Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

ティナの正体2

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その場の全員が思考に耽る中、エレナとアスコットは互いに視線を交わしてから再び口を開く。

「ティナを預かった私達は姉さん達を弔った後、各国を転々としながら拠点を魔の森近くに移したわ。」
「そこに転移門があるとわかったからな。だが当時のオレ達に、魔の森を抜ける実力は無かった。そこで仲間を集める事にしたのさ。」
「その時出会ったのが村のみんなやその親族。エリドもそうね。」
「まだ幼かったティナを残し、オレ達は転移門を潜った。全員の目的は神器だったが、オレとエレナは兄達の足跡を辿ろうとした。」
「だけど、当然着いて早々に和を乱すような行動は出来ない。だからみんなの目的を果たしてから別行動しようと思ったの。・・・結果はティナも知っての通りよ。」

村のみんなも知らなかったのか、驚愕した様子で2人を見つめている。

「生き残った者達を連れ、レベルアップの為により強い魔物を求める事となったオレ達は、カイル王国の奥地へと辿り着いた。再起を図り、実力をつけて行ったオレ達だったが・・・予想外の事態に見舞われた。」
「カレン様が転移門を監視するようになっていたのよ。」

エレナの言葉に、全員の視線がカレンへと向けられる。

「大勢が協力しなければ生き残れない場所。そんな所で足を引っ張り合うような者達であっても、みすみす死地に送り出すような真似は出来ませんからね。」
「それまでが自由過ぎたのかもしれないが、転移出来なくなったオレ達はエリドの誘いに乗って村を作った。」
「何としても向こう側の大陸へ行く為に・・・。」

そういう理由があったのか。話せなかったのは、ティナの事を知られたくなかったからなんだろうな。

「いずれは話すつもりだった。だが親として、確かな情報を伝えたかったんだ。」
「200年掛かってようやく向こう側へ渡る手段を手に入れたって言うのに、またしても目的地に辿り着く事が出来なかったわ。情けないものね・・・。」
「どうして・・・どうして私も連れて行ってくれなかったのですか!?」
「それが親の努めだと思ったから・・・いや、違うな。エゴみたいなものか?」
「娘を危険な目にあわせたくない想いと、出来る事なら知られたくないという想い。そちらの気持ちの方が圧倒的に強かったの。」
「・・・・・。」

ティナには悪いが、父さんと母さんを一方的に責める気にはならない。良くわからないけど、お前は自分達の娘じゃない。そんな説明をされても納得出来ないだろうし、イタズラに傷つけるだけかもしれない。当然向こう側へ連れて行くのは非常に危険だ。


一方でティナの気持ちも理解出来る。自分の事を知りたいと思うのは仕方のない事だと思うし、例え不確かな情報であろうとも、自分の事なら聞いておきたいに決まっている。オレがどちらかの肩を持つのは不公平。ただし、本心ではティナの味方だ。


「それでも私は・・・言って欲しかった!もっと早くに聞きたかった!!」
「「・・・・・。」」
「どうして、どうして他人の口から聞かされなければならないの!?」
「「・・・・・。」」

ティナの心からの訴えに、エレナとアスコットは何も答える事が出来ない。この先は夫であるオレの努めなんだろうな。

「ティナ・・・」
「ルーク・・・私は・・・私は一体、誰なのですか?」
「ティナはティナだ。例え誰の子供であっても、それだけは変わらない。」
「ですが私は向こう側の住人です!ルークと、みんなと一緒に居る資格は無いかもしれません!」
「どうして?」
「どうしてって・・・人々に害を成す存在かもしれないじゃありませんか!お母さんの娘じゃないのに、ソックリなのだっておかしいですよ!!」

ティナが言いたいのは、魔族や吸血鬼と似たような存在かもしれないって事か。他人の姿を真似るような生物・・・魔物の可能性だってある。でも・・・だけど・・・。

「オレはさぁ、ティナがどんな存在でも構わないと思ってる。」
「え?」
「そりゃあ料理は出来ないし、頑固で怒ると怖い。誰よりも沢山食べるよ?けど、そういう部分も全部含めてティナだと思う。」
「・・・・・。」
「ひょっとしたらエルフ族じゃないのかも、って言いたいんだろ?」
「・・・はい。」
「別にエルフじゃなくたっていいじゃん。」
「・・・え?」
「全ての種族を嫁に迎え入れようって言い出したのはティナでしょ?」

オレの言葉に、ティナは無言で頷く。

「実はスライムでした、とかだと困るかもしれないけど・・・人型ならなんとかなるよ。」
「ルーク・・・」
「もし仮に敵対するような魔族や魔神だったとしても、オレの妻でいてくれるのなら関係ない。世界中の全てが敵だとしても、オレは・・・オレ達はティナの味方だ!」
「ルークの言う通りですね。正体が何であれ、些細な事です。」
「他の種族が増えるのは想定してるもの。今更よ?」
「・・・・・はい!」


オレの言葉に同意したカレンとフィーナ。2人の言葉に、涙でグチャグチャだったティナに笑顔が戻る。
それにまだエルフ族じゃないと決まった訳でもない。

「私達の実の娘じゃないけど・・・今までも、そしてこれからもずっと・・・ティナは私達の娘よ!」
「エレナの言う通りだ!今まで隠してた事は悪かったが、ちゃんと話すつもりだった!!それは紛れもない事実だ。」
「お父さん、お母さん・・・」

今度は3人が涙を流しながら抱き合う。それから暫くの間、全員が温かい目で見守っていた。どれ程の時間が経過した事だろう。やがて落ち着きを取り戻し、何かを覚悟したティナがオレの下へと歩み寄る。

「ルークにお願いがあります!」
「何?」
「私を鑑定して下さい!」
「「「っ!?」」」

ティナの言葉に驚いたのはオレとカレン、そしてフィーナであった。オレ達はティナが頑なに鑑定を拒み続けているのを知っていた。そのティナが自身を鑑定して欲しいと言うのだから、驚くのは当然であろう。

「いいのか?」
「はい。鑑定して頂ければ、これ以上父と母の手を煩わせる事も無くなるかもしれません。もしわからなかったとしても、手掛かりを追う為には向こう側へ行く必要がありますし。転移門を潜れるようにしておくのは必要だと思うのです。」
「・・・わかった。ならタイミングはティナに任せるから、覚悟が出来たら言ってくれ。」

本当に心の準備が出来ているのか確認すべく、合図して貰うよう告げる。時間にして1分か2分だろうか。全員が固唾を呑んで見守っていると、ティナが口を開いた。

「お願いします!」
「わかった・・・鑑定!」

声に出す必要など無いが、ティナにわかりやすいよう手を翳しながら口にする。するといつもならば何のエフェクトも無い鑑定魔法により、突然ティナの身体が輝き出した。

「「「「「ティナ!?」」」」」
「・・・何だよ、コレ?」
「ルーク?」

余りにも訳のわからない鑑定結果に、思わず声を上げてしまう。そんなオレを不安そうに見つめるティナと目が合い、どう答えて良いものかわからなかった。


◆ティナ=ブランシェ (?????)
種族:?????(亜神)
年齢?:217
レベル:???
称号:転生者、???の分身体、フォレスタニア帝国皇帝婦人、神皇子の第一妃(仮)、許可を得し者


とりあえず鑑定結果を紙に書き出し、それをティナに手渡す。それをカレン達や母さん達が覗き込み、思い思いの感想を口にする。

「わからない事だらけじゃない!」
「どうして名前が・・・」
「種族も不明なのですか?年齢にまで疑問符が・・・」
「分身体って何だよ!!」

みんなは『はてなマーク』に目が行っているようだが、オレは称号が気になった。

「転生者・・・?」
「ティナも気になったか。オレは種族や年齢、レベルに興味は無かったからな。だが称号は別だ。」
「これは時系列になっているのですか?」
「多分そうだと思う。ティナの場合は、転生先が何かの分身体だったって事だろうな。名前にも不明な部分があるのは、転生前の名前なんだと思う。」
「転生・・・ルークと同じ?」

全員が難しい表情で黙り込む。オレもその内の1人ではあるのだが、恐らくみんなとは違う事を考えているのだろう。


鑑定魔法・・・やっぱ変だよな?オレの知識に無い情報が記載されているのに、不明な部分が多すぎる。これって誰かの知識を元にしてるような気がしてならない。けど魔力を用いる魔法って事から推測するに、神の誰かって訳でも無い気がする。この世界の大いなる何か・・・だったら不明な部分の説明がつかないな。

魔力・・・魔神?ちょっと安直過ぎるか?そもそも神皇子って単語が出た時点で、神と結論付ける事だって出来るよな。いや、とりあえずは確度の高い推測から説明して行こう。


「あくまで予想になるけど、レベルが不明なのは種族が関係してる気がする。」
「どういう事ですか?」
「鑑定魔法で測定するレベルって、多分魔力か神力の量が基準になってるんだよ。」
「魔力量?」

これは前々から思っていた事だ。レベルの概念と言うか、測定基準は魔力量なのだろう。これはオレより格上のシルフィに吹き飛ばされた時に感じた事。実はあの時、全くのノーダメージだった。激しく吹き飛ばされたのは、単に油断していたから。

例えるなら、全く踏ん張らない状態でタックルされたようなもの。痛くは無いが、誰だって飛ばされるだろう。それと同じ状態だった。


何が言いたいのかと言うと、レベルと攻撃力は比例していないという事。一見して判別出来ない筋力や技術力が反映されていないとなれば、一体何を基準にするのか。答えは残った魔力量という事になる。

大体の魔力量ならば見ればわかるし、レベルが上がれば魔力量も増える。この説明は前後が逆になってしまうが、この世界の住人にはとてもわかりやすい例えとなる。

レベルが上がったから魔力量が増えた。ではなく、基準となる魔力量が増えたからレベルの表記を上げておいた。こう説明するのが1番しっくりくる。


「オレの仮定が正しければ、加護によって分け与えられたレベルすなわち神力量となる。」
「長く生きている上位の神ほど神力量が多い。すなわちレベルが高い、と言う訳ですね?」
「カレンの言う通りだ。そして話を戻すが、ティナのレベルが測定不能なのは・・・魔力でも神力でもない力を保有しているからだろう。」
「「「「「っ!?」」」」」

魔力としか思えないのだが、鑑定出来ないのであれば魔力ではないという事。完全な亜神となり本来の力が神力に変換されていたら、恐らくは亜神の表記だけが残っていた事だろう。

「そんな力を保有する種族・・・。ヒト種でないのは当然として、魔物でもなく魔族や魔神でもない。ましてや神ですらない、未知の種族という事になる。」
「「「「「なっ!?」」」」」
「もしくは向こう側に、オレ達の知らない力を持つエルフ族がいるかもしれない・・・だな。」
「「「「「・・・・・。」」」」」


何の根拠も無い只の推論に過ぎないのだが、否定するだけの材料も無い。だからこそ全員が黙り込んだままで思索に耽るのであった。
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