白に赤を足して

のおb

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ロシア女は夜を吐く

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 9月のここは、もう寒い。古臭いアパートから見る外は、いつも暗く見えて、白い雪も灰のように見える。5時のチャイム。黒のラダや、旧式のベンツが眼下で走っている。飲みたくて淹れたコーヒーは一口でもう冷めきって、サイドテーブルで凍えている。隙間風が寒い。もう慣れた。ずっと下着姿はもっと寒いので、いつかの男からもらったフェイクファーのコートを羽織り、ウォッカベースのコーヒーを飲んで思いにふけることにした。

 最初ここに来たときはもっと部屋も片付いていて、私の目にも光があった。今はブロンド髪も燻っている。日本からここに来て、いいことがあるとしたら、住む家があることだろう。女を売れば、金なんていくらでも入る。ここの男は、アジアの顔が好きなようだ。子どもができていないのが奇跡だ。自分でも、この生き方は長くは続かないとわかっているものの、男どもに考える気力を奪われたようだ。ここに連れてきた父も、どこかへ行ってしまった。母と同じように駆け落ちしたのだろうか。こちらの気持ちなど考えられるわけがない。共感してもらいたくもない。私の親は、ドストエフスキーだ。

 いろんな男と出会い、夜を共にした。そのどいつも、乱暴で女をモノ扱いしている屑だった。金払いはいいが、私の心と体が、代償になった。中には金持ちの豚もいた。私を手に入れたいのか、役にも立たない高級な化粧品や服を押し付けてきた。今でもそれらは使っているが、あの豚野郎のところに戻る気はない。おそらく私はまだマシな方なのだろう。前に縛られて悲鳴を上げている同業者を見たことがある。あれをされるなら、死んだほうがいい。

 だがその分、いい男にも一度だけ出会った。誠実で、不自然なほど丁寧に扱われた。おまけに朝食も作ってくれた。(人にさせていたのではなく、自分でだ。)今でも覚えている。肉の入ったボルシチと、クワス。重すぎだと思ったが、言わないでおいた。いつもなら勝手に送られるのだが、あのときは私からお願いした。家の前に着いた時、私は煙草の箱に家の電話番号を書いて渡した。彼は一言だけ、ピョートルだと言って、車を出した。その時だけ、チークで赤くしている頬が、更に赤く見えた。

 今私は、その男の家にいる。そして、その男は今、ベッドで死んでいる。電話でうちに来いと言われ、私は初めて心を込めて返事をした。最高の服を着て、一番出来の良いメイクをして、地下鉄に乗った。モスクワの中心に近付くにつれ、私の顔に、笑みが戻っていった。彼の家の前に来たときには、もはや私は私ではなかった。ドアが空いた途端、私は引き込まれ、整頓された部屋を乱しながら踊った。そしてベッドに入り、最初で最後になる愛してるを言った。その時、ピョートルはもう死んでいた。私の右手には血のついたランプ。部屋を赤く照らしていた。私に男を信じるなんて出来なかったのだ。おそらく私はじきに捕まる。だからこうやって彼の家でタイプライターを打っているのだ。誰にも私の気持ちなどわからないだろう。今は、ただ誰かが来るのを待つだけだ。

こういうときに限って人が来ないから、私は夜がきr
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