分な広さがありますわね」
アデレードは自分の家を改めて眺める。彼女の家は、木組みに白い壁の美しい、猫の耳のように切妻屋根が二つ並んだ特徴的な外観をしている。向かって左側のは玄関であり、1階は食堂や広いロビーがあって、2階の部屋の1つはアデレードが寝室として使っている。もう一方の屋根の方は、1階にはテラス、2階にはベランダの付いている客室になっていた。こちらは今まったく使われていない。
「フロイライン、何を……」
「使われていない部屋を使いたいというのならそれもありかと思って」
「そうですよ! フロイライン」
「いや、しかし君は……」
「ほんの少し、考えてみただけですわ、伯爵」
何か言いたげな伯爵を制し、アデレードが少し笑って見せた。
マックスはカールの回答に納得したのか、何度も夏には一緒に山頂まで登ろうと念を押してから再び散歩に戻っていった。
マックスの背中を見送りながらアデレードは口を開く。
「それで、結局一緒に山には登るんですの、伯爵?」
「……」
カールは苦虫を嚙み潰したような顔になったが、気を取り直して軽く咳払いをした
「フロイライン、先ほどのことは……」
「はい」
「別に君のすることを反対しようというものではない。ただ……」
「私に出来るわけがない、ということですか?」
口ごもる彼に代わりアデレードが答えた。カールは苦笑いにも似た表情を浮かべる。
「君が以前にどういう生活をしていたかは分からないが、今の様子を見る限り料理も掃除も苦手そうだし」
アデレードを上から下まで見てカールが言った。
「まぁっ、それは修行中ですわっ」
「それに本格的な冬を一人で乗り切るのはことだ。君を訪ねて来たら凍え死にしていたなんて、洒落にならんからな」
「もう何てことおっしゃるの! 私そこまで間抜けではありませんっ」
カールのおどけたような言い草にアデレードは顔を真っ赤にして反論した。
「いや、何をするにも一人では出来ん、ということだ。人を雇ってみてはどうだろうか」
「え?」
カールの意外な提案にアデレードが目を丸くする。
「そうしてもらえると私としても嬉しいが」
「どういうことですの?」
「この村では現金収入が得られる仕事は僅かしかない。働き口が出来ることは悪いことではないと思う」
「ですが……」
「あんなことがあったからと言って、たった一人、孤独に暮らす必要はないと思うが。君には誰か付いていた方が良い。フロイラインはどうやら暴走してしまう癖があるようだからな」
カールはそう言って笑う。
「まぁ、伯爵ったらっ!」
ぷりぷり怒るアデレードの代わりに、カールは彼女の抱いている愛犬のディマを撫でて帰っていった。
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