Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

エルフ国へ1

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嫁さん達を実家に送り届け、やっとオレ達が出発する日となった。カレンに頼むつもりだったのだが、嫁さん達の家族に挨拶していなかったのでオレが送り届ける事にした。

歓待を受けたり政治的な話をしたりと1人1人の送迎に時間が掛かり、全員を送り届けるのに5日も掛かってしまった。その間ティナ達には食料を調達して貰い、嫁さん達には充分な手土産を持たせる事が出来た。

ティナとフィーナには感謝の気持ちでいっぱいだ。しかし当然のように対価を要求された。2人にはオレのフルコースを大量に渡してあるので、何処かではぐれても1ヶ月は生きて行ける事だろう。


5日の間に帰って来る嫁さんもいた訳で、当初の予定とは随分とズレが生じてしまった。なので、オレ達の予定も大幅に見直す事となった訳で・・・。


「この方角で合ってるのか?」
「えぇ。このペースなら5日あれば最初の集落に着けると思うわ。」
「しかし、本当に道が無いのですね。」

オレとティナが言うように道なき道・・・既に幾つもの山や森を超えている。獣道すら無いような場所だった事もあり、木から木へと飛び移っての移動である。


本来ならばオレが空を飛び、転移で戻って2人を迎えに行くはずだった。しかし嫁さん達にお土産を持たせた事で、食料の備蓄が心許ない状況に陥ったのだ。半分は良く食べるティナのせいなのだが。

折角なので自分達の足で移動し、ついでに食材を確保しようという事になった。当然これは建前である。本音は魔物の分布を調査しようという狙いがある。ただ、別に本音と建前を使い分ける必要などない。


帝国領からの移動を考えていたが、どうやらエルフの国は東の果てに位置するらしかった。アームルグ獣王国を南へ進み、ドラゴニア武国から北東に抜けた先。そこが目的地だと説明を受けた。この時点でオレは思った。何ヶ月掛かるんだよ、と。

平坦な土地ではなく、何処までも続く山々。幾ら体力に自信があっても移動速度は落ちる。だからこそスタート地点はドラゴニア武国の王都だった。その先は山しか無いので、カレンにとっても未開の地。オレ達に残された選択肢は飛ぶか走る・・・飛ばされるというのもあったが、それは丁重にお断りした。

オレ1人ならもっと早く移動出来るのだが、そこまで急ぐ旅でもない。ティナとフィーナのペースに合わせている。この時点で既に5日が経過していた。直線距離にして200キロだろうか。激しい高低差もあって、実際の移動距離は500キロに及んでいるかもしれない。

いや、途中で魔物を追い掛け回したりしなければもっと少ないんだよ?だからこそ、こっそりフィーナに尋ねてみる。

「参考までに、真っ直ぐ進めばあと何日?」
「・・・3日よ。」

ティナさん、貴女凄く回り道していらっしゃいますよ?

「そ、そうか・・・。それにしても、流石は秘境だよな。エリド村に負けてないよ。」
「ここを抜けられる者が少ないのもあって、エルフの国とは交易が無いのよ。」
「余程の高ランクパーティでもなければ、ここまで辿り着く事すら難しいでしょうね。」
「下位とは言え、居るのは竜の群ればっかだもんな。」

因みに竜王達によると、ドラゴニアを南東に進むと竜の聖域があるそうだ。そちらはナディアの目的地に当たる為、今回はパスさせて頂く。

実は獣人達の住む土地を真東に進むと目的の場所なのだが、こちらは寸断されているらしい。行って行けない事は無いのかもしれないが、無理に試す価値は無い。アムネア大峡谷と呼ばれるソコは、誰1人帰った者がいない場所だとルビアが言っていた。

オレは冒険がしたい訳ではない。ひっそりと食堂を経営したいのだ。紐なしバンジーはオレの役目じゃない。


「今日はあそこで野営にしましょう。」
「こんな所に開けた場所が・・・。」

フィーナの言葉に視線を向けると、花に囲まれた湖が見えて来た。ティナが驚くのも無理はない。偶然辿り着くのも困難な程、険しい斜面を抜けた先だったのだ。もし迷っていたら、そんな場所を進む事はない。

「ここは比較的安全な場所と言われているの。まぁ、辿り着くまでは危険なんだけどね。」
「有名な場所って事なんだよな?」
「そうよ。まぁ、エルフじゃなくてダークエルフにとって、かしらね。」
「「?」」
「1番近い集落って、ダークエルフ達が住む土地なのよ。」
「前に学園長から聞いた話だと、エルフとダークエルフには確執なんて無いって事だったぞ?」
「そうね、それは半分正しいわ。」

半分?つまり、学園長は嘘を吐いていたのか?

「エルフの国では、未だに対立しているのよ。勿論水面下でね。世界政府の会合にはダークエルフなんていなかったでしょ?」
「言われてみれば・・・」
「偶々じゃないのか?」
「偶々エルフ族に優秀な人物が多いと、ルークは本気で思うのかしら?」

絶対に無いとは言い切れないが、まず無いだろうな。つまりエルフ国では、ダークエルフの立場が悪いという事か。

「王族とその取り巻き連中には、殊更その傾向があるの。下々の者達はそれ程気にしてないんだけどね。」
「なら王都にダークエルフはいないのか?」
「いないわ。別に住んでもいいんだけど、住み難い場所に好き好んで住む必要は無いでしょ?」
「確かにそうですね。では、半分正しいと言うのは?」
「この国を出た者達にとって、そんな確執は無意味なのよ。対立する理由もハッキリしてないんだし、国を離れてまで争う必要なんてないでしょ?」

表立った理由も無く争いを続けているのか。いや、多分エルフ側が権力に縋り付いているだけなのかもしれないな。

「それより、学園長も真面目な話をしたりするのね・・・。」
「そりゃ、いつも巫山戯た・・・っ!?」
「どうかしましたか?」

オレの様子がおかしい事に対し、ティナが訝しげな表情を見せる。

「いや、そんな話よりも野営の準備を済ませてしまおう。」
「準備って、アイテムボックスから家を出すだけじゃない。」
「そうなんだけどさ・・・2人共、急いで中に入るんだ!」

口にしてはならない名を口にした事に、オレは酷く後悔する。嫌な予感が収まらない。慌てて2人を隔離しようとするが、あと1歩遅かった。

「た、助けて欲しいのじゃ~!」
「「っ!?」」
「さぁ!早く中に入ろう!!」
「ルーク!?」
「誰かが助けを呼んでるわよ!?」
「気のせい!空耳だよ!!」

2人の長い耳は伊達ではない。オレは気配に気付いてしまったので、無意識の内に注意がそちらに向けられている。そのせいで聞こえてしまったのだが、2人の耳には届いていないと思いたかった。

「だ、誰か~!助けて欲しいのじゃ~!!」
「誰もいません!!」
「「・・・・・。」」

明らかに向こうも此方に気付いている。知らんぷりを決め込もうと思ったのだが、思いが強過ぎた。必死の抵抗に、ティナとフィーナが呆れている。どうやら2人も声の主に気付いたらしい。

「オ、オレが名前を出したばっかりに・・・」
「全く・・・ティナ、行きましょう。」
「そうですね。」

四つん這いになって項垂れるオレを放置し、嫁2人が救助に向かう。暫く現実逃避を続けていると、ティナとフィーナが戻って来る。当然後ろにヤツを伴って。

「いや~、本当に助かったのじゃ!」

「何で助けた!」
「何でって、一応リノア達の先生だもの・・・」
「まだ間に合う!捨てて来なさい!!」
「ペットじゃないんだから無理よ!」
「ペットでもダメです!!」
「「ぐっ!」」

オレのせいでフィーナも失言してしまい、揃ってティナに叱られてしまう。そうだぞ、ペットは捨てちゃダメだ!痴女はオーケー・・・だよね?


「それで学園長は何故こんな所に?」
「ん?ユーナからお主らがエルフ国に向かうと聞いてのぉ。此処で待っておったのじゃ!」
「何の為です?」
「無論里帰りじゃ。」
「・・・裸で?」

ティナが呆れるのも頷ける。危険な魔物、とりわけ竜種が彷徨く辺境の地にたった1人。しかも全裸である。そのくせ返ってきた答えは里帰り。間違いなく脳ミソが腐っていらっしゃる。

「これは竜に襲われたせいじゃ!」
「どう襲われたら裸になるのよ・・・。」
「返り討ちにしてやろうと、つい全力を出してしまったのじゃ。」
「「「あぁ・・・」」」

そう言えばコイツ、ウルト○マ○だったな。魔力を高めると3分だけ大人の姿になれるビックリ人間。いや、ダークエルフか。そして服が破れ去ったと・・・。

「お陰で動揺してしまってのぉ・・・逃げ出したら追い掛けて来おって、周辺の魔物まで集まって来たのじゃ。」
「まぁ、大体わかった。それで、オレ達を待ってた理由は何だ?」
「そんなのは決まっておる。お主らに付いて行けば、安全に辿り着けるじゃろ?」
「学園長の実家って何処なの?」
「エルフ国の王都を越えた、最奥にある集落じゃ。」

王都の奥って・・・。

「オレ達の目的地は王都までだぞ?」
「ユーナの里帰りを考えるなら、1度は足を運んでおくべきではないか?」
「それは・・・」
「正論ですね。」

反論しようとするフィーナだったが、いち早くティナによって遮られる。王都まで行くのだから、早いか遅いかの差だろう。学園長が言うように、このタイミングで訪れておくのもいいかもしれない。

何よりお邪魔虫が付いて来たのだ。ここで捨てられないなら、家に届けるのも悪くはない。

「仕方ないな。連れて行ってやるから、フィーナ達の指示に従ってくれ。」
「良いのか!?」
「ルークの指示ではないのですか?」
「あぁ。オレはエルフ族じゃないからな。細かい仕来りなんかも良くわからん。何方かと言ったら、オレはみんなに従う側だろう。」


このセリフが実は口先だけとなるのを、この時のオレ達は知らなかった。意図せず4人となったオレ達は、ダークエルフが住まうという最初の集落を目指すのである。
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