悪役令嬢として断罪された過去がありますが、よろしいですか?~追放されし乙女は、そして静かに歩みだす~

宵森 灯理

文字の大きさ
57 / 109
第3章 アデレードの挑戦

第58話 ホテル開業!

しおりを挟む
 カールが王都であれやこれやと忙しくしている頃、アデレードも家の改装を進めていた。
 
一階北側の改築に入り口に加え、カウンターを設置することに決め、そこも工事してもらっていた。
 テッドに頼んでいた絵も何回かの相談を経て、何枚かは出来上がっていた。その内の一枚を談話室に飾る。その絵は、晴れた日の花が咲き乱れる草原から見上げた夏の山々を描いたものだ。プロの画家に比べれば、技量は稚拙なものだが、この地への愛情と絵を描くことへの情熱が溢れている。
 机と椅子、何も置いていない飾り棚、それに暖炉があるだけだった空間に色彩が加わると一気に、華やいだ雰囲気になる。

「うん、とっても素敵。この調子で描き上げてね、テッド」

 部屋に飾られた自分の絵を見て、テッドは誇らしさと恥ずかしさが混じったような表情で頷く。丹精込めて描いた絵がこうして実際に壁に掛けられると、やはり嬉しいようだ。

「はい。でも、まだまだです。もっと上手く描けるようになりたい」
「えぇ。頑張ってね」

 自分の描いた絵を真っ直ぐ見つめながら、決意を固めるテッドにアデレードが優しく励ます。
 この春と初夏の間に、家具の方も順調に出来上がってきており、部屋や食堂はいつでも使える状態になりつつある。

「そうだ、お嬢さん。どうせなら庭にハーブや綺麗なお花でも植えてみませんか?」
「ハーブ? お花?」

 メグの唐突な提案に、アデレードは目を瞬かせる。

「宿のお客さんが楽しんでもらえるように、幾つか植えてみては、と思ってて」

 アデレードの邸宅は屋敷を囲むように庭があるが、今はだだっ広い空き地になっているだけで、雑草を刈り取る以外に世話らしい世話はしていない。それなら、何か植えるもの良いかもしれない。

「いきなりたくさん植えるのは大変だけど、少しずつなら始めてみても良いかもしれないわね」
「はい! ぜひやりましょう」

 メグが嬉しそうに瞳を輝かせる。後日、村の人から苗や種を分けてもらい、建物の裏手の一角にまずは小さなハーブ用の菜園を造ることにした。煉瓦を地面に並べて区切り、その中をクリスが掘り起こして、アデレードとメグがそこにもらった苗や種を植えていく。そして家の周りも花の種を植えた。

「大きくなるのが楽しみね」

 作業を終えて、アデレードが手を土塗れにしながら、満足げに呟いた。

 ホテルは日に日に形になって来ている。
 
 そして、リーフェンシュタール領に遅い夏が来た頃、改装も済んで、テッドに描いてもらったホテルの木の看板を建物正面の庭の入り口に打ち込む。
 ホテルの名は、「山と森のホテル」。シンプルな名前だが、アデレードにはこれがぴったりだと思った。

「うん、これで完璧ですわ!」
「はい。いよいよですね」
「まぁ、人が来るかは別の問題ですけれど」

 アデレードはメグとクリスと一緒に建物を眺めながら、満足しながらも苦笑いする。

 ここに人が泊まりに来てくれるかは、まだ未知数なのだから。でも、これからまた、新しい人生が始まる。この地で。メグやクリスや村のみんなと…・・それに伯爵もいらっしゃる。

「どうなるかしら……何だかわくわくしてきたわ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

処理中です...