Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

閑話 海2

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「一体どういうつもりなのか、きっちり説明してくれるか?」
「あら、何の事かしら?」
「学園長の水着だよ! いや、あんなのは水着じゃないだろ!!」
「そう言われても、ちゃんと地球で売られている物よ?」

予想していた言葉だからこそ、言い返す言葉は決まっている。

「ならアレを着て泳ぐんだな?」
「・・・私が悪かったわ。」

余程嫌だったのだろう。あっさりと非を認め、素直に謝るヴィクトリア。しかし彼女も当然の如く弁解する。

「本当はネタとして用意した物だったのよ。まさか本当に着る者がいるとは思わないでしょ?しかも紐だから大幅なサイズ調整も可能だなんて・・・。」
「今後は気をつけてくれ。アイツはあんな性格だからな。」
「・・・わかったわ。」

謝罪と理解を得られた事で満足したルークは、学園長を着替えさせるべくヴィクトリアに預ける。今度こそ、まともな水着を着て貰おうというのである。再びネタに走ろうものなら、ヴィクトリアにも着せてやろうという意思がヒシヒシと伝わって来る。ヴィクトリアも感じ取ったのだろう。ヒモで良いと言い張る学園長を必死に説得するのだった。


選び直す事となった学園長だったが、ヴィクトリアとヴァニラの説得により1番最初に水着が決まる。水着姿で現れた学園長に、ルークは思わず理由を尋ねる。

「・・・何故に競泳用なんだ?」
「他の水着よりも速く泳げると言うからじゃ。生地が少ない方が良いと思うのじゃが・・・。」

(学園長の体型だったら、着なくても抵抗は変わらないだろうな。)

ルークの嫁達とは違い、学園長の体には水の抵抗を受ける部分が無い。だがそれを口にすると振り出しに戻ってしまう。出掛かった言葉を飲み込み、代わりの言葉を口にする。

「まだ時間が掛かりそうだし、先に行ってるか?」
「良いのか!?」
「さっさと決められない方が悪いだろ。・・・面と向かっては言えないけどな。」
「う、うむ。それはワシにもわかるのじゃ。」

何かを察したらしい学園長が、ルークの意見に同意する。この2人、何かと気が合うのだが、本人達も気づいてはいない。


嫁達に断って、学園長と共に転移する。

「おぉ! 本当に貸し切りなのじゃ!!」
「確実に安全とは言い切れないから、出来るだけ近くにいてくれ。(遠くの魔物を集める必要はないからな)」
「そうなのか?ならばワシが安全確認をしておくのじゃ!(ギリギリ見える所までなら大丈夫じゃろ)」
「遠くに行くんじゃないぞ?(近くの魔物だけ引き付ければいいんだからな?)」
「わかっておる。(ゆっくり離れれば行き過ぎても気付かんじゃろう)」

互いの本音と建前で利害が一致しているのだが、どちらも相手の思惑に気付く様子は見られない。学園長は海へ、ルークはテントへと向かいながら、それぞれがニヤリと悪い笑みを浮かべる。


もうすぐ昼食とあって、ルークは急いで調理に取り掛かる。ティナの事だ、腹が減れば適当に水着を選んで合流するだろう。そう考えての行動である。事実、ティナは既に水着を選び終えていた。決して遅れる事のない、進みっぱなしの腹時計がお昼を報せていたのだから。

ティナに対して対抗心を燃やす嫁達もまた、負けじと水着を選び終える。ルークが迎えに来た時、ティナと2人きりにさせる訳にはいかないのだ。

(これ以上ティナとの差を広げられる訳にはいかないわ!)
(2人きりにするのはマズイのよ!)

優劣をつけるつもりは無いが、そうは言っても等しく平等とはならないのが人の心。ルークにだって好みはある。ティナが特別なのは仕方ないが、だからといってそのまま放置するつもりは毛頭無い。2人きりにさせたら、ティナと自分達の差が広がるのはわかりきっている。邪魔するつもりはないが、譲るつもりもないのだ。

嫁全員の気持ちが1つになる。同じ土俵で戦うと。そして、もう1つ同じ事を考えていた。

(((((学園長は別にいいけど!)))))


ルークが幼女に対して興味を持たない事を知っている嫁達は、学園長と2人きりのシチュエーションを不安に思う事は無かった。大人バージョンならば多少の危機感を持つかもしれないが、僅か3分である。危惧するような事態にはなり得ないのだから。



キリの良いタイミングで城に戻ると、迎えを心待ちにしていたティナが駆け寄る。

「ルーク! 昼食の時間です!!」
「あ、あぁ。とりあえず肉は焼けてるから向かおうか。」

予想通りの反応に若干戸惑いつつも、ティナを宥めながら他の嫁達へと視線を向ける。服を着ているせいで確認出来ないが、どうやら準備は整っているらしい。今度は全員を連れて海へと転移する。

「ねぇ、ルーク? 学園長は?」
「一足先に泳いでるよ。」

フィーナの問いに、顎で学園長の居場所を指しながら答える。嫁達全員がつられて視線を向けると、界面を漂う学園長の姿があった。戻って来るのが予想以上に早かった事もあって、学園長の位置は岸から10メートル程度。これにはルークが首を傾げる。

「100メートル位なら泳げる時間はあったと思うんだけど・・・ありゃ無理か。」
「「「「「気持ち悪っ!」」」」」

半目で納得するルークとは対象的に、嫁達が酷評する。相手は当然学園長。何が気持ち悪いのかと言うと、それは学園長の泳ぎ方であった。

右手と左足、左手と右足がセットになって交互に前へと動く。それも水面に対して素早く平行に。水に落ちて暴れる昆虫を思わせる動きは、嫁達の不評を買う結果となったのだ。

「競泳用の水着に申し訳無いな。あれは置いといて、みんなも先に泳ぐ? それともティナと一緒に昼食?」
「「「「「昼食で!」」」」」

泳ぐと言い出したら止めるつもりだったが、全員揃って昼食にすると聞き安堵したルークであった。

(あれじゃ人柱にもならないからな。30分位は様子を見よう。まぁ、餌には見えるだろうけど・・・)


襲われて良し、襲われなければ尚良しの2段構え。嫁以外には非道なルークの作戦。その成否に必要なのは、時間だけという事になる。


様子を見ると言いつつも、嫁達の世話に集中したルークが学園長の動向を見る事は無い。それが最大の誤算であった。大勢で美味しい食事を楽しむのだから、当然賑やかとなる。幸いにも魔物が近寄る気配は無かったが、代わりに最も来て欲しくないモノが近寄って来たのだ。

「ルーク・・・ワシも食べたいのじゃ。」
「げっ!? もう戻って来やがったのか!」
「何なのじゃ、その言い草は! あれだけ馬鹿騒ぎしておったら、誰でも気付くに決まっておるわ!!」

学園長の至極真っ当な指摘に、何も言い返す事が出来ないルークであった。



食事と休憩を終え、いよいよ泳ぐ気になった嫁達が服を脱ぎだす。裸を見慣れていると言ったルークではあるが、ついつい見てしまうのは男の性だろう。後片付けをしながらも、しっかりとその光景を焼き付けていた。

(全員ビキニか。眼福です!)


デザインと色の違いはあるものの、そこまで大きな差は無いので嫁達については割愛する。嫁以外でルークの目を引き付けたのが召喚組だろう。

(女優さんと声優さんは、見られる事に慣れてるんだろうな。結構大胆な水着か。そして女子高生は・・・随分とヒラヒラしてるけど、あれも水着か?・・・水着なんだろうな。)

中身はおっさんのルーク。ちょっと露出の多い服に見えたのだが、良くわからないので水着と判断する。間違ってはいないのだが、ここでジェネレーションギャップというものを感じたのだった。


水着ウォッチングを堪能し、後片付けに集中する。丁度片付け終えたタイミングで、ティナが近寄って来た。

「大変です!」
「どうした?魔物か?」
「私達、誰も泳げません!!」
「・・・・・へ?」

まさかのカミングアウトに、思考が追い付かないルークが間の抜けた声を発する。そのまま嫁達を見回すが、全員が首を縦に振っていた。

「泳げない?・・・何で?」
「王侯貴族は人前で肌を晒せませんので・・・」

スフィアの答えに、王女達と聖女候補が頷く。

「つまり泳いだ事が無い、と。なら冒険者組は?」
「自分達から無防備な状況を作り出すような真似をすると思う?」
「耳に水が入るのはちょっと・・・」
「水中でご飯は食べられませんので・・・」

フィーナの理由は何となく理解出来る。態々危険な場所に赴いて、装備を外してまで泳ごうとは思わないのだろう。危険なのは魔物だけじゃない、冒険者の男もまた警戒対象だという事だ。

ナディアはケモミミに水が入るのを嫌っているらしい。犬みたいなもんか。

一言物申したいのはティナだ。せめて泳ぐ時位は飲食から離れて欲しい。ただこれにもそれなりの訳があった。ティナが単独で行動した場合、食事にありつくのも一苦労。何しろティナの料理の腕前は壊滅的。ただ肉を焼くのにも全神経を集中する必要がある。

肉が焼けるのを待つ、食べる。全然足りないので再び焼く、食べる。これを幾度となく繰り返す事となる。焚き火で焼ける肉の量などたかが知れている。他の事にうつつを抜かす暇など無かったのだ。


そして1番の問題は、泳法が確立されていない事。学園長の気色悪い泳ぎ方が良い例だろう。クロールだとか平泳ぎなんてものは、平和な世の中で編み出される泳ぎ方だ。魔物が跋扈する場所で、泳ぎの練習をする物好きはいない。速く泳げたとしても、魔物を倒せる訳でもないのだから。


「じゃあ、泳ぎ方を覚える所から始めるか。・・・ちなみにカレンは?」
「1人で泳いで何が楽しいのですか?」
「そうですか・・・。」

聞いてなかった事に気付いて問い掛けるが、若干不貞腐れたような返答をされてしまう。ぼっちだったカレンの過去を想像し、それ以上は何も言えなくなったルークである。


ルークと召喚組が泳ぎ方を教えるという無難な展開に落ち着くが、ここで暗躍する者が1名。気色悪い背泳ぎでルークの背後から忍び寄る学園長である。悪戯してやろうと迫りくる彼女の気配に、ルークが気付かぬ訳が無い。

(真っ先にオレを狙った事だけは褒めてやろう。)

別にルークを真っ先に狙おうと考えての事ではない。単なる消去法である。嫁達の誰かを狙った場合、集中砲火を浴びる恐れがあった。全員を敵に回しては、今後の活動に差し障ると考えての行動。

結果、ルークを最初に狙った学園長だが・・・それが悲劇の始まりとなる。


ルークまであと1メートルに迫った時、思わぬ反撃を食らう。


「喰らえ学園長!ビッグバンアタック!!」

ーー ボフンッ!!

ルークは溜まりに溜まったガスを、鍛え抜かれた腹筋によって一気に放出する。何故必殺技のように名前をつけたのかは、文字通り必殺技だったからである。

海パンに穴こそ開かなかったものの、その勢いは凄まじかった。水中の砲台から1メートル先の学園長にまで到達するのだから、想像出来る事だろう。

「うっ!!」
「・・・やったな。」

あまりにも強烈な匂いに、学園長が気を失う。海面を漂う学園長を視認し、勝ち誇ったような表情のルーク。しかしそんな彼に、容赦ない一撃が襲い掛かる。

「くっさぁ!」
「下品です!」
「あっち行って!!」

近くにいた嫁達の罵声に、心が折れ掛かる。救いを求めたルークは、ティナへと視線を移すのだが・・・。

「テ、ティナ・・・」
「うふふふ。死ねばいいのに。」
「ぐふぅっ!!」


こうして2人の死者を出した海水浴は、夕暮れに幕を下ろすのであった。その後しばらくの間、ルークに近付く者がいなかったのは言うまでもない。
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