Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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変革

帝国の決断3

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シリアスな話題から何気ないものへと移り変わる一方で、一心不乱に食事を続けるティナとエア。その両名が新しく運ばれて来た料理を口にしたかと思いきや、突如動きを止め『カッ!』と目を見開く。

「「っ!?」」
「どうしたの?」

ーーごっくん!

フリーズしたティナとエアが気になり、声を掛けるナディア。学習する気の無いティナとエアが、料理を丸呑みにして口を開いた。

「あ、味が・・・」
「変わりました・・・」
「うまいのじゃ!」
「美味しいです!」

2人が唸る理由、それは料理を作る者の中にルークが加わったからであった。調理方法は然程変わらないのだが、まずはソースの味付けが変わる。それだけでも今の2人には大きな変化だった。食べ放題の経験があればわかるだろう。味が変わればまだ食えるという感覚を。今が丁度その状態である。

そしてそれは暫く繰り返される事となる。手っ取り早くソースに口を挟んだルークは、下味についても指示を出す。その味に合わせてソースの味を変えて行くのだから、ティナとエアが飽きる前に料理が運ばれて来るのだ。結局はルークが納得するまでのイタチごっこなのだが、2人には願ってもない状態である。


城に仕える料理人の腕は一流なのだが、それでもルークには及ばない。地球で最も有名だったルークの腕前は、この世界において別次元なのだ。時々料理を教える事もあるが、持てる技術の全てを教える程の時間はない。料理人達がルークに追い付くまでには、実に十年以上の歳月を要するだろう。

調味料や食材が揃わない事を理由に、必要となる調理器具を披露していない。今後ルークが食材や調味料を発見もしくは調達するまで、決して世に出回る事は無いだろう。解禁するにしても小出しにする。

何故一斉放出しないのかと言えば、余計な争いを避ける為である。利益になると感じれば商人や商会は突っ走る。そうなれば何処かで衝突するのは必死だろう。それに人の好みは千差万別。資金が有限である以上、新商品の全てを購入する事は出来ない。

当然売れ行きに差が出れば、目論見の外れた者が現れる。その者達が損をする直接の原因とはならないのだが、提案した者としては心苦しいだろう。だからこそ、慎重かつ公平な目で相手を選ばなければならないのだ。



盛大に話が逸れたので、ここで一旦戻すとしよう。徐々に落ち着きを見せるかと思われていた2人のやけ食いは、ルークのお陰で盛り上がりを見せるのだった。もう一方の戦場へと視線を向けると、突如ルークを異変が襲っていた。


「陛下!デザートは如何しますか!?」
「今そっちに・・・何だ!?」

そろそろデザートに取り掛かるべきだと判断した料理長。当然判断を仰ぐべくルークに声を掛ける。直接指導しようと思ったルークだったが、突然襲い掛かる異変に戸惑うのだった。

騒がしかった厨房から音が消える。良く見れば人だけでなく調理で使う炎までもがその動きを止めていた。

「火が・・・止まった?一体何が!?」
「悪いが緊急事態だ。」
「アーク!」
「邪魔されるのが嫌だったんで、時間を止めさせて貰った。」
「はぁ!?」

この時のルークの驚きは計り知れない。それもそのはず。まさか時間を止めるなどという、御伽噺でしか聞けないような離れ業を実行出来る者がいるとは思っていなかったのだから。控え目に言っても無敵の力。ルークが抱く疑問は、アークにとっては慣れたものであった。

「オレしか出来ないし、乱用も出来ん。月に1回のチートスキルだとでも思っておけ。」
「月に1回・・・わかった。それで、一体何の用だ?」

月に1回なら構わないか、などと考えて納得するルーク。それでも充分脅威なのだが、アークはそれどころではない様子。

「詳しい説明は面子が揃ってからする。ヴァニラは何処だ?」
「ヴァニラなら、暫く帰って来てないぞ?」
「マジかよ・・・。」
「だ、大丈夫か?」

本気で絶望したような表情のアークを気遣い、ルークが声を掛ける。するとすぐに復帰してとんでもない提案をするのだった。

「・・・非常時だから特別だ。取引と行こう。」
「取引?」
「この世界の貨幣や魔物なんかの素材を対価に、地球の食材や調味料と交換する権利をやる。これは神域を通しての物々交換だから無制限とはいかないが、ほぼ制限は無いと考えていい。その代わり、今から地球の料理を作って欲しい。特にスイーツは外せない。今回だけ材料や道具はオレが全て用意しよう。どうだ?」
「願ってもないような破格の好条件だが・・・今は厳しい。」
「何故だ?」

これはルークにとって、喉から手が出る程の条件である。にも関わらず断られるとは思っていなかった。当然簡単に引き下がる訳にはいかない最高神が食い下がる。

「今ティナに料理を作ってるんだ。それを中断したら関係の修復が大変になる。それに、いずれは自由に地球の素材を手に入れるような力が手に入るんだろ?それまで気長に待つさ。」
「それはそうだが・・・ん?そうか、お前勘違いしてるだろ?」
「勘違い?」
「調理すんのは此処じゃなくて神域だ。あそこは時間の流れが違うからな。何時間掛かろうと、今この瞬間に戻って来られる。・・・そろそろ時間停止も限界だ。さっさと決めろ。」
「この瞬間に戻って来られる?それなら問題無い。」
「良し!なら今すぐ行くぞ!!」



半ば強引に、ルークは神域へと連行される。今回訪れたのは屋内。しかも懐かしい眺めの一室だった。


「ここは・・・オレが勤めてたホテルの厨房じゃねぇか!」
「いつかヴィクトリアに料理を振る舞って貰おうと思ってな。そこを再現した物だ。食材も道具も全て用意してある。ただあの瞬間に戻るとなると、ここに留まれるのは3時間が限度だ。」
「余裕過ぎんだろ!」
「いや、案外無理難題だと思うぞ?」
「何?」

最高神が吹っ掛ける無理難題と言う言葉に身構えるルーク。彼が提示する条件は正しく無理難題であった。

「万が一を考えて用意したこの作戦だが、許可を得る為にかなり苦労した。結局ある条件と引き換えに許可を得たんだよ。」
「ある条件?」
「お前の居る世界へ不用意に干渉するのは本来タブーってのは説明したよな?」
「したな。」
「それを管理する神々に目を瞑らせる代わりに、そいつらの分も料理を用意して貰う事になった。」

不正という程のものでもないが、つまりは買収である。そんなんで大丈夫なのか不安になるルークだったが、気になるのはそこではない。

「・・・何人なんだ?」
「10人。お前の嫁やヴィクトリアとシルフィの分も含めると・・・ざっと50人前か?」
「アホかぁぁぁ!」
「誰がアホだ!お前の嫁が食い過ぎなんだよ!!こっちは10人だぞ!?」
「くっ!何も言い返せない・・・。」

ルークも反論出来ない。最高神の言い分が正しいのだ。悪いとは言わないが、確かにティナは食べ過ぎだろう。そして嫁達で40人前は盛り過ぎに思えるのだが、多分お代わりする者がいるだろう。ティナとエアには我慢して貰って5人前ずつ。そう考えての見積もりであった。神々にはきっちり人数分で我慢して貰おうと考えている辺り、やはり父親なのである。

「料理に秀でた者達を付けるから頑張れ。」
「あぁ、わかったよ。時間も無いし、そろそろ始めさせて貰う。」

少し経ってから合流した神々の手を借り、何とか制限時間内に料理を作り終えたルーク。この間アークが何をしていたのかと言うと、ルークの作業の合間を見て詳しい説明を行っていた。


そもそも何故ルークが料理する事になったのかと言うと、今尚雲隠れしているヴィクトリアを誘き出す為。正確には、同行しているシルフィに用があった。そして彼女達の目的はルークが作るスイーツにある。現在用意出来るスーツでも誘き出せるかもしれないが、未だに姿を見せないあたり確証が得られない。

ならばと用意した作戦は、ルーク渾身のスイーツを含むフルコース。長年お預けをくらってきた極上スイーツを、ヴィクトリアとシルフィが見逃すはずがない。女の勘とは、それ程までに鋭いのだ。


完成した料理をアイテムボックスへと収納し、アークと共にフォレスタニアへ転移する。余談だが、ルークのフルコースを堪能した神々に対し、至る所から不満が噴出する。神域、即ち天界を揺るがす騒動が巻き起こる事になるのだが、それはまたの機会に。


一先ず戻って来たルークは、こちらでの作業を再開する。すぐにでもヴィクトリア達を誘き寄せたいアークであったが、ティナが落ち着かなければ話も出来ないと判断し大人しくする。当然姿を見られれば大騒ぎとなる為、現在は姿を消して静観していた。


過去の経験からティナが満足しそうな量に達した段階で調理を終了し、そのままローデンシアへと飛ぶ。仲間外れも可哀想なので、リリエルの姉妹達を呼びに行ったのだ。もう誰かが残る必要も無いのだが、彼女達は住み慣れた城を放棄出来なかった。まぁ、全員が常にルークの回りに居るのも騒ぎになるので結果オーライだったのだが。


頃合いを見計らって、ルークが全員に再度料理を振る舞う。もう満腹じゃないかと思うかもしれないが、満腹だとは言っていない。満足しそうだと言ったのだ。つまり、腹八分目。この世界の住人は例外無く良く食べるので、地球のコース料理では物足りないのである。しかも満腹になるまで食べられたら大変である。主に財布が。

「実は今日、特別な料理を用意してあってさ。量が無いからこのタイミングで振る舞う事にしたんだけど、まだ食べられるよね?」
「「「「「特別な料理?」」」」」
「ほとんど肉ばっかだし、魚介類をメインにしてみた。」
「「「「「わぁぁぁ!」」」」」


見た事のない食材がふんだんに使われた料理だが、鮮やかに盛り付けられた事で嫁さん達の目が輝く。しかし肝心のヴィクトリア達は姿を見せない。だがアークの話では城内に気配を感じるとの事で、ルークは追い打ちを掛ける。

「因みに締めのデザートはこんな感じ。」
「「「「「綺麗~!」」」」」

アイテムボックスから取り出したのは、コース料理にそぐわないボリュームのあるスイーツ。これに反応したのは嫁達だけではなかった。

「「「チョコレートパフェ!?」」」
「「「「「誰!?」」」」」
「はい、確保~!」
「「「「「最高神様!?」」」」」


突如姿を現したのはヴァニラと絶世の美女、そして1人の美少女であった。当然嫁達は面識が無かった事で驚く。そんな嫁達にはお構い無しに、姿を消して待ち構えていたアークによって1人の少女が拘束されたのだった。
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