夫婦とは長い会話である

中田翔子

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選挙

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女「選挙行かなあかんなー」
男「そっか今日か」
女「ポスターみて思ったんやけどさ」
男「うん」
女「焦げ茶色ってなんで焦げ茶色なんやろ」
男「ポスターみて何を思ってんねん」
女「いや、名前の色が焦げ茶色やってん」
男「まあ焦げたような茶色やからちゃうのん? 」
女「焦げ色でよくない? 」
男「うーん、いろんなバリエーションを考えてなんちゃう? 」
女「バリエーション? 」
男「うん」
女「じゃあ焦げ黄色とか焦げ緑とか聞いたことある? 」
男「いやないけど」
女「焦げねずみ色なんて最悪や」
男「ねずみ焼かれてんなあ」
女「やっぱおかしいやん」
男「あれちゃうん。黄緑みたいな感じちゃうの?黄青とかないし」
女「そら黄青は緑やもん」
男「黄ねずみもないよ」
女「それピカチュウやもん」
男「あー」
女「それに黄緑は黄色と緑色やろ? 」
男「うん」
女「じゃあそもそも焦げ茶色も焦げ色と茶色でないとおかしい」
男「焦げ色なあ」
女「せやろ」
男「うーん」
女「ねずみ色があるんやからものの名前からそのままとって焦げ色にしたらええのに」
男「そやなあ」
女「あ、思い出した」
男「えっ! なになに」
女「さんま焼いてるんやった」
男「あー焦げ臭いなあ」

女「さんまが焦げたので」
男「はい」
女「今日はメンチカツにしました」
男「お!お惣菜!  」
女「さんまはスタッフが美味しくいただきました」
男「我が家スタッフ完備してたんやな」
女「ところで」
男「ところで? ご飯にしましょうよ」
女「メンチカツってなに? 」
男「お肉をミンチしたカツでしょ」
女「じゃあミンチカツやん」
男「いやいやいや」
女「なによ」
男「いやいやいや」
女「なんやねんいやいやいやって」
男「それはあれよ」
女「なによ」
男「メンチの方が」
女「うん」
男「それっぽいやん」
女「なんやそれ」
男「ミンチカツねぇミンチ、ミンチかぁってなるやん」
女「それやったらメンチかて、メンチカツねぇメンチ、メンチだわぁってなるよ」
男「メンチカツのほうがかっこいいやん。語感が。ミンチカツよりも語感が」
女「それやったら自民党かて自メン党になってるはずやん」
男「なんやねん、じめん党て。アスファル党もあるんか」
女「は? 」
男「いや、今のはごめん。ごめん党」
女「やから別にミンがメンになってもかっこよくないよって話よ」
男「あ、そうか。母音や」
女「ボイン? 」
男「ううん」
女「は? 」
男「母音やって。あいうえおの。ミンチカツやったらミとチで被ってるけどメンチカツやったらeniauで被らん」
女「やからなに? 」
男「かっこいいかなーって」
女「それやったら自民党かてジとミで被ってるけど自メン党やったらienouで被らへんで。自メン党かっこいいか?自メン党」
男「一回自民党から離れろよ」
女「じゃあどこに投票すればええねん! 」
男「知らんわ! 」
女「うわあ政治に関心のない、無責任な人」
男「やめて」
女「あれ? 投票って何で投票っていうんやろ」
男「もうええわ」
女「票を入れるやん? 投げへんやん? むしろスタンドに入れる打者側やん? 」
男「ストライクゾーンに入れるっていうやん」
女「ああなるほど」
男「よかった。納得してくれて」
女「じゃあ共産党にしてカーブの握りで入れるわ」
男「もう。はよメンチカツ食べようや~」
女「シュッ。シュッ。フォームチェックしてフォームチェック」
男「も~」
女「わかった!!! 」
男「びっくりしたあ。なになに」
女「ミンチもカツに入れるときカーブの握りにしたんや。カーブかけたらメンチになった」
男「うんそれでいいとおもう。いただきまーす」
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