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第2章 新しい人生
第19話 市へ行こう
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「そう言えば、もうすぐ市が立つんですよ」
「市?」
昼食を食べながらメグは嬉しそうに話す。
「はい。季節ごとに、あ、冬を除いてですけど、この村の広場で出店がいっぱい出るんです。近隣の他の村からも人が来て賑やかなんですよ」
「まぁ、それでこの家まで品物を届けて下さるの?」
「えっ」
「え?」
アデレードとメグはお互いに驚いた顔を見せ合うことになった。アデレードは根本的に市のことを理解していなかったのだ。
そして市の日、村の広場に賑やかしく出店が並ぶ。呼び込みの声や買い物に来た人々の声が飛び交う。普段は静かな村に喧騒が広がる。
「まぁ、随分と賑わっているわね」
アデレードが出店の様子に目を輝かせて楽しそうに言う。
「はい。市が立つときはいつもこうなんです。普段手に入りにくい物が手に入りますから」
2人は冬支度に必要な物を揃えるべく市へとくり出した。
「うーん、冬に備えて小麦と燻製した肉と魚と、あとチーズも要りますよね。それから…」
メグがぶつぶつと呟きながら指を折る。
「そんなに2人で持って帰れるかしら?」
「大丈夫ですよ。何往復かしますし。それに何だったら弟妹(きょうだい)達に手伝ってもらいますから」
「まぁ。頼りにしてるわね」
「私は色々必要な物見繕ってくるので、お嬢さんは出店見て回ったらどうですか?」
「良いの?」
「はい! 私の方は大丈夫なんで、楽しんで来て下さい。練習した通りにやればちゃんと買えますから」
アデレードは自分で買い物をしたことがない。この日の為に、メグと市での買い物の仕方、といっても商品を見て代金を払うだけだが、を練習していたのだ。
「じゃぁ、お言葉に甘えて」
メイドと別れ、アデレードは出店を冷やかしながら歩く。パンを売る店、木で作られたおもちゃや雑貨を売る店、布や糸を売る店など、彼女の目には見たこともないものばかりが並んでいた。見ているだけでも楽しくなってくる。
そこでアデレードの目を惹くものがあった。革製品を扱っている店だ。
ディマに首輪買ってあげようかしら。
愛犬のディマは今、家で留守番している。買い物には連れていけないから仕方ないが、出かけるとき悲しそうにくーんと鳴いていた。
アデレードが興味深げに店を覗いていると、店主が愛想よく声を掛けてきた。
「おや、この辺では見ない別嬪さんだ。何をお探しで?」
「あら、お上手ね。犬の首輪になりそうなものを探しているんだけど」
「それなら良いのがあるよ」
店主が店の奥から小さな木箱を持ってきて、彼女の前で開けてくれた。中には首輪に丁度良さそうな長さの革の端切れが何本も入っていた。ディマの首を熱心に選んでいると後ろから声を掛けられた。
「フロイライン・アデレード?」
そう呼ばれて振り返ると、いつものように黒いフロックコートを着たカールが立っていた。
「伯爵!」
「買い物か?」
彼女の驚いた顔を見て、カールは少し相好を崩す。
「はい。ディマに首輪を買ってあげようと思って」
「なるほど」
カールが横に来て、同じく木箱の中を覗き込む。不意に近くに来られたのでアデレードは思わずどきっとした。
これは初めて買い物する高揚感からだわ。たぶん、きっと……そう。
「それで、どれにするのか決めたのか?」
「この黒い革のものにしようと思いますわ」
「艶があって良いな」
彼に褒められて何となくアデレードは嬉しくなった。
「えぇっと。ここでお金を払えば良いのよね。お幾らかしら?」
無事代金を支払い、アデレードはディマの首輪を手に入れた。
思えば誰かの為に何かを買ってあげたこと無かったわ。何だかくすぐったい気持ちですわ。
アデレードは買ったばかりの革の首輪を満足そうに眺めた。
「市?」
昼食を食べながらメグは嬉しそうに話す。
「はい。季節ごとに、あ、冬を除いてですけど、この村の広場で出店がいっぱい出るんです。近隣の他の村からも人が来て賑やかなんですよ」
「まぁ、それでこの家まで品物を届けて下さるの?」
「えっ」
「え?」
アデレードとメグはお互いに驚いた顔を見せ合うことになった。アデレードは根本的に市のことを理解していなかったのだ。
そして市の日、村の広場に賑やかしく出店が並ぶ。呼び込みの声や買い物に来た人々の声が飛び交う。普段は静かな村に喧騒が広がる。
「まぁ、随分と賑わっているわね」
アデレードが出店の様子に目を輝かせて楽しそうに言う。
「はい。市が立つときはいつもこうなんです。普段手に入りにくい物が手に入りますから」
2人は冬支度に必要な物を揃えるべく市へとくり出した。
「うーん、冬に備えて小麦と燻製した肉と魚と、あとチーズも要りますよね。それから…」
メグがぶつぶつと呟きながら指を折る。
「そんなに2人で持って帰れるかしら?」
「大丈夫ですよ。何往復かしますし。それに何だったら弟妹(きょうだい)達に手伝ってもらいますから」
「まぁ。頼りにしてるわね」
「私は色々必要な物見繕ってくるので、お嬢さんは出店見て回ったらどうですか?」
「良いの?」
「はい! 私の方は大丈夫なんで、楽しんで来て下さい。練習した通りにやればちゃんと買えますから」
アデレードは自分で買い物をしたことがない。この日の為に、メグと市での買い物の仕方、といっても商品を見て代金を払うだけだが、を練習していたのだ。
「じゃぁ、お言葉に甘えて」
メイドと別れ、アデレードは出店を冷やかしながら歩く。パンを売る店、木で作られたおもちゃや雑貨を売る店、布や糸を売る店など、彼女の目には見たこともないものばかりが並んでいた。見ているだけでも楽しくなってくる。
そこでアデレードの目を惹くものがあった。革製品を扱っている店だ。
ディマに首輪買ってあげようかしら。
愛犬のディマは今、家で留守番している。買い物には連れていけないから仕方ないが、出かけるとき悲しそうにくーんと鳴いていた。
アデレードが興味深げに店を覗いていると、店主が愛想よく声を掛けてきた。
「おや、この辺では見ない別嬪さんだ。何をお探しで?」
「あら、お上手ね。犬の首輪になりそうなものを探しているんだけど」
「それなら良いのがあるよ」
店主が店の奥から小さな木箱を持ってきて、彼女の前で開けてくれた。中には首輪に丁度良さそうな長さの革の端切れが何本も入っていた。ディマの首を熱心に選んでいると後ろから声を掛けられた。
「フロイライン・アデレード?」
そう呼ばれて振り返ると、いつものように黒いフロックコートを着たカールが立っていた。
「伯爵!」
「買い物か?」
彼女の驚いた顔を見て、カールは少し相好を崩す。
「はい。ディマに首輪を買ってあげようと思って」
「なるほど」
カールが横に来て、同じく木箱の中を覗き込む。不意に近くに来られたのでアデレードは思わずどきっとした。
これは初めて買い物する高揚感からだわ。たぶん、きっと……そう。
「それで、どれにするのか決めたのか?」
「この黒い革のものにしようと思いますわ」
「艶があって良いな」
彼に褒められて何となくアデレードは嬉しくなった。
「えぇっと。ここでお金を払えば良いのよね。お幾らかしら?」
無事代金を支払い、アデレードはディマの首輪を手に入れた。
思えば誰かの為に何かを買ってあげたこと無かったわ。何だかくすぐったい気持ちですわ。
アデレードは買ったばかりの革の首輪を満足そうに眺めた。
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